三雲岳斗先生に新作『虚ろなるレガリア』を聞く。侭奈彩葉は『ストブラ』雪菜とは違うが魅力的なヒロインに
- 文
- 電撃オンライン
- 公開日時
電撃文庫で活躍する作家陣のメールインタビューをお届けする“Spot the 電撃文庫”。今回は、6月10日に発売された『虚ろなるレガリア Corpse Reviver』について、三雲岳斗先生にお話を伺ってみました。
本作は“魍獣”と呼ばれる巨大な龍によって崩壊した日本を舞台に、竜殺しの少年と龍の少女が織りなす冒険物語です。三雲先生の大好きな要素を詰め込んだという本作ですが、一番の難題だったのは、“魅力的なヒロイン”を作り出すというもの。いろいろと考えた末に、三雲先生が至った“2020年代のヒロインとして求められる要素”とは……? 気になる人はインタビューをご覧ください。
――この作品を書いたキッカケを教えてください。
以前から日本神話というか八岐大蛇をモチーフにした作品を書きたいと思っていて、それを現代に落としこんでいったら、なぜかこんな形になってしまいました。日本が壊滅したところから物語が始まっているのも、そうすることで、逆説的に日本という要素が浮かび上がるのではないかと考えたからです。
作品の内容としては、廃墟化した都市や、龍退治の英雄譚、装甲列車、怪獣など、自分の好きな要素を節操なくぶちこんでじっくり煮詰めた感じです。担当編集さんには「スタイリッシュでダークなアクション作品」というイメージで企画を通してもらいました。
――作品の特徴やセールスポイントを教えてください。
作品のジャンルは、伝奇要素を含んだアクションファンタジーになると思うのですが、個人的にはボーイミーツガール的なラブコメ要素も大事にしています。
最大のセールスポイントは、やはり深遊さんのイラストです。特にヤヒロの特殊能力であるゴア・クラッド(血の鎧)のビジュアルは、私がイメージしていたよりも圧倒的にカッコよくて、最初に見たときに衝撃を受けました。
――作品を書くうえで悩んだところは?
前作のヒロイン(『ストライク・ザ・ブラッド』姫柊雪菜)に負けないくらい魅力的なヒロインを生み出すのが一番の難題で、相当な回数、試行錯誤しました。侭奈彩葉は、雪菜とはまったくタイプが違うのですが、苦労した甲斐があって、おもしろい子になっていると思います。見守っていただけたら嬉しいです!
――執筆にかかった期間はどれくらいですか?
準備期間が一年半くらい、実際の執筆にかかったのは半年くらいです。その間に三回ほど最初からまるっと書き直しているので、かかった時間以上に苦労しました。最初のバージョンなんかは今見ると殺伐としすぎててヤバいです。
――執筆中のエピソードはありますか?
先ほども少し触れましたが、没になったバージョン違いの原稿が複数あり、泣く泣く何回も書き直したのが思い出深いです。主要なキャラクターや組織の名前はあまり変わってませんが、それぞれの性格やストーリー展開はまったくの別物です。ちなみにヒロインの彩葉は、バージョンアップのたびにアホの子になっていったような気がします。
――本作の主人公やヒロインについて、生まれた経緯や思うところをお聞かせください。
神話がモチーフということで、主人公のヤヒロは、英雄らしい英雄として描こうと考えていました。彼は、ある理由で、日本人が皆殺しになったことに対する罪の意識を抱えており、その贖罪と復讐のためだけに生きている、いわば過去に囚われた人間です。また、日本人の生き残りとして虐げられながら生きてきた苦労人でもあります。
そのため、一見するとドライな現実主義者なのですが、一方で、人の好意に慣れていないため意外にチョロく、お人好しな面が強調されていると思います。そんな感じで、いじり甲斐のあるキャラになっているのではないかと。
ヒロインの彩葉に関しては、2020年代のヒロインとして求められる要素はなにか、というのを突き詰めて検討した結果、「母性」であるという結論に至り(個人の感想です)、それを反映したキャラになってます。彼女には作中で大きな秘密を抱えているので、ぜひ確かめてみてください。
――特にお気に入りのシーンはどこですか?
ヤヒロと彩葉が、廃墟の街で二人きりで過ごす場面があるのですが、そこでの二人のやりとりが本作では一番気に入っている部分です。彩葉というキャラクターがようやくそこで(作者の思惑を超えて)勝手に動き出して、作品として成立するという手応えを感じました。
――今後の予定について簡単に教えてください。
年内に『虚ろなるレガリア』の2巻を発売できればと思って、絶賛執筆中です。
――小説を書く時に、特にこだわっているところは?
オープンワールド感というか、世界の広がりみたいなものは常に意識しています。作中世界の一般人が普段どうやって生活しているのか、とか、主人公たちが食べてる料理の食材はどこから運ばれてきているのか、とか。
ほかの方の作品を読んでるときにも、そういう部分がついつい気になってしまって、モブキャラがぼっちではなく、物語の本筋とは無関係なところでちゃんと友達がいたりすると安心します。
――アイデアを出したり、集中力を高めたりするためにやっていることは?
形から入るタイプなので、執筆環境に気を遣ってます。立ったまま作業が出来るデスクとか、自作したいい感じのPC用キーボードとか。あとはちょっと高級なお気に入りの筆記用具でガシガシ落書きしていると、いいアイデアが閃くような気がします。
――現在注目している作家・作品は?
特定の作家さんではないのですが、ここ数年、ライトノベルの新作に面白い作品が多くて、ジャンル問わず手当たり次第に読んでます。あと昨年は電撃小説大賞の選考委員をやらせていただいていたので、一足先に有望な新人さんの作品を読むことができて幸せでした。
――その他に今熱中しているものはありますか?
最近増えてきたアーティストの配信ライブをよく見てます。あまりよく知らないアイドルなんかのライブも自宅で気軽に見られるので、いろんな発見があって楽しいです。
――最近熱中しているゲームはありますか?
最近はあまりゲームをやりこむ時間がないのですが、今ちょうど『探偵撲滅』を始めたところです。あと『ストライク・ザ・ブラッド』コラボでお世話になった『ダンまち メモリア・フレーゼ』と、『リングフィットアドベンチャー』はぼちぼち続けてます。
――それでは最後に、電撃オンライン読者へメッセージをお願いします。
久々の新シリーズということで緊張してますが、電撃文庫『虚ろなるレガリア』、楽しんでもらえたら嬉しいです。またOVA『ストライク・ザ・ブラッドⅣ』も、まもなく最新6巻が発売になりますので、こちらもよろしくお願いいたします。
あらすじ:少女は龍。少年は龍殺し。 日本人の死に絶えた世界で、二人は出会う!
その日、東京上空に現れた巨大な龍が、日本という国家の崩壊の始まりだった。
魍獣と呼ばれる怪物たちの出現と、世界各地で巻き起こった“大殺戮”によって日本人は死に絶え、日本全土は各国の軍隊と犯罪組織に占領された無法地帯と化してしまう。
ヤヒロは数少ない日本人の生き残り。龍の血を浴びたことで不死の肉体を手に入れた彼は、無人の廃墟となった東京から美術品を運び出す“回収屋”として孤独な日々を過ごしている。
そんなヤヒロを訪ねてきたのは美術商を名乗る双子の少女ジュリとロゼ。二人がヤヒロに依頼したのは、魍獣を従える能力を持つという謎の存在“クシナダ”の回収だった。
廃墟の街で出会った少年と少女が紡ぐ、新たなる龍と龍殺しの物語、堂々開幕!
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります
『虚ろなるレガリア Corpse Reviver』
- 発行:電撃文庫(KADOKAWA)
- 発売日:2021年6月10日
- ページ数:344ページ
- 定価:693円(税込)