『戦場のフーガ』プレイレポート。高い戦略性を求められるシミュレーションRPGで物語やキャラも魅力的

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 サイバーコネクトツーからダウンロード専用ソフトとして7月29日に配信される『戦場のフーガ』のプレイレポートをお届けします。

 本作は、サイバーコネクトツー設立25周年にして初パブリッシングタイトルとなるドラマティックシミュレーションRPG。“戦争×復讐×ケモノ”をテーマにした、濃厚なストーリーと高い戦略性が求められる作品です。

 同社が開発したPS『テイルコンチェルト』、ニンテンドーDS『Solatorobo それからCODAへ』で描かれてきた、イヌヒト、ネコヒトたちが生活する世界観“リトルテイルブロンクス”の最新プロジェクト。PS4/PS5/Switch/Steam/Xbox One/Xbox Series X|S/Epic Games Storeというマルチハードで展開されるところも特徴です。

 以下で、プレイして感じた『戦場のフーガ』の特徴や序盤のシステム、魅力をお届けします。

謎の巨大戦車“タラニス”と子どもたちの物語

 『戦場のフーガ』のストーリー概要を説明します。

 舞台となるのは“イヌヒト”と“ネコヒト”という2種類の種族が暮らす、大小さまざまな浮島からなる浮遊大陸。

 ある日突然、“ベルマン帝国”に襲撃され、主人公マルトが住む“プチ・モナ村”は一夜にして戦火に焼け落ち、村の大人はベルマン帝国軍に連れ去られてしまいます。

 ラジオから流れてきた女性の声に導かれ、山の洞窟へと逃げ込んだ残されたマルトや子どもたち。そこで謎の巨大戦車・タラニスを見つけます。


 子どもたちはタラニスに乗り込み、村のみんなを救うため、ベルマン軍に立ち向かうというストーリーになります。

 ストーリーは全12章で構成されており、各章ごとに村や街を訪れ、その地統べる軍を倒してベルマン帝国軍の情報を入手。その情報から新たな地へ向かい、連れ去られた村のみんなを探していくという流れになっており、出会いや別れ、子どもたちで戦争をするという苦悩、そして謎の巨大戦車・タラニスとは何なのかという謎が解けていく展開が用意されています。


各章の基本的な流れ

 進行ルートを進んでいき、そのマスに応じた“戦闘”や“回復”といったイベントをこなしていきます。

 さまざまなイベントがルート上に点在するので、どのルートで行くのか悩みどころ。

 進行ルートには分岐が存在し、“普通の道”、“安全な道”、“危険な道”があります。

 “安全な道”はその名の通り回復やアイテムを入手しやすく平和なルート。“危険な道”は敵の数が多いうえに、強力なタイプが現れます。

 敵を倒すと経験値を得られて仲間が成長するので、今後の展開を考えれば“危険な道”がいいと思いますが、回復が少ない道なので強敵を倒した次の戦闘で全滅してしまう……ということもありました。

 道を戻ることはできないので、「どの分岐を進むのが最適解なのか?」と、悩ましい選択を強いられます。

 進行ルートの最後にはボスが待ち受けており、ボスを撃破すると章クリア。次の地へと旅立ちます。

 1~11章までの各章をクリアするとエンドカードが表示されます! しかもさまざまな作家さんが描く豪華なイラストとなっており、それぞれの作家が思い描く世界観などを楽しめます。

高い戦略性が求められる戦闘システム!

 本作の戦闘システムには“タイムラインバトル”が採用されています。

 システムを簡単に説明すると、戦闘画面上に敵と味方の行動順が表示されており、スキルや特定のアクションは行動順に影響します。敵味方が交互に攻撃し合うターン制バトルと違い、行動順を考えながらコマンドを選ぶ必要があるのです。


 戦闘はタラニスに乗って戦う戦車バトルが展開。アタッカーとサポートといった2人一組のチームを3組、砲座に配置して戦います。

 アタッカーの武器は、攻撃力は低いが命中率が高く空を飛ぶ敵を狙いやすい“マシンガン”、攻撃力と命中率のバランスが取れた“グレネード”、命中率は低く行動順も遅くなってしまうが抜群の攻撃力を魅せる“キャノン”といった3種類。

 敵の弱点に対応した武器で攻撃すると、敵の行動順を遅らせられるのが最大の特徴!

 弱点攻撃を連続で当てることで、敵の攻撃順が来なくなり一方的に攻撃することができます。武器の属性効果やダメージは、タラニスではなくアタッカーに指定した子どもの能力によって決まるので、誰をアタッカーにするのかがポイントです。

 アタッカーとサポートには仲間の子どもたちを配置するのですが、それぞれ全体攻撃や状態異常、回復など個性的で多彩なスキルを持っています。

 状況に応じた武器やスキルの使い分けが勝利への近道! その使い分けに必要なシステムが、戦闘中にアタッカーとサポートの構成を変更できる“戦術モード”です。

  • ▲画像の右側がアタッカー、左側がサポートキャラ。

 “戦術モード”を駆使すると、弱点攻撃で敵の行動を遅らせたあとに、回復スキルを持っている仲間に変更して態勢を整えたり、攻撃スキルが強い仲間をアタッカーに変更して戦闘を押し切ったりと、戦闘中に戦略を変更できます。

 ただし、一度変更すると“戦術モード”を3ターン使えなくなるので、先を見据えた使い方が重要です。

 サポートとアタッカーで2人一組と上述しましたが、この組み合わせによって攻撃力があがったり、行動力が早くなったりとさまざまなサポート効果を得られます。

 総勢12人の子どもが仲間になるので、組み合わせは相当数あり、戦術モードで適した組み合わせを考えるのが、楽しくもあり、難しくもあります。

 なお、仲間が増えるとリザーブ枠が使用可能になります。


戦車内の施設を体感できる“インターミッション”

 子どもたちは巨大戦車・タラニスの中で生活しながら旅をしています。そんな戦車内の生活を体感できる“インターミッション”というシステムがあるのですが、このシステムがかなりおもしろいです。

 “インターミッション”では、行動する子どもを選択し、仲間たちと会話をして親愛度を高めたり、食堂・工房・寝台・農園といった施設を利用して、戦車や仲間のステータス強化を行ったりが可能。

 以下でインターミッションでは何ができるのかを、紹介していきます。

戦闘中のバフ効果が得られる“食堂”

 “食堂”では食材を使用して料理と食事が行えます。作る料理によって、戦闘中にクリティカル率アップ、攻撃力アップ、戦闘終了時に得られる経験値アップなど、さまざまなバフ効果が得られます。

 食材は、タラニス内にある農園で栽培や育成ができるのがおもしろいところ! 他にも訪れた村や街の人からもらえることがあります。

食事をするなら“農園”で食材を調達

 “農園”では食堂で使用する食材の野菜の栽培や家畜の育成を行えます。上述通り、農園で育てた野菜や家畜を使用して料理を作るので、作りたい料理を考えながら育てる必要があります。

 筆者は料理と必要食材をメモりながらプレイしていたため、手元にオリジナルレシピ本が存在していました(笑)。

タラニスの改造ならば“工房”

 “工房”ではタラニスの武器や装甲などを強化できます。

 武器を強化すれば攻撃力が、装甲を強化すればHPが、リアクターを強化すればスキルポイントがアップするので積極的に強化していきたいです。

 改造するには素材が必要。その素材は進行ルート中に落ちていたり、インターミッション内の“砂釣り”で入手できたりします。

素材集めならば“砂釣り”

 “砂釣り”では、上述した“工房”で使う素材を釣りにて入手できます。素材はタラニス内の施設を拡張する際にも必要なので、結構枯渇します。

 ちなみに施設を拡張すると、工房ならレベルの上限が、食堂なら作れる料理の種類が増えるため、施設強化はゲームの攻略にかかせません。

ケガや戦闘不能を回復させる“寝台”

 “寝台”では、戦闘中にケガをしたり、戦闘不能になってしまったりした子どもたちを回復できます。

 しかも寝台で休息させると経験値を入手できるので、ケガなどをしてなくても休ませるメリットがあるのが悩ましいところ。

 ちなみに、施設強化すると寝台のベッド数が増えたり、もらえる経験値が増えたりします。終盤に向かって戦闘が激戦化してくると、ケガや戦闘不能になってしまう子どもが増えてくるので、こちらの施設も強化が必須だと感じました。

遺跡での宝探しが可能な“観測室”

 “観測室”では、章の環境や状況などの情報を把握できる“観測”と、子どもたちを派遣して遺跡で宝探しをする“探索”を行えます。

 “探索”は遺跡内でアイテムを集めたり、罠や敵と戦いながらゴールであるカギと宝箱を目指したりするという内容。本作では珍しい2Dアクションモードになっているので、新鮮で楽しいです。

 “遺跡”は少し迷路っぽくなっているのですが、そこまで複雑ではないので、本編で使った脳を休ませるのに丁度いいモードです。

たまった洗濯物を洗う“洗濯所”

 “洗濯所”では生活していてたまった洗濯物を洗います。2人一緒に洗濯することで連帯感が増し、親愛度が大きく上昇します。

 ただし、1度行うと洗濯物がなくなってしまうため、インターミッション中に1度しか行えません。誰と誰の親愛度を上げるかかなり悩みます……。

子どもたちのコミュニケーションで上がる“親愛度”

 ここまで施設の使い方を説明してきましたが、施設以外にもタラニス内では、子ども同士で会話などのコミュニケーションを取ることができます。

 コミュニケーションを取ることで親愛度を上げることができ、親愛度が上がると命中率や通常攻撃でHPが回復するといったサポート効果がアップします。

 “仲よしチャンス”が発生すると親愛度を大幅にアップさせるチャンス! 質問に適切な回答ができれば親愛度が大幅にアップします。うまく答えられないとちょっとしかアップしないので、悩むほど真剣に考えましたね。


協力必殺技が使用可能になる“絆イベント”

 親愛度が上がった子ども同士で会話をすると“絆イベント”が発生。絆イベントでは発生したキャラ同士の特別な会話を見ることができるだけでなく、子ども同士の友情が深まり戦闘で“協力必殺技”が使用可能になるのです。


 協力必殺技も重要ですが、イベントで見られる子ども同士の会話が本当にいい! ストーリーに関する重要な会話というより、「文字の書き方を学びたい」や「村に戻ったら何がしたい?」といった、なんでもないような会話を聞けて、キャラへの思い入れが格段に上がります。

 子どもの組み合わせによってさまざまな“協力必殺技”が存在します。自分が好きなコンビの親愛度を高めてもいいですし、強そうな協力必殺技を見つけて、そのコンビの親愛度を上げるのもありです。

“みんなの連絡ノート”と“絶好調”と“ヒーロー状態”

 インターミッション中には“みんなの連絡ノート”を閲覧できます。この連絡ノートには「昼寝したい」、「誰かと話したい」といった子どもたちの願いが記載されています。

 願いを叶えてあげると、その子どもは絶好調になります。

 絶好調になると、戦闘時のテンションが徐々に上がっていき、テンションが最大になると“ヒーロー状態”に! ヒーロー状態になると、その子ども固有の特殊状態が5ターン続くため、戦闘がかなり有利になります。

 子どもの絶好調状態は次のインターミッションまで継続するため、戦闘で使いたい子どもはなるべく絶好調にしておきたいです。

戦略は戦車内から始まっている!?

 インターミッション中にできることを説明しましたが、おもしろくもあり、悩ましくもある部分を説明したいと思います。

 インターミッション中に会話したり、施設を利用したり、施設を強化したりするとAP(アクションポイント)を消費。具体的には、会話なら1AP、料理だったら3AP、休息なら5APといった感じです。

 APは20しかなく、休息して、3つの料理を作って、6人と会話するとインターミッション内での行動が終わってしまうので、誰の親愛度を重点的に育てるのか!? どの施設から強化していくのか!? そして誰を絶好調にすればいいのか!? こういった部分を計画的に考える必要があります。

 加えて、インターミッションはいつでもできるシステムではなく、進行ルートに存在しており、章の中で3回ぐらいしか行うことができない貴重で重要な要素です。それもあり、先を見据えた計画を立てながらインターミッション中の行動を決めないと後々後悔することも……。

 「インターミッションを制するものが『戦場のフーガ』を制する!」と言っても過言ではないぐらい重要な要素になっていると感じました。

 ちなみに、戦闘に敗北してしまうと、この世界を取り巻く謎の力によって一番最後のインターミッションまで時間が戻されます。

 インターミッションの後か前かを選べるため、インターミッションの行動をすべて見直したいという場合にも、戦闘中にコマンドをミスしてしまったから戦闘をやり直したいという場合にも、助かるコンテニューポイントになっています。

 戦闘中の展開はもちろん、戦闘前から流れを予想していく、戦略性が高いシミュレーションRPGと言えるのではないでしょうか。

大きな代償から繰り出される強力な兵器“ソウルキャノン”

 各章の最後はボスと戦うことになるのですが、序盤からかなり強いです!

 序盤だからと舐めてプレイしていると、筆者みたいに2章でボス戦敗北→インターミッションへと戻り最適解を求めて親愛度など上げ直すことになります(笑)。

 シミュレーションRPGが苦手という人もいると思いますが、タラニスには最終兵器“ソウルキャノン”が備えられています。

 この兵器はタラニスのHPが減って、子どもたちがピンチになると発動できる兵器ですが、その威力はボスを一発で倒すほど! 多数の敵がいた場合、一掃するくらい強力です。


 ソウルキャノンさえ使えればクリアは容易ですが、使用した時の代償がとにかく大きいのが難点。ソウルキャノンの使用に必要なエネルギーは……子ども1人分です。


 そうです、仲間の子どもを1人犠牲にして兵器を使用するわけです。

 しかも兵器使用時には、犠牲になった子ども視点のドラマパートが挟まれるのでプレイヤーの精神値(いわゆるSAN値)がガッツリ削られます。「なんでこんな兵器を用意するんだ!?」と思いましたね。


 子どもとプレイヤーの心のシンクロ率が上がる終盤に、ソウルキャノンに頼らないといけないストーリー展開があるのは、ソウルキャノンがあって悩む要素だからこその流れだと感じました。

 SAN値は大きく削られますが、簡単に敵を一掃できる“お助け兵器”という側面もあるため、戦闘に詰まったがどうしても進みたいという人は、泣きながら使ってみることも検討してみては……。

個性的なキャラ設定や濃厚なストーリーがたまらない!

 登場する子どもやタラニスのビジュアルもいいのですが、敵として出てくるイヌヒト、ネコヒトのビジュアルもかなり個性的でカッコいいです。そのため、敵として次はどんなイヌヒト、ネコヒトが出てくるのかを楽しみにしつつプレイしていました。


 各ボスは、各々の信念を持った個性的なキャラクターになっています。本編では描かれていない過去にはどんなことをしていたのか? なぜこのような思想になったのか? などなど設定が気になるところも、個人的にとてもいい部分でしたね。

 戦争に巻き込まれる子どもが現実を受け入れ、苦しみながらも前へ前へと進んでいく1章、2章の様子には、序盤からグッと心を掴まれます。

 ラジオから流れてきた謎の女性の声ですが、タラニス搭乗後も励ましてくれたり、不安を煽るような言い方で鼓舞をしたりと、子どもらを先導してくれます。どうやら、タラニスのことに詳しいようです。

 タラニスの謎と女性の謎が並行して進むのですが、序盤から謎がどんどん増えていきます。


 しかし、中盤から後半にかけて、謎がどんどん解かれていき、ジェットコースターのように展開が進んでいきます。序盤から終盤までずっと濃厚なストーリーを堪能できましたね。


 ストーリーを盛り上げる会話中のスチルはかなりカッコいいです。キャラの立ち絵だけで進む会話劇と比べて、会話に抑揚が生まれて臨場感が増しています。ぜひプレイして感じてもらいたい部分です。



伝えきれないシステムとおもしろさが詰まったタイトル

 戦闘中のシステムやインターミッション中のシステムは、複雑かつやりごたえがあり、記事で伝えきれないほどの魅力がある作品だと感じました。

 戦略性要素が高いシステムや濃厚なストーリー展開、魅せるビジュアルなど、総合的に深く作り込まれたドラマティックシミュレーションRPGになっており、サイバーコネクトツー設立25周年にして初パブリッシングタイトルという気合をヒシヒシと感じるタイトルです。

 想像した以上の戦略性、ストーリー、おもしろさ、そして“つらさ”を体験できるので、『戦場のフーガ』をプレイしてみてください!

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