AIが恐怖を学習。復活NGのシビアさ。ホラーゲーム好きに刺さりまくる『ソング オブ ホラー』を高評価

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 DMM GAMESから2021年8月26日に発売される、三人称始点サバイバルホラーアドベンチャー『ソング オブ ホラー』のプレイレビューをお届けします。

探索のベースは脱出ゲーム

 物語の舞台は1998年。ある作家と突如連絡を取れなくなった編集者が、作家の自宅に部下を派遣しました。

 しかし、作家を探しに向かった部下もまた行方不明になってしまいます。

 この不可解な状況が発端となり、プレイヤーは屋敷や精神病院など、さまざまな場所を探索することとなります。
 
 建物の内外を探索してヒントやアイテムを見つけて、さまざまなギミックを解いていくのが基本の流れ。脱出ゲームにも近い印象がありました。

 複数の日用品を組み合わせてギミックを解く道具を作り出す、という脱出ゲームでは定番のシチュエーションも用意されています。

 調べなければいけないという脱出ゲームと、見ると怖い思いをするかもしれないというホラーゲームの相性はよく、常に一定の緊張感を持ってプレイすることができました。

 探索できるポイントは豊富に用意されており、なかにはヒントやギミックのないものも。ですが、そういった“ハズレ”のポイントでも、登場人物が調べたものに対する印象などのモノローグを語ってくれます。

 このモノローグを見ていくと、登場人物の人となりや物語上では語られない過去の出来事などがそれとなくわかる仕組み。

 とはいえ、モノローグをすべてチェックしなければ行き詰まる、といったような堅苦しいシステムではありません。モノローグはあくまで、本作をより深く楽しむためのフレーバーという位置づけですね。

わずかな光とわずかな音が恐怖をあおる

 探索の大きな特徴となるのが、カメラが固定されていること。

 三人称視点ですが、カメラを回して先を覗くということができない点が恐怖をあおるための仕掛けとして活用されています。

 画面手前側に移動する最中に一瞬だけ、画面奥(キャラクターの背後)に幽霊のようなものが見えたり、遠くの方でいないはずの子どもが廊下を駆け抜けていったりと、カメラが固定されていることを利用した仕掛けも十分。

 意図的に周囲の状況がわかりにくいカメラワークになっている場所もあり、とくに初めて訪れた場所の探索は慎重になります。

 しかも、キャラクターは明かりを持っているのですが、懐中電灯であれ蝋燭であれいずれも頼りないものばかり。照らした方向は明るくなるものの、その周囲は暗いままです。

 この明かりを向けるとそれなりに見えるという状況が、なんとも怖い。明かりを向けたらなにかが見えてしまうのでは? という感覚が常につきまとってしまいますね。

 しかも影の描写がしっかりしており、明かりをつけたまま動くと明かりの向きに応じて影が伸び縮みするため、なにかが動いたような……それとも影? となにもいないのになにかがいるような錯覚さえ覚えます。

 それとなく見える、探索を進めるためには明かりを向けてじっくり見なければいけない、そして明かりを向けるとなにかが見えてしまうかもしれない。こういった葛藤が生まれるのも、脱出ゲームとホラーゲームの相性の良さでしょう。

 また、ゲーム中のBGMは目立たず、メインとなるのは環境音です。遠くで扉が閉まる音、なにかをささやく声のような音、床がきしむ音と、探索中にはさまざまな音が聞こえてきます。

 ですが、誰もいないんですよ。主人公以外には。

 扉が閉まるはずがない、声が聞こえるはずもない、ですが耳には確かに聞こえてくる。そのため、次の瞬間になにかが起きてしまうかもしれない、という嫌な感覚が常にまとわりつくようでした。

 オバケ屋敷で、次にいつ驚かされるかわからないためになにもない場所を歩くのも怖いという感覚が近いですね。

 また、ほぼ常時なにかしらの音がしているため、音で心の準備をすることができないのも恐怖をあおるポイント。まったく音がしなければ音がすること自体に警戒できるのですが、常に音がしているために怖いながらも警戒することができません。

 当然、そういったなんでもない環境音に混じって唐突にこちらを怖がらせる本命の音の演出もあり、なかなかに心臓に悪いです。木を隠すなら森に隠せという言葉を、音を使って恐怖演出に活用している印象を受けました。

パーマデスがホラーらしい後味の悪さを生む

 もちろんなにもない場所を探索して怯えているわけではなく、建物にはさまざまな異形の存在が出現します。触手とも手ともつかない影や、人の形をしているけれども明らかに人ではないものなど、その種類はさまざま。

 異形の存在は、閉まっている扉を開けて出てこようとしたり、急に迫ってきたりといくつかの方法で出現。

 異形の存在に対しては扉から出てきそうになったら力づくで閉める、迫ってくるようならクローゼットに隠れるといったように、出現の仕方によって異なる対処法が用意。また、扉に聞き耳を立てて扉の向こうに異形の存在がいるかどうかを事前に確認するということもできます。

 

 対処手段にはタイミングよくボタンを押すなどのQTEのようなものもあるのですが、ルールは解説されるものの、自分がどれだけタイミングよくボタンを押せているかなどの“QTEの進捗状況”がまったく示されないのでとにかく焦ります。

 しかも、異形の存在が出現するタイミングはいくつかのイベント的なものを除いてランダム。近くに隠れる場所がないときに急に出現したりすると、今一番近いクローゼットは? そこまで走ったとして間に合う? とビクビク。

 プレイスタイルをAIが判断して出現の仕方を選んでいるとのことで、プレイしている最中も「えっ、ここで!?」、「今だけはダメ!」というタイミングで異形の存在が現れることが何度もありましたね。

 と、しかるべき対処ができれば問題ないのですが、対処に失敗するとキャラクターは問答無用で犠牲に。生死不明のままそのキャラクターのことについて語られることはありませんが、公式サイトなどで“パーマデス”と明言されているので、おそらくは……。

 異形の存在は警戒していればある程度は出会わないようにでき対処も行えるのですが、調べたら即襲われてキャラクターが犠牲になるというトラップのような探索ポイントもあるため、キャラクターが犠牲になることはほぼ避けられません。

 そして、本作にはエピソードごとに複数のキャラクターが用意されており、誰かが犠牲になると別のキャラクターを選んで探索を続行することになります。システムに寄った書き方をするなら、エピソードごとに残機が決まっており、残機がなくなる前に探索を成功させなければいけないといったところですね。

 ちなみに、調べたらキャラクターが犠牲になるポイントで一度セーブをして犠牲になったら直前のセーブデータからやり直すという、よくある遊び方を試してみたのですが犠牲になったタイミングでデータが上書きされるようで、犠牲になったキャラクターは戻ってはきませんでした。

 さまざまなアイテムが必要になる脱出ゲームの性質とキャラクターの犠牲は一見かみ合わないように見えますが、犠牲になったキャラクターが探索中に見つけたアイテムは、犠牲になった場所に落ちているのでキャラクターが残っている限り詰んでしまうということはなし。システム的には、一部のキャラクターが犠牲になることのデメリットはそこまで大きくはありません。

 ただ、探索中に見られるモノローグなどで人となりなどが語られているので、探索中に救えた人と犠牲になった人の関係性を想像してなんとなく後味の悪い結末になることもあります。
 
 暦の上ではもうすぐ夏は終わりますが、まだまだ暑い毎日。本作でまとわりつくような恐怖を体験してみるのもアリですね。

 

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