『RPGタイム!』×『グノーシア』対談! 最前線を走るインディクリエイターが開発を続けるための秘訣を語る

電撃PlayStation
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 鉛筆描きにこだわった斬新なアートスタイルと作り込みで、各インディゲームイベントの賞を総なめにし、PCやスマートフォンなどで2020年に配信予定の『RPGタイム! ~ライトの伝説~』。PS Vita用ダウンロード専売ソフトとして発売され、各所で話題を呼んでいるSF系人狼ゲーム『グノーシア』

 インディーゲーム業界に名を轟かせる2大タイトルを開発したクリエイターたちの対談が、2019年7月26日に名古屋情報メディア専門学校にて行われた。ゲーム業界を目指す人も、ゲーム好きな人たちも必見な対談の模様をお届けする。

  • ▲構想13年、開発7年、鉛筆原画1万枚超という恐ろしいほどの作り込みで注目を浴びた『RPGタイム! ~ライトの伝説~(以下、RPGタイム!)』。
  • ▲1人用人狼ゲームとしての高い完成度と、アドベンチャーとしての細かいこだわり。膨大なバリエーションのイベントが魅力的な『グノーシア』。

 今回対談を行ったのは、『RPGタイム! ~ライトの伝説~』を開発しているDESKWORKSのディレクター・藤井トム氏と、『グノーシア』を生み出した独立系ゲーム開発集団プチデポットの代表・ 川勝徹氏の2名。お2人は日本を代表するインディゲームクリエイターとして、未来のゲームクリエイターたちにゲーム制作の心構えや開発の苦労などを語ってくれた。

  • ▲左からDESKWORKSのディレクター・藤井トム氏。プチデポットのプロデューサー兼ディレクター・川勝徹氏。
  • ▲名古屋で1970年に設立し、今年で49年となる名古屋情報メディア専門学校。ゲーム開発の学科と大学同時卒業の学科にゲーム専攻を持ち、東京ゲームショウへの出展、BitSummitやぜんためなどのイベントへの参加、外部コンテストへの応募、内部ゲームジャムやコンテスト、クリエイター講演会などの内外含めた各種イベントにも積極的に参加している。

インディゲームでも異例の長期間開発を成功させたモチベーション

 対談は、まずお互いの作品についての話からスタート。発売までに4年以上かかったという『グノーシア』に対して、今年で開発7年目に突入したという『RPGタイム!』。藤井氏は現在、知り合いの事務所でスペースを借りながら完全週休1日制の形でゲームを制作しているという。制作の体制も、朝の10時から夜の23時45分までというほぼフルタイム。

 7年という長期間の開発をストイックに続けてきたことに対し、川勝氏がそのモチベーションはどこにあったのかを聞くと、藤井氏は「専門学校時代に作成したゲームが日本ゲーム大賞アマチュア部門の大賞を受賞したとき、みんながおもしろいと言ってくれたことがモチベーションにつながっています」と返答。

 そのときに作った15分程度の短いゲームでおもしろいなら、ゲーム開発会社に勤めてスキルが向上した今ならもっとおもしろいものが作れるだろう、という単純な理由だと語っていた。

 聴講していた学生たちにも「どこか1つでも、1人でも、本当におもしろいと思ってくれる人がいるなら、それを信じてやるのもありかもしれません」と、自身の考えを述べていた。

  • ▲藤井氏が専門学校時代に制作し、2007年の“日本ゲーム大賞アマチュア部門”で大賞を獲得したRPG『バトルクエスト』。『RPGタイム!』の原型とも言える作品だ。

 藤井氏の発言に続いて、川勝氏も「すごくわかります! 自分たちもたくさんの人に遊んでもらおうという気持ちはすごくあるけど、周囲の友人や近しい人たちがおもしろいと言ってくれないと、4年間も開発するモチベーションがもちません」と同意を示した。

 さらに、川勝氏は『グノーシア』の開発中、BitSummitやぜんためといったインディイベントに出展し、遊んでもらった人たちに感想ノートを書いてもらうという開発のテクニックを明かした。

 「お客さんに感想を書いてもらうのですが、恥ずかしくて書いてくれないかもしれないじゃないですか。だから、最初から自分で悪口を書いておくんです。このゲームはおもしろくないとか、これがよくないというのを書いておくと、みんながこぞって書きやすいんですよ」と、川勝氏ならではの工夫も語ってくれた。

 こうすることで単純に感想を得られるだけではなく、チームの仲間たちにも「お客さんが、こういうことを言っているから直そう」と説得できて、細かいところを指定して直せるというメリットもあったようだ。

 一方で、藤井氏はモチベーションをどうキープするかという問題に対して、やる気よりも避けては通れない目標を設定するべきだと語った。「例えば、このハードウェアで絶対に発売するといった目標を設定して、強制力をつけるといいのかもしれない」と持論を展開した。

 学生のうちにコンテストや日本ゲーム大賞を目指すのも1つの強制力であり、目標とアメをセットにするとやる気を度外視して作れると語る藤井氏。彼は「やる気を維持するよりは、何かよい目標を作ったほうがいいです」と、学生たちにアドバイスを送っていた。

 ちなみに、発売前の時点で各メディアやイベントでインディゲームの賞を総なめにしている藤井氏だが、たくさん受賞してもここまでしか行けないという感覚があるとのこと。もっと上に行こうとするならば、より上のレイヤーの賞やメディアへのプロモーションをしていかないといけないのかもしれないと発言した。

 それに対して川勝氏も、「今はメディアも一般のお客さんも熱狂すると関係なく、本当におもしろいと思ってもらえたゲームならば、感想の熱量や長さが圧倒的な量になります」と、自身の体験を話した。

 さらに、「今はそうした熱量を持てるような1点突破の突き抜ける作り方をしないと、なかなか伝わらないのではないか」とも語り、藤井氏も「作品を作る人や動いた人は独特のパワーを持っている人たちなので、そうした方たちを参考にすると、より深い意見を言ってくれると思います」と、川勝氏に同意していた。

  • ▲川勝氏が語るように、メディアも熱狂して注目している『RPGタイム!』と『グノーシア』。電撃オンラインでも、この2作品にほれ込んだライターが、熱量を込めた記事を多く書いている。

インディーゲームを作るのに仕様書はいらない!?

 続いての話題は、ゲームにおける仕様書の必要性。藤井氏は『RPGタイム!』を遊んだユーザーの感想として、よく「このゲームはRPGではないのでは?」と言われていると明かした。

 自身も、RPG以外の要素を入れ過ぎてジャンルがよくわからなくなってしまったと述べているが、それは「RPGと言えば『ドラゴンクエスト』シリーズや『ファイナルファンタジー』シリーズを思い浮かべるかもしれませんが、インディゲームは新しいゲーム性を求められるものであり、『DQ』シリーズや『FF』シリーズが決めたレールから、どうにかしてはずれようと考えた」からでもあると語った。

  • ▲「レールから外れたうえでおもしろさを作っていこうとしたために、開発に時間がかかっている」という『RPGタイム!』。一見するとアドベンチャーに近い部分もあり、単純なRPGのフォーマットでは語れない作品となっている。

 「RPGのいいところは包容力だと思っていて、RPGの世界ではゲームセンターやカジノがあっても別のジャンルになりません。RPGの中に包括されていて、何をやっても許されるから好きですね」と、RPGに対する愛を語る藤井氏。

 川勝氏のほうも、通常とは異なる『グノーシア』の制作体制について語ってくれた。『グノーシア』は、最初に「コンピュータで1人用の人狼ゲームを遊びたい」という欲求から始まり、当初はキャラクターも数人しかいない小さな作品として出す予定だったとのこと。

 そこから、人狼ゲームとして成立させるために必要なセリフを組み込み、遊んでいくことを繰り返すうちにそれぞれのキャラクターの性格を想像し、後付けで性格やセリフを追加していったという特殊な作り方だったことを明かした。

 最初から設定ありきでゲームを作ったわけではなく、デザイナーが描いたキャラクターに合わせて遊びながらストーリーを生み出していく。テーブルトークRPGのリプレイのようなやり方であり、ノートに軽く書いただけで、ちゃんとした仕様書も作らなかったと語った。

  • ▲個性的なキャラクターや秀逸な物語も魅力となっている『グノーシア』。それらが後付けで作られたことに驚いた人も多いのでは?

 藤井氏はインディゲームを作る前にゲーム会社へ勤めていたこともあり、仕様書を書ける人間として重宝されていたが、今は『RPGタイム!』を作る前に作った企画書も見ていないとのこと。インディゲームの場合は作ってみないとわからない部分があり、新しいゲームを作り出すために仕様書を書くことは少ないのではないかと語った。

 とはいえ、学生の場合はちゃんと仕様書を書くほうがいいという意見も。開発会社に入って最初に通るのが仕様書の書き方や読み方であり、ハードルが高いので学生のうちに何とかできるならしたほうがいい、というアドバイスを学生たちに送った。

 川勝氏もその意見に続き、「仕様書は会社によっても違うので、それを読み取れるだけの読解力や知識を養う訓練をしておかないと、学校で学んだだけでは使えない」という実践的な助言も付け加えていた。

 また、2人とも最終的にはコミュニケーション能力のほうが必要であると力説。仕様書を見てもわからないときは、仕様書を書いた人に聞くのが一番であり、コミュニケーションに長けていないと少人数でのインディゲーム制作は難しいという話を展開していた。

 さらに、インディゲームはデザイナーやサウンドを兼任で行うことも多く、学生時代にあえて苦手な作業や別の分野にも挑戦してみることが重要だと解説。

 自分がすぐに出せる武器を見つけて、それを振り回すことが大事であり、企画志望でもプログラムやデザインを知っていることから仕事がふくらんでいく場合もあるので、そういった武器を持つことが大切だと藤井氏は語った。

『RPGタイム!』は足し算、『グノーシア』は掛け算のゲーム

 『グノーシア』でカットした内容はあるかという質問に対し、川勝氏は「当初はキャラクターのセリフの量が少なかった。今はかなりセリフを入れているが、そのキャラクターの発言が疑っているのか、かばっているのかなどをカテゴライズするために決められたセリフを作っています。あいまいな部分があると、推理するときに必要なトピックスが出てこなくなってしまうので、テロップをつけて何を言っているのかわかるようにしました。オミットしたというよりも、会話のカテゴリーをきちっとわかるようにしています」と語った。

  • ▲川勝さんの提案により付け加えられたカテゴライズ。キャラクターが発言したときに「疑う」「反論を封じる」など、それがどういう意味を持つのかが表示されるようになっている。

 また、『グノーシア』のプロトタイプは腹が立つような状態で、イベントが出ない、シナリオが進まないなどテストプレイしていると理不尽なゲームだったという意外な話も。

 それを直すにはプログラマー本人がテストプレイしないと実感しないだろうと考え、実際にテストプレイし、納得した上で修正したこと。そこから、頭の中の設計通りに作ることを正義とせずに、プレイヤーの感覚として頭にくること、腹が立つことを見つけて修正する作り方のほうが、時間はかかるがプレイヤーにとって快適で、かゆいところに手が届くゲームになるという持論を展開した。

 藤井氏も、今はそろっているリソース自体が一緒なので、それをどう見せるか。あるものをわかりやすくするためのどう削るかが重要であり、同じクオリティのリソースでも、それをやるかどうかがゲームの評価を分けると言っても過言ではないと語った。

 また、2人とも新しい物を作るときに気にするのはチュートリアルであり、つかみにはとくに力を入れること。藤井の場合は、チュートリアルを2回作り直したことも明らかにした。

  • ▲何度も導入部を作り替え、よりよいものへと変えていった『RPGタイム!』のチュートリアル。

 藤井氏は「足し算ではなく、引き算や掛け算で作品を作るのがプロだと言われるが、自分はそれに対して少し違和感を感じていたこともあって、『RPGタイム!』では足し算のゲームを作りました。これは、チリも積もれば山となる。積み上げていった結果、物が大きくなっておもしろくなるという設計にしていたので、作れば作るほどおもしろくなるから成り立つアイデアなんです」と、自分たちならではの作り方の理由を語ってくれた。

 逆に、川勝氏は「自分たちのゲームは、ある程度プレイヤーにおもしろさを投げているところがあって、プレイヤーの想像力と掛け合わせることで成立する楽しさがあります。すべてを伝えるわけではなく、自分が遊んでいくなかで体験したことと感じたことをストーリーやゲームシステムと調和させることで完成する。それなら、無限大に遊べるゲームができるだろうと考えたからです」と、藤井氏とはある意味正反対の考え方を述べた。

  • ▲藤井氏いわく、足し算のゲームである『RPGタイム!』と、まさに掛け算のゲームとして作られた『グノーシア』。

 ゲーム業界を生き抜く先達者として、当日はそのほかにもさまざまな知識やゲーム制作のテクニックを語り合った藤井氏と川勝氏。会場に来ていた学生たちも真剣に耳を傾けており、ゲーム業界を目指す人にとって非常に有意義なイベントとなっていた。

 現在配信中の『グノーシア』と、2020年に配信予定の『RPGタイム!』は、お2人とそれぞれのメンバーが全精力を傾けたインディゲームらしいタイトルとなっている。ゲーム業界を目指す人も、楽しいゲームを遊んでみたい人も、ぜひ機会があったらプレイしてみることをおオススメしたい。

 とくに、これからゲーム業界を目指す人にとっては、抑えておかないといけない作品とも言えるので、今回の対談と合わせてゲーム作りの参考に遊んでみてほしい。

(C)Petit Depotto.Published by mebius.