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2005年9月16日(金)

「提案から驚きがなくなった時、人はゲームに飽きる」岩田氏基調講演詳細レポート

 「TGSフォーラム」の任天堂代表取締役社長・岩田聡氏による基調講演において、「レボリューション(仮)」のコントローラが公開されたのは既報の通り。ここでは、基調講演の詳細をまとめてお伝えしていこう。

●任天堂のゲーム人口拡大への取り組みについて
 岩田氏は、まず2003年に同氏が行った基調講演「ファミコンから20年 ~ゲーム業界の今とこれから~」の内容を振り返り、「ビデオゲームビジネスの未来のために、我々は市場を拡大していかなければならない」と提言。任天堂は、前回の基調講演からこれまでの2年間でゲーム人口拡大を目指し、「ゲームから離れた人たちを呼び戻す」、「これまでゲームをしていなかった人たちを呼び込む」、「熟練者も初心者も楽しめる新しい商品の提案」という3点について取り組んだと話す。
 その結果として、「ファミコンミニ」シリーズやゲームボーイミクロ、ニンテンドー DSなどの新ハード、『nintendogs』、『東北大学未来科学技術共同研究センター川島隆太教授監修 脳を鍛える大人のDSトレーニング』、『やわらかあたま塾』といった新機軸のDS用ソフトの発売にいたったという。さらに岩田氏は、各DSソフトにおける登録ユーザーの性別、年齢層、ハード牽引率といった「クラブニンテンドー」のデータを公開し、「ゲーム人口拡大を実現できたという手ごたえを感じた」と述べた。

●「nintendo Wi-Fi connection」
 続けて、ゲーム人口のさらなる拡大のため、任天堂が力を入れる項目として「nintendo Wi-Fi connection」を今年の11月よりスタートすることが発表された。
 本日は時間の都合上、詳細には触れられなかったが、岩田氏によると「10月上旬には詳しいお知らせができると思う」とのこと。「これまでは敷居の高さゆえに、一部のユーザーしかインターネット接続の楽しさを体験していなかったが、任天堂は対応タイトルを購入したユーザーに、少なくとも1度はWi-Fi接続を実際に楽しんでもらい、価値あるイノベーションを実現したい」とコメントしていた。

●「レボリューション」のコントローラ「ゲームリモコン」
 そして話題は「レボリューション」のコントローラ「ゲームリモコン」に。岩田氏はDSの取り組み以前から、ゲーム業界発展の中で進歩してきたゲームの操作系が、敷居の高いものになってきているのではないか? という危機感を感じていたとのこと。
 そういった経緯の中、「インターフェイスを大きく変え、ゲームを触っていない人にも受け入れてもらえるように、またゲーム熟練者にも新しい刺激を感じてもらえるように、誰もが同じスタートラインに立って、真剣にゲームを楽しめることが何より重要だと考えた」と話す。

 片手での操作も可能なコントローラのデザインについては、「TVリモコンは誰もが触るのに、ゲームのコントローラには触らない人がいる。ゲーム人口拡大のためには、いつでも机の上に置いておき、誰もが触れるようにする必要性がある」と述べ、このような形になったと説明。ワイヤレス仕様になっているため、より自由なスタイルでプレイできるこのコントローラは、複数を同時に使用することが可能。コントローラをゆっくり動かしたり、1人で2つを使用して楽器を演奏したり、釣りのような動作、ゲームのジャンプに当たるような操作にも対応できるという。

 さらに、このコントローラには拡張コネクタが備えられており、さまざまな拡張が可能。今回、会場では本体に標準で同梱予定となっている「フリースタイルコントローラ」が紹介された。これは両手の位置関係を自由に操作でき、例えば進行方向に進みながら画面で何かを狙うといった操作ができ、FPSやアクションなどに適用できるとのこと。また、拡張機能をいかし、クラシックコントローラ対応アダプタ(ゲームリモコンに装着する従来コントローラのアダプタ)も用意されていることも同時に明かされた。


●ゲームクリエイタービデオメッセージ
 会場では、このコントローラに関するゲームクリエイターからのビデオメッセージも上映。スクウェア・エニックスの河津秋敏氏、コナミの小島秀夫氏、アーマープロジェクトの堀井雄二氏から、下記のようなコメントが寄せられた。

・スクウェア・エニックス 河津秋敏氏
「まず、片手で持てるというのは大胆なアイデアだと思った。予想以上に手首の動きなどの身体感覚、ちょっとした動きが画面に反応する。作り手である我々のほうが、何を作っていくのか試されている感覚ですね。」

・コナミ 小島秀夫氏
「やられたという感じ。まったく想像していなかった。非常になじみのあるもので新しかったという点で驚いた。コントローラを両手で固定してTVに向かって遊ぶということがファミコンから20年間変わらなかったけど、これが一気に変わる。リモコンというのは日常化しているものだし、驚きはあったけど手に持ってみてなじむ。“これや!”という感じを受けました。」

・アーマープロジェクト 堀井雄二氏
「最初はびっくりしたけど、確かになかったなという感じ。子どもがTVのリモコンをなんとなく触ってみて覚えるという感覚で触れると思う。任天堂さんはDSから始まって、最近触るというゲームが多いが、その発展形がレボリューションのコントローラなのかなと思った。」

 最後に、「我々娯楽商品の作り手は、良い意味で人を驚かせる仕事をしていると思う。そのためにはたゆまないイノベーションがカギになる。我々の提案が人々を驚かせることができなくなった時、人々はゲームに飽きるわけです。ですから、据置型ゲーム機の世界にもゲーム人口拡大のための新しいイノベーションが必要。しかもそれは、誰の目にも明らかに見えて直感的に理解できるものでないと、現状の市場環境に適応できません。入力インターフェイスの一新は、その問題に対応するための我々の提案です」と力強く述べた岩田氏。基調講演終了後は、ゲーム業界の発展に尽力し、常にユーザーを楽しませることを考えている任天堂の真摯な姿勢に、会場中から盛大な拍手が贈られた。

2003年に続き、今回で2度目の基調講演登壇となる岩田氏。「ゲーム人口拡大」についての取り組み、戦略などを語った。





会場では、「クラブニンテンドー」のデータなどを用いて、『nintendogs』や『やわらかあたま塾』といった新機軸タイトルが年齢性別を問わず、幅広い層から支持されたことが説明された。



片手での直感的な操作が特徴となっている「レボリューション(仮)」のコントローラ「ゲームリモコン」。会場では、さまざまなアクションが可能というコミカルなプロモーションムービーを上映。



「ゲームリモコン」の拡張機能を使用するという「フリースタイルコントローラ」。懐中電灯を照らしながらの冒険、といったアクションが可能だという。

岩田氏は、「このコントローラで『ゼルダ』のようなゲームの操作がどう変わるか、どんな操作が新しくアクションゲームのスタンダードとして登場するか、私自身も楽しみですし、皆さんも楽しみにしていただければと思います」とコメント。


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