“オリジナル版と変わらない”は最高の賛辞!『ディアブロⅡ リザレクテッド』開発者インタビュー

hororo
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 9月24日にBlizzard Entertainmentから発売された『ディアブロⅡ リザレクテッド』(以下『D2R』)。ハックアンドスラッシュ系作品の代名詞ともされる『DiabloⅡ』を現代の技術でリマスター化した作品で、発売後は多くのプレイヤーが悪魔の軍勢との戦い(とそれに伴うアイテム収集)を楽しんでいます。

 今回は本作のデザイン・ディレクターを務めるRob Gallerani氏と、エンジニア・スペシャリストを務めるKevin Todisco氏に合同インタビューを行うことができましたので、その様子をお届けします。

▲Rob Gallerani氏(左)、Kevin Todisco氏(右)。

「あ、当時のままだ」と言ってくれることが、最高の賛辞

――発売して1週間ほどが経過しましたが、反応のほうはいかがでしょうか? 目にした感想などで興味深いものがあれば教えてください。

Rob Gallerani氏(以下、敬称略):現状ではかなりいいフィードバックを頂いています。「自分が若い時や『DiabloⅡ』を遊んでいた頃をすごく思い出しました」という感想がとても嬉しかったですね。実際に『DiabloⅡ』をプレイしていて、かつ本作をプレイしてくれた人からしかこのフィードバックは出てこないので、本当に嬉しいです。

 じつは本作の感想は大きく2つに分かれるだろうなと予想していました。コンソール版には新規プレイヤーが多く、昔に『DiabloⅡ』を遊んでいたプレイヤーは完全にPCで遊ぶだろうと思っていたのです。しかし蓋を開けてみれば、昔からのプレイヤーであってもかなりの人数がコンソール版をプレイしていて、「コンソール版にのみある要素をPC版にも持ってきてほしい」という要望も多かったのです。

Kevin Todisco氏(以下、敬称略):私としては、昔『DiabloⅡ』を遊んでいたプレイヤーが、「これまったく同じじゃん、何が変わってるの?」という話をしていたところ、オリジナル版にグラフィックを変更するキーを押した瞬間、その変化に驚いているのがとても面白かったですね。

※PC版には、オリジナル版のグラフィックと新グラフィックを切り替えられる機能が導入されている

Rob:昔のプレイヤーの頭の中には、かなり思い出補正があるんですよ(笑)。『DiabloⅡ』の荒いグラフィックが、記憶の中でどれだけ美化されているのかということを『D2R』をプレイすることで可視化されているのが面白いですね。

――あえてオリジナル版のバランスを保つというコンセプトにした理由を、改めてお聞かせください。

Rob:『DiabloⅡ』自体は20年前のゲームですが、当時からA・RPGのなかでは金字塔と呼ばれているレベルの作品なので、その感覚をキープすることが大前提でした。加えて現代で古いA・RPGを復活させるとなると、オリジナル版を知らない人も大勢います。

 その人たちにもできるだけオリジナル版の感覚で遊んでもらいたいのですが、今の時代に合わないプレイ感覚をそのまま持ってくるのも難しい。よって、オリジナル版の感触はそのままに、ストレスにならないように新しい要素を加えることも必要でした。オリジナル版を知っているプレイヤーが本作を遊んで、「あ、当時のままだ」と言ってくれることが、最高の賛辞ですね。

Kevin:オリジナル版に対するリスペクトが開発陣にもあります。その要素をキープしつつ、今の時代に復活させるということを意識して、細かい要素にまで注力しながら作っていますよ。

――アイテムごとにサイズがあることで、インベントリがパズルのようになってしまって物をたくさん持てない、というように、現代からすると不便に映ってしまう要素も多く残っているかと思います。そこに葛藤などはありませんでしたか?

Rob:そういった要素に関しては、初期の段階でかなり話し合いました。そのときには、インベントリを拡張するとか、スタミナの概念をなくしてしまうとかといった案も出てきていたんです。ですが話し合いの過程で、じつにいろいろな要素がつながっていることがわかりました。

 例えばインベントリのサイズは、持ち物をどれだけ持ち帰れるかということになりますし、スタミナはスタミナポーションの有効性に関わります。スタミナのシュラインもありますしね。ゲーム自体に関わる要素がたくさんあったので、単純に変えてしまうとゲーム自体のコンセプトが崩れてしまう恐れがありました。なので、最終的に現在の状態になっています。

Kevin:あまりにも修正やアップデートしてしまうと、“一線を越してしまう”という感覚が開発陣にあったんです。この感覚を覚えたら、すぐにその変更は取りやめるという基準を設けていました。ゴールドを自動で拾う仕組みだったり、共有のスタッシュの追加だったりと、痒い所に手が届く修正であれば、ゲームの感覚は変わらないと思ったので、追加しています。

――最近の優しいゲームに浸かり切っていたので、気が引き締まりました(笑)。

Rob:開発陣の中にもオリジナル版をプレイしたことがない若いスタッフも多く、その人たちにプレイさせてみると、クエストを受けてもウェイポイントやマーカーが出ずに目的地がわからなかったり、弓を使おうと思っても矢が必要なことに気付かなかったりしました。

 「これが『DiabloⅡ』だよ」と教えながら開発しました(笑)。このような点は、古いボードゲームなどが流行っていた時代に作られたゲームだからこそかと思いますが、その時代の感覚は絶対キープするべきだと思ったんです。

Kevin:まさに自分がその“優しいゲームに浸かった”メンバーのひとりですね(笑)。私は若くはないのですが、『DiabloⅡ』はプレイしたことがなかったので、昔ながらのハードコアなA・RPGはある意味での新鮮でした。

開発がもっとも困難だった部分

――開発にはどのくらいの期間がかかりましたか? またもっとも困難だったプロセスはなんでしたか?

Rob:開発期間に関しては細かくはお答えできませんが、かなりの時間をかけました。難しかった点は、現代の新しいプレイヤーと、クラシックなプレイヤーの両方が楽しめるゲームにしなければならないということでしたね。例えばコントローラーサポートです。最近のプレイヤーがコントローラーで本作をプレイした場合は普通に感じることでも、古いプレイヤーがコントローラーを使うと、ちょっとぎこちなかったりするんです。こういった新旧のプレイヤーの感覚のずれを失くしていく作業が大変でした。

Kevin:もともと『DiabloⅡ』というゲームは、2Dのゲームを3Dのように見せているゲームでした。これを実際に3Dのモデルとして起こした場合、2Dであることを生かしてごまかしていた“嘘”がつけなくなるという事案が発生します。2Dではなかった軸が3Dになることで生まれるので、それまでなかった部分が見えてしまう。また、階段や山を登ったりするような高低差がある場所を、嘘をついていない状態で表現することは大変な作業でした。

――実際にプレイすると、洞窟内の暗さなどが凄みが増しているなと感じました。ダンジョンなどのグラフィックを作り直すにあたって、どんなところに力を入れたのでしょうか?

Kevin:ダンジョンの雰囲気作りには、ライティングがポイントになっています。本作を作るにあたっては当然ながら現代のエンジンを使っていますので、これに関してはいろいろと試してみることができました。単純なライティングの変更もありますが、ゲームを遊んでいる感覚でいえば、スキルを使ったときの光による影響も大きいと思います。

 例えばソーサレスのスペルなども光を帯びている状態なので、周りを照らしますから。ダンジョンに関しては、プレイヤーが見える範囲、いわゆるライトエイリアスに注力しました。あまり周囲の状況が見えすぎてしまっても怖さがなくなってしまいますし、オリジナル版のままでは何も見えなくなってしまうこともあったので、見える範囲で怖さも感じるというバランスに注意しました。

“一線を越さない”ように、新旧両方のプレイヤーが楽しめるバランスに苦心

――コントローラーでのプレイがかなり快適に感じます。一方でマウス&キーボードとはかなり操作感が違うので、PvPや高難易度になった際などのデバイスによる差が気になります。この辺りはどのように調整されているのでしょうか?

Rob:ゲームプレイにおいて、ベースになる部分は可能な限り同等になるように努力はしています。ただ、どうしてもコントロールするうえで違いは生まれてしまいます。例えば、移動に関してはコントローラーのほうが絶対に動かしやすいですよね。マウス&キーボードでは、行き先を一度クリックしないとキャラクターが動かないですし、機敏な動きが難しくなります。

 逆にターゲッティングに関してはコントローラーのほうが難しくなるはずです。カーソルがないので、狙ってターゲットするということがそもそもできません。なのでコントローラー操作に関してはオートターゲットを導入しましたし、テレポートやリープなどのスキルは一定距離しか移動できないという調整をしました。PvPや高難易度に関しては、こういった部分が影響することがあるでしょうし、最終的には自分のプレイスタイルに合った方法で遊んで頂く形になります。

――コンソール版では、ポーションを使用した際に、所持品のポーションが自動的にベルトに補充されるのが便利でした。この機能がPC版に実装される予定はありますか?

Rob:この要素をはじめ、いくつかの要素はコンソール版にはあってPC版にないものがあります。例えばインベントリを自動で整理する機能だったりとか、ベルトの中を一発ですべて装填するものだったりですが、これらに関しては今検討中です。

 オリジナル版のプレイ感を失いたくないという人が多くいますから、これらの導入は慎重に考えています。先述した通り、こういった変更は“一線を越えてしまう”可能性をはらんでいるため、注意してみていかなければならない点だと考えています。

今後のアップデート予定

――シーズンに関してはいつごろ実施予定ですか? またシーズンを遊ぶことに対するモチベーションや魅力はどういったところにありますか?

Rob:ラダーの開始時期に関してはまだ未定です。理由としてはサーバーの安定感をもっとも重視しているので、これが安定するまではラダーは保留という形になります。ラダーにしかない要素というものも、もちろん用意してありますので、楽しみにしていてください。

――『D2R』はオリジナル版と新規要素が7:3の割合だというお話がありました。実際うまくいっていると感じたのですが、同じ形で初代『Diablo』のリマスター化を望む声もあるかと思います。それについてはどうお考えですか?

Kevin:私たちは『D2』をリマスターするというタスクを与えられたチームですので、『Diablo』に関するリマスターのお話については、ちょっとコメントできません(苦笑)。

 ただ、7:3という割合に関しては、ビジュアル的な面でいろいろなものを作ることができたという実感があります。例をあげると、Act1で最初に入る洞窟は、オリジナルでは岩しかない状態ですが、新しいエンジンで作ることによって、ちょっとしたキャンプの追加などができました。何もなかったところに、オブジェクトを追加することによって、そこで何があったのかという物語性を少し描けたかなと思います。

――今後のアップデートについて教えてください。

Rob:直近ではバグの修正や安定性の向上が課題ですね。その後にラダーの公開になります。まったく新しい要素、昔なかったものの追加といったものについては、現在いくつかアイディアがあがっている状態ではありますが、詳しくはまだお話しできません。

――ちなみに、お二人はどのクラスで遊ばれているのでしょうか?

Rob:私はオリジナル版ではソーサレスでプレイしていました。ですがコントローラーでのプレイが可能になってからはアマゾンが好きですね。弓とジャベリンの入れ替えがコントローラーだとすごくスムーズにできて楽しいんです。あとはネクロマンサー。綺麗になったグラフィックで、骸骨をたくさん引き連れて遊ぶのはとても楽しいですよ。

Kevin:私は最初に『DiabloⅡ』をプレイしたときはバーバリアンでプレイしました。その思い入れもあって、『D2R』でもバーバリアンを選んでプレイしていますね。

――最後に日本のファンにメッセージをお願いします。

RobKevin:日本のファンの皆さん、ありがとうございます。このゲームをプレイして頂いて我々も本当に嬉しく思っています。日本にも多くのファンがいることを知ることができたこともとても嬉しいです。

©2021 BLIZZARD ENTERTAINMENT, INC.

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ディアブロ II リザレクテッド

  • メーカー: Blizzard Entertainment
  • 対応機種: Windows PC、Xbox Series X|S、Xbox One、PS5、PS4、Nintendo Switch
  • ジャンル: ハックアンドスラッシュ系アクションロールプレイングゲーム
  • 配信日: 2021年9月24日

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