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『僕のヒーローアカデミア』内山昂輝さんインタビュー。死柄木弔の苦悩を自分に背負わせるつもりで演じた

kbj
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 TVアニメ『僕のヒーローアカデミア』に出演するキャストインタビューを掲載します。

 『僕のヒーローアカデミア』は“個性”豊かなヒーローが敵(ヴィラン)と戦いを繰り広げる人気作品。2021年でTVアニメ放送開始から5周年を迎え、物語は新たな展開“ヴィランアカデミア編”に突入しました。

 敵(ヴィラン)連合を束ねる死柄木弔役の声優・内山昂輝さんにインタビューを実施。死柄木弔の持つ特徴や今回のエピソードの印象、見どころについて、伺いました。

通して出るわけではないからこそ全力の演技を心がける!

――死柄木役のキャスティングはオーディションだったのでしょうか?

 オーディションではなく、「この役をお願いします」という指名の連絡をいただきました。

――死柄木を初めて見た時の印象は?

 手が顔に付いていて、「これは……なんなんだろう!?」と、ちょっと怖かったですね。

 あとは、顔がこんなに見えないキャラクターはなかなかないので、そういう意味でも「異色のキャラクターだな」と思いました。

――演じるうえで、演技指導などはありましたか? また苦労した部分などありましたか?

 収録前に自分で思い描いていたイメージを、ガラッと大きく変えてくれというような演出はなかったです。

 苦労した部分は、しいて言えば手が顔を隠しているため表情が見えづらく、セリフを表現するための参考として使えなかったのが難しくて、他の仕事とは結構違う作業でした。

――5年続いてきた長期シリーズですが、ここまで振り返ってみて印象的だったシーンはありますか?

 長く続いてきたアニメシリーズですが、絶えず敵(ヴィラン)連合が登場していたかというと、そうでもないわけです。

 初登場時は派手に戦っていたんですけど、やっぱり学校の話になると出ない時期が続いたり、また新しい敵(ヴィラン)が登場した時などに再び登場したりと、登場ペースに波のあるキャラクターたちであることは確かです。

 そのため、「出るシーンは全部、120%の力でいかないとダメかも」という風に思いました。なぜなら死柄木弔が登場すると、その章のクライマックスにすぐ突入することも多かったので。そういう意味で、すべての登場シーンが印象的です。

――死柄木弔というキャラクターを演じる立場から見て、変化してきたと感じる部分はありますか?

 変わったといえるか分かりませんが、場数を踏んできたことによって成長せざるを得なかった印象があります。

 キャラクターデザインは、少しずつマイナーチェンジされているようです。ただ、その都度大幅にセリフの言い方を変えるということもなくて、さまざまな争いを通して経験値が増えて、少しずつ内面も変わっていったのかもしれないという感じですね。

――敵(ヴィラン)連合の絆はどのように感じていますか?

 敵(ヴィラン)連合という組織は、ずっと行動をともにしているけど、関係性が読みづらい。雄英高校の人たちみたいにすごい仲がいいという感じもしないし、でも自滅するほどはもめていない……。

 どういう集まりなのか、ちょっと掴みづらいので、それを絆と呼んでもいいものか……ちょっと図りかねてしまいますね。

――内山さん自身が敵(ヴィラン)連合に加入した場合、仲よくなれそうだと思うメンバーはいますか?

 そもそも敵(ヴィラン)連合に入りたくないです(笑)。

死柄木の秘密や過去が明かされるストーリー展開も見どころ

――“ヴィランアカデミア編”では、死柄木弔の過去にまつわるエピソードが出てきますが、どのように感じられましたか?


 死柄木自身にとってもぼんやりとしていた過去の記憶がだんだん描かれていきますが、そういう過去を背負ったキャラクターだということは全然知らなかったので、原作を読んで驚きました。

 演じるうえで、それをなぞっていくっていうのは、つらい作業というか、いわゆる幸せな家族の風景と全然違っていたので……なかなか大変だなと感じました。演じかたとして、明確な指針を設定したわけでなく、言い方が難しいんですけど背負わせるって感じで、“ヴィランアカデミア編”を演じました。

 完成した映像はまだ見てないんですが、それがうまくいっていればいいなと思います。

――“異能解放軍”という新しい勢力が登場しましたが、どんな印象でしょうか?

 これまでにもたくさんのキャラクターが登場してきて、学園内もいろいろなクラスがある。敵(ヴィラン)もかなり増えてきたので、ここでまた新しいキャラクターデザインを創り出すのは大変なお仕事だろうなと思います……ちなみにお笑い芸人・金属バットを思わせるキャラクターがいましたね。

――名前も“近属友保”ですしね(笑)。

 過去に登場したステインは独自の正義感を持ったキャラクターで、“死穢八斎會”は極道的な集団でした。

 そんな中で、資産家や大企業のトップといった表側の権力者が能力を持っているところは新機軸。これをリアルに置き換えたら、彼らはどういう立場だろうとか、社会的にどういう影響を与えるだろうとか、いろいろ想像したくなるおもしろさがあります。

 例えばアメコミの世界だと、ヒーロー側ですがアイアンマンは大企業のトップという設定です。こんな風に比較して考えても楽しいし、いろいろな意味で、“異能解放軍”はこれまでにないキャラクターたちだと思います。

――その中でも特に印象に残ったキャラクターは?


 死柄木に相対するのが“リ・デストロ”だったので、彼です。丁寧な口調だったり、ストレスを溜め込むことで力に変換する“個性”だったり、スーツ姿であったり、いろいろ変わった設定があって、特徴的なキャラクターだと感じました。

 “リ・デストロ”のバックグラウンドも描かれていきますし、トータルで印象的なキャラクターでした。

――“異能解放軍”は、ヒーロー以外が“個性”を使うと犯罪になるという世界に対抗し、「“個性”に自由を!」という反社会的な軍団ですが、彼らの思想や行動に対して内山さんはどう思われますか?

 大衆に自由を与えようと活動する一方で、すごくブルジョワジーなメンバーじゃないですか? 反権力でありながら資本家という立ち位置が興味深いと思いました。

――“異能解放軍”との戦いは第5期のクライマックスを飾る展開になりますが、見どころや注目キャラクターを教えていただけますか?

 漫画では後半のバトルシーンが凄まじい迫力の絵で描かれていたので、アニメーションになった時にどうなるのかが見どころの1つですね。アフレコ時は、100%完成した状態の映像を見て演じるわけではないので、「それぞれの能力がどうやって表現されるんだろう?」とか楽しみですね。

 さらに、これまではあまり深く描かれてこなかった、死柄木の秘密や過去が明かされるストーリー展開も見どころです。

――悪と悪が戦う展開になっていますが、演じてみておもしろかった部分、楽しかった部分などはありますか?

 ひと通り終わって達成感はあるんですけど、今回は死柄木の過去という、重いストーリーも含まれているので、おもしろいや楽しいといった感情はなかったですね。

 負のエネルギーというか、そういう暗いところを掘り下げなくてはいけないつらさ、大変さみたいな方が強く思い出されます。

――“敵(ヴィラン)連合”のメンバーの過去なども描かれていますが、特に印象に残った“敵(ヴィラン)連合”のメンバーはいますか?

 今回、アフレコ中は自分のキャラに集中しちゃって、あまり他の人を気にしていられなかったですね……。

――以前、山下大輝さんと佐倉綾音さんに同じ質問をした際には境遇など含めてトゥワイスを絶賛されていました。

 トゥワイスといえば、遠藤大智さんが演じられているんですけど、収録がとても大変そうで……。

 そもそもトゥワイスって、反対のことをすぐ言うのが変わっていておもしろいキャラクターだと思うんですけど、今回の戦闘中にはトゥワイスがもっと増えるシーンがあるんです。

 その一つ一つに台詞が付けられていて、その回の収録が大変そうだなと思っていました(笑)。

――他にアフレコで印象的だったことはありますか?

 コロナ禍でのアフレコだったこともあり、自分の出番以外の収録を全部見ているわけではありません。自分の出番が終わったらすぐ帰るとか、自分の出番の前に他の人が終わっているとか……そんな感じだったんで、集中的に自分のところだけをアフレコした感じでした。

――敵(ヴィラン)も立場が少し変わればヒーローになれたかもしれないと考えて、もし死柄木が雄英高校に入学していたら、どんな学園生活を送っていたと思いますか?

 想像することが難しい。まずは「なんで入ったんだろう?」というところですよね。

 例えば彼の過去が違っていたとしたら、性格も何もかも違う人になる可能性もあるわけで、それが“死柄木弔”と言えるのか? という気もしてくるので考えるのが難しいですね。

――内山さんが実際に得られるなら、どんな“個性”が欲しいですか?

 これも難しい質問ですね。

 “個性”を持ってしまったら、その代償を払わなければならないと思います。それこそ、戦いや争いに巻き込まれてしまう可能性もある。

 『ヒロアカ』はいろいろな読み方ができると思うんですよ。「“個性”で世界を平和にしたい!」とか「“個性”があるから幸せだ!」と言えるかもしれないけど、他方で、敵(ヴィラン)側は“個性”があったからこそ、今の状況につながっているのかもしれない。

 正負どちらも描かれているのがおもしろいと思います。特に敵(ヴィラン)側の目線で言うと、負の側面を多く目にしていると感じます。

 そうすると“個性”は持たない方がいい気がしてきちゃいますね。

――第5期のクライマックスは敵(ヴィラン)連合が大きく扱われる展開になるということで、敵(ヴィラン)連合の代表としてメッセージをお願いします。

 “ヴィランアカデミア編”のエピソードは、本当に異色の展開だと思います。「デク(緑谷出久)が最高のヒーローになるまでの物語が見たいんだよ!」という方々からすると、ちょっと違うと思われるかもしれません(笑)。

 だけど、ここはひとつ、長期展開しているシリーズならではの醍醐味として、こういう展開があってもいいんじゃないかと、大いに楽しんでいただきたいなと思います。

 今まで主人公たちと敵対する存在として描かれてきた敵(ヴィラン)連合ですが、今回はそれぞれどういった背景があるキャラクターなのか深く描かれていきます。「敵(ヴィラン)たちも愛してくれ」と言うつもりはないですけど、物語全体の奥行きや広がりを示すものとして“ヴィランアカデミア編”をお楽しみください。

©堀越耕平/集英社・僕のヒーローアカデミア製作委員会

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