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2003年11月6日(木)

【TIGRAF】ハリウッドと同じ道をたどるか?クリエイターたちによるシンポジウム

 「TIGRAF」の「ゲーム特集」では最後に、本日プレゼンテーションを行ったモノリスソフト代表取締役社長の杉浦博英氏、スクウェア・エニックスのデザイナー直良有祐氏、カプコンのプロデューサー三並達也氏、現在フリーの水口哲也氏によるシンポジウムが開催された。

 このシンポジウムでは、GTV代表取締役の渡辺浩弐氏が司会を担当、立場の異なる4人によるゲーム業界のビジネススタイルなどが語られた。

 主に話題となったのは、予算の確保の方法や経営とクリエイターのすみ分けなど。杉浦氏は「クライアントに対してプレゼンをするときには、予算表や損益分岐点を説明し、誰が何を担当するかを明確にしていた」と、企画段階で詳細な金額を提示するとのこと。こうして大作のラインといえる10億円以上のプロジェクトを2つ、ナムコから受けることができたという。プロデューサーの役割についても「プロデューサーは商業的、興行的な部分を見ればいい。つまり、クライアントから資金を調達し、宣伝方法やリリースタイミングを図る。ゲームそのものの制作は、監督(ディレクター)にやらせる」と、モノリスソフトではプロデューサーは経営に徹するものであることを説明した。
 この話に水口氏は「米国に行ったときに、UGAの代表とソフトの制作を行っているというと、経営とクリエイティブの両方を見ているのではダメだと言われたことがある。今はフリーのプロデューサーと名乗っているが、杉浦氏の意味での優秀なプロデューサーを募集したい」と、ゲーム制作に専念するために経営を管理できる人がほしいと話した。

 また、ハリウッドの映画製作を例にあげ、企画の時点で必要な資金と回収できる金額がほぼ予想できることを紹介。一方日本のゲーム業界では不確定要素が多く、プレゼンの段階で回収できるかメドが立ちづらいという話題も。この点については、「まだゲームが生まれて30年程度のため、ゲームを学問として扱う土壌がない」(水口氏)と、業界共通の理論がなく、不確定要素が増えている現状が説明された。

 最後に「TIGRAF」ゼネラルプロデューサーの川原敏文氏は、「ハリウッドの映画製作において、プロデューサーはブレーキ、ディレクターはアクセルの役目を果たしている。アクセルを踏むためにはガソリン(資金)が必要であり、それをプロデューサーが制御している状態だ。これまで日本のゲームプロデューサーは、1人で両方の役目を果たすことも多かったが、これから分業が進むだろう」とコメント。
 さらに、水口氏や元カプコンの岡本氏、元HAL研究所の桜井氏らが独立している現状については、「ハリウッドも昔はスタジオが監督、プロデューサーを労働者として抱えるというインハウスの形態で行っていた。しかし、優秀な監督らがフリーになったり、独立したりして、資金集めに長けたエージェンシーがそれを束ねてスタジオに売り込むという形に変化していった。そういう意味では、日本のゲーム業界も制作部隊を社内に抱える形からの転換期を迎えているのではないか」と、今後のゲーム業界の動向を予想して「ゲーム特集」の締めくくりとした。

それぞれ立場の異なる4人が、ゲーム開発について熱く語る2時間となった。

杉浦氏は「米国兵が主役で、日本兵を撃っていくEAの『メダル オブ オナー:ライジング サン』が日本で発売されます。これに対して、真珠湾攻撃をテーマにしたゲームを、米国で発売できるのか挑戦したい。終戦から50年以上経った今、ゲームという親しみやすいメディアで戦争を学べる作品を作ってみたいですね」とコメント。「スポンサーになってくれるパブリッシャーを募集しています」と、営業活動も忘れなかった。

実はウォーシミュレーションゲームが好きな三並氏。「主にアクションAVGを作っていますが、難易度の高いシミュレーションも作ってみたい」と、今後の抱負を語る。

CGの祭典でありながら、さまざまなテーマについて語られた今回のシンポジウム。来年の開催も楽しみだ。


■関連サイト
東京CG映像祭(TIGRAF)