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2008年2月19日(火)

第14回電撃大賞・大賞受賞作「ほうかご百物語」著者インタビュー掲載!

 2月10日に発売された、第14回電撃小説大賞受賞作「ほうかご百物語」の作者・峰守ひろかず先生にインタビューを行った。

▲写真は著者近影(左)および「ほうかご百物語」の表紙イラスト(右)。


 「ほうかご百物語」は、一年生にして美術部部長の主人公“白塚真一”が、妖怪少女“イタチさん”と出会い、妖怪に詳しく常にハイテンションな性格の“経島御崎(ふみしまみさき)”先輩たちと一緒に妖怪退治に奔走するという物語。軽快なノリで進むストーリーと、かわいらしい“イタチさん”に注目だ。

 以下に、峰守先生のインタビューを掲載していくので、ぜひチェックしてもらいたい。


――まず最初に、本作を書こうと思ったキッカケを教えてください。

峰守先生:元々妖怪が好きだったので、妖怪が出てくる話を書こうと思ったのがキッカケです。妖怪を扱う小説って、妖怪そのものが主役になっていたり、バトルものになっていたりするスタイルのものが多いと感じていたので、ちょっと趣向を変え、「妖怪」の伝承の設定を生かして、あっさり解決してしまうような話を作ろうと思い立ちました。

――妖怪を好きになったのはいつごろからですか?

峰守先生:小さいころから好きでしたね。生まれて初めてもらったクリスマスプレゼントが、水木しげるさんの「妖怪百物語」だったぐらいです。自分でこれが欲しいと言ってもらったんですが、家でずっと読んでて親に「気持ち悪い、気持ち悪い」と言われてました(笑)。

――妖怪については、日ごろから調べていたりするんでしょうか。

峰守先生:妖怪に関する本はよく読んでいます。最近は水木しげるさんや京極夏彦さんの影響で、文庫でも専門的な本が出るようになってうれしいですね。後は、インターネットもよく活用しています。

――先ほどもおっしゃったように、本作では出てくる妖怪たちを力ではなくロジックで撃退していく場面が多いですが、その辺りについて詳しく聞かせてください。

峰守先生:もともとバトルものを書くのが苦手ということもあるんですが(笑)。妖怪って、ちょっとしたことで退治できてしまったという伝承がほとんどで、本当に怖いヤツってあまりいないんですよね。だからこの作品の中でも、「見た目は怖そうだけど、いざ挑んでみたらなんか片付いちゃった」みたいなあっさりとした感覚を出してみました。

――「ほうかご百物語」とタイトルにもある通り、本作には妖怪がいろいろと出てきますが、ズバリお気に入りの妖怪は?

峰守先生:ここは“イタチさん”と言っておいた方がいいんでしょうか(笑)。“イタチさん”以外だと、5話に登場する「牛鬼」が好きですね。いろいろな伝説が各地に残っていて、「ゲゲゲの鬼太郎」などにも登場するのですが、作品によってデザインが違うんです。だから、この作品みたいにすべての伝承を元にしたデザインが登場するのはめずらしいんじゃないかなと思います。

――その「牛鬼」はいろいろなバージョンが出てくるワケですが、どのバージョンが特にお好きですか?

峰守先生:四国バージョンですね。大きい怪獣のようなデザインがわかりやすくて好みです。

――ヒロインが「イタチ」というのはめずらしい設定だと思うのですが、これについては何か意図があったのでしょうか?

峰守先生:ちょっとずるっこい話をすると、「被らない」というのがあったんです(笑)。猫とかキツネの姿をした女の子だと、もういるじゃないですか(笑)。それと本文中にも書いていますが、「イタチ」の伝承ってあまりはっきりと確立していないというか、イメージが曖昧なところがあるんです。だから、これをそのまま使えばほわんとした雰囲気の女の子ができるんじゃないかなと思いまして。

――主人公“真一”は美術部部長という設定ですが、先生自身は普段から絵を描いたりするのでしょうか。

峰守先生:一応中学生のころは美術部だったんですが、あまり美術部で絵を描いてはいませんでしたね(笑)。

担当編集:でも、絵はお上手なんですよ(笑)。「妖怪のイメージはこんな感じです」って絵を見せてくださったりするんです。

峰守さん:あぁ、あれまだいっぱいありますよ(笑)。

――実際に絵に描いて妖怪をデザインされていたということですか?

峰守先生:そうですね。実際に描いてみないと描写が定まらないので。大きさはこれくらいだとか、足は何本だとか、絵に描いてまとめています。作中でも、“真一”が妖怪の絵を1枚2、3分で描くシーンがあったので、実際に描けるのかどうか試してみたりもしました。ただ人間は描けないんで描きませんけどね(笑)。
 でも、主人公を美術部という設定にしたのは僕が美術部だったからとかではなくて、“イタチさん”に居ついてもらうような展開にしたかったという考えからきています。居ついてもらう時に、一種の「契約」のような感じで絵を描いてはどうかという話が思い浮かんで、その流れで決まったことなんですよ。

――制作期間はどのくらいだったんでしょう?

峰守先生:2~3カ月ぐらいでしょうか。もともと大学で人形劇の脚本を書いていたので、ものを書く習慣はあったんです。それと、昔からメールでやり取りをしている友人がいるんですが、そいつが自分の遊んだゲームのあらすじとかをやたらびっしり書いて送ってくるんですよ(笑)。僕も返信するんですが、だんだんネタがなくなってきて、じゃあ小説でも書いてみるかと書き始めたのがキッカケの1つだったりします(笑)。ちなみに文庫のカバー袖プロフィールの写真は、人形劇の時に使っていた人形です。


――妖怪についても、文中に詳しく解説されていますよね。

峰守先生:あまり専門的になってしまうと逆にわかりにくくなってしまうので、ある程度簡略化しています。わかりやすくするために本来の伝承とはわざと変えている部分も結構ありますね。

――京極しん先生のイラストをご覧になってどう思いましたか?

峰守先生:最初にもらったのは"真一"のラフだったんですが、随分かわいいなという印象でした。主人公でこれだけかわいければ後はどうなるんだろうと期待していたら、予想以上でしたね。"イタチさん"もそうですが、全体的に地味なキャラクターが多いと思っていた作品なので、魅力的なデザインを与えていただいたのはすごく嬉しかったです。特にヒロインの"イタチさん"はデザインもかわいいいんですが、挿絵での表情がすごく良くて、これはもう"真一"じゃなくても惚れ込むだろうなと思いました。京極先生にはほんとうに感謝しています。

――好みのキャラクターは誰でしょう?

峰守先生:ビジュアル的には“輝”と“稲葉”先生が好みです。今原稿を書いているんですが、出番が増えましたね(笑)。

――今、原稿を書いているというお話があったんですが、次の巻の原稿を執筆されているということですか?

峰守先生:はい、今書いています。

――物語の最後に、「ある妖怪」の話が出てきているんですが、このキャラクターは2巻で活躍するのでしょうか?

峰守先生:もちろん、目一杯活躍します(笑)。最後にちょっとだけ登場させたのには、「“真一”と“イタチさん”が出会ったのは特別なことじゃなくって、妖怪は日常的にどこにでもいるんだぞ」という感じを出したい意図がありました。

――本の中で、読者に「ここを読んでほしい!」という点はどこでしょう?

峰守先生:4話、5話辺りでしょうか。主要キャラクターが全員登場してだらだらしているシーンを楽しんでほしいですね。序盤はどうしても説明が多くなってしまうので。特に、5話の「牛鬼」の話は個人的に気に入っています。“イタチさん”はあまり出てこないんですけどね(笑)。全体的にラストシーン以外はシリアスになり過ぎないよう気をつけたので、軽い気持ちで楽しんでいただければと思います。

――好きな作品や作家がいたら教えてください。

峰守先生:電撃文庫で「大久保町」シリーズを書いていた田中哲弥先生です。元々は吉本興業でお笑いの台本を書いていた作家さんなんです。「周りは大変なことが起こっているけど、それはそれとして僕はこの子が好きなんだ!」というような作風で、実は「ほうかご百物語」を書いた後に読んだんですが、まさに「僕がやりたかったのはこんな話だ」と思いました。あとは、椎名高志先生の「GS美神 極楽大作戦!!」ですね。いろんな妖怪が出てきてキャラクターが死にそうな目にあったりもするんですが、作品自体のテンションはすごく明るいノリで。好きな人に向かって一直線な男の子のそばに、人間離れしたヒロインがいて、幽霊に詳しい女の子がいて、というキャラクターの配置はもしかしたら似ているかもしれませんね。

――言われてみれば確かに、あまり深刻にならないという部分は、本作にも似通ったところがありますよね。

峰守先生:確かにそうですね。あとは「もっけ」や「ぺとぺとさん」でしょうか。妖怪とバトルするのではなく、日常的に現れる妖怪をあしらうという世界観は通じるところがあると思います。妖怪とは関係ないところだと、上遠野浩平先生や成田良吾先生の作品をよく読みますね。

――最後に、読者の方にメッセージをお願いします。

峰守先生:この本のアピールポイントは「妖怪退治もの」ではなく「妖怪対処もの」というところでしょうか。妖怪と戦う作品は多いですが、妖怪の設定を生かしてあっさりと片づけてしまうという作品はあまりないんじゃないかなと思うんです。さくっと読んで楽しんでもらえれば、書いた方としてはうれしい限りですね。

――わりとポップな作風ですよね。インタビュー前に読ませていただいたんですが、さくっと読めました。

峰守先生:ただ、“真一”がちょっとウザいんじゃないかなと思うんですよね(笑)。アグレッシブな性格なので、毛嫌いせずに受け入れてもらえるかどうか少し心配です。後はよくヒロインが頑張り屋と言われるんですが、他に頑張っているヒロインはたくさんいるじゃないですか。“イタチさん”って結構だらしないところもあるんで、頑張り屋だなんていったら怒られるかもしれませんが(笑)。まぁ、そのあたりも含めて、読んでもらえればと思っています。

――ありがとうございました。


 なお、電撃文庫&電撃文庫MAGAZINEのオフィシャルサイト内の電撃エッセイ&インタビューにて、「ほうかご百物語」のイラストを担当している京極しん先生のインタビューも掲載されている。こちらもあわせてチェックしよう。

(C)MediaWorks

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