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リメイク版『月姫』レビュー。進化した演出や新キャラ投入により、ファンも新鮮にのめり込める!

カワチ
公開日時

※『月姫 -A piece of blue glass moon-』は、CERO Z(18歳以上のみ対象)のソフトです。
※18歳未満の方は購入できません。

 PS4/Nintendo Switch用ソフト『月姫 -A piece of blue glass moon-』のレビューをお届けします。

■『月姫 ‐A piece of blue glass moon‐』(初回限定版)

【注意】この先のテキストには『月姫 -A piece of blue glass moon-』のネタバレが含まれます。ご了承の上ごらんください。

リメイクだからといって、遊ばないのはもったいない

 『Fate』シリーズで知られるTYPE-MOONが同人サークルだった時代の2000年に発売された『月姫』。そのリメイクが8月26日に発売されました。リメイクの制作が発表されたのは2008年だったので、13年待ったことになります。

 オリジナル版『月姫』がアルクェイド、シエル、秋葉、翡翠、琥珀という5人のヒロインのルートが存在したことに対し、本作はアルクェイドルートとシエルルートの2つを収録しています。このこと自体は発売前から明かされており、プレイする前はボリューム的な心配も少しあったのですが、本作は新キャラクターも多く登場し、ボリュームが大きくアップ。しっかりこの1本で満足できるものになっています。とくにシエルルートは、まったく別物のような仕上がりで、未知のストーリーにワクワクさせられました。


 個人的にはオリジナル版『月姫』における、物静かな雰囲気が好きだったため、新キャラクターに賑やかでアッパーな人物が多いことには面を食らいました。ただ、ゲームを進めていくと、新たなキャラクターたちは単なる賑やかしのために登場したわけではなく、本作のストーリーをさらに奥深くしてくれる存在であることがわかります。

 『月姫』は本編では描かれない膨大な設定やキャラクターを想像する楽しみがありましたが、リメイク版はゲーム内だけでも、キャラクターの関係性を知ることができたり、世界観の広がりを感じることができるようになっています。また「これは次回作で活躍するのだろうな」というキャラクターたちが顔見せ程度ではありますが登場してくれます。本作だけではどんなキャラクターなのかまったくわからず消化不良になってしまう部分でもありますが、この後どういった活躍をしてくれるのかと“推測する楽しみ”が生まれたとも言えるでしょう。


まさかのネロの代わりの新キャラ登場に驚き

 ストーリーは事故が原因で“あらゆるモノに死をもたらす線”が見えるようになってしまった遠野志貴が吸血鬼の王族であるアルクェイドと衝撃的な出会いを果たすというもの。

 志貴とアルク、そして“異端狩り”の組織である聖堂教会に属するシエルの物語が展開。伝奇モノということでホラーの要素は強く、また超常的な力がぶつかり合うアツいバトルシーンも多いです。

 少しネタバレになりますが、ファンとしてもっとも驚いたのはネロ・カオスが登場せず、その部分が丸々と別のキャラクターとの戦いになったことです。ネロ・カオスはアルクェイドを追ってやってきた吸血鬼で、強烈なインパクトを残すキャラクターであるものの、あくまでイレギュラーな存在。確かにこの部分を変えても、『月姫』のストーリーは変わりません。そのため、ここを変えるのはめちゃくちゃ合理的でうまいなと思いました。旧作ファンとしては4日めのサブタイトルが“黒い獣”ではなく、“火炎血河”に変わっているところにゾワッとしました。


 黒豹が登場するところで、やはり敵はネロなのかと思わせておいて、新キャラが出てきたところの驚きは『月姫』をプレイしているからこそ、生まれてくるお楽しみポイントでした。



 ……もちろん、ファンとしてはリメイクで生まれ変わったネロ・カオスが見たくなかったと言ったらウソになります。というか、めちゃくちゃ見たかった! リメイクされた鹿とか……。

 ただ、ネロの変わりに登場するヴローヴ・アルハンゲリも魅力では負けていません。炎を使う能力と分かったときは、体内に無数の獣がいるネロに比べて、だいぶシンプルだなーと思ったりもしましたが、もちろんそんな単純なことはなく、しっかり驚きの仕掛け、ドラマが用意されています。ヴローヴはアルクルート、シエルルートの両方で相対することになりますが、どちらも緊張感があり、読み進めていて楽しかったです。

 ヒロインであるアルクとシエルに関してはデザインがリファインされ、声優陣もフレッシュなキャストが演じていますが、どちらも魅力的です。個人的な感想ですが、シエルはとてもかわいくなった印象があります。もちろん、最初の『月姫』の頃からかわいかったのですが、20年間アルク派だった自分が危うくシエル派に転んでしまうぐらいの破壊力でありました……。萌え力が大幅アップです。



 新キャラクターはネタバレになるため、ぜひゲームをプレイしてどんなキャラクターなのか知ってほしいのですが、とくにノエルはいいキャラクターでした。少しネタバレをすると、彼女は学校の教師でありながら“聖堂教会”の代行者で、シエルとは関係の深い人物です。彼女がいることで、シエルの視点で断片的に語られていた“教会”について、深く知ることが可能に。ノエル自身のことはもちろん、シエルのことも深堀りされています。


ビジュアルノベルとしてのこだわりを感じる演出

 ゲームのグラフィックや演出は現代の技術でパワーアップ。志貴の直死の魔眼がどういうふうに写っているのか、遠野邸がどのぐらいのスケールなのか、ビジュアルで伝わりやすくなっています。また、オリジナルの『月姫』自体が表情差分の多い作品でしたが、本作もそれは踏襲されており、コロコロと変わる表情を楽しむことができます。とくに琥珀さんは表情が豊かで見ていて楽しいです。



 また、演出に関しては、“ビジュアルノベルであること”がしっかり重要視されている印象。立ち絵の拡大縮小やカットインを用いて、キャラクターの動きや距離感を表現しており、演出はリッチになっていながらもノベルゲームらしさを失っていません。テキストで楽しむ部分と、ビジュアルや演出で楽しむ部分のバランスがとてもよかったです。


 原作ファンの自分にとっては、やはり原作は衝撃的であり、そのまま楽しみたかった部分もあります。ただ、『月姫』は同人だからこその荒削りだった部分があり、そのまま演出をリッチにしても違うものになってしまっていたのではないかとも思います。

 『月姫 -A piece of blue glass moon-』は、商業作品としての完成度を高めた作品だと感じたので、『Fate』シリーズ以降にTYPE-MOONを知った人が入りやすい作品になっています。また、新キャラクターや新展開はかつて原作をプレイしたファンであるほど「そこをそう変えるのか」「ここでこういう選択をすると、こうなるのか」という新鮮な驚きを体験することができます。まぁ、ようするに全人類にプレイしてほしいということです(笑)。

 本作だけでも大満足でしたが、今回は語られなかった遠野家の物語や新キャラクターたちの活躍も早くみたいです!

■『月姫 ‐A piece of blue glass moon‐』(初回限定版)

■『月姫 ‐A piece of blue glass moon‐』(通常版)


©TYPE-MOON

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