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2006年9月22日(金)

「さまざまな課題に業界全体で取り組んでいきたい」CESA会長・和田氏の基調講演

 SCE代表取締役社長兼グループCEOの久夛良木健氏に続いて「TGSフォーラム2006」の基調講演に登壇したのは、スクウェア・エニックス代表取締役社長で、社団法人コンピュータエンタテインメント協会(略称:CESA)の会長を務める和田洋一氏。この基調講演では、和田氏が「ゲーム産業の可能性と課題」をテーマにゲーム業界の現状と今後について語った。

 和田氏は、先日8月30日に行われた「CEDEC2006」の基調講演と同様、まずは日本のゲーム市場の現状をグラフ資料で説明。「ゲーム産業における危機意識は、量的観点ではなく質的観点で持つべき」と再度提唱した。
 続いて和田氏はこれまでの家庭用ゲーム業界における歴史を年表形式の資料で紹介しながら、20年という歴史で3兆円の利益をあげる産業に成長した背景を振り返る。任天堂は、ソフトのみを供給するというサードパーティというビジネスモデルを形成し、SCEが開発したPSでは、高度な処理能力によりさらにゲーム表現が豊かになった他、メディアに光ディスクを採用したことで製造コストの大幅な削減を実現。和田氏は「この20年間という歴史の中で、ハードの優秀さもさることながら、莫大なソフト供給を行える組織が形成され、業界は全体で複合的に発展してきた」と話す。

 こういった歴史を振り返る中で、和田氏は「これまでのゲーム産業は、映像や音楽がよりリアルに表現される“リッチ”なコンテンツへと進化する単一進化のみだったが、今後の進化には多様化が求められ、さまざまなライフスタイルに対応できる窓口を広げなければならない。今後は進化の道筋が1本ではなく、複数の方向に展開されていくだろう」と語り、今後のゲーム産業においては「巨大な潜在市場」、「プレイ端末の広がり」、「ビジネスモデルの多様化」といったチャンスが存在するとしている。一方チャレンジすべき課題として「コンテンツの多様化」、「ソフトメーカーのサービス・マインド」、「ビジネスモデルの多様化」などを挙げ、「ゲーム産業は第2ステージへと移行しており、飛躍のポイントは多様化への対応力」だと続けた。

 会場ではこれらを踏まえ、多様化に対応するヒントとしてコンテンツの対応端末やインターフェイス、コンテンツ供給手段といったビジネスモデルの変化などがアイデアとして挙げられた。
 最後に和田氏は、「第2ステージはチャンスに満ちているが、多様化の工夫をしなければならない。これによってより広く新たなユーザーをとらえることもできるし、より新しい体験をユーザーに提供できると思う。しかしこれだけ産業が成長し、さらに10年後に第3ステージを迎えるためには、こちら側も相当な変化を覚悟しなければならない。第2ステージにじゅうぶん対応しながら乗り切っていきたい」と話すとともに、さまざまな課題に業界全体で取り組んでいきたいという姿勢を示して講演会を締めくくった。
「TGSフォーラム2006」基調講演
「私の講演ではサプライズニュースはありません(笑)。リラックスした雰囲気で聞いてください」と前置きし、和やかな雰囲気で講演を始めた和田氏。
「TGSフォーラム2006」基調講演

「TGSフォーラム2006」基調講演

「TGSフォーラム2006」基調講演
和田氏は業界をリードするCESA会長として、ゲーム産業の歴史を振り返りつつ、今後の進化を提案。進化の多様化をはじめ、さまざまな課題に取り組んでいきたいと力強く語った。


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社団法人コンピュータエンターテインメント協会