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2008年2月20日(水)

「君のための物語」で第14回電撃大賞金賞を受賞した水鏡希人先生にインタビュー!

 2月10日に発売された電撃文庫「君のための物語」の作者にして、第14回電撃小説大賞の金賞を受賞した、水鏡希人先生のインタビューをお届けする。

▲写真は「君のための物語」の表紙イラスト。

 「君のための物語」は、小説家を志す主人公“私”と、つかみどころのない不思議な青年“レーイ”との数奇な運命を記した作品だ。本作では、彼ら2人に出会いをもたらすことになった出来事から始まり、昔日の思い出が詰まった品を探す老婦人、「女帝」とも称される歌姫、“レーイ”を追いかける魔術師たちとのエピソードが綴られていく。

 以下で水鏡先生のインタビューを掲載するので、興味のある人はぜひご一読いただきたい。

――まず、作品を作ろうと思ったキッカケを教えてください。

水鏡:応募のために別の作品を書いていたのですが、どうにも完成しない気がしまして……。その時、男2人の絵がパっと浮かんで「これなら書ける」という予感がして急きょ変更しました。実は、原形というか、この主人公たちの男2人の物語を、かつて短編賞で応募したことがあるのです。初めての応募だったのですが、そこそこいいところまで行きまして。神頼みならぬ作品頼みみたいな面も、心理的には多分にありましたね。

――いつごろから文章を書き始めたのでしょうか?

水鏡:学生時代からちらほら書いては、知り合いに読んでもらっていました。それこそキッカケは、電撃大賞の1回目の募集欄を見たことでした。実はこれで、かなり初期から電撃の作品に触れていたりしてまして(笑)。もっとも、それでいざ応募しようと思うまでには時間がかかりましたけども。

――普段は何をしていますか? 趣味などについて教えてください。

水鏡:趣味は月並みですが、やっぱり読書でしょうか。時折、芝居なども観に行ったりしています。もうちょっと趣味の幅を広げたいと思っているのですが、まだまだしばらくは難しそうです。

――では、どんな時にアイデアを思いつきますか? また、ネタにつまった時の気分転換法はありますか?

水鏡:ぬははは(笑)。それを知っていたり、定型を持っていたら苦労しないかと。そうですね……どうにも困った時には、とにかく書く以外のいろんなことをします。本を読んだり、音楽を聞いたり、散歩をしたり、どこぞの店の商品を眺めたり。書こうとしている作品と関係あるかどうかはさておいて、とにもかくにも人と話してみたり、などなどですね。

――これから行ってみたい場所などはありますか?

水鏡:地域的には欧州でしょうか。博物館や美術館、歴史的な名所などをめぐったりしてみたいです。国内でいえば北ですね。北海道にはまだ行ったことがないので、今年ぐらいは行けたらなと思っています。

――作品を作る上で、参考にした経験や思い出などありましたら教えてください。

水鏡:学生のころ、モーリス・ルブランの「アルセーヌ・ルパン」に夢中になっていて、いつかあんな世界の物語を書いてみたいと思っていました。

――作品の舞台でイギリス(に似た場所?)を選ばれていますが、これには何か理由はありますか?

水鏡:書こうとする動機が「アルセーヌ・ルパン」でしたからね(笑)。取り立ててフランスやパリを意識してはいませんでしたが、ただ、確かに描写を振り返ると「よりロンドンの方が近いかも」と、今さらながらに思ったりします。

――動機が「アルセーヌ・ルパン」ということですが、作品のコンセプトはどのような点ですか? 制作中に苦労した点もありましたら、あわせて教えてください。

水鏡:「性格の悪い物好きと高慢な変わり者」という、はっきりいえば付き合いづらい2人の男の物語です。熱い友情で結ばれたような体育会系とは、ちょっと違うノリがいいなと思いました。苦労ですか? なんとか1章書き終えて、これを短編で応募すべきか考えているところへ、パっと浮かんだ2章を書いてみたら、とっくに4月に入って幾日か過ぎていました。どのような状況になっていたか自明かと……(笑)。おかげで、土壇場まで第15回に応募するかどうか、ふらふら迷いながら書いていました。

――文庫化にあたって、ご自身の作品にイラストがついていますが、イラストをご覧になっての感想を教えてください。

水鏡:個人的に絵心など持ちあわせていないので、絵を描ける人というのはほぼ無条件で尊敬の対象なのですが、それにしても素敵ですね。正直ビックリですし、本になってくれるんだという実感が、ようやくにしろ抱けるようになってきました。人物もさることながら、本とティーカップの絵がもうすばらしい。ただただひたすら感謝感激しております。

――作品の中で一番思い入れのあるシーン、キャラクターは?

水鏡:意外かどうかわかりませんが、実は2章だったりします。1章のみの短編で応募しようと考えていて、既定ページ数にせねばと苦闘していた時に、ある歌の一節が浮かんだのです。それを土台にして書くことができたおかげで、全体の方向性がよりはっきりしましたし、結果、なんとか1つの長編として書き上げることができました。

――尊敬する作家、好きなキャラクター、好きな作品について教えていただけますか?

水鏡:メディアワークス作品や作家の方では、それこそたくさんいるのですけども……言う側がそう思うのも変かもしれませんが、ここでお名前を上げるのは、なかなか気恥ずかしかったりします。ゲームや漫画、芝居も含めて全般に言えますが、やはり歴史と推理物は好きですね。

――物語のキーとなる“レーイ”ですが、彼のキャラクターを思いついたキッカケは? 身近にモデルやヒントとなる人がいらっしゃったりするのであれば、差し支えない範囲で教えてください。

水鏡:具体的な人物はいないですね。警世的な意図はまるでありませんが、最近は特に若い世代で安易で薄い人間関係が求められがちとか、よく聞かされることが多かったんですね。それなら「付き合いづらさ」を抱かせる性格と、そういう感覚を抱く性格は、人物設定や物語としておもしろいのではないかと思って生まれました。

――作中で主人公が書いている物語がいくつか出てきますが、そのうちご自身ですでに書いている小説はありますでしょうか?

水鏡:まったくの即興ばかりで、どれもはっきりとした構想にもなっていなかったりします。どれか1つでも形になってくれたら、それこそ本人が一番ありがたかったりするのですけども(笑)。

――「質問にはなかったけれど、これだけは話しておきたい!」という事柄はありますか?

水鏡:パっとしたところで月並みなところしか思いつきませんが、読んでおもしろいと感じていただければ、これからも応援してくださるとありがたく思います。

――これから読んでくれる読者に一言お願いします。

水鏡:とてもとても素晴らしい絵を描いていただきました。とてもとても恐縮なお薦めの言葉をいただきました。本編もそれを裏切らないものと思います。願っているかもですが、いずれにしろ、まずは手にとって読んでいただけるとうれしいです。

――ありがとうございました!


(C)MediaWorks

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