『零~刺青ノ聲~』はストーリーや霊の設定に涙! シリーズとの関連もたまらない【綾那のゲームに夢中】
- 文
- 綾那
- 公開日時
さまざまなゲームを遊び、愛するゲーマー女優である綾那さんのゲームコラム“綾那のゲームに夢中”の連載第24回をお届けします。
外に出た瞬間に蒸発して消えてしまうんじゃないと思う、今日このごろ。皆さま、いかがお過ごしでしょうか?
暑い夏といえば身の毛もよだつホラーゲーム! ということで今年もやってまいりました、この時期ならではのホラーゲー話! 数あるホラーゲーの中から私が今回選ばせていただきましたのは…
『零~刺青ノ聲~』! 『零』シリーズの3作目の名作です。『零』シリーズは射影機と呼ばれるカメラを使い、現れる幽霊に対抗したり、謎を解いていったりする、和風のホラーゲームです。
シリーズ2作目の『零~紅い蝶~』が神作品で高い人気ですが、今回は『刺青ノ聲』を書いていきたいと思います。
ちなみにこの作品からお祓いをするようになったそうです。
それまでは、最恐のホラーゲームを目指し「お祓いをすることで恐怖を逃がしてしまうからお祓いはしない!」というポリシーでやっていたそうで、お祓いをやってなかったというのはファンの間では有名な話。
このことが関係しているかどうかは分かりませんが、私も『紅い蝶』を夜中に部屋を真っ暗にしてプレイしていたら、いきなり部屋中にラップ音がしだしたため、急いでゲームを終えてベッドに潜り込んだ覚えがあります。
今でもあの時の恐怖は忘れられません……。ただし、このゲームが関連しているかは定かではないのでご安心を。でも、それほど怖いゲームとだけ言っておきましょう!
なお、テキスト中には物語中のネタバレが含まれる箇所もあります。
現実をも浸食していく恐怖
本作は“眠りの家”と呼ばれる場所を探索し、現実で謎を解いていくシステムとなっています。
夢と現実を行き来することができ、夢から覚めるとアイテムや体力が補充されるし、怖さで心が擦り切れたら一旦起きればいいため、心休まる異色の『零』シリーズタイトルだったのです。
しかし、その考えがそもそもの罠なのです……。
「ホラーゲーに心休まる場所なんぞいらぬ!」というように、だんだんと現実世界の自分の家に怪奇現象が起きるように。
最初はちょっとだけだったのが、次第に家の至るところが怪奇現象に侵食されていく恐さは妙に現実味を帯びていて、まさに“侵食する恐怖”というキャッチコピー通り。
キッチンに女性が佇(ただず)んでいたり、洗面所の鏡に血の跡があったり、霊から迷惑電話がかかってきたり……。
夢が現実までも侵食していく過程が、私的に好きな恐怖の表現方法です。「実際にあるかも」と思えるリアリティが、私が『刺青の聲』を好きな理由の1つです。
本作の主人公である黒澤怜は、『零』シリーズには珍しい20代の大人の女性というのも特徴。セクシーな大人の魅力がそこにあり……。
「ホラーにお色気シーンは付きもの!」というわけで、シャワーシーンもあります。
設定を端的に話すと、怜は自分が起こしてしまった交通事故で、婚約者の優雨を失っており、そのことがきっかけで“眠りの家”に誘われます。
この“眠りの家”は、死者に強い想いを持っている人が誘われる場所と都市伝説で語られています。誘われた人は、徐々に刺青(いれずみ)が体を侵食し始める幻覚を見始め、最後は消えてしまうとか……。
夢の中で怜は、夢に捕らわれてしまった瀧川吉乃という女性と出会い、彼女に「もし目覚めたら、お願い……私を起こして」と言われます。彼女がいるという病院に行くのですが、起こすこともできぬまま、彼女の体は刺青に侵食されるのを目撃してしまうのです。
この時、怜の体にも刺青が出現していて、起きる度に刺青が広がっていくため、いつかは彼女のようになってしまうんだなとゾワっとしました。
それでも、怜は“眠りの家”に優雨の姿が見えたので、彼に会いたい一心で屋敷の奥へと進んでいくのです。
なぜ自分だけが生き残ってしまったのかという苦悩を抱えつつ……。
残された人は、いろいろと考えてしまいますからね。自分を責め、悩み、なぜ自分こそが死ななかったのかと悔やむ姿は見ていて辛いシーンです。
個人的なポイントは、シリーズ1作目『零 zero』で主人公だった雛咲深紅ちゃんが、怜のアシスタントとなっていること。住み込みで働いているっていうのは大きな要素なんですよね!
深紅ちゃんもお兄ちゃんの真冬さん関係で“眠りの家”に誘われることになるのですが、その際はなんと! 彼女を操作できるようになるのです! お帰り、深紅ちゃん! ちなみに相変わらずの強さを誇っています。このように、成長した前の主人公を見れるのも、シリーズ作品のいいところです。
『zero』もあるなら『紅い蝶』関係も……モチロン出てきます。
“天倉”という名字にピンときたら、それ正解。『紅い蝶』で主人公だった澪と繭の叔父さんにあたる天倉螢が、操作キャラクターとして出てきます。優雨と真冬の仕事仲間だったとか驚きの事実も……。
過去作と関連する要素が出てくると、妙にテンション上がってしまうのです。
出てくる霊の苦しみが心に刺さる……
本作を語るうえで、個人的に外せないのはメインボス。
零華様は美しく恐ろしく、そしてとても悲しい運命を背負っています。上半身が裸で、体中に刺青が入っているのですが、どこか幻想的。
怨霊名は“刺青の巫女”です。
『零』シリーズに出てくる者は、大体がみな過酷な運命を背負っていることが多いのですが、私的に彼女の苦痛がシリーズの中でもっとも心にくるものがあったんですよね。
「もう、見たくない」という台詞が、どれだけ辛く悲しい台詞かということは、やった人にはわかるかと。ぜひともプレイして感じていただきたいです。
プレイしたのかなり前なのですが、1人だけ忘れたくても忘れられない怨霊がいます。
そう、床下に出てくる四つん這いの女。
無理です! 相手の攻撃力が低いとか、そんなのもう関係ない! 速い、怖い、這いつくばっているから自分の動きが遅い!!
明るい曲を携帯電話でかけて、気を紛らわしながらなんとか倒した気がします。
あと印象的だったのは、屋根の上で出会う乳母車を押したお婆ちゃん! 友だちが「うばぐるババア」と呼んでいました(笑)。イノシシのごとく突っ込んできて轢き逃げしていくのでイライラしましたね。
ホラーゲームは大好きなので怖いのは大丈夫ですが、反射神経が悪いのでよく詰まるのが問題となります。
浮遊霊撮影であれば、自分の反射神経の悪さに白目になりながら頑張って撮りましたが、結果はお察しです。出て消えるまでのスピード、速すぎませんか? ウサインボルトかよ……。
そんな霊たちに翻弄されながら、零華さまの悲しすぎる真実を知り涙を流し、怜と優雨のやりとりに涙を流し、エンディングで流れだす天野月子さんの『聲』に涙を流し、トータルリザルトのランクの低さに涙を流すという、ずっと泣いている終盤でした。
ホラーの表現やボスの背景、怜と優雨のラストなどいろいろな要素がすごく好きで、私は『零』シリーズの中で『刺青の聲』が特に好きなんですね。
マップや攻略要素とか、ほとんど覚えていないので、真っ新な気持ちでもう1回プレイし直したい一作ですね。
ねいりゃさよ はたて ねいりゃさよ はたて……
(C)2005 コーエーテクモゲームス All rights reserved.
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります
『零~刺青の聲~(PlayStation 2 the Best)』
- メーカー:テクモ(現コーエーテクモゲームス)
- 対応機種:PS2
- ジャンル:アクションADV
- 発売日:2007年11月22日
- 希望小売価格:1,890円(税込)