本日のPSミーティング終了後、別室で質疑応答の時間が設けられた。出席者は、SCE代表取締役社長兼CEOの久夛良木健氏、SCE代表取締役副社長兼CEOの佐藤明氏、取締役専務兼CFO加藤優氏の3氏。以下にその主な内容を紹介していこう。
――ゲームのコンテンツをユーザーが実際に本サービスとして楽しめるようになるのはいつなのか。その際に何タイトルが用意されるのか。
久夛良木氏「一番最初に始動するゲームはスクウェアさんの『ファイナルファンタジーXI』になると思う。そのほかのタイトルについては、各ソフトメーカーに問い合わせてほしい。ただ、どれも5月以降になると思う」
――PlayStationBBの仕組みについて。HDDをキャッシュとして使っているのか、ADSLの回線にダイレクトにデータをのせているのか。
久夛良木氏「蓄積型ということで、基本的にはHDDにキャッシュして見るという形が主流になると思う。ただ、我々がこうした発表をすることによって、BB環境の普及を牽引するという可能性も十分ある。その場合にはこの限りではない」
――ボトルネック解消のためのアウトラインはどこに置いているのか。
「現在、ネットワークのボトルネックは回線状況に拠るケースが多いが、光ファイバーの普及が進んだ場合に、サーバー側の問題が大きくなると思われる。その場合の状況改善を目指して、IBMと東芝の協力を受けて、研究開発を進めている」
――利用するプロバイダによって、提供されるコンテンツが異なる場合があるのか。
久夛良木氏「我々が提供するコンテンツは共通だが、各プロバイダの個性によって、提供される内容が変わってくる可能性はある」
――世界一のブロードバンドプラットホームを目指すという理想に対して、今回のスタート地点で何%くらいの完成度であると考えているのか。
久夛良木氏「いまはまだスタート前夜だ。5、6、7月くらいになってくると、ユーザーの認識も変わってくるはず」
――予定から見て、このBBサービス開始時期は遅れたと考えていいのか、それとも予定通りなのか。
久夛良木氏「ペシミシティックな予想に比べると、明らかに早いと思う。当初は2001年末にブロードバンドユニットを市場に出したいと考えていたわけで、それに比べると半年弱くらい遅れているが、ブロードバンドが現実のものになるというのはある意味ではいまがドンピシャリなタイミングだと思う」
――ブロードバンドユニット内蔵のPS2を発売する予定はあるか。
久夛良木氏「ユーザーから見れば(内蔵されていてもいなくても)同じことだと考えている。今後の予定に関しては、また機会を見てなんらかのアナウンスができればいいな、と考えている」
――各プロバイダごとに提供されるゲームに差が出るのか。
久夛良木氏「理論上はどのプロバイダでもすべてのPS2コンテンツを利用できる。ただ、ソフトメーカーのリリースラインナップに拠るところが大きく、そのデータがすべてのプロバイダにアップされるかどうかは現時点ではわからない」
佐藤氏「ソフトの作り方によって変わってくると思う。また、ソフトメーカー自体が“このプロバイダでしか遊べない”というゲームを作るというのはある種のポリシーの問題としてあるかもしれないが、基本的にはどのソフトメーカーもすべてのプロバイダからアクセスできる遊び方を提案してくると思う。ちなみに『みんGOL』もそのようにする」
――ブロードバンド対応の発表がなされたが、通常のダイヤル回線への対応はどうするのか。
久夛良木氏「本日発表したラインナップがナローバンドのみで実現できるものではないのは自明。しかし、『グランツーリスモ』のように、ナローバンドでたくさんのユーザーが場を共有できるゲームも存在する。ナローバンドで遊べる部分をもつゲームは依然としてあると思うが、メディアがCDからDVDに移っているのと同様に、多くのクリエイターはブロードバンドを志向するケースが多くなると思う」
――サードパーティが支払うロイヤリティにはどのような変化があるのか。
久夛良木氏「基本的には最大25%のロイヤリティディスカウントが起こると考えてほしい。全体の比率についてはできあがってみないとわからない」
――ブロードバンドユニットを外販した場合の出荷金額はどれくらいになるのか。
久夛良木氏「基本的に“こうでなくてはいけない”とは考えていない。具体的に何台出すと公約するのではなくて、きちんとした在庫を確保してユーザーのニーズに合わせて出荷していきたい」
――ブロードバンドユニットの提供はプロバイダ経由でのみ行われるのか。ハードの仕様がプロバイダによって異なることはあるのか。料金形態はプロバイダにまかされているのか。
久夛良木氏「ネットワークにつながって初めて成り立つシステムなので、基本的にはプロバイダ経由での供給を考えている。ハードの仕様はすべて同じ。料金はそれぞれのプロバイダごとに設定してもらっている」
――ハードディスクの中身がプロバイダごとに異なる可能性はあるのか。
久夛良木氏「我々が提供する“ジュークボックス”や“エミュレータ”に関しては、PlayStationBBサービスとしてユニークなものになる。しかし、プロバイダによっては今まで単独のセットトップボックスでやりたかったであろう試みなどを独自にプリインストールして提供するという可能性は大いにあると思われる」
――目標ユーザー数はどのくらいか。
久夛良木氏「目標ユーザー数は、基本的にはPlayStation2のユーザー数と同じ数を目指している。しかし実際は新しいプラットホームの普及には時間がかかる。i-modeが100万台を達成するまでにも6ヶ月かかっている。PS2のBB展開もはじめはなだらかに広がっていくだろう」
――世界展開について。各地域ごとのビジネスモデルは大きく異なるのか。
久夛良木氏「基本的には同じ。DNASも世界中で同じように使っていくつもりだ。各地の事情によって多少の違いは出るかもしれないが、可能な限りその地域の現状にあわせて進めていく」
――メールとインスタントメッセンジャーはPS2どうし限定のものなのか。また、一般的なWebサイトを閲覧することはできるのか。
久夛良木氏「基本的なサービスとして、PCや携帯電話など世界中のどのメールアドレスともやり取りができる形を用意する。我々はネットワークはオープンであるべきだと考えている。また、htmlベースのWebサイトを見るには、現在のテレビは適していない。文字ベースのコンテンツではなく映像ベースのコンテンツを積極的に進めていく予定だ」
――初期投資に際して費用がかかる点についてどう考えているか。
久夛良木氏「初期投資を低く抑えるためにブロードバンドユニットのレンタルを導入している。月々1,000円程度であればユーザーの初期投資としては気にならないレベルだと考えている」
――ブロードバンド対応のタイトル数は何割くらいになるとイメージしているか。
佐藤氏「どれだけユーザーに受け入れられるソフトを作るかが重要だと考えている。あくまで結果として支持されるかどうかだ」
――セキュリティーホールについてどう考えているか。
久夛良木氏「いたちごっこになってしまうが、もちろん全力を尽くす。プロバイダを含めた各社の認証システムが有機的につながっていかなければならない」
――PS2にデジタル家電を接続することによるトラブルについて対策を用意しているか。
久夛良木氏「ネット経由で、コマンドを送る際にはセンサーが重要になると思う。悪意を持った指示を受け付けないようにする必要があるだろう」
――個人情報をビジネスで利用する可能性はあるのか。その場合のプライバシーの保護については。
久夛良木氏「個人情報の流出は法的にも道義的にも許されない。ユーザーの了解を得た上でしかできないことであるし、そうしたことをするビジネスモデルも持っていない」
――ソフトに関して、パッケージでの価格とオンラインでの料金についていくらくらいになるのか。
佐藤氏「まだ決めていない」
――どのくらいの期間でネットワークゲームが普及すると考えているか。
佐藤氏「ミーティングでゲームの映像を見てもらったが、現在はソフトを作っているクリエイターが、まだ手の内を見せていない状況。今後ユーザーの予想を超えた新しいネットワークでの遊び方を提示できれば、ネットワークへの敷居の高さを乗り越えることができると思う」
――Xboxを脅威として見なしているか。
久夛良木氏「Xboxもネットワークを広げたいと言っていて、我々はそれを脅威というより、同じ方向に向かって進んでいく相手として考えている。いつも孤軍奮闘で尖ったことばかりしていると大丈夫か、と言われてしまうので、同じような時期に同じような方向に進めて嬉しいな、と思う」
久夛良木健SCE代表取締役社長兼CEO。終始にこやかな表情で質問に答えていた。
佐藤明SCE代表取締役副社長兼CEO。ソフト関連の質問は佐藤氏が主に担当。
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