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2001年5月19日(土)

SCEが日本人プレス向けに行ったPS2新タイトル『ジャック×ダクスター』発表会詳報!トップクリエイターの発言を余すことなくお届け!

 SCEは5月17日13時より(現地時間)、PS2新タイトル『ジャック×ダクスター』発表会を行った。この発表会は、先日SCEAが発表した『Jak and Daxter』を、改めて日本人プレス向けに行われたもの。日本では『ジャック×ダクスター 旧世界の遺産』というタイトルで発売されることになる(ちなみに発音は、「ジャックンダクスター」)。
 
 気になる日本での発売日は、アメリカと同様2001年冬を予定(価格未定)。会場には、先日のSCEAカンファレンスにも登壇したNaughty Dog社長ジェイソン・ルビン氏(本作のプロジェクトリーダー兼デザインチームリーダー)&アンディ・ガビン氏(本作のプログラムチームリーダー)、そしてCerny Games社長のマーク・サニー氏が出席した。以下、発表会での彼らの発言を余すことなく掲載してみた。

ジェイソン・ルビン氏
「本日は遠いアメリカまでようこそおいでくださいました。ここにいらっしゃる皆様の中には、以前『クラッシュ・バンディクー』の頃にお世話になった方もいらっしゃるようで、大変嬉しく思っております。今回、Naughty Dog初のPS2タイトルをご紹介させていただくことになりますが、こうして皆様の前で発表できる場を設けていただいて直接お話しできることを、大変光栄に思っております。  
 
 PSの頃、常に私の頭の中では、自由な環境の中で自由にキャラクターを動かせるゲームを作りたかったという考えがありましたが、PSのスペックを考えると、ある意味レールに乗せて、その中でどれだけ楽しい遊び方を構築できるか、と考えた方が得策であると判断していました。ただしPS2というマシンに出会ってから、自由な世界を自由に動けるような遊びの場を作ることができるゲームを作れるようになったわけで、これこそまさに自分が追い求めていたマシンであり、自分が求めていたコンテンツを作れるようになったわけで、大変嬉しく思っています。
 
 今作『ジャック×ダクスター』を開発するにあたっての1つのコンセプト、ビジョン――自分が思って挙げているだけなんですけども――があります。それは、シームレスな世界を構築する、ということです。それはどういうことかと言いますと、ゲームの世界に感情とともに入り込んでいただくために、ローディングなどゲームの進行を妨げる部分をいっさいなくし、画面の中には本当にその世界が実在する、ということをなんとしても実現したかったのです。
 
 前述の通り、PSの頃はある意味レールに乗った上での楽しさの構築だったわけなのですが、今作は世界をまるごと表現しています。しかもそれがシームレスに繋がっているでので、たとえばワープルームのようなものを介さずとも世界のどこへでも自由に行き来できるということが実現できています。今作の開発期間は、今日までコアなテクノロジー担当のスタッフは3年、デザイナー等のスタッフに関しては2年ほどの月日をかけています。 『クラッシュ・バンディクー3』の時は、15人で9カ月という人数・開発期間で開発しました。今作は34人で2年です。『クラッシュ3』のチームと単純に比較すると、どれだけこのゲームが大きなものであるか、少しはわかっていただけるのではないかと思っております。世界観を作っているグラフィック、モデルににごまかしはありません。全部3Dフルモデルで制作しています。後ろに回っても反転していることなどありません。すべて手作りという感覚で作っています。5千万~6千万ポリゴンの規模になると、試算しております。たとえばゲームのステージの小高い所に登って周囲を眺めてみると、すべての世界がその通りに見えるのです。遠くにあるものに関してもそこに行けば、実際その通りのものがある、そんな世界を構築できました。
 
 さきほどE3会場に行ってきたのですが、ちょっとほっとしています。他社さんのソフト、フォーマットと比べても絶対見劣りがしないという自信と自負があります。今作のめざすゲーム性は、『マリオ』、『ゼルダ』、『クラッシュ』の良いところを混ぜ、さらに新要素をふんだんに盛り込んだものになるでしょう。このようなゲーム性で、ユーザーの皆様を楽しませることができるでしょう。 開発するにあたって、かなり革新的な技術を投入しております。その部分を、メインプログラマーのアンディに紹介してもらいましょう」

アンディ・ガビン氏
「PS2の演算能力を使ってできることがいっぱいあると感じています。ポリゴンに関してもかなり複雑な表現ができ、それを物理計算でいろんな演算処理をしながら動かすことができるということなので、この能力をふんだんに使っていこうと考えております。
 
 まず1つは、「ダイナミックライティング」。複数の光源からオブジェクトに光を当てていくつもの影をきちんと落とすことでできる、この「本物の影」を使って、いろいろな表現をしています。
 
 もう1つは、ポリゴンの数をカメラの位置やキャラの動きによって自動的に計算し、それをきちんとした数で描画するという技術を使っています。これによって、遠くのものまできちんと描写し、遠くのものは遠くに見えて、それをめざして近寄るとどんどん近くで見ているような、自然な感覚を得られることができます(レベルオブディテール)。
 
 今作では、環境マッピングに関しても色々な技術を使っております。バックグラウンドとフォアグラウンドの両方に充てたりと、かなり洗練された使い方をしています。ゲームの世界をより生き生きとした表情を与える1つの要素となっています。
 
 もちろん背景だけでなく、キャラクター性を十二分に楽しんでいただくために、キャラクターに関しても色々な技術を使っています。その1つには、関節部分を「スキニング」という手法で、ごく自然に曲がっているように見せています。もう1つが「フェイシャルアニメーション」で、顔の表情を生き生きと変化させるというものです。
 
 ただ今、スクリーン上に見える部分について説明をしましたが、そこだけでなく、ゲーム性を司る目に見えない部分についても気を配って技術を投入しています。カメラワークについては特別に作ったAIを搭載し、3D酔いをなくすだけでなく、実際プレイヤーが遊んでいるとき、常にプレイしやすいように最適な情報を与えるような画面の構成に自動的にしてくれるシステムを投入し、ゲーム性のさらなるクオリティアップを図っています。
 
 ノンプレイヤーキャラに関してもAIを積み、自動的に障害物を避けたり、裂け目を飛んだりと、自由で可能にするようになっています。キャラクター性を出す上で重要になるのは、やはりモーションだと思っていますので、「アニメーションブレンディング」という技術を投入しました。この技術は、たとえば、走っている途中でジャンプするという、走るアニメとジャンプするアニメの間のモーションを補完してくれるような、キャラの動きをスムーズに見せてくれるものです。  以上のような技術を投入し、ゲーム性を非常に楽しめるものにするということに関しては、とても自信があります。技術的な部分だけを見ても、ハイエンドPCに勝てるのでは、と思っています。 『クラッシュ』のときもそうでしたが、我々だけでこのゲームを作っているわけではありません。いろいろな方のサポートがあったからこそできたものだと思っています。特に、マーク・サーニーには、あらゆる部分で協力してもらっていることが、我々がここまでやってくることができた大きな要因の1つでしょう。クリエイター、プロデューサー、パブリッシャー、この3つがきちんと機能してはじめて、『クラッシュ』のような大きな成功があったと思っています」

マーク・サーニー氏
「今日はお越しいただいてありがとうございます。顔なじみの方々がいらしていただいて、大変懐かしく思っております。
 
 去る1999年、PS2に携わる最初のアメリカ人になりたくて、妻と犬を連れて日本に3カ月間ほど住んでいた経歴があります。そのときは、汎用性のあるライティングシステムのプログラムを開発いたしました。そのような日本での経験の後アメリカに戻りまして、Naughty Dogのエンジニアの方々と仕事をし始めました。そのときは、キャラクターの関節部分に関するサポートの開発を行いました。そのことに関して言えば、ここまでやれば十分だな、と思うところまで達成できました。
 
 これで仕事は終わったかな、と思ったのですが、ジェイソンから「ローディングのないゲームを作れ」「レベルオブディテールを作れ」「5千万ポリゴンの世界を構築するような手法を作れ」「リアルタイムな時間の経過をスムーズに見せるようなものを作れ」「光の当たり方についての新技術を盛り込め」と、ある種命令に近いことを言われました。めちゃくちゃ大変でした。
 
 実際そのために、12個のゲームエンジン(描画のエンジン)を作りましたが、結局残ったのは5つ。なんとか完成させましたが、ダメにしてしまった7つだけでもゲーム1本を作れそうでした。我々が使った技術がどのようにゲームに使われているか、それは実際にプレイしていただいてはじめてわかることでしょう。今日は試遊台を用意しておりますので、ぜひプレイして楽しんでください。 再びジェイソン・ルビン氏 「『ジャック×ダクスター』は、『クラッシュ』の時の経験を生かして、日本のマーケットにフィットするようにとことんつきつめて制作しております。ご静聴ありがとうございました。」

SCEが満を持して贈る世界的戦略タイトルは、PS2ならではのアクションゲームだ!

「キャラクターを動かしているだけでも面白い! いろんな場所に行きたくなっちゃうよ」弊社電撃ゲーム誌統括部長・塚田談