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2004年6月9日(水)

異質な遊び、間口の広いゲームを引き続き提案。任天堂の経営方針説明会

 任天堂は、本日6月9日都内ホテルにおいて、報道関係者やアナリストなどを集め、2004年度の経営方針説明会を行った。

 説明会には、代表取締役社長の岩田聡氏、情報開発本部長の宮本茂氏ら役員が出席した。
 登壇した岩田氏はまず、日本国内をはじめ、北米でのゲーム市場の縮小、ライトユーザーならびにカジュアルユーザーのゲーム離れについて触れ、その原因や対策を分析。『ポケモン』、『メイドインワリオ』、『ピクミン』といった人気シリーズ、ナムコの『太鼓の達人』のような「長期にわたって安定して売れる商品が重要である」と強調した。加えて、ゲーム離れを起こしているライトユーザーたちを引き戻すために「ファミコンミニ」シリーズを発売したとし、これらがいずれも順調に売上を伸ばしていることから、「少子化や中古ソフト問題がゲーム市場縮小の根本的な原因ではないことが証明されたのでは?」と問いかけた。このような状況を踏まえて、岩田氏は任天堂の今後の戦略を説明。詳細を項目ごとに掲載する。

■「ニンテンドー・ディーエス」をはじめとする“新しい遊び”について
 岩田氏はE3で発表された携帯型ゲーム機「ニンテンドー・ディーエス」について、「誰でも同じスタートラインに立てることがキーワード」とコメント。ファミコン登場以来、ゲームユーザーはより複雑で難解な作品を求め続ける熟練者、ライトユーザーなどの初心者に分かれるとし、2画面、タッチパネル、音声入力といった要素を搭載している「ディーエス」は、誰もが未経験の遊びを体験でき、どのような層のユーザーにとっても魅力的なものであると述べた。

 一方、任天堂は「ディーエス」以外にも“新しい遊び”に挑戦しているとし、専用コントローラ「タルコンガ」を使用する横スクロール型アクションゲーム『Donkey Kong Jungle Beat』を紹介。横で見ているとアクションゲームをプレイしているように見えないという、ダイナミックで画期的な操作感が、E3で高い評価を得たとのこと。このタイトルは、7月1日に発売が予定されているGC用ソフト『ドンキーコンガ2ヒットソングパレード』の発売に合わせて店頭体験会も計画されており、積極的にアピールしていくとしている。

 さらに、パーティゲームの定番『マリオパーティ』シリーズ最新作を年末に投入予定であることも明らかに。詳細は語られなかったが、このタイトルには誰もが気軽にゲームに参加できる新要素が搭載されるので、楽しみにしていて欲しいとのことだ。

■任天堂の方向性について
 また、岩田氏は「任天堂は技術を軽視している」、「ネットワークゲームに否定的」、「子供ばかりを相手にゲームを作っている」といったこれまでの同社に関する報道についても言及。いずれも任天堂の方向性として誤解を招いているとし、改めて方針についての説明が行われた。1つ目の技術については「私はもともとゲーム制作者なので、技術は重要なものだと思っている。しかし、技術の進歩に頼ってマシンのスペックを向上させると、ユーザーが喜ぶという成功体験は長く通用しない」と述べ、“異質な遊びの提案”を改めて強調。
 2つ目のネットワークゲームについては、「人と人とのつながりは大事なことだが、現在のシステムではネットワークで遊ぶことにさまざまな障壁があり、慎重にならざるを得ない。課金や接続手段などが今の構造である限り、一定数以上にマーケットは育たず、ビジネスは成り立たないと考えている」と話す。
 そして3つ目の開発タイトルが子供向けであることについて、「任天堂のモットーは少しでも幅の広いユーザーに遊んでもらえるゲームを提供するということ。子供たちは直感的におもしろいことを見抜く。子供たちに支持されているということをむしろ誇りに思い、間口の広いゲームを積極的に発売していく。タッチパネルを搭載しているディーエスでは、これまでコントローラを握ろうとは思わなかった、幼児やシニア層などにユーザー層を広げていければと思う」と語っている。

■今後の任天堂について
 その他、昨年10月に開設された会員制サービス「クラブニンテンドー」の登録会員数は、5月末の時点で40万人と報告された。岩田氏は「任天堂とユーザーが直接つながることができ、飛び道具を得たと思っている。これからが本領発揮というところで、今年の年末商戦期に活用したい」と述べており、このサービスによって、各タイトルのユーザー層が明確になり、ターゲットを絞ったユーザーアンケートも実施するという。

 「昨年は他社と違う提案をし、マーケットとズレていると酷評された。しかし、今年のE3でディーエスや新タイトルを発表し、魅力的だと評価してもらったと感じている。弊社の提案が受け入れられ、今後は対する見方も変わってくる」と述べていた岩田氏。「ディーエス」の発売を年内に控えているが、それらの詳しい戦略内容がまだ明らかにされていないだけに、今後の展開が非常に楽しみだ。

岩田氏は「ディーエスは、GBAに引けを取らない商品」として、その成功に非常に期待を寄せていると語った。

質疑応答で各ハードのオススメタイトルを聞かれた宮本氏は、「思い入れもある」とした上で、GBA用ソフト『Legend of Zelda: The Minish Cap(仮称)』、GC用ソフト『Paper Mario 2(仮称)』、『Star Fox(仮称)』、『ファイアーエムブレム 蒼炎の軌跡』などを挙げた。ディーエス用タイトルについては、「すでに用意されているタイトルはすべておもしろい。1日中触っていても飽きない」とコメント。

会場には4台の「ニンテンドー・ディーエス」デモ機が出展されており、全8タイトルが試遊可能となっていた。会場内で試遊できたのは、『Pac-Pix』、『PictoChat』、『Table Hockey』、『Carving』、『Ballon Trip』、『Pikachu』など、E3で出展されたタイトルがメイン。

子供たちの間で爆発的な人気となりそうな『Pikachu』。タッチパネルで“ピカチュウ”の耳やほっぺを触り、その反応が楽しめる。


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