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2004年11月1日(月)

国内e-Sportsの将来性を考える。「オンラインゲーム専門部会第4回研究会」レポート

 10月30日、東京ビッグサイト会議室にて「オンラインゲーム専門部会(SIG-OG)第4回研究会」が開催された。今回のテーマは、「e-Sports最新事情-日本におけるe-Sportsビジネスの可能性を探る-」というもの。

 まず、会場では数々のe-Sports大会を運営しているテクノブラッド イベント事業部 AceGamer.netディレクターの犬飼博士氏が「e-Sportsの概要と現状」について解説。e-Sportsとは、PC用ゲームの腕前を競い合う競技のことで、中国や韓国、ロシアなどを含む世界25カ国では国家レベルで推進されている。
 日本ではまだメジャーではないが、世界に目を向けてみると、各国の代表が集う「WCG(ワールドサイバーゲームズ)」や、毎年夏と冬の2回実施される「CPL(サイバーアスリートプロフェッショナルリーグ)」など、大規模な大会が開催されている。犬飼氏は、日本でe-Sportsが普及していない現状について、家庭用ゲーム機が中心となっている市場や、ゲーム大会主催者の「e-Sportsを行っているという意識」の低さなどを理由に挙げていた。
 一方で、犬飼氏は日本国内のe-Sports発展の可能性についてもコメント。『カウンターストライク』など、e-Sportsでプレイするゲームは「GL!(Good Luckの略)」で試合が始まり、試合後は「GG!(Good Gameの略)」とあいさつを交わすことがマナーの1つになっているという。犬飼氏は「このようなマナーやルールが存在することは、武道と同じように、e-Sportsが教育の現場に生かせるのでは」という考えを示している。

 続いて壇上には、ナムコ事業開発グループのLANエンターテインメントプロジェクトマネージャーを務める土屋哲夫氏が出演。土屋氏は、都内蒲田、池袋および、長野県松本市に出展されているLEDZONEの運営を担当している。
 土屋氏は、他のスポーツのプロリーグが成功している要因から、e-Sportsがビジネスとして成功するために必要なことを解説した。まず、e-Sportsの国内リーグ設立に向けて、競技を実施する種目(ゲーム)を統一することが必要だという。さらに、スポンサーの金銭面での支援や、若年層の取り込み、行政・メディアの理解なども重要となる。
 また、国内でのe-Sportsの発展は困難だが、将来性は十分あるという。土屋氏は、「現在の状況は、畑を耕して種をまいた段階。商売にするのは先と考えて、収穫できる段階まで協力すべき」とコメント。プレゼンテーションの最後には、土屋氏の小学生の息子さんが『カウンターストライク』を巧みにプレイするムービーを披露し、PCゲーム、e-Sportsの将来への希望を見せた。

 会場では、犬飼氏と土屋氏に、フリーライターの杉山淳一氏を加えてのパネルディスカッションも行われた。ディスカッションの内容で興味深かった話題は、PCというプラットフォームについて。杉山氏は、インターネット上の掲示板などのコミュニティが盛んになりつつあることを例に挙げ、「PCゲームへの抵抗感が少なくなってきているのでは?」と語った。一方で、土屋氏によると「まだ自分のPCを持っている人は少ないですね。キーボードという見た目に、アレルギーを起こすかが問題」とのことだ。
 日本国内では、まだ認知度が低いと言わざるを得ないe-Sportsの現状。杉山氏は、「韓国では国家規模での政策、アメリカではLANパーティの盛り上がりからと、e-Sports発展の仕方はそれぞれ。ならば、日本ならではの発展方法もあるはず」と語り、ディスカッションを締めくくった。

 e-Sportsの現状について、さまざまな意見が飛び交った今回の研究会。日本国内でも少しずつだが、確実に浸透し始めているe-Sportsのこれからに期待したい。

「WCG」と「PCL」の日本予選を運営している犬飼氏は、「開発・ユーザー・店舗を巻き込んでの盛り上がりが重要だ」とコメント。

土屋氏はLEDZONEの現状から、ビジネスとしてのe-Sportsについて解説。LEDZONE各店舗の特徴などを語ってくれた。



フリーライターの杉山氏(写真上段)を交えてのパネルディスカッションでは、日本でe-Sportsが発展しないことによるデメリットなどについて議論された。


■関連サイト
「オンラインゲーム専門部会(SIG-OG)第4回研究会」詳細ページ
AceGamer.net
LEDZONE
ブロードバンド推進協議会
IGDA日本