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2002年2月14日(木)

「PSミーティング』詳報その2、主要ネット対応タイトルのプレゼンを全文掲載!

 昨日都内で開催された「PSミーティング」でネットワーク対応タイトルが多数発表されたが、その中でも主なタイトルのプロデューサーがステージに上がり、参入表明をかねたプレゼンを行った。自身の作品に対する想い、ネットゲームに対する想いを語ったプレゼン内容を、あますことなくお伝えしていく。

 まず最初に壇上に上がったのは、いよいよ発売時期が近くなってきた、『FFXI』のプロデューサー、スクウェアの田中弘道氏とディレクター石井浩一氏。まず最初に田中氏が『FFXI』およびブロードバンドについてそれぞれコメントした。

●田中弘道氏
 今日のこの日を心待ちにしていました。本当はこれ(ブロードバンドネットワーク)を待って開発を始めればよかったのですが、なにぶん私たちはせっかちなもので、2年前から開発を始めてしまいました。当時は、HDが付くかもしれないという噂はあったが、具体的なものではなかったので、なかば見切り発車的に作り始めたという感じでした。
 
 オンラインゲームやインターネットというものは、日々変化する生き物のようなものだと我々は考えています。これを考えると、従来のCD-ROMやDVD-ROMといったメディアでは限界があるのではないか、書き換え可能なハードディスクででしか、オンラインゲームの本当のすばらしさは伝えられないのではないでしょうか。ここでブロードバンドユニットが出現したということは、今までROMという形で供給されてきたゲームの歴史に、ものすごい変化を与えると思っています。これは家庭の中でいえば、ラジオから白黒TV、白黒TVからカラーTVに変化したというのと同じくらいのインパクトがあるのではないかと考えています。

●石井浩一氏
 最初は、ネットワークゲームは人と話しながら遊ぶだけのゲームかな、と思っていたのですが、遊んでいるうちに子どもの頃感じていた「放課後何して遊ぼうか、あの子はいるだろうか、誰と遊ぼうか」といった感覚になったことに、ふと気が付いたんです。非常に懐かしい、カンケリをして遊んだような楽しさをTVゲームを通じて感じたんです。この感覚に対して非常に感動しまして、こういう遊びが提供できるネットワークゲームというものを作ってみたい、こういうゲームがあるんだよ、というのを提示したいと思いました。ですから、今『FFXI』を作っていて、「ゲームを作っている」というよりも「ゲームというルールを内包した”世界”を作っている」という感覚で制作しています。今後も暖かい目で見守っていてください。

 また、最後に田中氏は「いよいよマスターに差し掛かった」とコメントし、制作もついに大詰めに来ていることを明らかにしていた。

 2番手に登場したのは『GT』シリーズのプロデューサー、ポリフォニーデジタルプレジデント 山内一典氏。今年の1月1日に『GTC』をリリースし、早くも次回作に向けて始動した模様だ。以下、山内氏のコメントを掲載しよう。

●山内一典氏
 (『GTオンライン(仮)』を作るにあたって)オンラインゲームの歴史というのは、インタラクティヴィティ(双方向性)と過酷に向き合ってきた歴史であると考えていますが、ネットゲームを作るに当たってユーザーインターフェイスを考えたいと思っています。
 
 2つ目ですが、ゲームというのはリアルタイムのシミュレーションの技術とビジュアライゼーションの技術で成り立っています。(『GTC』の映像を見せて)この映像は640×480ドット、秒60フレームで構成されているのですが、これをmpegで表現しようとすると、メガbpsクラスのバンド幅が必要となります。これを、映像生成のテクノロジーを背景にこの映像を作るのであれば、キロbps、(mpegと比べて)約1/1000のデータ量で配信が可能だろうと考えています。
 
 ここで、いずれ100Mbpsクラスの回線が引かれるんだから、ビットレートは高くてもいいんじゃないかという話はあると思うのですが、例えば1千万世帯同時に配信することを考えた場合、情報を送出する側に問題が発生することが予想されます。ですから、ゲームがもともと持っている極端な情報圧縮のテクノロジーを利用して、(ネットワークに対する)もっと大きな可能性にチャレンジしたいと思っています。
 
 3つ目は、『グランツーリスモ コンセプト 2001 TOKYO』と題して自動車メーカーとコラボレーションをやりました。これは非常に実験的なタイトルだったんですが、この方向性を今後より広げていきたいと思っています。つまり、メディアとしての可能性です。
 
 今までゲームというのは、1年とか2年といった長いサイクルでしか更新することができなかったわけですが、これではメディアのだいご味である「世の中に与える影響や提案」というのがなかなか持てません。これがブロードバンドの時代になると、更新サイクルがデイリー、またはウィークリーといったサイクルになるので、メディアとしての本来のだいご味をゲームが持つ、ということも可能になってくるのかなと考えています。ゲームのメディアとしての機能は、他の映像メディアとお互いに働くので、他のメディアとの連携を深めていきたいと思っています。
 
 今日発表した『GT オンライン(仮)』の時期ですが、年内に何らかの可能性をお見せできればと考えています。配信の形態としては、基本的なものをDVD、日々の更新情報をネットワークで配信する予定です。現在はDVDに振り分ける資源と、ネットワークに振り分ける資源、このゲームに最適なシステムを考えているところです。

 続いて登場したのは、『みんなのGOLF オンライン』を手がけるSCE制作3部エグゼクティブプロデューサー小林康秀氏。前作『3』では、インターネットを利用(パスワードを手で入力)したスコアランキングなどを展開していたシリーズだけに、十分納得できる。

●小林康秀氏
 まだまだ制作途中なので、あまり多くのことを言えませんがとりあえず1点だけお話をします。
 
 我々がこのタイトルを制作していくうちに、非常に驚くべきことがありました。それはゴルフゲームというジャンルと、ネットワークという手段は非常に親和性が高いとうことです。例をあげると、『みんなのGOLF』というのは、ひとりで遊ぶよりも人といっしょにワイワイ遊んだ方が楽しいのですが、これは(プレイはもとより)コミュニケーション、つまりチャットの部分が楽しいのです。この『みんなのGOLF オンライン』でチャットができるということは、接待をしながら、駆け引きをしながら、また相手にプレッシャーを与えながらといった、ゴルフ本来の楽しさが再現できているのではないかと思っています。これまで『3』の発売と同時に「みんGOL.net」というサービスを展開したのですが、このノウハウを『オンライン』に生かして本作ならではのコンテンツを作っていきたいと考えています。私たちは『みんなのGOLF』という名前の通り、誰でも遊べるような敷居の低いネットワークゲームを目指して、鋭意制作中です。続報をお待ちいただければと思います。

●船水紀孝氏
 4番手として壇上に上がったカプコン第一開発部部長の船水紀孝氏は、まず発売間近となった『auto modellista』を紹介。その後、もうひとつの作品を紹介したのだが、その際「ここでいろいろ言っても意味がないので、映像を観ていただくのが一番いいと思います」と、意味ありげな雰囲気。そして、映像が始まると……ムム、どこかで見たことのある雰囲気……ん、ゾンビ!?……えっ、S.T.A.R.S.!!!?? って、『バイオハザード』ではないですかっ! わーっ、いったいどんなゲームなんだろう、と会場全員が息を飲んで成り行きを見守っていると、船水氏は「現時点ではあまりしゃべれないんですが、とりあえず作っています……」とのこと。うーん、残念。それでも「新しいラクーンシティで起きたバイオハザードから、市民が脱出するというお話です」というところまで話してくれた。これからの展開に大きな期待を寄せたいところだ。

 最後に登場したのは、コーエーを代表するクリエイター、ゼネラルプロデューサーのシブサワ・コウ氏。あの『信長の野望』をオンラインRPGとしてリリースするというから驚きだ。果たしてどんな内容になるのか、シブサワ・コウ氏のコメントを聞いてみよう。

●シブサワ・コウ氏
 PS2を2633万台売ったということで、SCEにお祝いを申し上げたいと思います。そのSCEの社長である久夛良木氏から、(今回のブロードバンド戦略は)またソフトメーカーおよびクリエーターに挑戦状が送られてきたというように私は解釈しています。これは、ブロードバンドネットワーク上で、何かおもしろいデジタルエンターテインメントコンテンツを作れ、ということだと思っています。
 
 コーエーでは、PS2発売以来、その能力を100%発揮して、PS2ならではのソフトを作ってきました。例えば『決戦』シリーズでは大規模な合戦のエンターテインメントを作り出しましたし、『真・三國無双』シリーズでは1,000人をなぎ倒す爽快感あふれるACTを作りました。また、PCでは5年程前からネットゲームも作っておりまして、『信長の野望 Internet』『三國志 Internet』などをリリースしています。特に『信長の野望 Internet』は、郵政大臣賞を受賞するなど高く評価して頂きました。
 
 そこで、私の久夛良木社長からの挑戦状に対する答えとして、”この5年間のネットゲームのノウハウと、PS2でいつも新機軸を打ち出してきた当社の技術力を総動員して、今までにないエンターテインメントコンテンツを作っていこう”ということで、鋭意開発を進めています。
 
 『信長の野望』というと、国盗りゲームというイメージがありますが、これは国盗りゲームではなく、いわゆるMMORPGというタイプのゲームです。特徴は、群雄割拠する戦国時代を舞台に、妖怪や妖術といったファンタジー要素を融合させた世界を構築、その中でプレイヤーは野望を抱きつつ、この戦国時代を生き抜くゲームです。また、非常に特徴のある戦闘システムが搭載される予定で、これによってカッコイイ戦いが楽しめるようになっています。それとシミュレーションの要素も取り入れられていて、プレイヤーが行動することによって、戦国時代の群雄の勢力関係が変化していくようにもなっています。発売時期は今年の秋を予定して開発しています。ご期待ください。

 以上、各プロデューサーの熱の入ったプレゼンを、ほぼ全文掲載したがいかがだろうか。今回プレゼンがあったタイトルのうちいくつかは、今年中に楽しめるということで、PS2ブロードバンドネットワークへの期待は高まるばかりだ。

もはや『FF XI』の顔となった田中氏(左)と石井氏(右)が登壇。

『FFXI』製品版の最新映像も公開された。

『GT』シリーズのメディアとしての可能性を視野に入れて次回作を制作中の山内氏。その野心に満ちた目は鋭い。心なしかおやせになったような……大きなお世話ですね。

『みんなのGOLF』プロデューサーの小林氏。「誰でも遊べる敷居の低いものを」という、同シリーズのコンセプトをネットゲームになっても貫く考えを明らかにした。

何気に画面までできています。もちろん「(仮)」は付いていますが。

言葉少なだったカプコン船水氏だったが、映像だけでも十分伝わってきたものがあった。マッチングサービスなどでネット対戦のノウハウを蓄積しているだけに、今後も目が離せないメーカーだ。

トリを務めるのはコーエーシブサワ・コウ氏。コーエーの代表シリーズ『信長の野望』をネットRPGにという発表には誰もが驚いた。しかも秋にはリリースされるということで、近いうちに画面写真なども公開されるだろう。


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