スクウェア・エニックスが戦略説明会を開催。海外展開の強化を強調
スクウェア・エニックスは本日5月29日、今年度の戦略説明会を都内にて開催した。
説明会では冒頭に和田洋一社長より、夏に予定している社屋の移転によって、合併作業がすべて完了することが説明された。その後、22日に発表された2003年度決算短信に関して解説が行われたのだが、こちらについては短信で発表されている通り。2004年度の見通しについては、連結で売上高628億、経常利益183億、純利益105億を予定している。
2004年度の具体的な展開については、パッケージ、オンラインなど部門ごとに売上高、利益率ともに一定の数字を出していくとのこと。「売上高が高いメーカーは利益率が低く、逆に利益率が高いメーカーは売上高が低いという業界の傾向があるが、スクウェア・エニックスでは双方で高い水準を目指していく」という。具体的なソフトラインナップも明らかにされたが、これはすでに発表済みのタイトルのみで、未発表の計画中タイトルは残念ながら公開されなかった。『FINAL FANTASY XII』は今期予算に計上済み、『ドラゴンクエスト VIII』は計上しておらず来期以降という点も、すでに決算発表で明らかにされている通りだ。
部門ごとの詳細については、旧スクウェアによるパッケージソフトは、開発事業部制を引き継ぐことが明らかにされた。この開発事業部制によって、『キングダムハーツ -FINAL MIX-』『FFX-2』といったソフトが登場し、低コストで利益をあげることに成功しており、今後もクリエイターがソフトの利益に責任を持つシステムを継続していく。旧エニックスの開発中タイトルについては、引き続き開発会社によるソフト開発の形式となる。
オンラインゲームについては、『FFXI』のほか、アジア圏での『クロスゲート』のヒットを受け、今年度売上高100億の大台を目指す。利益率が低いのは北米展開のための投資を行うためで、将来的には30~40%の利益率を達成していく予定。また、前期はROM自体の販売による利益と課金の収益の比率が1:2程度だったが、今期はその比率が1:3程度に移行する見込みとなっている。
モバイル部門は、売上高自体を拡大、前期比2倍を目指す。利益率が低下しているが、これはオリジナルタイトルを開発するための投資があるため。
出版については、旧エニックスは許諾のみで自社出版は行っていなかったが、今後は許諾に並行して自社出版も行っていくとのこと。
また、中期的には日本市場の地位が世界全体からみて低下していることを受けて、海外展開により一層の力を入れていく。スクウェア、エニックスともにこれまで、年に数タイトルのペースで海外展開を行っていたが、今年のE3の出展内容を見てもわかるように、今期以降は『FF』シリーズをはじめ、主力タイトルをローカライズして積極的に発売する。
和田社長によれば北米ではSPG、STGの人気が高くRPGは下火だが、だからこそ新規市場開拓の余地があるという。また、海外向けに新規タイトルを開発するのではなく、ローカライズして販売することでコストを落とし、利益を確保することができるとしている。
そのほか、スクウェアとエニックスの合併による新規タイトルについては、現在両社間での交流は始まっているとのことだが、具体的な内容は伏せられた。しかし、6月26日発売の『半熟英雄 対 3D』に『せがれいじり』のキャラクターが登場という形で、交流が始まっていることが説明された。
本日の戦略発表会では、驚くような新情報はなかったものの、「海外市場で勝つことがメーカーの死活を決める」という発言もあり、スクウェア・エニックスが海外展開を重視していることがはっきりと感じられた。北米では『FFX』がミリオン達成、『Kingdom Hearts』が50万本を達成するなど、RPGを受け入れる層が広がってきているが、この戦略がどれだけの新市場を開拓できるのか注目していきたい。
本日の戦略発表は、社長の和田洋一氏によって行われた。
2004年度の見通し。合併したにも関わらず、前期から大きく変わらないのは、両社とも好調な時期に合併したためとのこと。
ソフトの販売計画本数が明らかにされた。北米の比率が高めになっていることがわかる。
タイトル名はすでに発表済みのもの。ユーザーの購買意欲に関わるため、タイトル発表はそれぞれ適切な時期に行う予定。
売上高、経常利益、利益率ともに高い数字を目指していくことが打ち出された。
データ
■2004年3月期 セグメント別計画
| パッケージ | オンライン | モバイル | 出版 | その他 | 全社又は消去 | 連結 |
売上高 | 385 | 101 | 35 | 86 | 19 | - | 626 |
営業費用 | 228 | 73 | 20 | 59 | 14 | 50 | 444 |
営業利益 | 157 | 28 | 15 | 27 | 5 | ▲50 | 182 |
営業利益率(%) | 40.8 | 22.7 | 42.9 | 31.4 | 26.3 | - | 29.1 |
(単位:億円) ■ 2004年3月期 ソフト販売本数計画
国内 | 570万本 | 23タイトル(PS2:9,PS:2,GBA:2, GC/GBA:1,PCなど:9) |
北米 | 350万本 | 9タイトル(PS2:4,PS:1,GBA:2, GC/GBA:1,PCなど:1) |
欧州 | 185万本 | 4タイトル(PS2:2,GBA:2) |
その他地域 | 5万本 | 1タイトル(PS2:1) |
全世界合計販売本数 | 1,110万本 | |
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