SIE盛田プレジデントが振り返るPlayStationの25年間。初代PlayStationは目標でありライバル【ぜんため】
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- 電撃PlayStation
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8月3日、4日と岐阜県岐阜市で開催されていた“第3回全国エンタメまつり(ぜんため)”。
会場に用意されたステージでは、“もうすぐPlayStation25周年! SIEの盛田プレジデントに聞いちゃうPlayStationの今だから言える話!”と題したトークセッションが開催。ソニー・インタラクティブエンタテインメント ジャパンアジアリージョンオフィスプレジデントの盛田 厚氏をお呼びし、さまざまなテーマを語っていただきました。
なお、司会・聞き手を務めたのはファミ通.com編集長・世界三大三代川(三代川正)氏と、電撃ゲームメディア編集部ディレクター・西岡美道。ここではそのステージの模様をお伝えしていきます。
盛田さんが思い出深いPlayStationハードをすべて教えてください
最初のトークテーマは“思い出深いPlayStationハード”。盛田氏はどれか1つを選ぶのは難しいと言いつつも、「最初に言わなければならないのは、初代PlayStation」と語ります。はじめて行列を見た時の感動はもちろん今でも覚えており、世の中に相当のインパクトを与えたという自負もあるそう。「初代PlayStationは、わたし達にとって道標・目標であり、ある意味ライバルでもある」と語りました。
続けて、思い出深いものとして挙げたのが、PlayStation4。「常に進化し続けようとして事業に取り組み、今が一番素晴らしいものとして考えている」といったことを理由とし、「日本を託された時に考えた“想い”などとともに、印象に残ったハード」と回答しました。
盛田氏はさらに「PS4はどうやったらユーザーの皆さんが楽しめるか、クリエイターがつくりやすいか、そういう事を考えた末に出たハード。シェア配信の機能も試行錯誤の中で生まれたので、受け入れられたことはとてもうれしいです」と続けました。
盛田さんが思い出深いSIEのゲーム、PlayStationのゲームはなんですか?
「吉田修平氏をはじめ、様々な方にいろいろ言われてしまうので……」と、苦笑い混じりに盛田氏が最初に挙げたのは『Minecraft(マインクラフト)』。初週の売上本数が大きなウエイトを持つゲーム市場において、本作は異色の存在となったといいます。
『マインクラフト』は小学館と共同で取り組みを行ったり、地方でのリアルイベントを行ったりと、地道にプロモーションを重ねた結果、PS Vitaのハード売上も牽引しながらロングセラーで売れ続けていったそう。
「子どもたちが久しぶりにソニーブランドのデバイスに触れてくれた、ということがとても嬉しかったですし、価値を感じています。本作を手掛けたことは、わたし達にとって大きな経験になりましたし、自信にもなりました。ロングテールで売れるタイトルを扱うことで、時代の変わり目をも感じることができました」と語りました。
また、自社ブランドのソフトとして挙げたのは『Marvel's Spider-Man(スパイダーマン)』。「こういったタイトルは日本では受け入れられにくいのではないか、とこれまで言われていましたが、実際は予想を大きく上回る素晴らしいセールスになりました」とのことです。
「新しいユーザーが増えてきているんだ、ということをすごく実感しました。ソニー・ピクチャーズとともに、ひとつのIPをソニー全体で育てていく、というのも画期的だったと思います。ゴンじろーもこのように育てていきたいですね」と、思い出語りの締めにゴンじろーのこともしっかりアピール。
また、PlayStationフォーマットすべてを見渡したうえでの思い出深いゲームについては『ドラゴンクエスト』シリーズと回答。「初代『ドラゴンクエスト』は初代PlayStationの発売以前に発売されていましたが……」と語りつつ、それでも盛田氏のはじめての本格的なゲーム体験として『ドラゴンクエスト』が非常に印象に残っているのが、選んだ理由。「『ドラゴンクエスト』シリーズがPlayStation4に登場したときは涙が出るほど嬉しかったですね」と続けました。
このほか盛田氏は『ダンガンロンパ』シリーズにも言及。盛田氏にとって『ダンガンロンパ』は自らクリアした、とても印象深いゲームとのこと。「ジャパンアジアを担当してすぐのときに、舞台に呼んでいただいたんです。会場には多くのお客さんが足を運んでおられて、グッズ売り場も大変盛況でした。IPを盛り上げるにはこういうやり方もあるし、やっていかないといけないんだな、ということを考えさせられたタイトルでした」と語りました。
「去年のTGSなどを見ていても、PlayStationファンが来ていただいている、というだけでなく、『モンスターハンター:ワールド』や『Fortnite(フォートナイト)』など、そのタイトルのファンの方にも来ていただいています。だんだんそういう流れになってきていると感じています」と、現在のゲーム市場について、自らの意見を述べました。
今だから言えるSIE、PlayStationのエピソード、盛田さん個人のエピソードをぜひ聞かせてください!
「今まで言えなかったことは、やっぱり今でも言えません(笑)」と笑う盛田氏は、意外なエピソードを吐露します。PlayStation4が出てすぐのタイミングで、当時SCE(現SIE)の経営管理を担当していた盛田氏は、全体会議が終わり懇親会の会場へ徒歩で向かっているときに、アンドリュー・ハウス氏からなんと「ジャパン・アジアを担当してほしい」と言われたそうです。
“歩きながら”という状況から、その時の盛田氏はアンドリュー氏が冗談を言っているのだと思ってしまったそうです。その後、アンドリュー氏がわざわざ海外の出張先から電話で「あの事、考えてくれたか?」と言われ、驚いたのだとか。「当時の日本は、他の地域よりもPlayStationの発売が遅れていた時期だったので、大きなプレッシャーを感じながら引き受けたことをよく覚えています」と語りました。
また、盛田氏の着任日は、じつはカンファレンス当日だったそう。カンファレンスのおよそ3日前ぐらいの全体リハーサルでは、話し方や内容についてのフィードバックがもらえるのかと思っていたら「もう少し立ち姿をこうしましょう」と言われ「えっ、そこから? もう3日しかないのに?」……と、ここでも驚いたそう。
盛田氏はカンファレンスについて、自分の言葉で話したほうが、ちゃんと皆さんに伝わると思っています、と続けました。一方で本番直前は相当に緊張するそうで、このまま逃げちゃったらどうなるかな? 控室の鍵をかけてみようかな? と、思ってしまうこともあったのだとか。
このほか印象深いこととしては、アメリカのヘッドクオーターになって、海外出張が非常に増えた時期に、帰国してすぐに疲労が蓄積し、ひどい腹痛と下痢に襲われたそう。しかも翌日は、とあるイベントの挨拶をしなければならず、急遽代理を頼むわけにも、欠席するわけにもいかない状況。
そこで盛田氏は、なにかが起こったときのためにオムツを履いたそう。その間は飲まず食わず、医者もなにか言われたら大変なので、そのまま会場に向かったとのことです。ちなみに、挨拶をしているときは何もなかったのだそうですが、帰宅する段になってまた調子が悪くなってしまったとのこと。トップとしての気構えを感じるエピソードを披露しました。
ちょっと真面目に、PlayStationの未来像を教えてください
「PlayStationの全体像は社長のジム・ライアンが語ることだと思うので、個人的な見解になりますが、初代PlayStationからずっと“みんなのPlayStation”を目指しています」と盛田氏は答えました。「今、たくさんの人にPlayStationを遊んでいただいていますが、これを一家に1台というふうに考えています。もっと先の未来に目線を向けると、PlayStationは、ハードウェアではなくサービスになっているかもしれません。“1人に1台、PlayStationというサービス”ということを目指しています」
「ゲームの楽しさを深堀りし、今ゲームをやってない人に対してもゲームのおもしろさをアピールしていきたいですね。PlayStationを“すべてのエンターテイメントを楽しめるプラットフォーム”とし、PS VRのように新しい体験を提供する、想像したこともない世界を伝え続けるPlayStationでありたいです」と締めました。
SIEに来る前に、盛田さんがしていたことを教えてください!
盛田氏は「ソニーという会社は入社して以来、転職しなくてもいろいろなことを経験させてくれました」と語ります。最初は国内で、コンパクトディスクプレイヤーの営業を担当。次に、MSXフォーマットの営業を担当し、『ドラゴンクエスト』に出会ったそう。次に、イギリスやサンディエゴに赴任し、イギリスから日本に戻ってくるときに経営管理になったとのことです。
盛田氏は「経営管理は事業責任者に対する参謀だと思っていますが、自分の担当する事業をよくするために、さまざまな事を指摘しました。そして、いままでは売るということに力を注いでいましたが、全体の経営やな数字面が見られるようになったんです」と語ります。
盛田氏は経営管理の仕事をしているなかで、SCE(現SIE)も担当しており、そこからSCEに行くことになり、そしてPlayStationにたどりついたそうです。
2019年、これから先のPlayStationの予定を教えてください!
こちらについても盛田氏の個人的な意見とのことですが、「これからたくさんのタイトルが出てきます。『モンスターハンターワールド:アイスボーン』『DEATH STRANDING(デス・ストランディング)』のような大型タイトルからユニークなタイトルまで、たくさんのタイトルが出てきます。まずは自分の好みのタイトルや自分のやりたい遊び方をしていただいて、自分の友だちにも伝えていただき“楽しみ”をどんどん広げていって欲しいです。」と語りました。
そして「そのためのタイトルをサポートしていく、受け口としてのプラットフォームとしてのPlayStationとして今年は頑張っていきます。TGSも楽しみにしていてください」とTGSの意気込みを述べ、トークショウは幕を閉じました。
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