8月23日のゲームキューブ発表会終了後、任天堂情報開発本部長・宮本茂氏へのマスコミ各社による共同インタビューが行われた。インタビューには海外の報道陣も多数出席し、遠慮ない質問にきわどい答が飛び出す場面もチラホラ。『ゼルダ』、『マリオ』、『ルイージマンション』などのゲームキューブ最新タイトルに関する話題のほか、オンラインゲームに対する宮本氏の姿勢や、コントローラの十字キーがなくなるかも、などといった、ここでしか聞けない内容が数多く披露され、たいへん貴重な会見となった。
以下にこのインタビュー内容を一問一答形式で詳しく紹介。各タイトルの基本的な発表内容については、23日、24日の電撃オンライン記事内でレポートしているので、気になる人は随時そちらを参照しながら読み進めてもらいたい。
■『ゼルダの伝説GC』について
成長していくリンクに違和感を持つようになったんです。
「『ゼルダ』に関してはあの発表会のステージだけで、っていうお話ししましたよね(笑)。今年また『ゼルダ』の前にたくさんソフトを出しますから、そちらに注目してほしいなと思うんですけど(笑)。
まあ、今年5月のE3で見せた『ゼルダ』のプレゼンのビデオっていうのは、去年のもの(8月のゲームキューブ発表時のもの)といっしょでしたからね。E3のときには隠していたんですけれども、別に嘘をついたわけではなくて、去年のスペースワールドのときは、ちゃんとああやって(リアルな頭身のものを)作っていたんですね。でも、それが『ゼルダ』の向かう道なのかなぁ、と思っていろいろやっていまして。
それで、どうも僕自身がゲームボーイ版をやったり、リンクっていうキャラクターは何才くらいが理想の姿なのかっていうのを考えたりしているうちに、どうもさっきいったように成長していくリンクっていうのに違和感を持つようになったんです。
それと、もう一つの理由としては、ゲーム業界でも、ゲームセンターの頃から、ひとつのものが流行ると次の年はそれに似たものがいっぱい出てくるっていうことを繰り返しているんですね。そういう中で、映画も日本のアニメも、どんどんと流行りのものとと同じものが出てきている状況で。まあ、マニアにとっては違うものってわかるんですが、一般的に見ればなにか全部同じように見えるんです。これは、山内(任天堂代表取締役社長)がいうなら"ムダです"ということになると思うことになると思うんですけども。これが業界の傾向としてあるんです。"何を"作るかじゃなくて、よそよりもいいもの、よそよりも質の高いもの、よそよりもよくできたものを作ろう、という傾向になっている。"何"を作るかに関しては同じ方向で作るということなんで、どうしても似たゲームが多くなってくる。そういう中で、どういう人が重宝されるか、どういう人が優秀とされるかというと、技術的にレベルの高い人。となると、作っている人が、どんどん楽しんで、自由に奔放に作る、ということじゃなくて、なんかある技術を研ぎ澄ませた人だけが、大事な人になっている。そういう開発環境というのが、ボクはキライなんです。
で、現場のスタッフがどんな『ゼルダ』を作りたいかっていうのと、僕のリンクに対してのイメージというのを話しあっていった結果が、今回お見せした『ゼルダ』なんです。で、制作は非常に順調に進んでいます。
ただ、僕は実はすごく心配をしていて。前のリンクから、よりCGらしく進化したリンクを期待している人がすごくたくさんいることはわかっていますからね。まあ、そういう人たちを裏切らないように、ユニークなゲームにすることが『ゼルダ』の命なので。それで(あのキャラクターで)ユニークな冒険ができるようなゲームにする自信がありますので、そこは安心してほしいと思っています」
■『マリオサンシャイン』について
背中に怪しい機械を背負ってましたよね。
「マリオの話は今日はしない(笑)。ビデオでも、どんなゲームなのかわからないようなシーンを選んで紹介したんで。間違いなく言えるのは『サンシャイン』っていうことですから、夏に売らないと恥ずかしいってことですね。それから、怪しい機械を背負ってましたよね。あれ、ちんどん屋じゃないんですけれども。ギャグバンドのような。
あれね。ぼくといっしょにやってる小泉っていう『マリオ64』のときのアニメーションをやって、ゼルダの『時のオカリナ』のときもやってくれたスタッフがやってるんです。だから大丈夫ですよ。個性的なゲームにする自信はすごくありますから、もう少し待っててください」
■『ルイージマンション』について
操作は徐々に覚えていけば大丈夫ですよ。
「え、操作が難しいですか? あのね、まず、カメラの視点をシンプルにしたっていうのは評価してほしいんですけれどもね。確かに僕は、メインスティックとAボタンだけで遊べるゲームというのを目指してやってるんですよ。でも結果的には他のタイトルとかも全部がほとんどのボタンを使うようになってしまっていて。
ただ、基本的にはどれも徐々に覚えていけばいいように作っています。だからかなり初歩的な使い方でも遊べるように作ってるんです。たくさんのモニタープレイヤーにテストしてもらっているので、大丈夫だと思いますよ」
■マリオとルイージの共演について
『ルイージマンション』の最後にもマリオは出てきますけどね。
「マリオとルイージを共演させることについては、我々もよくそういう話をしてます。でもゲームキューブの『マリオブラザーズ』を作ったとしても、3Dになっただけでゲーム内容が前といっしょというのじゃイヤなんでね。一応今度の『ルイージマンション』の最後にもマリオは出てきますけれどもね。
でもやってみたいですね。近いうち実現させたいと思います」
■『コロコロカービィ』について
カートリッジはRAMでできているので、新しいゲームをダウンロードすることも可能です。
「今回の『コロコロカービィ』で使ってた動きセンサー(モーションセンサー)のカートリッジの中に、プログラムはまったく入っていません。プログラムは全部ゲームキューブの方から送るようになってます。やっぱり『コロコロカービィ』ってゲームは、僕が考えるには、ゲームボーイカラー版の段階で、ある程度終わってると思うんですね。で、さらにそれをGBAで豪華にしたからっていって、そんなに変わらない。それなら今度はゲームキューブを使って、もっと立体的なコースを遊べるようにするとか、いろんな仕掛けを作ったほうがいいだろうと。
で、その一方で、やっぱりゲームボーイカラーで遊んだような『コロコロカービィ』も遊びたいっていう声もあったので、じゃあそのオマケの機能としてゲームキューブからいろんなコースデータをダウンロードしたり、友だちと通信ケーブルで交換することができる。そういう機能をつけようと思っています。そういう構造にしちゃおうということですね。
あの、カンのいい人は気が付いていると思うんですけれども、今言ったように、あの『コロコロカービィ』のデモで使ったカートリッジはRAM(書き換え可能なメモリ)でできてます。フラッシュメモリですね。っていうことは、コレってなんにでも使えるんですね。まあ、コピー問題があるから、そう簡単には広げられないんですけど、任天堂がこれをちゃんと市場に広めれば、サードパーティの方はこのカートリッジでいろんなことができるようになります。ですからキューブからGBAのほうに、今の本体の中のRAMよりももうちょっと大きなプログラムを送りたいっていう場合には、このカートリッジを差して使えばできるわけです。基本的には、今あるGBAの転送型のゲーム(ひとつのカートリッジで4つのGBAにプログラムを転送してプレイできるゲーム)は、本体の小さいRAMを使ってます。で、今度そのカートリッジを出すことで、もうひとまわり大きな(RAMの)エリアができますので、それによって4人対戦の新しいゲームを供給(ダウンロード)することもできるようになります」
■ゲームキューブとGBAの連動について
任天堂のハードを両方持ってないと、すべてを楽しむことができないっていう仕組みに持っていきたい(笑)。
「ゲームキューブとGBAの連動に関しては、『カービィ』や『どうぶつの森』でお見せしたほかにもいろいろな使い方があります。構造としては、GBAのほうにカセットを挿すやり方と挿さないやり方の2種類があって、カートリッジを挿すほうに関しては、今回は動きセンサーの入ったカートリッジだったわけですけれども、例えばもっと他のものが付いたカートリッジというのも考えられます。それからカートリッジを挿さずにケーブルだけつなぐ方法に関しても、今回は『どうぶつの森』でお絵かきツールみたいなものをロードしましたけれども、いろんなゲームをロードすることもできるし、デモでは1台しかつながなかったけれども、4人がGBAを持ちよってつないだりすることもできる。まだまだいろんな組み合わせが可能だということです。
それから、ゲームキューブとGBAのどちらかしか持ってない人についてですけど、とりあえずさっきの遊びっていうのは両方もってるっていうのが条件なんですね。理想的には任天堂のハードを両方持ってないと、任天堂のすべてを楽しむことができないっていう仕組みに持っていきたいっていう野望があるんですけれども(笑)。でも当分はどちらか一方だけでも遊べるように作っていきますから。『コロコロカービィ』のケースのように、対応してるとちょっとプラスαのソフトが遊べるとか。そういう展開でいくと思います。
これについては、けっこういろんなゲームメーカーのクリエイターが興味を持っていると思うし、実際いろんなメーカーが、GBAとゲームキューブで、同じようなタイプのゲームをラインナップされてますから、割と早く実現すると思います」
■オンラインゲームについて
オンラインゲームはアイディアに行き詰まった作り手の逃げ道。
「僕らもやっぱり、この業界にいて新しい情報を求めて動いているわけなんで、オンラインゲームに興味がないことはぜんぜんないんですけれどもね。ただ、オンラインゲームが本当にビジネスになるのかっていうことについては、みんなすごくあいまいなんですよ。で、僕はゲームの作り手として、オンラインゲームに魅力を感じてる反面、自分がアイディアに行き詰まったときに、オンラインになればなんとかなるっていう逃げ道のようにも感じていて。任天堂自身もオンラインにまったく興味がないわけではなくて、ちゃんとオンラインに関する準備はしてます。
で、そのまま僕はクリエイターとしては、オンラインよりももっと身近なコミュニケーションに対して、まだまだ僕はやり残したことがあるんですよ。オンラインっていうのはコミュニケーションのほんの一部だと思いますから、そういう意味では、コミュニケーションのゲームをどんどん作りたいって考えています」
■『ポケモン』について
まもなく何かが決まるんだろうと思っててください。
「そうですね。今回は、今年から来年にかけて出すタイトルをお見せしましたから、『ポケモン』はなかったです。ただ前回(昨年8月)一度見せてますよね。今回出てこないのは何かが決まっていないからで、まもなく何かが決まるんだろうと思っててください」
■『メトロイドプライム』について
1年以内に発売するところまでいくと思います。
「ゲームキューブの『メトロイド』について、任天堂がどのようなディレクションをしているかということですが、監督に関してはアメリカでディレクターがいます。我々がプロデュース側として、サジェスチョンをしたり、各週で電話会議をして、あと月に一度は会うようにしています。
で、僕らは今レトロスタジオっていう会社と、『メトロイド』を順調に仕上げる体制に入っています。実を言うと今回のショウにも出そうと思って準備していたんですけれども、ちゃんと音が入っていないところがあったり、手触りが悪かったりしたんで、僕としてはまだ触ってほしくないということになりまして。
実はビデオを撮って持ってきているんですが、それを見せちゃうと、今日が『メトロイド』のミーティングになっちゃうんで、あえて持って来なかったんですけど。カバンの中に片づけています。制作のほうは順調に進んでいますよ。おそらくこれから1年以内に発売するところまでいくと思います」
■『ピクミン』について
『ヨッシーストーリー』を作ったチームが作っています。
「『ピクミン』の制作に僕がどの程度タッチしているかということに関してですが、あの、ディレクターというほどの関わりではないんですよね。よくある、半分ディレクターで、仕様書を書くっていう仕事をしています。
デザインに関しては、若手をいろいろ登用してまして、いろんなデザイナーとコンペをやりながら作ってます。僕が描いた絵は一枚もないんですよ。作り始めたときとはずいぶん絵が変わってきたんですけれども、これ、なかなか新しいゲームになりました。
『ヨッシーストーリー』を作ったチームが主体となって作ってるんですけど、チームのみんなに、"ピクミンを見る"っていうゲームを作りたいっていう意識があって。自分も触るんですけど、基本的には"ピクミンを見る"ゲームにしたいんですね。巣の中のアリを見るような感じです」
■ゲームキューブのコントローラについて
十字ボタンを将来捨てることになるかも。
「いろいろ微調整してきましたが、コントローラの基本的なレイアウトはもう変わらないと思います。ボタンとかの大きさがちょっと変わるとかはあるかもわからないですけどね。このコントローラで、究極の形に近づいたと思ってます。たぶん十字ボタンを将来捨てることになるかもわからないけど(笑)。難しいですけどね」
ゲームキューブ発表会で壇上に立つ宮本茂氏。
話題を集めまくったゲームキューブ版『ゼルダの伝説』。
データ
※ このインタビューの模様は電撃王10月号(9月8日発売)でも掲載。そちらもぜひご覧ください。
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