【男性目線の『アイナナ』レポ】帰ってきたモンジェネおじさんが語る『アイドリッシュセブン』の魅力♪ 第10回

原常樹
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 みなさん、こんにちは! 自称“モンジェネおじさん”ことフリーライターの原 常樹です。
 すっかり『アイドリッシュセブン』にハマってしまったひとりの男性マネージャーが「アイナナはここが素晴らしい!」ととりとめもなく語りつつ、【男性のマネージャー】、また【男性に布教しようとしているマネージャー】を応援するというのがこの連載のコンセプトです。

 さて、前回は第3部の冒頭を振り返らせていただきました! 月影とツクモプロが支配するという背景描写から始まり、序盤から重苦しい展開が続いています……。さっそく気になる続きの展開を振り返っていきましょう。

 まず、重苦しい空気になっていたのがTRIGGER。龍くんは芸能界に入ったことで兄弟に迷惑をかけていると悩んでいます。セクシー路線が誤解を与えているのであれば路線変更をしたいという龍くんに対して楽さんは賛同しますが、一方で天くんは「右から左に変えられるようなものではない」と冷たく言い放ちます。そして、八乙女社長も「バカモノ!」と龍くんを一喝。Re:valeを超えるためにも必要なのは、一番伸びしろがあるお前ががんばることだと叱咤します。
 こうやってみると言葉の圧力はあるものの、八乙女社長の言葉はさまざまな場面で本質を捉えているんですよね。正直、第1部では強権を振るっているイメージとそれによる悪循環が目立っていましたが、それだけではないということも少しずつ見えてきます。八乙女社長は決して悪い人物ではないんでしょう……。

  • ▲当人たちにその気はなくてもファンがアイドルたちの最大の障害となる展開は『アイナナ』の十八番ともいうべきテーマ。身内や友人が芸能界にいるとそれを目的に近づいてくる人間がいる……なんてのは、なかなか信じがたい話かもしれませんが、フィクションじゃないと思います(というか、僕ですら近い経験をしたことがあります)。

 一方でMEZZO"の収録にマネージャーとして帯同した万理さんは、収録現場でRe:valeのふたりとも顔を合わせます。彼らの息の合った楽しいやりとりに、第2部の焦点のひとつでもあったRe:vale周りの複雑な人間関係がうまく収まったということが伝わってきます。そして、「超イケメン!」と百さんにはしゃがれたり、千さんと対等な立場でものを言う万理さんの姿を見ていると、この人はやはりすごい人なんだなぁと思えてしまう。なんとも微笑ましいメンバーです。

 さて、IDOLiSH7はどうかというと、こちらはとてつもなくギスギスした空気が流れていました。理由は、大和さんの生い立ちにまつわる話があるからです……。
 ハッキリと事情を説明すべきだとナギは大和さんに詰め寄りますが、大和さんはそれをうまくはぐらかして映画の撮影に向かいます。真実を語らない大和さんにやきもきするナギに向かって「大和さんのことを信じて本当のことを話してくれるのを待っていたい」と三月くんは語ります。ひとりでケジメをつけたいこともあるんだよ、自分のペースでやらせてあげるべきだよと……。まっすぐメンバーと向き合って緩衝材のようにフォローするあたり、こういうとき三月くんは頼りになります(ただ、彼も純粋すぎるからこそ心配になる部分もありますが)。


  • ▲物語を第4部まで進めてからこのやりとりを見た方は、大和さんの視点からナギを見て「あっ……」となってしまうんですよね……。何度も読み返すことで増す破壊力。やはりアイナナはおそろしい。

 ところ変わって撮影現場。大和さんはラストシーンでの演技の壁にぶつかっていました。監督はそんな彼をアイドルだからこそ間を掴むのもキメるのもうまいし、インパクトとして訴えかけるエンタメへの意識は素晴らしいと褒める一方で、「作品の深みや役の説得力を出すために名人職人の技術は捨ててアーティストになってほしい」と告げます。監督がその好例として挙げてしまったのが『三日月狼』という舞台の千葉志津雄。ラストシーンで敵を相手にお得意の見栄を張るだろうという予想を覆し、ただじっと敵を見据えることで役の悲しみや憤り、覚悟を見せたのだと。
 監督の抽象的なディレクションが大和さんを悩ませることになりましたが、監督が言葉を選んだのは大和さんが“千葉志津雄の息子だから”。それを知りながらも口にできない気持ち悪い空気が現場には漂っており、それが大和さんに対する逆風になっているというのはひしひしと感じます。映画のラストシーンのセリフが「父さん、全部あなたのせいだ!」というのも酷なものがありますよね。

 そんな折、大和さんにヌルッと接触してきたのが星影所属の役者・棗巳波。彼は千葉志津雄と大和さんとの関係を知っていて「変な形で週刊誌に抜かれないといいですねえ」と煽った上で「IDOLiSH7の人気が落ちたとしても、二階堂さんには才能がありますから。本格的に俳優になって生き残ればいい」と畳みかけてきます。自分が原因でイメージをダウンしたとしたら、なおさらひとりだけ逃げるなんてできるわけない……そう主張しようとした大和さんは言葉に詰まりました。
 いつもお兄さんぶっていて口が上手いイメージのある大和さんがここまでやられているのは珍しいですよね。同時に棗巳波という捉えどころのない存在に一撃を喰らわされ、それが毒のようなモヤモヤを残すという展開には、見ているこちらも不安を感じずにはいられません。

  • ▲別の収録現場で、自分たち以外の関係者が大和の秘密を知っていたことを偶然聞かされてしまい「仲、悪くねえよな、オレたち……」と漏らす三月くん。いやな空気ですよ、ホント……。

 一方で陸くんは収録現場で、疲弊した様子の女性アイドル・花巻すみれが事務所とうまくいっていないことを気遣い、彼女に「ちゃんと話し合った方がいいですよ。もし、話し合いも出来ないようだったら、うちに来たらどうですか?」と言ってしまいます。もちろん、一織くんは即座にこれをストップ。売れっ子のアイドルを一方的に引き抜いたら、小鳥遊事務所が業界全体からにらまれてしまうとデリケートな移籍問題に関わらないように言います。でも、ただひたすらに花巻すみれのことを心配する陸くんにはあまりそれが伝わっていない様子です。
 そして一織くんは、自分がここまで陸くんを中心にプロデュースしてきたのに仕事のやり方に不満を覚えてどこかに移籍しようとしたら……と考えてしまいます。忘れてはいけないのが、一織くんはほかのアイドルたちに黙ってIDOLiSH7のプロデュースに関わっていたということ。しかも、たまたまその場にいた九条鷹匡にその事実を知られてしまいます……。

 九条鷹匡は、陸がゼロに似ているとしつつも彼をプロデュースする気はないと言います。彼の中ではIDOLiSH7が今以上に売れる一方で“なんらかの形”で未来がなくなると予期しているようです。一織は「私がいる限り、IDOLiSH7は存在し続けます。終わらせたりなどしません」と伝えますが、鷹匡はそんな宣言は無意味だと跳ねのけます。終わりを知らない人間に何がわかるのかと。
 ここまでの流れで九条さんは陸くんをゼロに、一織くんをかつての自分と重ねているというのがハッキリと示唆されています。もちろん、この話は平行線のまま終息しますが、きっとこのシーンはのちのちの重要な伏線になってきそうな気配がプンプンしますね……。七瀬陸という光の塊がどう作用するかも『IDOLiSH7』のきっと大きなテーマになってくるでしょうし。

  • ▲その頃、大和さんはサイコパスな役作りのためにタイトルを聞くだけで寒気がするような本を読んでいました。「人を食いたくなったらどうするの!」と心配する環くんがひたすらかわいかったのは言うまでもありません。このときの彼らは月雲了という本物のサイコパスが近づいていることも知らず……。

 撮影現場で監督に昔の自分について「感性が鋭くてマイペースで孤独」、「君みたいな人たちは流れていく川だ。誰かの元に留まれないし、誰かが君に留まることも出来ない」と告げられた千さんは、事務所に戻って百ちゃんに「僕が川だったら?」と問いかけます。それに対して泳げるし、釣りもできるし、ラフティングもできる万能イケメンだと大喜びをしながら「リバーサイドで暮らす!」と返せる百ちゃんはさすが。このふたりの関係性は完全に心配なさそうです。

 多くのアイドルたちの周りで物語が動く中、“父親世代”の物語も動きます。
 実はツクモプロには、小鳥遊社長と結さん(マネージャーの母親)、八乙女社長ももともと所属していたということが示唆されます。小鳥遊社長は人を使い捨てる社風に合わずに啖呵をきってプロダクションを新設する一方で、八乙女社長は未だにツクモプロのバックアップを受けているために逆らうことができないという背景も示されました。


  • ▲「どんな大手でどんなビッグスターでもお客さんがいなければ何もできない」、「お客さんの瞳を輝かせる夢はどんな強い力にも負けない」という小鳥遊社長の言葉の説得力たるや……。万理さんと社長との会話は、実際の芸能界、いやそれ以外の多くのエンタメ業界においてもこれ以上ない真理なのかもしれません。動く余地のない壁のような世界でも、人々の想いに動かされる部分はあると信じたいものですよね。

 そんなツクモプロの次男坊である月雲了は、百ちゃんと会っていました。彼は自分よりも劣っている長男を両親がひいきしたことでプロダクションが傾いたとうそぶき、来月には自分が新社長に就任すると告げます。そして、星影を吸収してRe:valeたちアイドルグループをメチャクチャにすると不穏な宣言も……。
 百ちゃんは「でも、星影を叩く材料がない」と反論しますが、そこで月雲さんが提示したのは「千葉サロン」を使えばそれも可能だという計画。うまくいったらIDOLiSH7は名前を変える必要がある──つまり、大和さんに関するスキャンダルを世間にさらし、彼がIDOLiSH7をやめることになるだろうと言い出したのです。そして、脅迫めいた形で百ちゃんに「大和の告白を録ってこい」と。


 渦中の大和さんは一織くんと本質に迫るような言葉を交わしていました。実は大和さんがIDOLiSH7に入ったキッカケは、愛人に自分を生ませた千葉志津雄の罪を告発すること。IDOLiSH7はそのためのステップで加入時は脱退も前提にしていたようですが、彼はそのことをずっと後悔していたわけです。
 醜悪な正体を知られても変わらず慕われるわけがない、そのために恋人を殺して保存するという映画の役どころと自分自身を重ねてしまう大和さん。変えることのできない“出自”を恨み、復讐の踏み台にする目的でIDOLiSH7に潜り込んでいた彼が、いつしか輝きのひとつになってしまった。一織くんの言葉をはぐらかすしかない彼の葛藤も痛いほど伝わってきますね……。


 第3部は冒頭から、大和さん自身がこれまでひた隠しにしてきた復讐心と、それを利用とする人間たちの思惑が複雑に交差していきます。「展開を振り返るだけでも情報の密度が濃い!」という印象ですし、さまざまな人間関係が複雑に絡み合いつつもそれぞれがせん細な影響を及ぼしあっているので息をつく余裕がありません。
 こうやって文章でまとめようとすると大変難しいのですが、物語を追うこと自体はまったく苦にならない(というか、ドンドン続きが気になる)というのは、アイナナのテキストがいかに魅力的なのかということの証左でもあると思います。
 登場人物が増えて物語はここからさらに加速していきますが……今回の連載はここまで!
 次回は『アイドリッシュセブン 2nd LIVE「REUNION」』でも大活躍だったŹOOĻが本格的に動き始めるあたりのストーリーを振り返っていく予定です。またぜひお付き合いください!

(C)アイドリッシュセブン

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アイドリッシュセブン

  • メーカー: バンダイナムコオンライン
  • 対応端末: iOS
  • ジャンル: アクションADV
  • 配信日: 2015年8月20日
  • 価格: 基本無料/アイテム課金

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  • 配信日: 2015年8月20日
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