2005年10月にTVアニメが放送され、今年1月31日にはDS用ソフト『蟲師 ~天降る里~』が発売された人気コミック「蟲師」。TVアニメで主人公の“ギンコ”を演じた中野裕斗氏が、「蟲師」に携わった人を訪ねたり、「蟲師」にかかわったことをするコーナー「蟲の居所」の第3回目をお届けする。
「蟲師」は、「月刊アフタヌーン」(講談社刊)で隔月連載中のコミック。TVアニメが放送された後、幅広い層の支持を獲得し、文化庁メディア芸術祭「日本のメディア芸術100選」アニメーション部門で6位入賞を果たした。また、DS版『蟲師 ~天降る里~』では、ゲーム内で蟲師の世界が100%再現され、ゲームオリジナルのストーリーを楽しめることが話題となった。
今回の「蟲の居所」は、“ギンコ”役の中野裕斗氏にDS『蟲師 ~天降る里~』をプレイした様子を語ってもらった。蟲師を職業とする“ギンコ”を演じている以上、このゲームを蟲することは、イヤ! 無視することはできないだろう。
「俺の名前を言ってみろ!?」 2008年3月某日
1月に発売されたDS『蟲師 雨降る里』は、誰もが「蟲師」になれるゲームソフト。俺は、当然クリアしている。えっ? なんでかって?
俺を誰だと思っているんだい? “ギンコ”だよ! なんてことを今では自信満々に言っているが、このソフトをクリアすることは、簡単なものではなく、むしろ険しく厳しいものだった。
この物語は、蟲師になるために、もがき苦しんだ、1人の男の挑戦である……なんて言ったらちょっとおおげさかな。誰でも楽しめるゲームをとことん遊んだ男の記録である……まあこんなもんだろう。
ゲームをスタートさせて、まず感じたのは、背景や環境の音の凄さだ。ここでしばらくは、見入ったり聞き入ったため、手が止まった。時間が経過して、夜になったので、たき火をして、野宿をする。朝起きて、釣りをする。これを何回か繰り返したところで、ようやく「蟲」を探し始めた。
ああ、ここでは「蟲」を探したのだが、別に探す必要はない。何をしてもいいのが、このゲームの特徴だ。一応ストーリーがあるので、それを進めるためには、ある程度決まっていることをする必要があるんだがな。
ようやく「蟲」を探し始めた俺の目に飛び込んできたのは、その種類の多さ。
100種類!? そんなにいるのか! 軽いめまいを覚えながら、まずは手当たり次第捕まえてみることに。刑事の役を演じたこともある俺をナメるなよ! しらみつぶしに捜してやる。また靴底をすり減らす日々が……うん? 時代的にはワラジか。
そうこうしている間に、何種類かの被疑者(蟲)を捕獲。小屋に戻り「調書」を取ることに。「お前、名前は?」と聞いたが、どうやら自分で勝手に名前を付けていいらしい。これくらいでは、俺の取調べは終わらない。「それで、あの森で何をしていたんだ?……口の堅いやつだな。次の項目だ!」と小芝居をする俺の目に入ってきたのは、「蟲の描写を描け」というものであった。こ、これは!! キャラクターデザインを担当した馬越嘉彦からの挑戦かぁ!。俺の頭に、TVアニメの収録を行ったスタジオ「蟲籠」で、ギターをつまびく彼の姿が浮かんだ。
「この挑戦状、しかと受け取った~!」と意気込んでいた俺。中野画伯の手にかかればこれくらい……意外と難しい! 薄く見本が書いてあり、それをなぞるだけなんだが、そのなぞるだけが結構難しい。太さを調整しながら、なんとか完成した。
「よし、ホシは割れたぞ。上司に報告だ!」
ここで、一休みして結果を待つことに。
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「虚繭」がガタガタと音を立てる。先輩の蟲師である“ヤクノ”から返事が届いたという合図だ。……
はぁ!? ×じゃねえか! 何がいけなかったのかを確認すると、どうやら絵がダメだったらしい。ギターをつまびくニイヤン・馬越嘉彦が俺の頭の中でほくそえんでいた。
「負けてたまるか! 人間はあきらめた時に歩みを止めてしまうんだ!! Go for block! 当たって砕けろ!!」
数回挑戦して、何とか○をもらい、再び広大な原野へ足を踏み出した。しばらくすると、ついにストーリーが進展した。
ヤツだ。白髪のあの男が目の前に現れたのだ……。
白髪の男と会った俺は、去年白髪の男と再会した現場を思い出していた。ゲームのセリフを収録したあの日だ。久々の「蟲師」の収録に、不安が「蟲だま」のように襲い掛かってくる。とても「蟲煙草」で、はらえる数ではない。どうすれば……どうすればいいんだ?
そういえば、かの有名なブルース・リーが言っていた。
「Don't Think. Feel!(考えるな、感じろ!)」
相手が押してきたら、一緒になって押してはならない。引くのだ。また、ブルース・リーは「心を空にしなさい。水のように、形態や形をなくしなさい。水をカップに入れると、カップになる」とも言っている。
“ギンコ”……そう、俺は“ギンコ”だ! 落ち着いてそう考えると、どうだろう。あれほどまでに身体を覆っていた不安は、すっかり消えていた。結果、大方の予想に反し、収録はスムーズに終わったのであった。本編の収録時を考えれば快挙である。胸をなでおろし、録音ブースから出てきた俺に、スタッフの1人がニコニコしながら「早かったですねえ」と声をかけてきた。皆の気持ちを代弁したのかもしれないが、釈然としなかった。
そんな当時を思い出しながら、ストーリーはドンドン進んでいく。「蟲払いの薬」は、常に2つは携帯している。材料を集めるのは、多少手間だが、便利なので集めておく。むしろ、本当に手間がかかるのは、村の奥に住む“村長”だ。このキャラクターは、長濱博史監督のお気に入りの1人なのだが、話すたびに「腰が痛い」と嘆いてくる。そのセリフを聴くたびに、「腰痛の薬」をあげなければならないのだ。「お年寄りには優しくしよう」と考えていたが、限度がある。かといって、意地悪するわけにはいかないので、今度は
俺が行っている整骨院を紹介しようと思う。これでよくなってほしいものだ。
そんなこんなで、蟲集めを再開した。“ギンコ”からもらった「蟲ピン」で蟲のコンプリートを目指す。これだけの数がいると、さすがに混乱しそうだが、懐かしい蟲に会うと感動もする。例えば「ヌシ」だ。ずいぶん懐かしい気がした。そして「虹蛇」。必死で追いかけた。スタッフのこだわりが見える「一夜橋」。引き返してはならぬとわかっていても……。
そういえば、蟲番号0四八。この蟲はどこかで見たことがあると思っていたら、長濱博史がサイン色紙に書くイラストに似ているのだ。よし、
名前は「博史」に決定!
いつの間にか、(とはいっても相当な日数を遊んでいるが)残る蟲も数種になっていた。ここまでくると、馬越嘉彦からの挑戦も一発でクリアできるようにまで成長した俺。上司“ヤクノ”もこれなら文句はあるまい。
いよいよクライマックスだ。最後の蟲を見事に捕獲して、「天下無双の蟲師に俺はなったのだぁ!」と声高らかに、拳を突き上げた。今は深夜1:00。隣近所の人、ごめんなさい。こんな40男を皆さんはどう思いますか?
それはそれとして、コンプリート達成! あとは楽しみにしていたあの人に会いに行こう。そう……「狩房文庫」にいる“淡幽”だ。まだまだ終わりじゃない。これからだって、あそこに行けば村人との生活は、すぐに始まるからだ。
DS『蟲師 ~天降る里~』。誰もが蟲師になれるゲーム。あなたも、癒されてみませんか? ……ってそんなキャッチコピーじゃなかったなあ(苦笑)。
中野裕斗氏近況 |
| 曽利文彦監督の時代劇「ICHI」に出演しました。綾瀬はるかさんが女座頭市を演じている作品です。
最近は、野球のオープン戦が始まったので、自分のひいきにしているチームの状況が気になります。「読売ジャイアンツ」よ! 今年こそは日本一になってくれっ!! |
(C)漆原友紀/講談社・「蟲師」製作委員会
(C)2008 Marvelous Entertainment Inc.
データ
▼『蟲師 ~天降る里~』
■メーカー:マーベラスエンターテイメント
■対応機種:DS
■ジャンル:SLG
■発売日:発売中(2008年1月31日)
■価格:5,040円(税込)
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▼「蟲師 二十六譚 DVD Complete BOX」
■発売元:マーベラスエンターテイメント
■販売元:エイベックス・マーケティング
■発売日:2008年3月28日
■価格:29,400円(税込)
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■関連サイト
・RIKI PROJECT
・TVアニメ「蟲師」公式サイト
・『蟲師 ~天降る里~』公式サイト
・マーベラスエンターテイメント