クトゥルフ女子、知ってる? 今、TRPGや朗読劇が熱い!

伊藤誠之介
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 小説や映画をはじめ、ゲームやテーブルトークRPGでも人気の高いホラー“クトゥルフ神話”。今回は、『クトゥルフ神話TRPG』を楽しんでいる女性プレイヤー、いわゆる“クトゥルフ女子”の方へのインタビューをお届けします。

  • ▲“クトゥルフ朗読劇 華蝕の匣 ~書生の夢現~”のキービジュアル。

 10月5・6日には男性声優による“クトゥルフ朗読劇 華蝕の匣 ~書生の夢現~(かしょくのはこ ~しょせいのゆめ~)”が開催されるなど、今、改めて“クトゥルフ神話”への注目が集まっています。

  • ▲基本ルールブックとなる『クトゥルフ神話 TRPG』。

 “クトゥルフ神話”とは、アメリカの作家H.P.ラヴクラフトが執筆した架空の邪神たちが登場するホラー小説をベースにして、多くのクリエイターたちが共通の世界観に基づく作品群を作り上げたものです。

 “ホラー”や“架空の神話”などというと、なんだか難しそうな作品のように思えるかもしれませんが、実際には女性のファンも多く、その独特な世界観を楽しんでいます。今回お話を伺ったmisoraさんも、そのお1人です。

 インターネットでも聴取可能なコミュニティFM“ラジオエフ”の番組『2D』で、ナビゲーターを務めているmisoraさんは、同番組内で『クトゥルフ神話TRPG』を採り上げています。

 また、ニコニコ動画やYouTubeで視聴可能な“クトゥルフ神話TRPGチャンネル”でのプレイ配信でキーパーを担当しているほか、“帆志みなみ”の名義で『クトゥルフ神話TRPG』のサプリメントやクトゥルフ神話関連作品の翻訳・執筆を行っています。

 ここでは、misoraさんが『クトゥルフ神話TRPG』をプレイするようになったきっかけや、クトゥルフ神話をどのように楽しんでいるのかをお聞きすることで、初心者や女性でも入りやすいクトゥルフ神話の魅力について迫ってみたいと思います。

『クトゥルフ神話TRPG』を遊び始めるきっかけは、リプレイ動画で興味を持ったところから

――misoraさんが『クトゥルフ』にハマったきっかけは?

misora:私が出演しているラジオ番組で「『クトゥルフ神話TRPG』をやってみよう」という企画があって、そこで実際に遊んでみたところからハマっていきました。

――ラジオでテーブルトークRPGをやってみようという流れだったのですか?

misora:そうですね。でもその時にはもう、クトゥルフ神話のことは知っていました。

 クトゥルフ神話自体を知ったきっかけは、当時のニコニコ動画にあった朝霧カフカさんの“ゆっくり妖夢の本当は怖いクトゥルフ神話”というTRPG動画でした。

 そのシナリオが本当に素晴らしかったんですね。その動画で、『クトゥルフ神話TRPG』の戦闘システムや正気度システムも紹介されていて。あのゲームは独特のホラー要素がありますよね。そこがおもしろいなと思って、興味を持ちました。

――その時点でテーブルトークRPG自体については、知っていたのですか?

misora:『遊戯王』というマンガの中に好きなキャラクターがいるんですけど、そのキャラがTRPGのゲームマスターをやっていまして。それで、いつか自分もゲームマスターをやってみたいなという憧れがあったんです。

 ただ、「TRPGって複雑そうだなぁ」と思っていたので、なかなか手を出せずにいたんですが、『クトゥルフ神話TRPG』は「これだったらできるかも」と思って、やってみました。

――ちなみに、コンピュータゲームのRPGはお好きですか?

misora:大好きです! ただ、コンピュータゲームのRPGはシナリオが決まっていて、エンディングが分岐したりはするんですけど、でもやっぱりいくつかの選択肢しかないんですよね。

 でもTRPGの場合は、プレイヤーの行動次第でエンディングが無限にあるというのが魅力だと思います。

ほかのTRPGと比べると、キャラクターが容赦なく死んでしまうのがよい!?

――misoraさんは『クトゥルフ神話TRPG』をどのように楽しんでいるのですか?

misora:私はキーパー(ゲームマスター)をやることが多いですね。

 キーパーをやる時は事前の準備がいろいろと必要になるんです。シナリオを考えたりだとか、オンラインでのプレイだと、背景イラストやBGMを用意したりとか。そういう事前準備もまた、楽しみの1つなのかなと思っています。

――misoraさんがキーパーを担当した時のセッションは、ちゃんとクリアできるのでしょうか? 『クトゥルフ神話TRPG』は、プレイヤーキャラの生存率が低いイメージがあるので……。

misora:私がキーパーをやる時は、クリアはほぼできるんじゃないですかねぇ……。ただ、私がプレイヤーとして参加したセッションだと、自分のキャラクターは8割がたロストしてますね(笑)。その容赦のなさも、スゴイなぁと思うんですけど(笑)。

――ファンタジーのRPGだと、たとえシナリオの目的に失敗したとしても、キャラクターはたいてい冒険から戻ってくるじゃないですか。それに対して『クトゥルフ神話TRPG』の場合は、キャラクターがけっこうあっさりと死んじゃいますよね。

misora:死んだり行方不明になったりして、自分の作ったキャラクターを二度と使えなくなることが多いですよね。だから、無理な戦闘をなるべく避けようとするプレイになったりするのも、『クトゥルフ神話TRPG』のおもしろさだと思います。

 普通のTRPGだと「ゲームだから多少無理でも戦わなきゃいけないかな」っていうのがあると思うんです。でも『クトゥルフ神話TRPG』の場合は、戦闘になった時点でもう終了、全滅確定、みたいなシナリオもあるので。

 なので、いかにプレイヤーキャラに戦闘をさせないようにするか、みたいなところでプレイヤーが知恵を絞って考えたりするのが、おもしろいところだと思います。

みなさんも“推し”の神話生物と出会えるかもしれません(笑)

――オカルトやホラーを扱ったTRPGはいろいろとありますが、その中で『クトゥルフ神話TRPG』ならではの魅力は、どんなところでしょうか?

misora:一番の良さは、やっぱり“正気度システム”(※)ですよね。ホラーって、見れば見るほど感覚がマヒしていくというか、耐性ができちゃうんですけど、このゲームにはちゃんとそれがルール化されていて。

※ 正気度システム:『クトゥルフ神話TRPG』には、プレイヤーキャラクターの精神状態を表す“正気度(SAN)”という数値があり、キャラクターが怖ろしい体験をするたびに現在正気度が減少していく。現在正気度がゼロになってしまうと、そのキャラは狂気に陥ってプレイ続行不可能となる。

 初めて見たものは怖いので正気度が減ってしまうんだけど、一度体験して慣れていると減らなくなるというのが、ちゃんとルールで決まっているんです。

 逆に、リアルの自分が「そんなの怖くないよ」と思っていても、ゲームのキャラクターのほうは容赦なく正気度が減っていったりもするので。このあたりは、ホラー慣れした人にこそぜひプレイしてもらいたいルールだなと思います。

 あとは、ほかのホラーにはない、クトゥルフ神話独自のクリーチャーやモンスターが存在しているところも魅力ですね。私自身がクリーチャー萌えなところがあるので。みなさんも『クトゥルフ神話TRPG』をプレイすれば、推しの神話生物と出会えるかもしれません(笑)。

――misoraさんにとっては、神話生物のどのようなところが魅力なのでしょうか?

misora:設定ですね。『クトゥルフ神話怪物図鑑』とかを読んでいても、よくこんな設定を考えられるなぁ、と思うので。

 私のお気に入りの神話生物はチャコタなんです。チャコタというのは、イモムシの身体に、これまで奪ってきた人間の顔がバーッと浮かんでいるんですね。

  • ▲チャコタのイラスト。苦悶する人々の顔がおぞましい……!(イラストレーター:Nick Smith)

 その中に自分の知り合いの顔もあるかもしれない、という設定を読んだ時に、ゾクッときて。もし知り合いの顔があった場合は、正気度を余計に持っていかれるというのも、おもしろいなと思います。

 あとは邪神だと、モルディギアンが好きですね。モルディギアンはグールたちの王様みたいな存在で。その設定だけで中二心をくすぐられてしまうんですけど(笑)。

 モルディギアンは、基本的には死人を生け贄にしているので、生きている人間のことは相手にしないんですけど、でも無礼な者には容赦しないという姿勢も、王様って感じがしてカリスマを感じますね。

 ……って、こんなインタビューで本当に大丈夫なんでしょうか(笑)。

――いえいえ、こちらとしては期待どおりの回答でありがたいです(笑)。

1920年代のアメリカよりも、現代日本を舞台にするほうがロールプレイしやすいところも

――misoraさんがキーパーを担当される際のセッションは、既製のシナリオを使用しているのですか? それともオリジナルのシナリオを自作しているのでしょうか?

misora:最初の頃は、既製のシナリオをちょっとアレンジさせてもらって遊んでいたんですけど、アレンジするぐらいなら自分で作ろうと思って。それで今は、シナリオを自作しています。

 シナリオを考える際に「神話生物ってどれぐらいいるんだろう?」というのを知りたくなって、『マレウス・モンストロルム』という資料集を買ったんです。そこから、「この神話生物をベースにしたシナリオを書いてみよう」といった考え方をするようになりました。

――『クトゥルフ神話TRPG』のシナリオは、H.P.ラヴクラフトの小説のように1920年代のアメリカを舞台にしたものから、大正時代や現代の日本を舞台にしたものまで、さまざまな設定が可能ですが、misoraさんはどのあたりの設定でプレイされているのでしょうか?

misora:やっぱり現代の日本を舞台にするほうがシナリオを書きやすいですし、プレイヤーさんも世界観に入りやすいかなと思います。

 現代シナリオだと、キャラクターがシナリオの中で調べ物をする際にパソコンやスマートフォンを使うことができますから。ほかにも連絡手段として携帯電話を使うとか、いろいろなアイテムが使えるので、初心者向けかなと思います。

 私がプレイヤーの時には、YouTuberのキャラクターをやったことがありますね。交渉技能の代わりに、自分のヒューマンビートボックスが上手かったら、情報をもらえるということにして(笑)。

――それはおもしろいですね! 逆に言うと、現代以外の設定だとロールプレイの難易度が上がってしまうのでしょうか?

misora:そうですね。1920年代のアメリカや1890年代のロンドンが舞台だと、プレイヤーさんがなかなか世界観についていけないんです。

 「RPGだから情報を聞きに酒場へ行くぜ」という流れになっても、「でも1920年代のアメリカには禁酒法があって……」となっちゃいますから。時代背景の説明をするのもけっこう難しいですよね。

――それに上手く対応できるプレイヤーさんだと、逆に盛り上がったりもするのでしょうけど。では、これまでプレイしたセッションの中で、特に印象に残っているエピソードはありますか?

misora:まだ初心者だった頃にプレイヤーとして参加していたシナリオで、冒頭のほうで神話生物ではなくて、ゴリラとの戦闘があったんですね。そのゴリラとの戦闘で、いきなりノックアウトされてゲームオーバーになったのはショックでしたね(笑)。

 その時、自分のキャラクターが取っていた戦闘技能は“キック(70%)”(技能判定の際に、パーセントロールで70以下の目を出せば成功する)だったんです。

 命中さえすれば、キックもそれなりにダメージが入るんですけど、70パーセントって高いように見えて、けっこうダイス目に裏切られてしまうんですよね。

 結局、一発も当たらずに、逆にゴリラにノックアウトされてしまって。まだ何も物語に触れていないのに、ゴリラにやられて終わりっていうのは、たぶん私だけだと思います(笑)。

――ホラー以前の問題ですよね(笑)。

misora:あれはリアルSAN値が減りましたね(笑)。あとは、自分が男の子のキャラクターでプレイしている時に、意識を操られて敵になっている女性たちに囲まれてしまうという展開になったことがあって。

 組みつかれてしまい、身動きがとれなくなってしまい、技能ロールでは脱出することができなくなってしまったんです。

 このままゲームオーバー!? というところで、「全裸になります」っていう行動を取ったんです。それで女性たちが意識を取り戻してキャーッと逃げ出して、全裸のまま勝利したということがあります(笑)。

 そんなふうに、技能ロールに頼らなくても、ロールプレイだけで状況を切り抜けることもできるのが、TRPGのおもしろいところですよね。それを汲み取ってくれるキーパーさんだったら、ですけど。

キャラクターになりきって楽しんでいる女性プレイヤーさんが多い!

――misoraさんがTRPGをプレイするのは、おもにオンラインですか? それとも対面で?

misora:いちばん多いのはオンラインですね。自分の身近にTRPGが好きな人がいるのか探すよりも、インターネットで好きな人を見つけてプレイするのが早いので。

 オンラインセッションだと、どどんとふさんのサーバーを使ったり、あとはSkypeでもプレイできますから。

――プレイヤーさんの性別や年齢は、どのような構成でしょうか? 『クトゥルフ神話TRPG』は、ほかのTRPGに比べて女性が多いというイメージがあるのですが。

misora:私もそういうイメージがあったんですけど、それでも男性のほうが多いかなとは思います。ただ、女性と男性とでは、TRPGの楽しみ方にかなり違いがあると思いますね。

――具体的にはどのような違いが?

misora:女性はそのキャラクターになりきったロールプレイを楽しむ方が多いですね。実際にある漫画やゲームのキャラクターになりきって、プレイする女性の方もいますし。

 女性限定のTRPGコンベンションに参加したことがあるんですけど、プレイヤーの女の子たちのなりきり力には、本当に感動しました。「今日が初めてです」という人でも、めちゃくちゃなりきってプレイされていたので。

 もちろん男性の中にも、なりきりプレイをされる方もいらっしゃるんですけど、どちらかというとセリフとかよりは行動重視の方が多いです。

 あとは、女性は男性キャラに、男性は女性キャラになりきる率が高いのかなと思います。やっぱり変身願望みたいなものがあるのかもしれないですね。

――これから『クトゥルフ神話TRPG』やクトゥルフ神話を味わってみたいという初心者の方に、その入り口になるような作品はありますか?

misora:クトゥルフ神話関連の動画はいろいろとあるので、まずはそちらで世界観に触れていただけたらと思います。

 あとは、思いっきり笑いたいのなら“実はめっちゃ面白いクトゥルフ神話TRPG”という動画や、“ちょっと噛み合わない初心者たちのクトゥルフ”というプレイ動画が、なかなか破天荒なプレイをしているので、おもしろいと思います。

 こういった動画で、まず世界観に興味を持っていただいて、そこからルールブックなどを読んでもらうのがいいのかなと。それでシナリオが欲しくなったら、私も参加している『クトゥルフ・タブレット』がオススメですね。

 あとはクトゥルフ神話そのものではないんですけど、『キャビン』という洋画には神話生物みたいなものがたくさん出てくるので、この映画を観ると、探索者の気持ちが味わえますね。

――この10月には、男性声優さんによるクトゥルフ朗読劇も行われるのですが、こうした朗読劇についてはどう思われますか?

misora:以前に『クトゥルフ』を題材にした舞台を見たことがあるんですけど、ゲームとはまた違って、おもしろかったですね。こういうふうにロールプレイすればいいんだなって、勉強になったりもするので。

――では最後に、misoraさんの今後の活動についてもお聞かせください。

misora:私がやってるラジオ番組(コミュニティFM“ラジオエフ”の番組『2D』)はアニメやゲームが専門なんですけど、『クトゥルフ神話TRPG』については、そのなかで何度も採り上げています。

 それから今度、『ゆるるふ とらんぷ』というのが発売になるんですけど。神話生物が可愛いイラストで描かれたトランプで、私は神話生物の解説を書かせてもらっています。

 「『クトゥルフ』って怖いんじゃない? 気持ち悪いんじゃない?」という人も、これだったら楽しんでもらえるんじゃないかと思います。

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