理不尽にも感じる難易度にあるカタルシス。見下ろし型ホラーゲーム『Darkwood』が予想以上に怖い…【電撃インディー#94】

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※『Darkwood』は、CERO Z(18歳以上のみ対象)のソフトです。
※18歳未満の方は購入できません。

 電撃オンラインが注目するインディーゲームを紹介する電撃インディー。今回は9月2日にPS4/Switchで発売されたサバイバルホラーアクション『Darkwood』のレビューをお届けします。

 なお、電撃オンラインは、尖っていてオリジナリティがあったり、作り手が作りたいゲームを形にしていたりと、インディースピリットを感じるゲームをインディーゲームと呼び、愛を持ってプッシュしていきます!

陰鬱な世界を脱出するサバイバル

 本作は、暗い森を舞台にしたサバイバルホラー。廃屋で目覚めた主人公が、森からの脱出を目指します。

 といっても、森には犬や未知の生物などの敵がたくさん。建物にこもろうにも、廃屋というだけあって扉が壊れているなど身を護るには不完全。

 フィールド上で手に入る木や釘などの素材を集めてバリケードを作ったり、武器を作ったりしながら探索を進めていきます。

 ただ、本作の探索や拠点の安全性の確保は全体的に高難易度な作りになっている印象。

 例えば、フィールド上の素材は個々のポイントで一度しか手に入らず、なにかを生産するような手段はなし。基本的に限られた素材をどんな用途で使うかのやりくりに頭を悩ませることになります。

 また、マップはあるものの、そこに表示されるのは探索中に見つけた森や豚小屋などのランドマークだけ。主人公の位置はマップを見てもわからず、ランドマークにいるときだけそのランドマークが赤く表示されます。

 ですから、細かな探索になると“廃屋の右隅から上に向かって3本目の木で右に”といったように、マップに頼らない目印が必要です。

 ほとんどが木ばかりの森のなか、都合のいい目印がつねにあるわけはなく、一度回収しそびれた素材を回収しようとしても落ちていた場所がわからないということもしばしば。

 実際、こういったジャンルでは喉から手が出るほど欲しい、アイテムの所持数を増やす素材を一度見つけたにもかかわらず「アイテムがいっぱいだし後で取りに来よう」と油断した結果、1時間ほど森の中をさまようハメになりました。

 ちなみに、フィールド上のランドマークの位置はランダム。上のスクリーンショットはアナタがプレイする際の参考にはならないので安心(?)してください。

 そのほか、キノコなどの素材を調理すると手に入る“エッセンス”を貯めると一日に一度だけ特定の場所で体力を回復できるなどのスキルを習得可能です。

 ただし、こちらも探索に便利なスキルを習得する際に同時にマイナス効果のスキルを習得する必要があることもあり、一筋縄ではいきません。

独特の視界制限がホラーらしい驚きを提供する

 さて、ホラーというジャンルと見下ろし型の視点は本来なら相性は悪いはず。曲がり角で急になにかと出くわす、後方からなにかに襲い掛かられる、そういった見えていないからこその驚きは周囲を見渡せる見下ろし型視点では表現しにくいものです。

 ですが、そういった相性の悪さを複数の表現で補っているところが本作の大きな特徴。まず、見下ろし型の視点のため当然プレイヤーには主人公の周囲が見えていますが、主人公が向いている方向以外は大まかな地形しかわかりません。

 岩壁がある、建物があるといったことはわかるのですが、背後の敵やトラップを確認するには主人公の向きを変える必要があります。

  • ▲向きを変えたことで、初めて毒キノコがあることがわかります。

 そのため、攻撃を受けるまで敵が近づいてきていることに気が付かないということもしばしばあります。

 近くに敵がいると、声や鳴き声が聞こえてくるのですが、声が聞こえるのに視界には敵がいないという状態がまた怖いものです。

 さらに、大きな木の根本付近は主人公が遠くにいるときには枝葉にさえぎられて見られないようになっているのも特徴。

 近づくと枝葉が表示されなくなることで根本になにがあるのかが見えてくるため、探索時は木にしっかりと近づくことが重要になります。

 これらに加えて、雨が降っているときや洞窟などの暗い場所では松明などの適したアイテムがなければ前方がほとんど見渡せなくなるという要素も。

 こういったいくつもの視界の制限によって、プレイヤーが神の視点になる見下ろし型のゲームでありながら、見えないからこその驚きはしっかりと感じることができました。

危険だからこそ恐ろしい夜

 本作は夜が非常に危険な時間になっています。まず、夜はスタート地点の廃屋を含めた隠れ家と呼ばれる場所以外にいると、未知の存在に襲われて確実に力尽きます。そのため、日中に探索を進めていても日が暮れるまでには建物に帰ることが必要です。

 そして、建物に帰ったとしても事前に照明を準備していなければ辺りは真っ暗。それもただ暗いのではなく、不自然に動くモヤが出てきたり光が急に灯ったりと、なにかがいるような雰囲気が漂っています。

 ただ、見下ろし型視点のゲームではそういった怪現象や暗闇を文字通り俯瞰して見られるため、ビジュアル面の演出だけではそこまでの怖さはなかったでしょう。

 ですが、ただ怖い雰囲気が漂っているだけではなく、夜に限り隠れ家が敵の襲撃を受けることがあるんです。

 外に出ると力尽きるため逃げることは許されず、戦場となる隠れ家は狭い。そんななかでの戦いはとにかく危険。しかも夜ですから外は真っ暗で、どこから襲撃されるかもわかりません。

 そういった危険があるため、モヤや光の演出が“居もしないものに対する恐怖”ではなく“居るかいないかわからないものへの恐怖”になっており、まったく気の休まる暇がありません。

 この危険な夜を無事過ごすと1日が終了。1日が終了すると、翌朝には隠れ家に商人が現れて素材などの取引を行えます。

 取引によるアイテムの入手は、本作中で無限にアイテムを手に入れられる数少ない手段。

 ですから、危険で力尽きやすい状況でありながらも夜を生き残れるかどうかが探索をスムーズに進めるカギになっています。

 本作は探索や夜の制限など、なにかと息苦しさが感じられる作品。正直なところ、プレイを始めて1時間ほどは難易度と理不尽さをはき違えたゲームだと感じていましたね。

 本作に魅力を感じた今でも、プレイ開始直後から楽しめる人はチャレンジャブルなゲームを好む人だけだと考えています。

 そもそも、ロード画面でTIPS的に難易度が高いと示されているので、意図的にさまざまな不便さが用意されているのでしょう。

 ただ、プレイに慣れていくうちに目標を達成したときのカタルシスが、息苦しさを上回っていき、また息苦しさあってこそのカタルシスだと感じられるようになっていきます。

 ライトにプレイしてスムーズに進むタイトルではありませんが、そのぶん遊びがいは格別です。


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