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2002年10月4日(金)

「e-sports」の未来を語る!WCG2002スペシャルシンポジウムが開催

 本日10月4日、お茶の水のデジタルハリウッドで「これからの日本オンラインゲームはどうなるか?~ 『e-sports』がエンターテインメントを変える~」と題したシンポジウムが開催された。これは、今月末に行われる世界規模のゲーム大会「ワールドサイバーゲームズ2002(WCG2002)」を前に、ネットワークゲームの現状について語るトークイベント。

 出席者は、WCG2002日本予選の総監督を務める犬飼博士氏(AceGamer.net)、
昨年のWCG日本代表の宮島"Crize"朋之氏、株式会社ガマニア デジタル エンターテインメントの川村順一氏の3名。司会進行は、デジハリ学校長の杉山知之氏が務めた。

 シンポジウムでは、昨年のWCGを例に挙げて、ゲームをスポーツとして捉える「e-sports」の考え方を示唆。韓国では実際にプロゲーマーと呼ばれるプレイヤーが活躍しており、そのプレイがテレビで中継されるなど、多くの人々が注目している状況にあることが紹介された。

「プロゲーマーの試合の会場では、子供から大人まで、みんなが立って応援していて、試合が優勢になったり劣勢になったりするごとに、客はみんな拍手してすごい騒ぎになるんです」(Crize)
「子供の頃からファミコンマンガで見ていた、観客が見守る中でプレイヤーがゲームで戦っているっていう状況。これが実際にあるんですよ」(犬飼)

 また、続いて話題はPCネットワークゲームとコンシューマゲームの違いに移行し、それぞれの立場から興味深い発言がなされた。
「ネットワークゲームは、1年2年かけてプレイヤーとゲームを作っていくっていう感覚があります。逆に言うと、そこをきちんとやらなければ成功しないということです。ソフトウェアを作るときから、半分オープンソースで出してきて、『クエーク』や『アンリアル』なんかもエンジンを売るためのアイテムという感覚なんです」(犬飼)
「個人的には、PlayStationBBについて、SCEが消極的になっているのではないかという懸念があります。PS陣営のソフトメーカーも、オンラインゲームが思ったようにうまくはいかず、コンソールでのビジネスは難しいという気持ちがかなり出ている。Xboxはそこに乗じて日本市場への攻勢をかけようとしてるのではないかと思います。ただ、Xboxの場合、課金システムはマイクロソフトで管理するというシステムなので、メリットがある反面、制約が多いと見る向きもある。そういう意味でもコンソールのオンラインゲームというものにはクエスチョンを感じざるを得ないわけです」(川村)

 さらに川村氏は、アジアでのPCネットワークゲームの普及率の高さについて触れ、「台湾ではPlayStation2が40,000円と、大卒の初任給の半分近い。台湾ではPC環境が普及しているし、ユーザーもPCに対する知識がある。遊ぶ側の姿勢がまったく違うので、日本市場ではまだPCゲームは難しいかなと思います。これからです」と分析。

  これに関してCrize氏も、「やはりビデオカードが何万円もするし、それだけのスペックを満たしたPCを用意するのがたいへんで、あとゲーム自体もメニューからして英語のものが多くて、そういう敷居の高さがあります。はじめて入ったときにはぼくも何をしていいかわからなかったし。それと、対戦をするときは、マイクロソフトが用意しているチャンネルに入るんですけど、対戦相手が英語をしゃべるとログアウトしちゃう人とかいるんですよね。そこを克服するのは“気合い”としか言いようがない(笑)」(Crize)とPCゲームの敷居の高さについてコメントした。

 犬飼氏は、「学校に『UT(アンリアルトーナメント)部』を作って、そういうとこからPCに慣れていって、その学校ごとに専用のグラウンドを作ったりしていけばいいのでは?」との提案を行っていた。

 シンポジウムの最後には、来場者との質疑応答が行われ、「ゲームが『e-sports』という形で認知されるためには、現在主流である『人殺し』という設定が邪魔になることが多いと思う。その問題について、どのように考えているのか?」という質問が提示された。以下が3名の回答。

「(人を殺す技だった)柔術が(スポーツとしての)柔道になったように、そういう設定はゲームがスポーツになっていく過程で淘汰されていくものだと思うんです。『これはダメでしょ』っていうのを誰かが言い始めて、時間を経て変わっていくものだと思ってます。確かに、昨年のWCG日本予選での『カウンターストライク』の試合中、実況で「テロリスト勝利!」って言ってるときには、ぼくも心配になりましたよ。個人的には、ゲームであっても「テロリスト」っていう設定には大反対です。爆弾仕掛けるチームとそれを倒すチームでいいじゃないかと。まぁデザイン的な問題だと思うんですけどね」(犬飼)
「さっき『UT部』っていう話がでたけど、武器を持って人を殺すっていう設定がある時点で、教育現場に広まることは確かに難しいと思います。でもぼくたちがみんな無法者なのかっていうともちろんそうではなくて(笑)。ゲームをやるときにぼくがいちばん気をつけているのはプレイヤーとしての礼儀です。対戦前には必ず挨拶をするし。人を殺すのはあくまでゲームの話ですから」(Crize)
「私も子を持つ身ですから、いろいろ考えるところはありますよ。例えば私の関わった『ソウルエッジ』っていうゲームが賞をもらったときにも、文部省側の審査員に“格闘ゲームだから”ってことで難色を示されたこともあって。でも、重要なのはそれに対する姿勢なんですよ。親と子供が話し合って、考える機会を持つことが大事だと思います」(川村)

 多くの興味深いテーマについて語られた今回の緊急シンポジウム。約2時間にわたって行われたが、「e-sports」という日本ではなじみの浅い概念がわかりやすく紹介された、意義あるイベントだったのではないだろうか。

 また、明日からは、秋葉原NeccaでWCG2002の日本予選大会が行われる予定となっている。興味のある人は足を運んで、「e-sports」のトッププレイヤーの戦いを観戦してみるとさらに理解が深まるだろう。

オンラインゲームの話題を中心に活発なトークが展開された。

「e-sports」という一般にはなじみのないテーマではあったが、来場者は真剣に聴講。

PCオンラインゲームの現状について熱く語る犬飼博士氏(左)とCrize氏(右)。

ガマニアの川村氏(左)は、新作タイトルのマルチプラットフォーム展開を予告する場面も。右はデジハリの杉山校長。

Crize氏が持っているのが、プロゲーマー御用達の競技用マウスパッド。スポーツ選手がラケットやグローブにこだわるのと同じ感覚だという。


■関連サイト
World Cyber Games 2002 日本予選公式サイト
デジタルハリウッドパートナーズ