『ただの地方公務員だったのに、転属先は異世界でした。』石黒敦久先生が公務員を題材にしたきっかけは?

電撃オンライン
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 電撃文庫で活躍する作家陣のメールインタビューをお届けする“Spot the 電撃文庫”。今回は、『ただの地方公務員だったのに、転属先は異世界でした。 ~転生でお困りの際は、お気軽にご相談くださいね!~』を執筆した石黒敦久先生のインタビューを掲載します。

  • ▲本作の表紙イラスト(イラスト:TEDDY先生)

 本作は、市役所で働く真面目な地方公務員“吉田公平”が、異世界に異動して転生者向けに業務をこなしていく、異色のファンタジーです。

 石黒敦久先生の最新作は、常識の通じない世界に戸惑う堅物公務員を愉快に描く奇想天外ファンタジー! そんな本作の誕生秘話をお伺いしました。

――この作品を書いたキッカケを教えてください。

 病院や警察、図書館や役所といった、ちゃんとしている場所に行くのが昔から好きでした。私はあまりちゃんとしていないのでそういった場所に行くと、これだけちゃんとしている人たちがちゃんとやっているなら私がちゃんとしていなくても安心だな、と思えるからなんですが……しかしある日、番号札をとって順番を待っていたところ「……この人たちが異世界でちゃんとしたらどうなるんだろう?」と疑問になって、この作品になりました。

――作品の特徴やセールスポイントを教えてください。

 ざまぁを目論む追放戦士に失業手当、奴隷に身を落とした四十代美少年転生者の職業安定、商人チートの元壁サークルなエルフ女性から徴税、アメリカ、メキシコの異世界公務員と協業してゴーレム開発、そして各国政府と国連の思惑……異世界の常識とぶつかる公務員の常識をお楽しみください。

――作品を書くうえで悩んだところは?

 信じるモノは憲法という、オタク知識ゼロの堅物公務員な主人公、公平と、アニメの切り替わりで季節の移り変わりを感じる自分に、あまりにも重なるところが見つからず、書けるわきゃねえ、と諦めかけました。が、人が作った作り事を信じている、という点においては私も公平も変わらないはず、と気付いてからは楽に書けるようになりました。

――執筆にかかった期間はどれくらいですか?

 編集氏に意気揚々と「これから初稿に入ります!」と言ったのが2019年の12月18日。そこから考えると一年半ぐらい、ということになります。長々と私に付き合わされた編集氏にはまったくもって頭が上がりません。

――執筆中のエピソードはありますか?

 新型コロナの影響で投稿時代からの執筆場所である図書館が使えなくなり困り果てていたところ、近所に長居できる喫茶店を見つけました。ですがそこはコーヒーがおいしくて、壁にはボブ・ディランのポスターがあって、BGMはレコードでかけるジャズがメインという、あまりにも文豪が愛しそうな喫茶店。居心地がいいやら悪いやらで結局、駅前チェーンの普通の喫茶店で書くことにしました。

――本作の主人公やヒロインについて、生まれた経緯や思うところをお聞かせください。

 執筆中、以前から大ファンだった「水中、それは苦しい」というバンドから「保育園落ちた、吉田死ね」という大名曲が発表され、あまりにもぴったり過ぎて勝手に主人公のテーマソングにしています。この曲が収録されているアルバムに「さよならのバズーカ」という曲がありこちらも超名曲なので、いつか公平にもバズーカを持ってほしいです。

――特にお気に入りのシーンはどこですか?

 やはりアメリカの異世界公務員、アビーと公平の会話シーンでしょうか。メキシコの異世界公務員、ラロとアビーが同じトーンの会話をかわす予定があったんですが、本筋と関係がなさ過ぎて没になりました。こういう会話シーンは延々読んでいたいし、書いてしまいます。

――今後の予定について簡単に教えてください。

 今回のSteamサマーセールでまたゲームを買ったとしても、もうすでに百本近くゲームを積んでいるんだからやめておこう、と思うが結局また買うっていうかもう買っちゃったいやでも今回は二万円ぐらいしか……二万円ってちょっと少なくない? せっかくセールなんだからもっと買っておいた方が……いやだから積みゲーが腐るほどあるんだから……。

――小説を書く時に、特にこだわっているところは?

 私はよく、工事現場を見た主人公に「工事中か……」なんて言わせてしまいがちです。

 が、冷静に考えると現実でこんなこと言う奴いません。こういうのは御都合主義なので極力避けて、普段の生活の中にある、普段の言葉で小説を書いていきたいと考えています。

 が、最近、実際の生活の中で自分が工事現場を見たときに「工事中か……」と呟くようにすればいいってことになるし、そういえば知り合いに普通にそう呟くやつもいたな、と気付きました。何事もバランスですね。

――アイデアを出したり、集中力を高めたりするためにやっていることは?

 数値に換算して比較できないものはあまり信用していないので、集中力、という言葉は気にしないようにしています。しかし自分の怠惰さについては絶対の信頼を置いていますので、原稿を書く以外はなにもできない場所に行く、そこで何バイト書けたかをはかる、という、自分を置く環境を操作して、それを数値で計測する方向性で模索しています。書く内容にもよりますが、大体一日10~20kbでしょうか。

 アイディアについては、現在進行形で悩んでいます。よく言うように、自分の中にはもうアイディアがないと思ってからこそが、まったく新しいアイディアの産まれるときなんでしょうが……そんな状況には追い込まれたくないよなぁ、と、常々思うんですが……みなさんどうしてるんでしょう。

――学生時代に影響を受けた人物・作品は?

 生涯で先生と呼ぶのはスティーブン・キング、教授と呼ぶのはJ.R.R.トールキンだけにしよう、と真顔で思ったぐらい、二者には影響を受けています。それから古橋秀之さんのケイオスヘキサ三部作は、五十回以上読み返しました。もしあんな本を自分が書けたらたぶん、次の日死んでもそこまで文句は言わないと思います。あとは侍魂以前のテキストサイト群に、そしてスタパ齋藤さん! 音速で暴走する巨大天ぷらを積んだ軽トラックのような謎の疾走感に満ち満ちた文体は、シビれるぐらい憧れです。

――今現在注目している作家・作品は?

 宮川サトシ、後藤慶介、DCCOMICS「ワンオペJOKER」!。

 自分はアメコミファンですがMARVEL専門でDCは門外漢、しかしそれでも、赤ん坊になってしまったバットマンを、ゴッサムという修羅の街で、ワンオペで育てるジョーカーの姿には爆笑しながらも感動が抑えられません!

 あと電撃オンラインで無事最終回を迎えた「O村の漫画野郎」はなにかしらの形で書籍にしてほしいです。マジでお願いします電撃オンラインさん……!

――その他に今熱中しているものはありますか?

 元々アメリカのポップカルチャーが好きだったのですが、最近になって、カードゲームの祖マジック:ザ・ギャザリング、FPSの祖DOOM、そしてFatalityを不完全ながらもご家庭に解き放った家庭用Mortal Kombat、これら三つが、同じく1993年登場であると知りました。一体全体これは、ひょっとして……と、陰謀論めいたバックストーリーと、もしこの時代に自分がアメリカのティーンエイジャーだったらどうなったかを考えるのにハマっています。

――最近熱中しているゲームはありますか?

 シヴィライゼーションの中でもシムシティをやるのが楽しい、と思うタイプなので、敵のAIがガンガン攻めてくるタイプのシミュレーションゲームにはハマれませんでした。いややるゲームを間違えてるよバニッシュドかシティーズ:スカイラインをやれよ、という話ですが(実際どれも超名作でしたが)……RTSの美麗なグラフィックは、私にはどう考えても、このゲームでシムシティをやったら楽しいよって言ってるようにしか思えないんですよ! しかしThey Are Billionsは襲ってくるのは敵国ではなくゾンビ、という点で、今まで思わされていた「人がせっかく丹精込めて一マス一マスのずれを気にしながら建てた街を、なんで壊されなきゃいけねえんだよ!」という不満も「いやゾンビだから仕方ないよ」「そうか、ゾンビだものな」「うん、ゾンビだし」と諦められ、今更ですが非常にハマっています。

――それでは最後に、電撃オンライン読者へメッセージをお願いします。

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