News

2007年2月23日(金)

【AOGC2007】コーエー松原氏が語るオンラインゲームビジネスの3つの可能性

 ブロードバンド推進協議会が主催するオンラインゲームの国際カンファレンス「アジアオンラインゲームカンファレンス 2007 東京(AOGC 2007 Tokyo)」にて、コーエー執行役員の松原健二氏による講演「オンラインゲーム beyond:可能性はどこまでか?」が行われた。

 松原氏は、コーエーにて『信長の野望Online』、『大航海時代Online』、『真・三國無双BB』といった数々のオンラインゲームのプロデュースを担当。日本におけるオンラインゲーム開発の第一人者として活躍している。

 本講演では、まずはじめに昨年行われた「AOGC 2006」の松原氏の講演内容「変化と成長を続けるオンラインゲーム市場で勝ち抜く戦略」を振り返りつつ、次世代コンシューマハードの現状を確認した。
 昨年の講演で松原氏は、次世代ハードにおいてオンラインゲームが成功するためには、「課金、マッチング、コミュニティ形成といったオンラインゲームを支援するシステム」、「次世代ハードの普及速度」、「オンライン対応コンテンツ」という3つの条件が必要と述べた。これを受け、今年の講演ではXbox 360、PS3、Wiiの現状を分析していった。詳細は下記の通り。

■Xbox 360
 Xbox 360の日本国内における販売台数は25万台と、次世代ハード3機種の中では最少。だが、世界では1,040万台と確実にシェアを獲得している。松原氏によると日本と世界のゲームコンテンツ市場規模は1:4の割合で、Xbox 360の販売台数の差は非常に大きく、国内のデベロッパーとしても悩みの種になっているという。
 だが、Xbox 360は「Xbox Live」をはじめとしたオンラインサービスが定着しており、オンラインゲームのプレイ環境としての強みを持っている。また、カプコンが自社開発したミドルウェア「MTフレームワーク」やマイクロソフトが提供するミドルウェア「XNA」など、メーカーが自分で開発環境を整えることができるのも特徴となる。

■PS3
 2006年11月の発売から4カ月、現在の国内販売台数は60万台となるPS3。3月末までに世界出荷台数300万台を予定しているものの、オンラインゲームをプレイする環境としてのクリティカルマスには達していない。松原氏は、PS3の大きな動きは2007年末になるだろうと予想していた。
 技術面では、PS3に搭載されている画期的なCPU「Cell」について触れた。「Cell」は1つのCPUに異なる種類のプロセッサを組み合わせた「ヘテロ型マルチコアCPU」だが、現状ではこの「Cell」の性能を充分に引き出したソフトウェアは存在しないとのこと。「Cell」の性能をどこまで出せるかが、今後のPS3のロードマップになる、と語った。
  また、先日インテルが実験的に開発した最新の「ホモ型マルチコアCPU」(同じ種類のプロセッサのみで構成されたCPU)の話題について、今後「ヘテロ型マルチコアCPU」と「ホモ型マルチコアCPU」の競争が発生する可能性を話した。

■Wii
 最後のWiiは、発売後2カ月で国内販売台数が140万台を突破。世界市場では3月末までに累計600万台を出荷と、日本国内、海外の両市場においてアドバンテージを取っている。松原氏は、Wiiの成功の理由を「明確な差別化」にあると分析。加えて、ゲーム以外の特徴となる「Wii チャンネル」および「Wii Connect24」に注目していると話す。
 まず「Wii チャンネル」は、現在放映されているTV-CMに関し、ゲーム以外のコンテンツのマーケティング戦略・プロモーション広告に優れていると評価した。一方の「Wii Connect24」については、スイッチを切ったスタンバイ状態でオンラインにつながるという仕様により、「今までにないオンラインサービスの可能性を持っている」としていた。

■顧客間取引(C2C/C2B2C)
 顧客がコンテンツを作り出し、その他の顧客に販売するビジネススキーム。コンテンツ販売の仲介を企業が行うと「C2B2C」となる。北米でサービス中のオンラインコミュニティコンテンツ『Second Life』(※)ではすでに導入されており、多くのユーザーがバーチャルデータのオリジナルコンテンツを制作し、販売を行っている。

 しかしながら、『Second Life』はゲームという位置づけではないからこそ上記サービスが可能な部分もあるとのこと。オンラインゲームの中でこのようなサービスを行うには、「顧客が制作したコンテンツの知的所有権はどこに帰属するか」、「顧客が制作したコンテンツがゲーム世界との調和を乱さないようにするには」といった課題がある。

(※)『Second Life』
  北米リンデン・ラボが開発・運営を行うオンラインコミュニティサービス。同社はバーチャル世界の“土地(島)”の販売だけを行い、ユーザーは購入した土地で自分の分身となるキャラクターを生活させることができる。キャラクターの服飾をはじめ、さまざまなコンテンツをミドルウェアを使って顧客が作り出せる。また、モンスターを作って自分の島をMMORPGとして遊ぶことができる場所にしたりと、『Second Life』の中でプレイできるゲームを開発することもできる。実例として『Second Life』の中で開発され、その後GBA用ソフトとして北米で発売された『トリンゴ』というパズルゲームが存在する。
  顧客が生み出した各種コンテンツには知的所有権が発生し、『Second Life』内で売買することも可能。売買に使用する仮想通貨は現金に換金でき、現在『Second Life』内では1日に付き1億~1億5,000円相当の流通の動きがあるという。


■ゲーム内広告(B2B)
 オンラインゲームの中に企業広告を盛り込み、新たな収入源を得るビジネススキーム。北米ではすでに普及しており、現在日本でもこのビジネスモデルに取り組んでいるオンラインゲームメーカーが出始めている。広告内容がゲームの世界観を乱さないよう、注意する必要があるなどの課題がある。このビジネススキームが普及することにより、新たな広告コンテンツの創造といった可能性も期待できる。

■パーソナライズド・エンジン(B2B)
 “密度の濃い、膨大な顧客の行動データを収集しやすい”というオンラインゲームの特徴を生かした、松原氏が提唱する新たなビジネススキーム。オンラインゲームの顧客の行動データから特性を抽出・モデル化し、ゲーム内コミュニティなどの関係を数値モデル化することで、ゲーム以外のサービスにも利用していく。
 イメージとしては、オンラインショッピングサイト「Amazon」のおすすめ商品がより進化したもの、と思えばわかりやすい。
  顧客が意識しないところから新たな展開が生み出されるため、松原氏はこのサービスを「心地いいおせっかい」と評していた。

 なお、講演の最後にはコーエーの今後のオンラインゲームタイトルの展開についても語られた。新たな発表となる情報はなかったものの、『信長の野望Online』と『大航海時代Online』は新たな拡張パックの発売を予定、『真・三國無双BB』は海外でのサービス展開が進行しているという。これらのオンラインゲームをプレイしている人は、続報を
楽しみに待とう。 コーエーのオンラインゲームを統括する松原氏。「私の作った造語っぽいんですが」と前置きした上で、「パーソナライズド・エンジン」というビジネスの可能性を語った。



データ

■「アジアオンラインゲームカンファレンス 2007 東京」
【開催日時】2007年2月22日・23日
【開催場所】ベルサール神田(東京都千代田区)
【主催】ブロードバンド推進協議会
【受講料】30,000円

■関連サイト
GAMECITY
コーエー
「アジアオンラインゲームカンファレンス 2007 東京」公式サイト
ブロードバンド推進協議会