第1回 ガンダムカンファレンスをレポート。アニメ、ゲーム、ガンプラが連動する新たな試みの詳細に迫る

まさん
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 2021年6月15日。バンダイナムコエンターテインメントによるメディア限定のオンラインカンファレンス“第1回 ガンダムカンファレンス”が開催されました。これは、『ガンダム』シリーズの事業戦略に関する最新情報をメディア向けに発表するという初めての試みです。本年度より事業拡大につながる施策として行われ、今後も定期的に開催される予定となっています(※第2回は9月または10月に開催予定)。

  • ▲カンファレンスを主催した、株式会社バンダイナムコエンターテインメント・CGO(チーフガンダムオフィサー)の藤原孝史(フジワラコウジ)氏。

 今回のカンファレンスは、株式会社バンダイナムコエンターテインメント・CGO(チーフガンダムオフィサー)藤原孝史氏による“グループ横断によるガンダム戦略強化”の詳細及び事業展開と、豪華ゲストによるトークセッションを交えた“ガンダム×サステナブル”の2部構成で進行。アニメやゲームの枠を超えて、人口問題や環境問題にまで広がるガンダムシリーズの幅広い展開が明らかとなりました。その模様をお届けします。

ガンダムブレイカーの新プロジェクトも判明した“ガンダム戦略強化”

 カンファレンスは、最初に“グループ横断によるガンダム戦略強化”の説明からスタート。これは、ガンダムの版権元である創通がグループ入りしたこと。グループ内のユニットを再編したことで“ガンダムプロジェクト(※)”を発足させて、プロジェクトを中心とした事業全体を強化していく戦略です。具体的には“G1:世界規模での話題創出戦略”“G2:国内活性化戦略”“G3:ターゲット別&MD連動型作品展開戦略”の3つの戦略に分けて、さまざまな施策や今後予定されているコンテンツの展開が語られました。

(※)ガンダムプロジェクトとは?
 バンダイナムコエンターテインメント常務取締役藤原孝史が務めるチーフガンダムオフィサーを主宰とし、バンダイナムコグループ全体でより効果的なガンダム戦略を立案・実行するためのグループ横断プロジェクト。“ガンダムプロジェクト”を中心として、ガンダムによるグループ事業強化と同時に、グループ外との連携も強化してグループ内リソースのイノベーションを図り、『機動戦士ガンダム』シリーズの IP 価値を向上させ、世界最大級のIP として成長させることに取り組んでいくことを目的としている。

G1:世界規模での話題創出戦略

 “世界規模での話題創出戦略”では、世界的なガンダムの知名度を上げて将来的に国内と国外の比率を50対50にすることと、普遍的なIP化が目標として掲げられました。そのための施策として挙げられた“ハリウッドの映画版ガンダム”からは、監督を務めるジョーダン=ボート・ロバーツのコメントが到着。

  • ▲現在、公開できるものとして自分が制作したガンプラを持ってくるというお茶目な一面を見せた監督。

 監督は「短いビデオメッセージのなかでは、どれ程感激に打ち震えているのかこの気持ちを伝えきれません」としながらも、自らがガンダムの1ファンとして作品に関われた喜びを語り、「富野監督の象徴的で独創的なビジョンに向き合いながらこの世界に命を吹き込むことが待ち遠しい」とファンに向けて熱いメッセージを送りました。

 そのほか、先日発表された劇場版を含む『ガンダムSEED』シリーズの一大プロジェクトから、世界中にフラグシップストアを展開する戦略など、アニメからゲーム、実店舗に至るまで現在行われている多彩な戦略を解説。お台場の立像から始まり、世界中で好評を博している“ガンダム実物大立像プロジェクト”も、すでに次のプロジェクトが動いていることが明らかとなりました。

G2:国内活性化戦略

 国内初となる都内以外の大型イベント“ガンダムdocks at FUKUOKA”を始め、リアルに触れられる機会を設けることでガンダムへのタッチポイントを増やしていく“国内活性化戦略”。ガンダム40周年で発表された“ガンダムマンホールプロジェクト”の進捗も述べられ、7月に小田原市へマンホールが寄贈されることを皮切りに、本格的な展開を行うフェイズに入るという説明がありました。

 さらにコアユーザーを活性化する施策として、以前行われていた“GUNDAM WORLD”がリニューアル。新たなイベントとして全国展開していくことが決定しました。その第1弾として“GUNDAM WORLD Contrast”が発表。これは『機動戦士ガンダム』と『機動戦士ガンダムSEED』との対比をテーマとした内容になるようです。今年の秋に大阪会場からイベントが始まり、全国に展開していく予定となっています。

G3:ターゲット別&MD連動型作品展開戦略

 3つ目の戦略は、エリアごとの戦略に即して映像展開とMD(マーチャンダイジング)展開を行っていく“ターゲット別&MD連動型作品展開戦略”。これは、日本、中国、北米で異なるターゲット層や、年齢などによって異なる層へ戦略的に作品を投入し、多角的に展開することで作品ごとのポテンシャルの最大化を図っていくという内容でした。


ゲーム、ガンプラ、アニメが同時に展開する『ガンダムブレイカー バトローグ』

 会場で明らかになった新たな試みとして、ガンプラを題材にしたアクションゲーム『ガンダムブレイカー』シリーズの最新プロジェクトが公開されました。“ガンダムブレイカー バトローグ プロジェクト”と名づけられたこのプロジェクトは、“デジタルとフィジカルの融合”を推進する企画の一つとして行われ、2021年夏より展開される予定の新プロジェクトとなっています。

 具体的には、ガンプラをモチーフにしたカスタマイズとアクションで人気を博し、コンシューマーおよびモバイルで展開中のゲーム『ガンダムブレイカー』シリーズと、ガンプラの連動をより強化するプロジェクトとなっています。また、プロジェクトオリジナルの機体がゲームとガンプラの双方で展開され、プロジェクトに合わせてガンプラ『HG ガンダムブレイカー バトローグシリーズ』が発売されます。

 これは、シリーズすべてに構造改修やジョイントパーツが付属することで、頭・胴体・腕・脚の各パーツを組み合わせられるようになっており、ゲームの『ガンダムブレイカー』のように自分だけのガンプラをカスタマイズしやすくなっているガンプラです。

 『HG ガンダムブレイカー バトローグシリーズ』の機体は、現在iOS/Androidで配信中のゲーム『ガンダムブレイカー モバイル』にも登場。ゲーム内でも実際のガンプラと同様のカスタマイズなどが楽しめます。

 なお、このプロジェクトオリジナルの機体は過去のガンダムシリーズ作品に登場した機体のガンプラを組み合わせ、さらに改造を施したイメージでデザインしたものや、オリジナルのカラーリングに変更したものとなっています。現時点では10種類の機体が発売される予定です。

  • ▲HG1/144 ガンダムヘリオス。2021年11月発売予定/2,530円(税10%込)

  • ▲HG1/144 ガンダムリヴランスヘブン。2021年11月発売予定/2,200円(税10%込)

  • ▲HG1/144 ガンダムパーフェクトストライクフリーダム。2021年12月発売予定/2,530円(税10%込)

  • ▲HG1/144 ブレイジングガンダム。2021年12月発売予定/2,200円(税10%込)

  • ▲HG1/144 ガンダムダブルオーコマンドクアンタ。2022年1月発売予定/2,200円(税10%込)

  • ▲HG1/144 ガンダムバルバタウロス。2022年1月発売予定/2,420円(税10%込)

  • ▲HG1/144 陸戦型ガンダム(市街地戦仕様)。プレミアムバンダイ/1,980円(税10%込)

  • ▲HG1/144 グフクリムゾンカスタム。プレミアムバンダイ/1,980円(税10%込)

  • ▲HG1/144 ガンダムアストレイレッドフレームインバージョン。プレミアムバンダイ/1,980円(税10%込)

  • ▲HG1/144 ウイングガンダムスカイゼロ。プレミアムバンダイ/1,870円(税10%込)

 なお、ゲームやガンプラに合わせてアニメ『ガンダムブレイカー バトローグ』も放映。これは、株式会社サンライズ制作によるプロジェクトオリジナルの機体が活躍する全6話のショートフィルムです。作中では、スマートフォン向けアプリゲーム『ガンダムブレイカーモバイル』とPS4/PS Vita用ソフト『ガンダムブレイカー3』のキャラクターたちが登場します。

『ガンダムブレイカー バトローグ』概要

<配信時期>
2021 年秋配信開始予定

<配信媒体>
ガンダム公式 YouTube チャンネル“ガンダムチャンネル”(国内)

GUNDAM.info(海外)

※スマートフォン向けアプリゲーム『ガンダムブレイカーモバイル』からも視聴可能予定

<スタッフ>
企画・製作:サンライズ
原作:矢立 肇・富野由悠季
監督:大張正己
メカニックデザイン:大河原邦男・海老川兼武・安藤孝太郎(スタジオ GS)・倉持キョーリュー・瀧川虚至・鷲尾直広

<公式サイト>
http://g-bb.net

ガンダムを通じて社会問題を考えるガンダム×サステナブルプロジェクト

 カンファレンスの後半では、バンダイナムコグループが策定するサステナビリティ方針の一環として、ガンダムを活用したサステナブルプロジェクト“GUNDAM UNIVERSAL CENTURYDEVELOPMENT ACTION(GUDA)”の始動と、人口問題や地球環境問題など、さまざまな社会的課題に対応する新しい発想や技術を募集する“ガンダムオープンイノベーション”の実施が決定しました。

 1979年放送の『機動戦士ガンダム』から40年以上に渡り、さまざまなシリーズを通じて人口問題や地球環境への警鐘を鳴らしてきたガンダムシリーズ。バンダイナムコグループでは人口問題や地球環境問題への取り組みがこれからの人類にとって価値のあるものと捉え、宇宙世紀を教訓としたガンダムを旗印に、より良い世界を目指して世界中のファンや外部パートナーと手を組み、未来の子どもたちのためにさまざまなアクションを実行していくと発表しました。

 それが、ガンダムを活用したサステナブルプロジェクト“GUNDAM UNIVERSAL CENTURYDEVELOPMENT ACTION(GUDA)”です。

 “GUDA”の第1弾として、2021年4月よりバンダイナムコホールディングス、BANDAI SPIRITS、バンダイナムコアミューズメント、バンダイロジパルの4社による共同プロジェクト“ガンプラリサイクルプロジェクト”がスタート。

 ガンプラを組み立てたあとに残るランナーを回収し、最先端技術のケミカルリサイクルによって新たなプラモデル製品へと生まれ変わらせて、ファンとともに持続可能(サステナブル)な社会の実現を目指していくことを目標としています。

 さらに、GUDAの第2弾として“ガンダムオープンイノベーション”を実施。これはバンダイナムコグループが2018年、2019年に実施した“従次のステージに向けたCHANGEにつながる事業アイデアを募集するプロジェクト“バンダイナムコアクセラレーター”を受け継ぎ、装いを新たにしたプロジェクトとなります。

 “ガンダムオープンイノベーション”とは現実世界において宇宙世紀を新たに捉えなおし、現実世界が抱える社会課題に対して『ガンダム』と“未来技術”を掛け合わせることにより、未来の夢と希望を現実化することを目的としたプログラム。自分たちが向き合っていくべき課題である人口問題、環境問題、宇宙進出などの未来社会につながるサステナブルなテーマや領域において、革新的なアイデアや技術などを幅広く募集する企画です。

 7月中旬に説明会及びエントリーの開始が予定されており、詳細は今後、公式サイトにて発表予定となっています。

 社会問題としても事業としても、アニメの枠を超えて真剣に取り組まれている本プロジェクト。カンファレンスのラストでは、このプロジェクトに対する専門家の意見を聞ける場として、特別ゲストによるトークセッションが設けられました。登壇したのは慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授の岸博幸氏。ピクシーダストテクノロジーズCEO・落合陽一氏。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授の蟹江憲史氏の3名。いずれも錚々(そうそう)たる顔ぶれによる豪華なトークセッションとなっていました。

  • ▲的確で視聴者の興味を引く質問を行い、スムーズに進行を務めていたMCの岸博幸(キシヒロユキ)氏。
  • ▲SDGsの専門家として、オープンイノベーションに対する意見を述べていた蟹江憲史(カニエノリチカ)氏。
  • ▲自らもガンダムファンであり、『逆襲のシャア』が好きだと公言する落合陽一(オチアイヨウイチ)氏。

 チーフガンダムオフィサーの藤原孝史氏を交えて行われたトークセッションでは、バンダイナムコグループが真剣に地球環境などを考えてサステナブルプロジェクトを行っていること。専門家や社内からも好意的に受け止められていることがわかりました。

 単純にアニメやゲームの新作発表ではなく、より大きな目的と目標を持った一大プロジェクトが語られた今回のガンダムカンファレンス。メディアとしても今までのガンダム発表会にはない新鮮かつ驚きに満ちたカンファレンスとなっていました。今後も定期的に行われ、次回は9月または10月に開催される予定とのこと。次はどのような発表があるのか個人的にも楽しみです。

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