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2007年6月6日(水)

トランスコスモス、フロム・ソフトウェア、産経新聞の合弁会社「ココア」設立

 トランスコスモス、フロム・ソフトウェア、産業経済新聞社は、都内で記者発表会を開き、3Dバーチャルコミュニティ(メタバース)事業を展開するための合弁会社「ココア(Co-Core)」を設立したと発表した。

 メタバースとは、3Dグラフィックで生成された仮想空間のこと。代表的なものはアメリカのリンデンラボ社が提供している「Second Life(セカンドライフ)」で、ロイター通信が支局を開設したり、クリスチャン・ディオールが新作を発表するなどして話題を集めた。
  ココアが手がけるPC用オンラインコンテンツ「meet-me」の特徴は、カーナビと同等のデジタル地図データを使用して、現実世界の東京を再現するということ。主要なランドマークは実在の建物を忠実に再現するということで、季節・天候・地価なども現実とシンクロさせ、現実世界と「meet-me」がオーバーラップするような世界観を提唱するとしている。

 発表会の冒頭で挨拶に立ったトランスコスモス専務取締役の森山雅勝氏は、「meet-me」開発の経緯について「ネットの世界にはマイルとかポイントといったサービスがありますが、それが割引であるうちは興味がなかったんです。ですが、アンケートの対価としてマイルを発行するようなことが一般的になったとき、それは通貨と同じじゃないかと思って。3Dの仮想空間で、企業が自由に通貨を発行できるのであれば、おもしろいことができるんじゃないか、可能性がすごく広がったのではないかと。その構想をいろいろな人に話したところ、神社長の賛同を得ることができ、具体的な話を進めることができました」とコメント。

 システムの開発にあたっているフロム・ソフトウェア代表取締役の神直利氏は「話を聞いておもしろいとは思ったんですが、東京23区にある建物の数は170万くらいで、駅の数は500くらいあり、開発は地獄です(笑)。ピンチでもあるんですがチャンスということで、社員一丸となって頑張っています」とのこと。

 続いて産業経済新聞社取締役の阿部雅美氏は「インターネットが商用化されるとき、ここまで広がりを見せるとは誰も思っていなかったでしょう。メタバースの世界も、インターネット初期の状態に近いんじゃないかと。森山さんの「日本におけるメタバースのデファクトスタンダードを作りたい」という意気に感じました。我々の役割は、メタバースの理解と普及に努めること。我々は紙の媒体を持っているので、そこで少しでも力になれると思います。また、メタバース内での情報発信、報道も必要となるかもしれません」と、「meet-me」内外での協力を考えているようだ。

このアイデアの発起人、トランスコスモス専務取締役の森山雅勝氏。数年前から構想していたが、なかなか具体的な動きに移れなかったという。 フロム・ソフトウェア代表取締役の神直利氏。ユーザーが多彩なモノを作れるツールを用意するとのこと。 産業経済新聞社取締役の阿部雅美氏。産経新聞に寄稿された「21世紀はメタバースという新大陸が発見・開拓されるという、歴史的な年になる」という文章を引用し、期待の大きさをうかがわせた。

 この発表会では、実機を用いたデモも公開された。デモの内容は、女性アバターが「meet-me」内の渋谷を歩き回るというもの。そのなかでは、109やQFRONTの巨大ビジョンといった渋谷ではおなじみの建物に混じって、巨大観覧車や牧場など、現実の渋谷には存在しないオブジェクトも見受けられた。「meet-me」では、地形データやランドマーク的な施設は現実と同じものを用意するが、建設される建物についてはプレイヤーの自由になるという。

おなじみ109や渋谷駅前が再現された「meet-me」内の空間。大型ビジョンには『アーマードコア4』の画面が見えるほか、東急百貨店の壁面には産経新聞などの垂れ幕が。このように、広告事業はランドマークを中心に展開していくと思われる。

ビジネスモデルは「セカンドライフ」に近い形態となっており、ユーザーに土地を売ることで収益を得るほか、広告事業も積極的に展開するという。なおRMTについては現状では予定していないとのこと。また、「コモンセンス」を維持し、誹謗中傷表現、風俗的関係の情報・表現を排除することに最大限の努力を払うことが強調された。質疑応答の場で出た「アダルトコンテンツやギャンブル要素が「セカンドライフ」人気の一因であると思うが、健全な空間でユーザーを集められるという根拠は?」という質問に、森山氏は「そうあるべきだと思うんですよね。ユーザーがたくさん集まっても、わけのわからないコンテンツがあったり、人を傷つけることがたくさんあったりっていうのはイヤなんで。自信とか根拠という面では、これ、というのはないんですが、新たなコミュニケーションができるという部分は、楽しいんじゃないかと思っています」と回答した。

 さらに、他企業と幅広くパートナーシップを結ぶことで「meet-me」の活性化をはかっていくことも明言。その第1弾として、アニメ制作会社の「ぴえろ」、「プロダクション・アイジー」と提携したことを発表した。

 「ぴえろ」常務取締役営業本部長の本間道幸氏は、「ムービーを見ただけで、ビジネスの構想がグルグルと頭を駆けめぐりました。アニメ業界では、インターネット上で作品を見てもらうことがありますが、さらに発表のフィールドが増えたと思います」と期待を募らせる。

 「プロダクション・アイジー」代表取締役の石川光久氏も、「アイジーはビデオグラムを商売の中心においています。多く宣伝をうつというより、クオリティの高い作品を作ってコアな層に確実に売れるものを作るという。「meet-me」で強く感じたのは、クリエイターが参加しやすいこと、作品を提供できる場が広がったなということ。アイジーはクリエイターの集団であることを最大の力としていますので、「meet-me」に参加できることはものすごいチャンスだと思っています」と歓迎していた。

 
「まだ妄想段階ですが、いろいろアイデアはあります」と語った「ぴえろ」常務取締役営業本部長の本間道幸氏。   「「ぴえろ」さんと協力してプロジェクトにあたるということは、まったく考えになかった。バーチャルの世界ではなにが起こるかわかりません(笑)」と、「プロダクション・アイジー」代表取締役の石川光久氏は会場を笑わせた。

 森山氏が繰り返した「新しいコミュニケーション」が楽しめるという「meet-me」だが、この日は具体的なサービスの内容についてまでは言及されず、強い訴求力となり得る部分は見られなかった。ただし、システムを手がけるシステムソフトウェアの神氏から「日本人にはオープンソースって向いてないと思うんです。もうちょっとシステムから親切な環境を提供する必要があると考えているので、そのボリューム、システムを考えています」というコメントがあったように、「セカンドライフ」を相当研究したうえで、勝算があるからこそ立ち上げたプロジェクトなのだと考えられる。そのためには、「ぴえろ」、「プロダクション・アイジー」に続いて、魅力あるコンテンツを提供できるパートナー企業の参入が重要になると思われるが……。森山氏の言う「日本のメタバースのデファクトスタンダード」となるだけの可能性も大いに感じられる「meet-me」は、2007年冬にベータ版を提供予定。その動向に注目したい。



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