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元SIE開発者が手掛ける新時代のVR剣戟アクションとは? Thirdverse社インタビュー

Ak
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 VRマルチプレイ剣戟アクションゲーム『ソード・オブ・ガルガンチュア』の開発で知られる、新進気鋭のVRゲーム制作会社“Thirdverse”。

  • ▲(左から)伴哲氏、國光宏尚氏、鳥山晃之氏

 今回、その中心メンバーである國光宏尚氏、伴哲氏、鳥山晃之氏にインタビューを実施。Thirdverseに参加した経緯や今後の展望、VRゲームの今までとこれからについて話を聞きました。

■國光宏尚氏(代表取締役CEO/Founder)

 1974年生まれ。米国Santa Monica College卒業後、2004年5月株式会社アットムービーに入社。同年に取締役に就任し、映画・テレビドラマのプロデュース及び新規事業の立ち上げを担当する。

 2007年6月、株式会社gumiを設立し、代表取締役社長に就任。2021年7月に同社を退任。

 2021年8月より株式会社Thirdverse代表取締役CEOに就任。

■伴哲氏(取締役COO)

 ソニー・インタラクティブエンタテインメントにてPlayStation事業のゲームプロデューサーとして業界経験15年以上。

 2018年Google入社、ビジネスデベロップメントマネージャーとして事業開発・法人営業担当。2020年6月よりThirdverse取締役COO。

■鳥山晃之氏(Game Design Divisionマネージャー/プロデューサー)

 ゲーム業界歴は25年以上。ソニー・インタラクティブエンタテインメントでは、JAPANスタジオに所属し、『SOUL SACRIFICE』『Bloodborne』『Demon's Souls』など多くのSIEタイトルのプロデューサーを務めた。

 2021年1月より、Game Design Divisionマネージャー/プロデューサーとして株式会社Thirdverseに参画。

かぶるだけで新しい体験ができるVRというジャンルに可能性を感じた

――多くのクリエイターの方がメンバーとして名を連ねていますが、伴さん鳥山さんが入社に至る経緯を教えてください。

國光氏(以下敬称略):
 僕がVR事業を始めたのが2015年で、その当時はまだVRのスタートアップ企業はほとんどいない状況でした。なので、まずはインキュベーション(※1)で人材やノウハウを集めることからでしたね。

 そこからサンフランシスコにVRファンドを作り投資事業を続けるなかで、VR業界が本格的に立ち上がってくるのを実感として感じまして、挑戦するならこのタイミングだろうと、Thirdverseを立ち上げました。

※1:起業に対して不足する資源を提供し、成長を促進するビジネスモデルのこと

伴氏(以下敬称略):
 僕がSIEでPS VRゲームを作っていた2016年当時は、VRゲーム市場が立ち上がったばかりで、本格的に拡大するにはもう少し時間がかかるな、という印象がありました。

 いつかまたVRゲームを作りたいと考え続けていたところ、Google時代に國光さんと会う機会がありまして。そこでこの人は次のVR拡大フェイズを自分で作り出す覚悟で挑むんだと感じて、自分もいっしょにやりたいと考え、Thirdverseに参加しました。

鳥山氏(以下敬称略):
 SIEでは、VRゲーム業界に注目して『ASTRO BOT : RESCUE MISSION』『Déraciné』『V!勇者のくせになまいきだR』の開発に参加していたのですが、会社の意向もあり、AAAタイトルの開発に注力することになりました。

 PS5では『Demon’s Souls』などの開発に参加したり、新規プロジェクトの立ち上げなどで動いていましたね。ただ、そのころJAPANスタジオ内でゲーム開発において大きな方針転換があり、新規でVRゲームプロジェクトを立ち上げることが難しくなっていました。

 そんななかで、これまでのVRゲーム業界の常識を覆す、完全ワイヤレスのオールインワンVRヘッドセットとして発売されたOculus Quest 2に、VRゲーム業界の進化の早さに驚きと衝撃を受けまして。VRゲーム業界に関わっている人からお話が聞きたいと思っていたところ、伴さんの紹介で國光さんに会う機会を得られました。

 それが、PS5の発売1日前でした(笑)。そこでVRゲーム業界で、新しいVRゲーム開発に挑戦したいと思い、即転職を決意して、月末には退社届けを出してました。

――VRゲームに対してそこまでの情熱を持っていたのですね。

鳥山:
 ユーザーが求めている新しいゲーム体験は、VRゲームに答えがあるのではないかと常に思っていたので、いつでもどこでも、かぶるだけで“新しいゲーム体験”ができるVRに、自分も賭けてみたいと感じていたんです。

 もちろんクリエイターとして、PSフォーマットに縛られないゲームが作りたかったというのもありましたし、國光さんの目指すVRゲーム業界のビジョンに賛同できるものが多かったので、ぜひ協力させてほしいと入社いたしました。

――「VRで世界を目指す」、VRに着目&注力する狙いを教えてください。

國光:
 VRならではの没入感ですかね。ゲームの世界に入って主人公として仲間と協力するという体験を、実在感を持ってプレイできるのは、みんなが望んでいたエンターテインメントの形なんだと確信を持っています。

次回作は剣戟アクションとしての魅力を引き継ぎつつよりカジュアルに遊べるものに!

――先に発売された『ソード・オブ・ガルガンチュア』で得たVRへの手ごたえなどあれば教えてください。

國光:
 『ソード・オブ・ガルガンチュア』は、VRならではの没入感として、リアリティを感じる剣戟を重視して開発を進めていました。マルチも含めて、その剣戟アクションについては狙い通りに作れたかなと思います。

 ただ、ユーザーはリアルなチャンバラよりも、手軽に必殺技を出せるような体験をしたいのではないかなと。リアルをバーチャルに再現するよりも、バーチャルの中にリアリティを作るのが重要ではないかと考えました。

 次回作では、バーチャルでしかできないリアリティのある体験を重視して作品を作りたいですね。

伴:
 『ソード・オブ・ガルガンチュア』のユーザーも、漫画やアニメの必殺技を真似するような遊び方をしていました(笑)。

 VR機器をかぶったからこそできるバーチャル体験を提供していきたいですね。

――「現在、Thirdverseの日本スタジオと北米スタジオでそれぞれ1本ずつ新規のVRゲームを開発中」とのことですが、可能な範囲でタイトルの詳細を教えてください。

伴:
 現在開発中の次回作も、VR専用のマルチプレイ剣戟アクションです。

 詳細はまだ公開できませんが、ビジュアルとしてもゲーム体験としても、よりカジュアルに楽しめる作品になる予定です。

鳥山:
 私がコンシューマーで培った経験も生かして、より手軽にVRらしい爽快な剣劇アクションが体験出来るように鋭意開発中ですので、続報は今しばらくお待ちください。

  • ▲次回作の設定画①。空中に浮かぶ庭園に、植物が生い茂っている。
  • ▲次回作の設定画②。発達した文明を思わせる人型兵士が描かれている。はたして敵なのか、味方なのだろうか?

VR機器の進化がユーザーとメーカーにいいサイクルを生む

――「VRゲームから発端したものがSNSのようにつながり、人々が集まる場所、すなわち“メタバース”を実現していくことを目指す」、現時点での具体的なビジョンがあれば教えてください。

鳥山:
 今後のVRゲームは、SNSのように人々の集まるリアルな空間になるのではないかなと思います。「今日はこのゲームで遊んで、終ったらちょっとおしゃべりしよう」というような要望に応えられるようなタイトルを作っていけたらなと思っています。

 人が集まれば、今後はVR空間の中にクリエイターが活躍できる場が生まれることもあるのだろうと考えています。そういう人たちをVRゲームを通じてつなげていくことが、私たちの今後の仕事ではないかなと思いますね。

伴:
 ハードの進化に合わせて、メタバースという定義が具体的にイメージできるようになってきていると感じます。

 イメージを共有しやすくなると、同じ世界を作りたいと考える開発者も集まりやすくなるので、ハードの進化によっていいサイクルが生まれるのが、実感としてありますね。

――現在のVR市場をどのように見られていますか?

伴:
 Oculus Quest 2の発売で大きく市場規模が拡大していった印象です。これまでよりカジュアルにVRを楽しむユーザーが増え、特に北米のVR市場が急成長しています。

 『ソード・オブ・ガルガンチュア』の売り上げの割合も、Oculus Questが8割くらいです。ユーザーも北米(英語圏)がメインですね。

鳥山:
 価格もそうですが、完全ワイヤレスのオールインワンVRヘッドセットという影響は大きいでしょうね。今まで主流だったPS VRではケーブルをつなげて、本体とテレビを起動して……というように遊ぶまでにどうしても手間がかかっていたので、そこで敬遠されていたこともあるのだと思います。

――まだVR機器のワイヤレス化を知らないユーザーも多そうですよね

伴:
 Oculus Quest 2の発売のとき、「ついにワイヤレスになくなったんだね」という声も多かったのですが、実はOculus Quest 1のときから、ワイヤレス化は実現できていたんですよね(笑)。

 それくらい、VR機器はケーブルとつながっているというイメージが強いのだと思います。そこの心理的なハードルが高かったのが、Oculus Quest 2の発売でどんどん下がっていっているのが実感としてありますね。

 昨年からOculus Quest 2は家電量販店でも普通に買えるので、順調にゲームユーザーにも浸透してきていると思います。

――今後のVR市場の発展の可能性はどのように見られていますか?

國光:
 フェイスブックのマーク・ザッカーバーグが大きな試金石としていたのが、VR機器の1,000万台の普及でした。そのラインが、大手メーカーが参入できるラインであろうと。

 1,000万台には数年内にいくだろうという試算でしたが、そのラインにははOculus Quest 2だけでも、年内にも到達しそうな勢いです。

 今後発売される次世代のPS VRが売れない可能性はほぼないでしょうし、これからVR市場に中国や韓国のメーカーも参入してくることも考えられます。

 現時点ではOculus Quest 2が最も勢いがあるVRハードではありますが、今後プラットフォーマー同士の戦いが起こるのではないかと思います。そこでまたVR機器の性能も上がり、低価格化や軽量化も進むでしょうね。

 そうなれば、メーカーやユーザーともにいいサイクルが生まれて、業界も拡大していくと思います。

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