人間の裏も表も描くTVアニメ「シゴフミ」のキャスト&監督インタビューをお届け
2008年1月よりスタートするTVアニメ「シゴフミ」。そのアフレコが、東京都内のスタジオにて行われた。
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写真は、インタビューに参加してくれた声優陣&佐藤監督のもの。前列左から植田さん、佐藤監督、松岡さん。後列左から仙台さん、代永氏。前列に座る植田さんたちの持っているものは……シゴフミ? |
本作は、伝えたい思いを残して逝ってしまった人間が、大切な人間へ宛てて書いた「死後文(シゴフミ)」という手紙を巡る物語。シゴフミの配達人である無口な少女“フミカ”と、彼女の所有する意思を持つ杖“カナカ”を通して、死者と残された人間の思いがつづられていく。キャストは、ヒロイン“フミカ”役が植田佳奈さん、“カナカ”役が松岡由貴さん、“綾瀬明日奈”役が仙台エリさん、“町屋翔太”役が代永翼氏、“綾瀬美紅”役が大前茜さん、“野島辰巳”役が野島昭生氏となっている。
第1・2話では、廃ビルの中でミニロケットを組み立てて飛ばすことに熱中する少年“翔太”と、キビキビした性格で“翔太”のいる廃ビルによく顔を出す少女“明日奈”のエピソードが描かれていくという。第2話収録前の声優陣と監督の佐藤竜雄氏に話を伺うことができたので、以下に掲載していく。
――まず、皆さんが演じた役についてお聞かせください。
植田さん:“フミカ”は、シゴフミを届ける仕事をしている謎の多い女の子です。なぜシゴフミを配達しているのかはまだわかりませんが。
佐藤監督:おいおい描かれていくと思います。
植田さん:だそうです(笑)。最初は、突然現れて手紙を渡していく不思議な女の子といったところですね。
松岡さん: “カナカ”は、“フミカ”の持っている杖で、持ち主よりもたくさんしゃべっている、ちょっとうるさいヤツ(笑)なんです。実は人間になりたいという夢を持っている、“フミカ”にとっては相方ですね。
佐藤監督:割と作風がダークなので、“カナカ”はそんな本作の中で一服の清涼剤となる存在ですね。“フミカ”があえて言わないことをカナカが「どうして、なんで」と聞いてまわるんですが、そんな無垢さがこの先どう転がっていくかも楽しみにしてほしいです。
仙台さん:“明日奈”については今のところそんなに多くを語れないんですけど(制作陣&キャスト:確かに(笑))、かつてわたしが演じてきた中で、一番不幸な女の子なんじゃないかと。こんなに不幸な女の子がいるのかと思いました。
松岡さん:ここまで不幸な女の子は、私も初めて見ました……。
仙台さん:第1話が終わった時点で、これから収録する第2話の脚本を皆でチラッと覗いてみたんですけど、……全員沈黙といった具合でした。第1話では、彼女の父親が亡くなってから大きくお話が動いていくことになります。あと、妹をすごく愛しています。
佐藤監督:“明日奈”は“フミカ”、“フミカ”は“明日奈”、のもう1つの可能性だったりします。人生には分岐点というものがあって、その分岐点に差し掛かった時にどんな選択をしたかでそれぞれの今があるわけです。だから、最初は2人ともさして違いはなかったんじゃないかなと考えてお話を作っています。
代永氏:僕の演じる“翔太”という役は、ずっとビルにこもって、ロケット作りに命を懸けている純粋な少年で、自分の夢を応援してくれる“明日奈”に恋心を抱いています。“フミカ”と“カナカ”が現れてもすぐに打ち解けられるような部分もあったりします。
――それでは佐藤監督に質問します。本作のキャラクターについて伺いたいのですが。
佐藤監督:「シゴフミ」にはいろいろなキャラクターが出てきます。人間ですから、淀んだところは当然あるんですが、そんな中にもきらめくところがあったりします。そのきらめきが大きいのか小さいのかというのはキャラクターによりますけれども。それがストーリーの中で垣間見えていくことかと思います。……なんかこういうことを言うと、いい話なのかと思ってしまうでしょうが、実際にいい話を作っていますからね(一同笑)。
――続きまして、第1話が終了した時点でのご感想をお聞かせください。
植田さん:さっきから皆さんに言われている通り、“フミカ”はあまりしゃべらずに核心を突いたことをボソっと言うようなキャラクターなので、あまり感情の起伏が表に出ないように演じていました。“カナカ”がテンションが高いので2人で話しているとかみ合わなくて困りました。
松岡さん:まったく次元が違うという感じでしたからね(笑)。
植田さん:“カナカ”に寄ろうとすると元に戻すよう注意されましたし。一緒に収録しているのに、1人でやっているような不思議なアフレコでした。
松岡さん:ここまで物質的な役は初めてでした。物体を演じるにしても、これまでは何かしら表情がありましたし。で、だったら口パク無視していいのかな? やりやすいかも、 と思っていたら「点滅する光に合わせてください」と言われて戸惑いましたね(笑)。表情がないということは、ある意味やりたい放題なんですが、イコールなんのヒントもないんですよね。絵で感情面に関するヒントを与えてもらえないということが、こんなにも難しいんだなって、どうしていいのかとても迷いました。また、ダークな作風とはてんで違うテンションを求められるので、大変でした(笑)。“フミカ”と並べると、とてもアンバランスな2人ですが、その落差を楽しんでいただければうれしいですね。物なんですが、登場キャラクターの中で一番人間くさいキャラクターだと思います。
仙台さん:この話の中で一番裏表のあるキャラクターですね。まだ見ていらっしゃらない方にどう伝えたらいいのかわかりませんが、「わたしは“明日奈”を許します!」。あまりにもヘビーでびっくりしたというのもあるんですが。演じてみた印象としては、やりやすかったですね。“カナカ”とは違った意味で人間的というか、感情の触れ幅が大きいコなので。
代永氏:“翔太”は喜怒哀楽がコロコロと変わるキャラクターなので、演じていて楽しかったです。本当に思春期の男の子がするような行動をそのまましてくれるんですよ。だから“明日奈”に対する反応がとても純粋で、告白したいのになかなかできずにいるようなシーンがたくさんあったりしておもしろかったです。それと、“カナカ”と言いあいをしているところもよかったですね。
松岡さん:漫才みたいだったよね。
代永氏:そんな感じでしたよね(笑)。
松岡さん:台本がコント的に書いてあって、サラっと演じてしまうとサラっとしたシーンになってしまうんですが、わたしがここはちょっとおもしろくしたいな、と思いまして。気持ちの起伏を意図的に漫才に見えるよう考えてやったシーンでしたね。
代永氏::テンポよく、楽しく演じられましたね。現代に生きている普通の男の子という感じでしたね。
佐藤監督:かなりいい手ごたえを感じております。今までやったことのないことをやっているわけではないんですが、キャラクターの考え方を意図的に少しづつわざとズラしていたりします。以前制作に参加したOVA「ねこぢる草」とだいたい同じ方法論で取り組んでいます。基本的に「人というのは山あり谷ありでも、とりあえず生きていかなきゃならない」というテーマを押し付けがましくなく、垣間見える程度に描ければいいかと思います。その辺りを楽しみにしていてください。
――「シゴフミ」という作品の魅力はどこにあるのかお聞かせください。
植田さん:配達されるシゴフミの内容は、決していいものばかりではないんですね。そこがまずおもしろいと思いました。それと、キャストの誰もが思わぬ方向にストーリーが進んでいくので、現場で台本をもらったとたんに皆がチェックするんですよね。それってあまりないことだと思うんですが、それほど惹きつけるストーリーだということが魅力だと思います。
松岡さん:ストーリーがあまりに壮絶で……「話考えた人、天才だなぁ!」と思いました。人間のキレイな部分も汚い部分もすべてさらけ出しているような、内面を全部吐き出しているような作品です。気持ちをワシづかみにされるような内容で、1話を見たらきっと続きを見たくなると思います。わたしも次の台本、またその次の台本が楽しみな感じでアフレコに臨んでいます。
仙台さん:第2話はセリフ劇になっていて、1言1言全部ちゃんと伝えたいと思うんですが、さっき佳奈ちゃん(植田さん)が言っていましたけれど、第1話のアフレコが終わった後にシーンと静まり返った中で次の台本をめくっていくというのは、なかなか珍しい作品だと思います。第1話を見た人は必ず第2話も見てください。思わぬ方向に話が転がっていくので。……シゴフミ、本当に便利なツールです(笑)。
代永氏::だいたい皆さんに言われてしまったんですが(笑)。人が心の底で抱えている問題であったり、表面上の付き合いと本音の違いというのが、第1話から画面を通して伝わってくる作品なんですね。だからこそ、登場人物1人1人に注目してしまうし、1人1人登場することに意味がある作品なんだと思います。だから“翔太”は“翔太”として、“フミカ”は“フミカ”としてそこにいるから物語が成り立っているという感じですね。第1話から目が離せない作品だし、僕自身がびっくりしたような展開になっていますので(笑)、楽しみにしていてください。
佐藤監督:全12話の作品なんですが、今回は類を見ないほど脚本打ち合わせが厳しくて、楽しくて……。全員が話を作っていくうえで真剣に向き合っていて、全員が協力して立体的に組み上げていく打ち合わせというのは初めてだったかもしれません。キャストの皆さんが感想を聞かせてくれたりなどしてくれて、うまくいっているな、と思います。
――ではプロデューサー湯川氏から、メディア展開についてお聞かせ願いたいのですが?
湯川氏:「シゴフミ」のお話に関しましては、湯澤友楼さんが原作を担当していまして、それを雨宮諒さんが小説にしたり、佐藤さんと大河内一楼さんがアニメにしたりといった具合に、1つのコンテンツから並行的・複合的に展開する仕組みになっています。ですから実は、TVアニメの“フミカ”と小説の"文伽"は別人なんです。では、アニメと小説は別の作品なのか? というとそんなことはなくて、見ていただければリンクしていることがはっきり伝わると思います。ですからTVアニメを最後まで見ていただいて、なおかつ小説も買っていただけるとうれしいな、と思います。
――最後に、「シゴフミ」の放映を待つファンにメッセージを1言ずつお願いします。
植田さん:「シゴフミ」という作品は、キャストも話の続きが気になるような、目が離せない作品になると思います。ですので、放送が始まりましたら、欠かさず見ていただけるとうれしいです。
松岡さん:この作品は、胸をかきむしられるようなグッとくるストーリーなんで、見ていただければと思います。……わたしは杖なんですけれど(笑)。「杖じゃ萌えない」なんて言わないで!(一同笑) 頑張っていますので、ぜひお付き合いください。
仙台さん:昼に見ないでください。夜、リアルタイムで見てもらいたいと思います。私は台本を読んだだけで怖くて、夜にVチェックできなかったんですけど(笑)。皆さん、怖がらすに付いてきてください。
松岡さん:あ、わたしはホラーが好きなんで、すごい楽しいし、楽しみなんですけどね(笑)。
代永氏:第1話から目が離せない展開になっています。第1話で驚いて、第2話で涙する……。そんな展開が続いていくと勝手に思っています(笑)。でも、第1話から目を離さずにじっくりと見ていただきたいですね。そんな作品です。
佐藤監督:ほとんど言われちゃいましたね(笑)。この作品は、基本的に“フミカ”と“カナカ”が狂言回しになって進んでいくというのが流れなんですけど、けれども、話が進んでいくごとに、彼女たちのドラマも描かれていくので楽しみにしていてください。
“フミカ”の設定画。写真右の“フミカ”が持つ杖が“カナカ”だ。
“フミカ”の表情(写真左)と“綾瀬明日奈”(写真右)。
“町屋翔太”(写真左)と“綾瀬美紅”(写真右)。
(C)湯澤友楼/バンダイビジュアル・ジェンコ
データ
■TVアニメ「シゴフミ」
【スタッフ】(敬称略)
監督:佐藤竜雄
シリーズ構成:大河内一楼
キャラクター原案:黒星紅白
プロデュース:ジェンコ
アニメーション制作:J.C.STAFF
【キャスト】(敬称略)
“フミカ”役:植田佳奈
“カナカ”役:松岡由貴
“綾瀬明日奈”役:仙台エリ
“町屋翔太”役:代永翼
“綾瀬美紅”役:大前茜
“野島辰巳”役:野島昭生
他
■関連サイト
・TVアニメ「シゴフミ」公式サイト
・電撃文庫公式サイト