新しい戦国観、新しい時代が生んだ『信長の野望・新生』。小笠原プロデューサーインタビュー【TGS2021】
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『信長の野望・新生』の発売日は、2022年アーリー(早め)に! 現在開催中の東京ゲームショウ2021オンライン(TGS2021)では小笠原賢一プロデューサーにさまざまなお話を伺うことができたので、その内容をさっそくお伝えしていこう!
今年2021年は、シブサワ・コウが最初の歴史ゲーム作品『川中島の合戦』を世に送り出して40年目という記念すべき節目になる年。『信長の野望・新生』は、その40周年記念タイトルということで支えてくれたユーザーに喜んでもらえるタイトルを作ろうというところから開発がスタートする――
――過去シリーズでは、システム的なコンセプトを表すようなサブタイトルをつけられることが多かったと思います。今回の『新生』のサブタイトルはどのような意図があるんでしょうか。
この開発がスタートしたのは、ちょうど新型コロナウイルスが世の中に広まり始めた時期のことでした。我々も開発途中でリモートワークへの移行や緊急事態宣言といったことも起こり、世界中がさまざまな変化を強いられ、これからの人生や生き方がどう変わっていくんだろうという不安に包まれた人々は多かったと思います。そんな時代に打ち勝って、前向きに生きていこうという強いメッセージ性のあるタイトルにしたい……というシブサワ・コウの強い希望もあって生まれたものです。
また、近年のゲームを取り巻く環境も変わり、パッケージゲームが今後どういう姿であるかが大きく問われるタイミングだとも思います。弊社でも『三國志 覇道』を始めアプリを使ったゲームを多くのユーザーに楽しんでもらっていまして、いずれは戦国時代をベースにした新たなアプリ作品もリリースすることになるでしょう。そういったアプリゲームを楽しまれる方と、パッケージゲームを楽しまれる方では明確に楽しみ方が違いますし、そのゲームデザインの差を改めて見直すという区切りの第一歩としての気持ちも込められています。
――コンセプトワード“AIで躍動する武将たち”について教えてください。
シブサワ・コウ40周年とありましたが、みなさんの歴史に関する認識や知識も昔とは大きく変わったことだと思います。極論すると、一般の方の歴史知識って昔は小説や映画なんですよね。でも近年ではNHKさんの歴史番組を始め、さまざまな形での「実際の戦国時代はこうだったんだよ」というコンテンツが増えてきたと思います。NHK大河ドラマなんかもどんどん最新の研究を入れてきていますよね。我々もここはしっかりキャッチアップしてゲームに繋げていけないといけない部分であると思っています。これまでも武将個々の能力査定などでは表現してきましたが、そうではなくて戦国世界をどう感じられるか、戦国大名は実際どういう存在であったのか。もちろんゲームなのでデフォルメする部分も多いのですが、『信長の野望』は戦国大名を体験できる作品でありたいところです。
そんななかで、今回特に注力したのが戦国大名と家臣との関係性です。実際のほとんどの戦国大名は決して完全な権力を持つ独裁者ではなく、多くの地方領主のまとめ役的な存在でした。実際、みなさんももうそういう認識を持たれていることだと思います。でも、これまでの『信長の野望』では、家臣はプレイヤーが指示を与えないと一切何も行動を行わない“駒”だったんですよね。今回目指しているのは家臣たちが完全な下僕では決してなく、それぞれ領地を持ってしっかり自分たちの土地の経営発展を行っており、そこに大名が大きな方向性での指示を出して目標を合わせていく……という形なんです。
――すべての武将が領地を持つという考え方でしょうか?
そういう形にもっていきたいですが、武将の総数や大名家ごとの所有地の数の差を考えると区分けが膨大になりすぎてしまいます。本作での土地の最小単位は郡となっていて、その郡1つに対してそこを治める武将がいる、という考え方になります。
――武将に土地を与えるというと、転封などもできた『覇王伝』を思い出しますね。
そうですね。でも考え方としては真逆になります。過去作での領地は、武将に付属されるものであり、付け替えを楽しむような要素でした。そうではなく、独立した土地と所有者であり、大名はそれを束ねる存在です。ゲーム序盤では勝手にそれを取り上げることなんてできません。でもそこから徐々に勢力が拡大していくなかで介入できる要素も増え、自分は大名として力を持ったな……と体感する流れにもっていきたいです。
――分権から中央集権へ、といったイメージですね。独自に動くAIが、所領を持つ家臣としてプレイヤーの下につく形は面白そうに感じます。
またAIで言うとただのアルゴリズムというだけではなく、GoogleのAIスピーカーのように人間の意をくんでサポートしてくれる形を目指しています。領地経営としてのアルゴリズムと、プレイヤーの勢力拡大をサポートするAIとしての両面ですね。
――AI強化というと『三國志14』ではアルゴリズムへの拘りを感じました。海外の歴史ストラテジー作品は他プレイヤーとのマルチ化が進むなかで、『信長の野望』や『三國志』は1人でAIを相手に楽しむ方向性に進んでいますよね。そのAIの強化に徹底して、1人でじっくり遊べるように、というか。
プレイヤーは異世界にダイブして、天下統一を楽しむというのがシリーズコンセプトですから。今後も『信長の野望』の主流は、あくまでプレイヤー自身が1人でじっくり楽しむものだと思っています。もちろんそうではなく、他プレイヤーとのマルチを楽しみたいというニーズがあるのは承知していて、そこは同じ世界観や武将を使うにしても違う形でフランチャイズ展開するべきだとも思っています。マルチを入れるなら、マルチに特化したゲームデザインにするべきであって、1本のナンバリングでやることではないかなと。マルチ自体に関しては、うちとしては強く検討している流れでもありますが……。
――画面を見た第一印象ですが、『創造』の雰囲気を感じました。
『創造』のプロデューサーを務めた私が『新生』でもプロデューサーなので、見た目の方向性も似た形になっていますね。
――一方で、先ほどの郡単位のお話では『大志』の印象も感じました。システム面ではざっくりとお聞きして『創造』+『大志』の良いとこどりといった感じなんでしょうか?
システム面の深い話は今後のリリースでお伝えしていくつもりではあるんですが、今回は家臣たちがAIとして動くというシリーズで初の試みに最も注力しています。そこをしっかり作るのが第一で、マップ表現や合戦内政の仕組みは従来の評判の良かったものをよりアップデートした形。システム面はいわば馴染みのあるスタイルとしています。
――システム面は今後の続報に期待します。ちなみに『新生』での発売後、シーズンパスの展開予定は?
そこはまだお答えできないところですが……少なくとも歴史シミュレーションゲームって、発売してそれで終わるものではありません。ユーザーのみなさんが、必ずしも我々開発が考えた通りのプレイの仕方や楽しみ方をするわけではなく、そこは一緒に「ここはやっぱりこうだよね」と考えていく部分だと思っています。シーズンパスに限った話ではなく、そういう準備はしていきたいと思っていますので、みなさんのご意見も取り入れてより良い作品にするというところは是非やっていきたいですね。
今回のインタビューではAIがどんな形でゲームに絡んでくるのか、その部分について主にお聞きすることができた(システム面に関しては今後の続報待ち!)。そして本作でのプレイは大名限定であるとのこと。「配下たちが自分の意志で動く」というと、過去のゲームでは最終的には効率の観点から「いいから黙って言うことを聞け」ということになりがちではなかっただろうか。しかし現在コーエーはAI方面の強化にも力を入れており、実際のプレイではこれぞ戦国大名体験と感じるものだと願っている。
なんにせよ今回のTGSで初めてゲーム画面もお披露目となり、大いに期待高まる『新生』。その名の通り、新しい時代が生んだ『信長の野望』となることを期待して続報を待ちたい。
『新生』新武将グラフィック紹介
ここからは『信長の野望・新生』で新たに描き下された武将イラストを見ていこう。なおインタビューによると、武将数は『信長の野望・大志』より増え、2000人以上とのこと。
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