『劇場版 FFXIV 光のお父さん』撮影現場に潜入! 山本監督&マイディーさんインタビューも【電撃PS】

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 2019年6月21日公開の映画『劇場版 FFXIV 光のお父さん』のゲームパート撮影現場に潜入! ドラマ版・劇場版ともにゲームパートの監督を務めた山本清史氏や、原作者のマイディーさん、そしてプロデューサーとしてマイディーさんのブログ内でも紹介された“光のぴぃさん”たちに映画版の魅力をお聞きした。

映画『劇場版 FFXIV 光のお父さん』とは?

 全世界1400万以上のアカウント数(※)を誇るオンラインRPG『ファイナルファンタジーXIV』を題材とした映像作品“光のお父さん”は、息子であることを隠して父とオンラインゲームをプレイする日々を綴った、累計アクセス数が1,000万を超えるブログが原作。連載はたちまち人気を集め、連載最終回が“Yahoo!ニュース”で取り上げられるほど話題になりました。

 その後、SNSで絶賛の声が爆発的に広がり、ネットの世界を飛び出して地上波でドラマ化が実現。“ドラマ化原作本”も発売され、スクウェア・エニックスの全面協力を得て映画化されます。

※日本・北米・欧州・中国・韓国の5リージョンの累計アカウント数。フリートライアル版のアカウントを含む。

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都内オフィスでのゲームパート撮影を見学――同じ部屋に集ってこだわりの映像を制作

 劇場版ゲームパートの撮影は、都内某ビルの1フロアにPCをズラリと並べ、山本監督やマイディーさんをはじめとするスタッフが集う形で行われていました。ドラマ版ではオンラインを介してチャットで指示しながら撮影を進めていたそうですが、今回は監督が直接声で指示を出しながら、細かい部分までこだわって進められていた様子。

 例えば砂漠を歩いてキャラクターたちがキリっと整列するシーンであれば、プレイヤーが歩く方向や集まるタイミング、集まったときの目線や表情などが逐次調整され、妥協なく映像が作られていました。


 しかも今回の劇場版はパーティメンバーの人数構成が異なることもあってか、ゲームパートも全編撮り下ろしという気合の入りっぷり。劇場では、俳優さんたちの演技ももちろん、ゲームパートのキャラクターたちの“演技”にもぜひ注目したいところです。

 また、今回は撮影現場の見学と前後して、“光のお父さん”ドラマ版・映画版両方のプロデューサーを務め、マイディーさんのブログにも登場した“光のぴぃさん”こと渋谷恒一氏に、映画となった経緯やドラマ版との違いをうかがう機会がありました。

光のぴぃさんにたずねる『劇場版 光のお父さん』制作にたずさわる想い

 劇場版の企画は、1年くらい前にスタートしました。ドラマが終わってから、ありがたいことに「非常にいい物語なので、映画にしたらどうだ」というお話をいただいて。原作のブログファン、『FFXIV』ファン以外の方にも普遍的に見てもらえる人間ドラマですし、「映画化に踏み切って多くの人に見てもらおう」という動きが、だいぶ前からあったんです。ただ、お父さん役を好演していただいた大杉さんの訃報もあり……。悩みつつ進んでいたなかで、現実にもいろいろなドラマがありました。その結果、今の姿にいたったということです。

 『光のお父さん』ドラマの反響はものすごかったです。6言語くらいに翻訳されて、Netflixさんを中心に230の国と地域で見てもらえました。Netflixさんは実際の視聴回数が非公開なのですが、“不動の1位であったテラスハウスを抜いた”と聞きまして。これは、非常に力を入れてオリジナルのコンテンツを開発していたこともありますが、それとは別に、ゲームIPの強さというのが刺さった結果なのかなと思います。

 “光のお父さん”において、私がプロデューサーとして絶対外さないぞと思っていることが1つあるんです。というのも、(オンライン)ゲームを題材とした作品というのは、「レディ・プレイヤー1」などを見てもわかるとおり、その多くが登場人物に現実世界で“傷”があるんですよ。スラムに住んでいるとか、なんとなくネガティブなものを抱えていて……いわゆる“現実世界ではネガティブだけど別の世界ではヒーロー”という描かれ方をされる。それはそれでいいのですが、皆さんだからこそおわかりのとおり、ゲームをプレイしている人の大多数は、普通の人なわけです。

 光のお父さんのように、一般的な生活を送るプレイヤーが、誰にも生まれ得る悩みを抱えながらもゲームを通じて人同士の関係を深めていくドラマっていうのは、じつはないんですよ。どこにもない話だと思っています。ですので、そういった光のお父さんならではの部分にはこだわって作っていきたいと思っていますし、“ゲームをポジティブなものとして捉えたい”というのは原作者であるマイディーさんも、プロデューサーの私も、監督も、みんな同じ思いでやっています。

 そんななか、スクウェア・エニックスさんには今回、通常ではありえないくらいのご協力をいただいていて……。ゲームパートの撮影は、都内某所とスクエニさんをオンラインで直接結んでもらい、開発サーバーと同等の環境をお借りして進めているんです。これが映画ならではのダイナミズムでしょうか。開発サーバーを使えているため、天気や時刻を変えたりもでき、かなりいい環境でやらせてもらっています。

 ドラマのときは、すべて通常の公開サーバーでやっていたんです。これはこれでクレイジーなんですけれど、“顔も名前も知らない方々が思い思いに活動しているなかで、誰もが出来得る環境で1本のドラマを作っていた”ということが、ドラマ版の1つの魅力だったと思うんですね。ただ今回、映画館の大きいスクリーンで見てもらうわけですので、僕らは“せっかくだから、もっと細やかに演出をしよう”と試みたんです。

 撮影も今回、1つところに集まってやっていますが……。ドラマ版のときと違って、エモートやグループポーズ、景観カメラなどなど、ゲームの中の映像や演技の表現力が非常に増しています。その表現力を生かすためにはどのように撮ったらいいのか、と考えたときに“やはり対面でやるしかない”と思い至ってこうなったんです。

 幸い、スクウェア・エニックスさんにご相談したところ今のような環境を用意していただき、ゲーミングパソコンなんかもスクウェア・エニックスさんと某コンピューターメーカーさんのご協力のもと、20数台手配いただきました。操作しているキャラクターの容姿をすぐに変更できたので、見た目をチェンジしてモブ役を演じ、町中のシーンを撮ってから、元のキャラの容姿に戻してツインタニア戦をプレイする……なんてこともやれています。実際に映像を見ていただくと、彼らが1人1人キャラクターを操作している味がでているかと思いますよ。

 ドラマ版ではお父さんとマイディーさんだけがプレイヤーだったんですが、劇場版ではほかにもプレイする人が増えていたり、ゲームの中で登場するキャラクターが増えていたりなどの見どころがございますので、ぜひ楽しみにしていただければと思います。

撮影に臨む山本清史監督&原作者・マイディーさんにインタビュー!

 撮影現場取材ののち、山本監督とマイディーさんに複数メディア合同でお話を聞く機会が設けられました。映像の魅せ方についてや、お2人が大事に思っていることなどなど興味深い話題が詰まっていますので、ぜひ最後までご覧ください!

【監督】山本清史氏(エオルゼアパート)

 C.A.S.E株式会社・代表。エオルゼアパートの監督として、フリーカンパニー・じょびネッツアのメンバーを指揮。数々の映画に監督、脚本、原作としてたずさわってきたほか、“呪怨-終わりの始まり-”などを執筆した小説家としての一面も持つ。

【原作】マイディー氏

 人気ブログ“一撃確殺SS日記”の管理人。ドラマ&映画の原作である企画“光のお父さん”の仕掛け人であり、エオルゼアパートのキャラクターアクターも務める。

――あらためて“光のお父さん”が映画になることについて、お2人の感想をお聞かせください。

マイディー氏(以下、敬称略):キャラクターアクター側としては、じつはドラマ版を終えた段階で“課題が残っていたな”と思っていたところもあって、またやりたいという気持ちはすごく大きかったです。ついに銀幕デビューということで、さらに気合を入れなければならないなと、気持ちを新たにしています(笑)。

山本清史監督(以下、敬称略):ドラマのときは、撮る側としても、“できること”と“できないこと”が明確に分かれていました。ドラマがちょうど終わったタイミングでゲームがバージョンアップし、グループポーズや景観カメラのおかげで撮影環境がよくなったということがあって、それがかなり悔しかったんです。なので“やり直せるなら、最新の環境でやり直したいな”という部分はありました。そういう意味でも、映画はいいチャンスだと思いましたね。

マイディー:今ではエモートの数も増えましたもんね。

山本:雲泥の差ですね。今はレンズの種類も変えられますし。実装当時は「もうちょっと前に(バージョンアップを)やってくれたらよかったのにな」と思っていました(笑)。

――ドラマで得た経験値に加え、今回は開発サーバーと同等の環境を借りられたという環境は、まさに“鬼に金棒”という感じでしょうか?

山本:天候の操作が可能なので、天気が変わるのを待つ……ということがなくなりました。天候も含めた演出ができるようになって、絵作りに欲が出ちゃいますね。どんな天候にするかなどいろいろと考えてしまうので、考えなければいけないことは増えたと思います。

――天候の操作は、特定の時刻に設定して合わせるという感じなのですか?

山本:そうですね。夕方や朝方の日光などを把握しつつ、画面に合わせて微調整を行います。太陽が逆光になるように時間調整をしたりとか。

――ドラマ版と比べて、さらに“撮影場所に対する知識”が必要そうな印象を受けます。

山本:そうなんです。ロケハンがすごい大事なのですが、意外と伝わらないですよね(笑)。場所ごとにある独特な要素や、時間や天候による見え方の違いなどを知っておかなければならないので、まったく違うゲームをプレイしている気分でした。

――ドラマ版から意識的に変えている部分や、逆に変えていない部分などはありますか?

山本:ドラマ版でけっこう好評だった、インディさん(お父さん)がマイディーさんの周りをくるくる回るシーンがあるのですが、僕の中では、その画にいまいちピンときていなくて……。単に“インディさんがくるくる回ってどこかに行っちゃった”というシーンでしかなかったので、そこで何が起きているのかが視聴者の方に伝わりにくかったんですよね。今回は、俳優さんが見ているモニタの中でその事態が起きたら見え方もだいぶ変わってくるのでは……と思い、意図的に変えてみました。

 また、“現実世界でのゲーム画面”と“エオルゼアパート”というものを、今回は演出的にハッキリ分けるようにしました。基本的な骨組みは変わらないのですが、映画ではそのように見せ方の部分が変わると思います。

マイディー:演じる側としては、ドラマ撮影時と比べてエモートの数が大きく増えているのが大きな変更点ですね。とくに表情が増えていますから、動作と表情の組み合わせなどを特に意識しています。前よりもっとクオリティの高いものを作ろうという意気込みはありますが、やることは基本的に変わってはいませんね。

山本:ただ今回は実際に現場に集って撮っているので、綿密な打ち合わせができるせいか細かい要求が増えましたよね。

マイディー:そうですね。ドラマ版のときはチャットで打ち合わせをして、天候待ちもあって、撮れる時間も決まっていて……という状況で撮影していたので、待ち時間が大部分を占めていました。今回は近い距離で喋りながらできるので、僕らとしてもすごくやりやすかったです。映像としても、インディ&マイディーが演技をしている背景で、また別の芝居が入ってきたりもします。ドラマ撮影の時点ではそんな芸当は不可能でしたが、今回はかなり細かく演出を入れられるので、だいぶ画面の印象は変わっていると思います。

――1回の撮影にどのくらい時間をかけて、何回くらいに分けて撮影しているのでしょうか?

山本:一日5~6時間の撮影を2週間くらいかと思います。

マイディー:いや、もっとやってるのでは(笑)。

山本:あ、エオルゼアパートだけの時間です! “現実世界のゲーム画面”の撮影はもっと時間がかかりますね。ゲーム画面自体は、いわゆる通常のゲームをしているときの画面になるので、UIの配置やチャット欄の広さ、文字の大きさなど、プレイしている人間のキャラクターと直結すると思うんです。

 例えば、インディさんの画面はこうで、マイディーさんの画面はこうと決まっているのですが、それを撮るとなると、エオルゼアパートを撮るよりよっぽど大変だということをあらためて感じましたね。ただチャットを撮るだけなのに、ものすごく時間がかかりました(笑)。

――本日30分ほど撮影時の様子を見ることができましたが、撮影はスムーズにできましたか?

山本:今日は初めてお会いした人も多かったですし、人数も多かったので気を使ってやっていましたね。

マイディー:すごく優しかったですよね。いつもだと、もっとズバズバ指示が飛び交っているんですが(笑)。

――じょび(じょびネッツア:マイディーさんがリーダーを務めるFC)の方々も撮影に参加されているとのことですが、以前から劇場版の話はお伝えされていたのでしょうか?

マイディー:いえ、そんなに前ではありません。話が二転三転することもあるので、全体に発表したのはつい最近です。本当に撮り始める直前くらいからですよ。ですが、来てもらっているメンバーには半年くらい前から状況は伝えていました。今回撮影に参加しているのは、ドラマ版でも手伝ってくれたメンバーなので信頼していますし、飲み込みも早いです。おかげで「よーいドン!」ですぐに撮影がスタートできました。

――ある意味、“撮影”というFCイベントをやっているようなものですし、けっこう楽しそうですね。

マイディー:そうですね。ちなみに、僕は自主練していました(笑)。

山本:そういえば今回、マイディーさんの演技中の画面を見て衝撃を受けたんですよ。「1、2、4」って数字が書いてあるマクロがあったんですが、あれって何ですか?

マイディー:あれはリップシンクの秒数ですね。1秒間喋るときのマクロ、2秒のマクロ、4秒のマクロを表しています。セリフに合わせて使い分けているんです。監督も指示を出すときは秒数で言ってもらっていいんですよ? 「2、2、4で」とか(笑)。

山本:聞く人が聞いたらサッカーのフォーメーションみたいですよ(笑)。ちなみにマイディーさんはリップシンクに加え、キャラの表情も毎回付けているんですよね。

マイディー:ええ。表情も、例えば怒る時であれば素顔からいきなり怒るのではなく、いぶかしげな表情をしてから怒るというように、3段階くらい使ったほうが、より自然な表情になります。エモートって、ゲーム内で実行するとすぐにその感情を表す顔になってしまうんですよ。それをそのまま使ってしまうと、少し安っぽくなってしまうかなと思い、間に別の表情を挟んだり、ちょっと視点を動かしたりですとか、工夫をしています。

 普通に会話をする場面でも、棒立ちではゲームっぽさがどうしても出てしまいます。さっき言っていたような“現実世界でのゲーム画面”ではかえって棒立ちで喋っていたほうがゲームらしくていいのですが、エオルゼアパートは主人公の脳内で補完された世界という位置づけなので、できるだけ人間らしく動かないとダメなんです。だから棒立ちではなく、体勢を変えながらしゃべったり、自然な動きになるよう工夫をしています。

山本:座りながらしゃべってもらったり、振り返りながらしゃべってもらったり、人間らしく見えるようにいろいろとやっていますね。

――特定のエモートから戻るときなど、一瞬で真顔に戻りますからね。そういうときにすごく気を使いそうです。

マイディー:そうですね。例えば“ほほえみ”という表情にしても、すぐに素顔に戻っちゃうと「絶対今の嘘笑いだろ!」と思っちゃいますよね。なので監督がカットって言うまではずっとそのエモートを連打して、笑顔をキープしていたりします。

山本:それがかえっておもしろい場合もありますけどね。例えばインディさんとかは、スッっと表情が戻った方がそれらしくておもしろかったり。

マイディー:そういうところでキャラクター付けができる場合もありますからね(笑)。

――ドラマの経験が生かされている部分や、最初におっしゃっていた“課題がある”という部分について、解決できたものなどはありましたか?

マイディー:ありがたいことに、今回も大枠はドラマ版と同じく原作準拠のストーリーなので、似たシーンが出てきます。気持ち的には“バージョン2.0”的な気持ちで挑むというか、前の演技をベースにして変えていくことができるのが強みですね。この前撮った“羅刹衝”のシーン(ピンチに陥ったインディさんを助けるため、マイディーさんが“羅刹衝”の技で敵を倒すシーン)などはうまくできたかなと思います。カメラアングルがとてもよくできたかな、と。

山本:あれはしてやったりという部分ですね。10テイクくらい撮りましたから(笑)。

マイディー:チーム全体も成長していますし、顔を会わせて声をかけ合いながらできるので、それが生きていると思います。撮影現場では、全員から見える位置に置いた大きいモニタに監督が見ている画面が表示されるんですよ。撮影直後にどんな状態で撮れたのかがすぐに確認できるので、ダメだった場所がわかりやすいんです。前はそれができなくて、何がよくて何が悪かったのかもわからず、全部監督に委ねるしかありませんでしたから。

――先ほど見せて頂いた感じですと、位置調整も画面から見るのと正面から見るのでは全然違いましたね。

マイディー:監督が直接歩いていって「ココね」みたいなこともよくありますよ。

――マイディーさんと監督で、見せ方について意見が衝突することはありますか?

マイディー:その点に関しては監督が柔軟に対応してくれていると、いつも思っています。例えば「このシーンを撮りますよ」というときに、僕らがまず「こういうものをやりたいです」と演技プランのようなものを出すのですが、それを飲んでくれたり、「ここだけちょっと変えようか」と言ってくれたり、まず僕らの意見を聞いてくれるので、のびのびできています。同じ人が複数のキャラを動かすのではなく、複数人でそれぞれが演じているからこそ個性が出てくるという環境を作ってくれているので、その点もありがたいですね。

山本:やっていることは、じつは実写とあまり変わらないですよ。ドラマ版のときは、むしろチャットだからこそ感情がストレートに伝わってしまい、誤解や意見の相違みたいなものはあったと思います。そこはお互い大人の対応をした点はあったかもしれません。

 とはいえ撮影環境が変わっても、僕の中ではやっていること自体は同じですね。チャットでやろうが、ボイスチャットでやろうが、対面でやろうが、僕の気持ちとしてはほとんど変わりません。

――ドラマ版に比べると、劇場版は尺的にもっとコンパクトなつくりになるかと思いますが、シーンの選出などはどうやって決めたのでしょうか?

山本:これは難しい話ですね……。原作となったマイディーさんのブログの、どの部分をつまむかという話ですが、ドラマ版のファンもいることを考えると、ドラマでやっていたこともある程度残しつつ、まったく新しいお客さんにも伝わらないといけない。でもマイディーさんのブログをずっと追い続けてきた人たちも満足できるようにする……それを実現するための議論は、ここ1、2カ月間でかなりありました。

 そもそも映画の尺が長くて、最初に打ち合わせしたときに「この尺、本当にやります?」というところからスタートしました。「絶対長いけど、大丈夫ですか?」と。「削りたくないし、削れないよね」ということで落ち着きましたが。そして、そう決まったのであれば次の議論は“どうおもしろくするか”というところです。そのためにはどうしても削らなきゃいけない部分というのもあったりして、そこは泣く泣くカットすることにしました。

 マイディーさんの意見もあり、スクウェア・エニックスさんの意見もある。野口照夫さん(実写パートの監督)たちの意見ももちろんあるし、そこはもう腹の内をさらけ出して話し合おうと。

マイディー:会議室じゃなくて、カラオケボックスで打ち合わせしましたよね(笑)。

山本:借りられる会議室がなくて、いい大人が10人くらいカラオケボックスに入って打ち合わせしたんです(笑)。僕と野口さんはお互いの家の近くまで行ったりして、夜中まで意見交換をしていました。実写パートとエオルゼアパートとのつなぎかたや、それぞれのシーンの意味などは演出で詰めなければならない部分なので。それありきで脚本に落とし込むための打ち合わせを何回かしました。もちろんドラマのときもしていましたが、今回はさらに多かったですね。

――その打ち合わせのなかで、実写パートとエオルゼアパートそれぞれで、どういったテーマを重点的に取り上げようとしたのでしょうか?

山本:1本の映画という軸で考えた時に、絶対に捨ててはいけないのは、“お父さんの成長”という部分だろうと思いました。『光のお父さん』というタイトルでもあるし、『FFXIV』を始めて、のめりこんでいったからこそ、自分が隠していた想いとか、伝えきれなかった言葉というのを伝えられるようになっていく。そういった大きな意味でのテーマは絶対に崩してはいけなくて、“それを見せるための仕掛けを置いていこう”という話になりました。

 加えて、マイディーさんの分身となる岩本アキオというキャラクターは、ドラマ版ではゲームで学んで会社で生かすというシーンが多く存在させていましたが、お父さんの成長とアキオの成長を、なんとなく絡めていきたいなという気持ちも、じつは監督同士で一致していたんです。そこで、2人がゲームを通して絆を取り戻しつつ、親子関係を改善していく、成長感のある物語を描くにはどうすべきかと議論しました。反面、いろいろな小ネタはあるにせよ、作品の軸となる部分につながらないとただの蛇足になってしまうので、そういう部分は思い切って削っていきました。

――新キャラとしてアキオの妹が登場するとのことですが、新たに登場人物を増やした理由を教えてください。

マイディー:話を詰めるためのテクニックですかね。やはり2人で話を進めるよりも3人のほうが話が転がりますし、展開が早くなるんですよ。

山本:お父さんとアキオがお互い言葉をかけにくいという関係性のなかで、連結点となる人物が必要だったと感じました。そのうえで、お母さんよりは、“家族内でガンガン文句を言えるような立場の存在がいるといいな”と思いまして。例えば妹に「もう好きにやれば」みたいに強気で言われた結果、お父さんとアキオがなし崩し的に「お、おぉ……」となるような展開に持っていきやすいかなと考えたのがきっかけです。

――妹は一緒にゲームを遊ぶわけではないのでしょうか?

山本:最初はそんなアイデアもあったとは思いますが、それはちょっと不自然かなと僕は思っていて……(笑)。「ゲーマーとか超キモイ」って思っているほうが、よくいる女の子という感じが出るかなと。

――ドラマにいなかったルガディンもいましたよね。彼についても一言お願いします。

マイディー:詳細は言えないのですが……僕らがとても気に入っているキャラクターです。

山本:キャラクター性については、けっこう僕に裁量が委ねられていました。どういうキャラクターにしようかと考えた時に、「そのキャラクターを使う人はどんな人だろう」と考えたんです。「こういう仕事をしているから、ジョブはこれかな?」とか。台本を読み解くと「強そうなやつがいいよね」と言っていたので、強そうに見えるキャラクターはどんなものかと案を出し合った結果、アクション映画スターみたいなキャラができあがったんです。一方で入れ墨などは可愛いものを足して女の子らしさを出そうとか、キャラメイクはおもしろかったです。

マイディー:僕的には、ルガディンを選んだことも含め、けっこう攻めたキャラクターだと思っています。例えばプレイヤーが、オンラインゲームをまったくやったことがない友達を誘ってみたら、その友達がいつの間にか自分を追い抜いて、けっこうガチ勢に成長していくパターンってあるじゃないですか。そんなイメージのキャラクターなのかなと思っています。映画の中ではそこまでのストーリーは進まないんですが、そういう要素のあるおもしろ味は表現できたかなと思います。お父さんとは違う、もう1人の、異なるスタンスの初心者さんを出したかったんですよ。

――ドラマでは、マイディーさんは部屋のプロデュースなどもなさっていたと思うのですが、今回も実写パートに関わっているのでしょうか?

マイディー:いいことを聞いてくれました…‥! じつは僕、調子に乗って10万円ぶんくらいファンフェスグッズを買ってしまいまして。なので「ぜひそれを使ってください」と言って、実際にアキオの部屋に使ってもらいました。最近の『FFXIV』プレイヤーの部屋で、まったく『FFXIV』のグッズがないというのも不自然なので、一番新しいおしゃれなリングとか、サボテンダーのボードゲームとかの私物を、小道具として提供しています。届いた日にとりあえず封を開けてブログ用に写真を撮って、すぐ戻して撮影に持っていくみたいな。自分ではほとんど見る時間がなかった(笑)。

――アキオの部屋はドラマ同様、美術さんとマイディーさんの意見をすり合わせてイメージを作っていったのでしょうか?

マイディー:そうですね。実際に僕が過ごしている自宅とはちょっと違うんですが、『FFXIV』プレイヤーから見て憧れを感じてもらえるように作ったつもりです。理想の『FFXIV』プレイヤー部屋という感じですね。

――先ほどの「2、2、4」のリップシンクのお話などすごく感銘を受けたのですが、マイディーさんはそういった“見せる”ための技術はどこで学んだのでしょうか?

マイディー:やっぱり、ブログですかね。スクリーンショットは『FFXIV』のサービス直後から、本当に毎日撮っていますし。リップシンクについても、その過程で自分で考えたもので、どこかで学んだというものではありません。

 私は過去に芸人をやっていた時期がありまして、吉本の養成所などに通っていたときに、演技などを習ってはいました。あとは映画のドキュメントとかを見るのもけっこう好きなので、そういう影響があるのかもしれないです、が、絵的な部分はずっとスクリーンショットを撮っていたなかで培ったものです。“こういう演技をしたらこういう画面ができるな”という感覚は共通している部分がありますから。そういったもろもろの経験が生きているのかもしれません。

――最後に、映画の見どころについて語っていただければと!

山本:“実際のゲームのキャラクターを動かして撮った映像が、銀幕やテレビの画面に耐えられる映像になるんだ”ということを知ってほしいです。「映画ってこんなふうに撮るよね」っていう思い込みや先入観みたいなものは、僕らのなかにも当然あるんです。でもそうではなく、今はゲームというツールがあって、“その中でこういう手段を取れば映画だって撮れるんだ”っていうことが、僕の中ではモチベーションになっているんです。

 正直「これってCGで撮ったんでしょ?」って思われたら勝ちだと思っているところもあります。何も知らないお客さんがそんな感想を抱くような作品になったらいいなと思っていて、そうなれるように頑張っていますので、エオルゼアパートがどう見えるか、ぜひその目で確認していただきたいです! 思っているものとは絶対違うものになっていると思うので、ぜひお楽しみに!

マイディー:基本的には「親子のドラマです」というストーリーにはなっているのですが、僕がずっと思っているのは、これがオンラインゲームの可能性であり、オンラインゲームプレイヤーの1つの夢の形であるということです。自分のプレイが映画になったり、自分のキャラクターに声が付いたりすることって、すごくロマンがあることだと思うんですよ。

 監督がおっしゃったとおり、CGだと思われるくらいの完成度を見てもらいたいという気持ちは僕にもあります。そこからもう一歩踏み込んで、実際にプレイヤーが操作しているキャラクターを撮った映像というのは、CGとはまた切り口が違う、見せ方の1つなんだということも伝えたい。キャラクター1人1人に命があって、考えがあって、演技をしている。どちらかというと、リアルの撮影現場に近い環境が存在するということを知ってもらいたくて、僕は一生懸命演技をしています。

 オンラインゲームって、どうしても“ゲーム”と付いてしまう以上、敵を倒したりレベルを上げたりという点が注目されてしまいがちですが、『FFXIV』という作品は、そこからもっと文化的な活動もできるんです。最近では音楽を奏でてコンサートしている人たちもいますし、バーを経営している人もいます。本当に多様性を持ったゲームというのが、今のオンラインゲームだということを知ってほしい。ですので映画を見て、おもしろそうだと思ったら、ぜひ『FFXIV』を遊んでほしいなと思います。

――ありがとうございました!

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