難度高めだけどマゾさが癖になる…!? 『バナーオブルイン』がケモくて渋い!【電撃インディー#96】

まさん
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 電撃オンラインが注目するインディーゲームを紹介する電撃インディー。今回はイギリスのmontebearoが開発し、Goblinz PublishingとMaple Whispering Limitedがパブリッシャーとして配信しているNintendo Switch/PC(Steam)用ソフト『バナーオブルイン: 破滅の戦旗』のSteam版のレビューをお届けします。

 『バナーオブルイン: 破滅の戦旗』は、デッキ構築型のローグライクゲーム。ネズミやクマといった性能が異なるキャラクターでパーティを組み、探索と戦闘を繰り返していきます。

 探索するルートはつねにカードとして提示され、3つの中から1つだけ選択可能。自分が選んだカードによってアイテムの購入や敵との戦闘など、さまざまなイベントが発生します。

 もちろん、戦闘自体もカードバトル。イベントや戦闘で入手したカードでデッキを構築し、手ごわい相手に対して知恵と戦術で挑むシビアなバランスが楽しく、最適解を考えながら何度も周回を繰り返す中毒性の高いゲームです。

 なお、電撃オンラインは、尖っていてオリジナリティがあったり、作り手が作りたいゲームを形にしていたりと、インディースピリットを感じるゲームをインディーゲームと呼び、愛を持ってプッシュしていきます!

最初のボスにも苦戦する難易度だけど、そこが良い!

 Mega Crit Gamesの『Slay the Spire』が大ヒットして以降、さまざまな作品が登場しているデッキ構築型のローグライクゲーム。自分もこのジャンルが好きでプレイしてきましたが、本作は序盤から「難しい!」と思える作品でした。

 敵の守りが堅いうえに攻撃も激しく、回復も追いつかず……攻略法を見つけて軌道に乗るまでが大変! ゲームを始めたばかりの人は、最初のボスにすらたどり着けない可能性もあります。

 運も必要なのですが、初見では確実にやられるものだと覚悟して遊ぶくらいで大丈夫。とりあえずやられて敵の行動から戦い方を覚え、そのために必要なカードは何かと試行錯誤。効率よく戦えるデッキの回し方を覚えるまで、自分も結構苦労しました。

 いや、本当に。いきなり序盤からボコボコにされて驚いたくらいです。だが、そこがいい……。そこがすごくイイ!

 難しめではあるのですが、手探りで攻略しながら道を切りひらく感覚は確かにローグライク。選ぶ種族でも難易度がガラッと変わりますし、道中でどのカードを取るべきかも周回を繰り返さないと見えてこないところはあります。

 そこに加えて、武器と防具の概念も存在。レベルアップで取るべきスキル。残すべきカード。どの武器が便利か。どの防具が強いのか。敵にやられて周回しながら、頭に叩き込んでいく感覚が楽しいんですよ。

 装備やキャラクターのレベルは持ち越せませんが、経験を持ち越すことで少しずつ進めていけるのです。

 また、敗北すると種族ごとの経験値が貯まり、種族自身がレベルアップ。新たな能力やカードが解禁されていくので、負ければ負けるほど進めやすくなる救済措置も。とはいえ、あくまでもプレイヤーの知識が試される作品で、カンタンにはクリアさせてくれません。

 本作でおもしろいところはパーティの概念。最初に2人のキャラクターで冒険が始まり、道中の酒場で仲間を雇うことでパーティの人数を増やせます。

 デッキはパーティで共有されていますし、戦闘中に配られる手札には上限がありますが、仲間が増えれば増えるほど手数が増えるも同然。キャラクターごとに固有の“才能”カードや装備品があるので、仲間が多いほど戦闘中に取れる選択肢も増えるというもの。

 カードを使用するには、各キャラクターごとの“スタミナ”や“意志”が必要となるので、人数の多さは使えるカードの数にも直結してきます。

 “スタミナ”は戦闘中に一定数回復するのですが、強力なカードを使う時や種族固有の能力を使うときに必要な“意志”は戦闘中に回復しません。そうした意味でも、仲間は非常に重要です。

 それがわかっていても、最初は仲間を集めるどころではありませんが……! 突然出てきた調査隊やらエリート兵にいじめられ、あっという間に1人ぼっち。命からがら生き延びても回復施設が見つからず、何が悪かったのかを考えながら死ぬまでの道筋を反省することになるでしょう。

 わかると後半までサクッと進められるようになるのですが、特有の仕様や攻略を把握するまではかなりシビアに思えるかも。

 仲間を雇えるタイミングも各ステージのボスと戦う直前で、金額も酒場につくまでわかりません。そもそも、資金が貯まっていないと雇えないのでじり貧になることも。つねに追われているという立場のせいか、強めのエリート敵と遭遇することもあり、始めたばかりだと理想のパーティどころか仲間を生き残らせることが至難の業。ボコボコにされます。マゾい。でも、そこが好き。

 理不尽ではなく、気づきと学習で難所を乗り越えていく。この感覚がたまりません。体力を回復する薬は用意するべきか。カードをアップグレードするトークンがもらえるイベントは優先して選ぶべきなのか。3つのカードとして提示されるイベントから、どれを選べいいのかもだんだんわかってきます。

 わかると、安定して後半まで進めるようになるんですよ。周回による学習の楽しさと、シビアな戦闘が好きな人に向いています。

防御力、位置取り、状態異常、絡め手と知識で戦うバトル

 戦闘がどれくらいシビアなのかと言えば、序盤のボスからカードの回し方がわからないと即やられるくらい。

 最大6人までのパーティを組み、前列と後列に配置。ターンの開始時にデッキから5枚のカード引いて戦うオーソドックスなカードバトルですが、前述した仲間の加入システムもあり、敵に対して数の優位には立てません。少数精鋭で、なんとかしのいでいくのです。

 しかも、敵の攻撃が痛い! “生命力”が0になるとキャラクターが死亡して二度と復活できないので、生命力が削られないように守る必要があります。

 カードや防具(甲冑)で増える“防御力”があれば、生命力の代わりにダメージを肩代わりしてくれるので、とにかく防御力を上げることが必須。しかし、防御力があっても毒や出血でこちらの体力にダメージを与えてきたり、攻撃するとダメージを返されたり……対処法がわからないとどんどん削られちゃう!

 え、やられる前にやれ!? そうカンタンにはいきません。防御力の数値は敵も持っているんですよ。相手の防御力を削り切るまでこちらの攻撃も通らないので、短期決戦は難しいでしょう。この絶妙なバランス!

 ボスがまたいや~な能力を持ってるんですよ……。こうした敵に対抗するため、防御力が上がる甲冑を着て立ち向かい、ボコボコにされてまた覚える。このサイクル、楽しいな~。何回か遊んでいくうちに位置取りの重要性に気づき、そこからまた世界が変わるのも楽しい!

 実は本作、防御力と位置取りのゲームでもあります。敵にカーソルをあわせると、次のターンに誰を攻撃するのかがわかるので、うまく位置をずらせば行動を回避できるのです。

 “蹴り”などのキャラクターを移動させるカードで位置をずらし、致命的な一撃を避けることが勝利のカギ! もっとも、位置をずらすのにもカードが必要になるので運も絡んできます。

 わかっていても引きが悪くて移動カードが出ず、悲惨な目にあうのもよくあること。あくまでも実力が重視されますが、運が程よく絡むところも好きですね。

 敵が仕掛けてくる毒や出血の状態異常もいじわるですし、逆にこちらが状態異常を活用できるとうれしくなるもの。タフな敵にはこちらもタフに。絡め手には絡め手で対抗し、周回で死にながら身に着けた知識で戦うバトルなのです。

 敵の攻撃を防げるデッキを考えてカードを集め、うまくサイクルを回せるようになると脳汁が出そうです!

 そう……クマ、クマ、クマ、クマ、これが自分のたどり着いた答じゃい! 盾持ちのクマが攻撃をしのぎ、二刀流のクマが相手を倒す。我ながら完璧なパーティを組んでしまった……。

 とかなんとか調子に乗っていたら、肝心のデッキがうまく回らなくてラスボスで負けちゃいました。く、悔しい……。もっと盾が手に入っていれば……。この試行錯誤の繰り返しにハマるゲームですね。

 ダークファンタジーというべき重苦しい設定の世界ですが、登場人物が擬人化された渋い獣たちなのでどこか童話っぽさもあって独得の後味。イベントのイラストもカッコ良く、敵も味方も渋くていかした獣ばかりです。翻訳も問題なく、システムの部分もストーリーもしっかり理解できます。少し手ごわいデッキ構築型ローグライクを遊んでみたい人は、ぜひプレイしてみてください。


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