5月11日(日本時間5月12日)米ロサンゼルス・ハリウッドにおいて任天堂のプレス向け発表会が行われた。この発表会では新ハード「ニンテンドー・ディーエス」の発表のほか、ゲームキューブやゲームボーイアドバンスの新タイトルが多数公開。約1時間のイベントは、多くの驚きに満ちたものとなった。以下にその内容をレポートしていこう。
発表会の進行を務めたのはNintendo of AmericaのReggie Fils-Aime副社長。冒頭から、すでにSCEとマイクロソフトが同様の発表会を済ませていることに触れ、「ここに集まっているみなさんは、ゲームを遊ぶときの選択肢が任天堂だけでないことを知っている。しかしゲームの質の向上に関して任天堂が真剣に取り組んでいるということも知っているはず」、「3番目の発表だからこそ、ほかの2つと比較してほしい」と問いかけた。さらにSCEとマイクロソフトについて「競合メーカーの1つは日本のメーカーだが、この会社はホームエンタテインメントのすべてをメモリースティックを介して統一しようとしている。もう1つの競合メーカーはその会社のOSさえ使っていれば客が何をしていても気にも留めない」と皮肉った。
続いてマーケティングと広報を担当するNintendo of AmericaのGeorge Harrison副社長が登場。昨年末からの業績データを挙げて、「市場をひっぱっているのは任天堂である。任天堂なくして業界の成長はない」と自信のほどをアピール。氏によると、いまのゲームユーザーが求めている要素は、(1)過去のハードコアゲーマーが熱中していたのとは異なる現代的なエンタテインメント、(2)キャラクターやゲームシステムの親しみやすさ、(3)わずかな出費でメジャーなゲームを楽しむことのできるお買い得感、の計3つであるとのこと。 そして任天堂はこれらを実現するためにGCの価格を昨年末から99ドルに下げたのに加え、『Metroid Prime 2:Echoes』『STARFOX』『Resident Evil 4(バイオハザード4)』といった人気タイトルの投入を予定している。さらに『ポケットモンスター ファイアレッド/リーフグリーン』に同梱されている「ワイヤレスアダプタ」と、GBAで映像作品を観ることができる「ビデオパック」、そして「Classic NES」(ファミコンミニ)シリーズの投入によって、さらに磐石の体制を築くことができると語った。
このようにGBAが好調の任天堂だが、携帯用ゲーム市場における強力なライバル、PSPの登場に伴う影響はやはり気になるところ。しかしReggie氏はこれについても「PSPがGBAに追いつけるかと考える前に、PS2がGBAに追いつけるかと言いたい」と発言。「現在任天堂は携帯ゲーム機の市場で、事実上100%のシェアを獲得している。PSPの参入によってシェアは下がるだろうが、――というのも100%から上がることはないからだが(笑)。いずれにせよGBAは壊れにくく、バッテリー寿命もPSPに比べて格段に長い。ソフトでも大きく差をつけている。PSPが来春立候補する時点で、すでに2,500万人のアメリカ人がGBAに投票しているだろう」と、GBAが圧倒的な優位にあることをアピールした。
そして、ここでいよいよ本日のメインイベント「ニンテンドー・ディーエス」の発表だ。ハードの詳しい情報に関しては既報のとおりだが、Reggie氏によれば「DS」には「デュアルスクリーン」の意味だけでなく「デベロッパーシステム」の意味もあるとのこと。すなわち、世界中のゲームメーカーがゲームを作りやすい環境を提供し、ゲーム業界に革命を起こしたい。そしてこれによってゲームの遊び方が変わり、プレイヤー同士の付き合い方も変わるとの予測を発表した。
そして発表会も終盤を迎え、ステージ上には真打ちが登場。任天堂の代表取締役社長・岩田聡氏がニンテンドー・ディーエスを持って現れ、「きょうニンテンドー・ディーエスを発表できることを誇りに思う。ビデオゲームは変わっていくし、革命への取り組みはすでにはじまっている」とのスピーチを行った。
そして! ここで本日最後のクライマックス!! スクリーンに『ゼルダの伝説』最新作の映像が突如映し出され、会場は一気に興奮状態に突入だ。この映像のリンクは、GC『風のタクト』のようなトゥーンシェイドではなく、N64『時のオカリナ』のようなリアル等身で描かれており、さっそうと馬に乗る姿はまさに「かっこいい」の一言。さらに映像のあとにステージに現れたのは、『ゼルダの伝説』シリーズの生みの親、宮本茂氏。なんとリンクの剣と盾を持っての登場で、ポーズを決める姿はこれまたファンサービスの極致。宮本氏は「私は“リンク”ではありませんが、彼のことをよく知っています。誕生から18年経ったいまでも『ゼルダの伝説』は変わり続けています。新しい作品では“リンク”が成長した世界へみなさんをお連れします」とのメッセージを投げかけ、さっそうと去っていった。この演出に、海外マスコミを中心とした会場内の人々は大満足。スタンディングオベーションで最大級の賛辞を送り、ヒーローの帰還を称えたのだった。
以上、大盛況のうちに幕を閉じた任天堂の発表会のレポートをお届けしてきた。「ニンテンドー・ディーエス」は、集まった観客に賞賛をもって迎えられたが、唯一気になったのは、お披露目にもかかわらずハードに関する数字上のスペックがほとんど公開されなかったことだ(正確な大きささえわからない)。しかしこれについては「数字におきかえてみるのは競合他社のアプローチ」「クルマを運転するときに重要なのはスペックではなく、そのクルマでどこに行けるのかということ」(Reggie氏)との説明があり、岩田社長からも「スペックシートを見せることもできたが、それらは重要ではないので持ってきていない。マシンの性能が馬力で決まったのは過去の話であり、今後はいままでにない体験を作り出していくことが重要だ」と語った。そして、こうした発言を裏付けるかのように、今回の発表会は大盛況のうちに終了。海外マスコミを中心とした観客は一様に興奮し、盛んに拍手を送っていた。ハードスペックの数値を競うのではなく「そのマシンで何ができるか」を重視し、ゲームの原点を見つめなおしたニンテンドー・ディーエス。数値的にももちろん高いスペックを持っていることは間違いないだろうが、実際のゲームがどのように楽しめるか、明日以降のE3会場で確認していきたいところだ。
会場は超満員で椅子が足りなくなり床に座る関係者も多数。
Nintendo of America副社長のGeorge Harrison氏が登壇し、マーケティングと広報的な部分のプレゼンテーションを行った。
GBA用のビデオパックは初回発注2万本の大ヒット商品。
『ポケモン』同梱のワイヤレスアダプタで遊びの幅が大きく広がる。
「ファミコンミニ」シリーズは米国では「NES(米国版ファミコン)」のデザインを模した「Classic NES」の名前で販売される。対応ソフトは8種類。
今回の目玉はなんといっても「ニンテンドー・ディーエス」。
スロットを2つ用意することによりGBAソフトへの対応を実現。集まった観客はこの英断に大きな拍手で応えた。
世界各国から「ディーエス」に対する期待の言葉、一足早い感想などが到着した。日本からもゲーム業界の第一線で活躍するクリエイターたちがコメントを寄せた。
満面の笑みでディーエスの実機を掲げる岩田社長。
発表会最後のサプライズ! 宮本氏は実に嬉しそうにリンクになりきっていたのだった。
『風のタクト』や『4つの剣』のかわいらしいデザインから一変し、りりしい印象に生まれ変わった『ゼルダの伝説』最新作の“リンク”。
GC値下げにともない、続々と発売される『Metroid Prime 2: Echoes(仮)』や『Star Fox(仮)』、『Donkey Kong Jungle Beat(仮)』といった任天堂の人気シリーズタイトル。
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■関連サイト
・Nintendo Of America(英語のサイトです)
・任天堂