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2008年4月12日(土)

『テイルズ オブ ヴェスペリア』インタビュー後編 この瞬間もボリュームは増える

文:電撃オンライン

 中編では世界観や世界設定などのお話をうかがった『テイルズ オブ ヴェスペリア』インタビュー。後編は、開発のこだわりや苦労、発売後の展開についてをプロデューサーの郷田努氏と、制作プロデューサーの樋口義人氏のお2人からうかがった話を掲載している。シリーズ最高のクオリティとボリュームを誇る『テイルズ オブ ヴェスペリア』が、どのようにして作られているのか、それを知りたい人は以下のインタビューに目を通してほしい。

■『テイルズ オブ ヴェスペリア』開発の苦労

――すべてにおいて非常にボリュームアップしていますね。これだけのタイトルだと、開発するにあたっていろいろと苦労があるのではないですか?

樋口氏:できることが多くなったぶん、それとは表裏一体で苦労もありますね。映像でいえば、遠くまで描画できることはどういうことかというと、地平線まで作らなければいけないのか、となりかねないんですね。

郷田氏:どこまでやれば、一番効果的な範囲でオーバークオリティにならないかの見極めが難しくて、最初は作戦を立てるのが大変でした。ある程度見極めが付けばそれを量産していけばいいんですけど、最初はできることにキリがないというのはありましたね。

樋口氏:あと、単純に解像度が倍になるということは、テクスチャーの面積が4倍になるんです。『テイルズ オブ』は手描きなので、作業量が4倍になることはないにしても倍くらいになるんですよ。となると、今までと同じ予算やスケジュールではボリュームが半分になってしまうんです。そのへんで効率化を図るのは大変でした。

――できることが多いからこそ、選択が難しいということですか?

樋口氏:ええ。ですがもう答えは出てます。答えが出たからこそここまで来れたわけですが。

――その方針はいつごろ定まったのですか?

樋口氏:2006年の8月か9月ごろからですね。やはり絵づらやボリュームを考えず闇雲に進めるワケにはいかないので、いろいろ研究しました。

――そういった状況で、あえてシリーズ最大のボリュームにしたのはなぜでしょうか?

郷田氏:そこはなるべくしてなった部分もありますが、当時、次世代機と呼ばれていたハードから今発売されているタイトルって、だいたい短くなってますよね。それは、今話したような手間や予算の問題があるのですが、RPGのようなゲームには適切な長さがあると考えています。そこをきっちりやるのは、『テイルズ オブ』シリーズという作品にとって必要なことだし、他の作品との差別化という点からも非常に重要なポイントだと思って頑張っています。

樋口氏:それも重要な理由ですし、ボリュームを増やすということは確かに楽ではないけれど、逆に言えばボリュームを増やすだけでいいんですね。要はたくさん作ればいいんです。ですが、新しい構造にするとなると、例えばフィールドを取っ払ったり、クエストを選択式にしたり、そういったことを新しいハードに挑戦して、なおかつ同時にやるのは無謀なことに思えました。

郷田氏:なので今回は、大変だけどボリュームを増やそうということにしたんです。それに、今までの実績がある構造で楽しんでもらいたい、というのがありました。

樋口氏:ただ、やってると「絞ろう絞ろう」と言っても、だんだん増えていくんですね。それはよくも悪くも、スタッフみんなが命を削っているので、「やめておいたほうがいいんじゃないの?」っていうところまで踏み出しちゃうクセがあって。それがこういうボリューム感につながっているのだと思います。

――今この瞬間もボリュームは増えていますか?

樋口氏:増えているんじゃないですかね(笑)。

■『テイルズ オブ ヴェスペリア』が今後のシリーズのスタンダードに

――発売時期はいつごろになりますか?

郷田氏:2008年中には出ますね。

樋口氏:このタイトルは、最近のシリーズ作品と比べるとわりとのびのびとやっていますね。とにかく質を大事にしましょうという方向でやっています。

郷田氏:北米は『テイルズ オブ』10周年なんですよ。日本では13年目なんですけど。これから先の『テイルズ オブ』シリーズの、1つのブレークポイントになるようなタイトルにはなると思います。そのためにどうあるべきかを開発が考えて、今お見せしてるような製品パッケージになっています。

――ということは、『テイルズ オブ ヴェスペリア』は新ハードにおける『テイルズ オブ』のスタンダードになるのでしょうか?

樋口氏:それは第1としてあります。安心感とか安定感みたいなものが間違いなくあると思います。

郷田氏:今までの『テイルズ オブ』と比べてもそうですし、いわゆる日本型のRPGとしてもないですし、『テイルズ オブ』が目指す本来の方向性の1つの答えではあると思います。北米では10周年という節目なので、名前の通りの製品力のあるタイトルを出そうということで作っていますよ。

樋口氏:今振り返ったら、節目的なタイトル担当ばかりやらせてもらってますよね。実はこれってプレッシャーですよ(笑)。そんなのばっかりだよ(笑)。

郷田氏:(笑)。タイミング的に担当してるのはそうですね。『シンフォニア』といい、『アビス』といい。

――『シンフォニア』や『アビス』は、今でも人気が高いですよね。

樋口氏:ありがたい話です。開発担当スタッフは同じなので、どうしても影響されてますね。「前と比べて」というのも意識してしまいます。そういった意味では、今作も『シンフォニア』や『アビス』のようにキャラクターを深く掘り下げた話になります。“ユーリ”たちを中心に、帝国側やギルド側の「正義」も語られます。

――ムービーに登場している金髪のキャラクターの「正義」も語られますか?

樋口氏:ものすごく重要なキャラクターですね。

――ムービーを拝見しましたが、音楽とのマッチングが素晴らしいですね。

郷田氏:音楽は、全部ではありませんが今までのシリーズにもかかわっていただいた桜庭統さんにお願いしています。マッチングの度合いは、今回特にいいと思いますよ。あのムービーは、編集したスタッフの横に樋口が付きっきりで全部指示していました。

――演出が素晴らしくて感動しました。

郷田氏:それならば狙い通りですね(笑)。樋口はずっと『シンフォニア』や『アビス』をやってきてますから、そういったものが好きなお客さんにとっては、とてもいいゲームになると思います。

樋口氏:あのムービーのセリフなんですけど、一言一言ものすごく吟味しています。編集しているスタッフが『トラスティベル ~ショパンの夢~』のPVを作っていた人間なので、見せ方をわかってるんですよ。

郷田氏:Xbox LIVEで映像配信をしてるんですが、家のリビングにあるTVで、映像を見てくださった客さんの反応はいいですね。

樋口氏:ハイビジョンのTVで見ると、結構クルものがありますね。映像のクオリティに関しては、今までのシリーズ作品とは段違いです。

■『テイルズ オブ ヴェスペリア』発売後の展開

――発売後の展開になりますが、ダウンロードコンテンツ(以下、DLC)は考えていますか?

樋口氏:基本的にはパッケージの中にあるものの、フラグ開放とかではあり得ます。ターゲットの年齢層が高まったこともあって、プレイになかなか時間を避けられない人たちのために用意しています。

郷田氏:ゲームの中で使えるアイテムを、通常のプレイでも獲得できるのですが、時間がなくて多くの時間を割けないお客様への救済措置としての役割で考えています。

樋口氏:ただし、まったくゲームの中に含まれていない、なおかつコンプリートに必要となるようなものをDLCで配信することは今のところ考えていません。

郷田氏:今回コンセプトとして、DLCについては「買わなければならないもの」はないんです。基本的な方針として、買わなければ何かができない、というものはありません。それはなぜかというと、お客さんにとってDLCがどうあったら一番いいだろうかを考えれば、お客さんが手間を省きたい部分をメーカーで用意するのが、『テイルズ オブ』というRPGのゲームにとっては一番いい利用方法だろうと今回はしました。

――ではDLCは一切利用しなくても、ゲームを楽しむのには問題がないのですね。

郷田氏:買わなくてもコンプリートはできます。

樋口氏:難易度に関して、「難しくしてるんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、そんなふうにはしていませんので、ご安心ください。

――ちなみにPS3には移植されますか?

樋口氏:考える余裕がないですね、そんなに器用じゃないので(笑)。例えば『シンフォニア』の時には、あまりにゲームキューブに特化していたので、プレイステーション2への移植の際、フレームレートを下げるなど、かなり工夫をしたんです。プレイステーション3もとても高性能なので、そういう意味では同じものを再現できると思います。ただし今は、この作品の完成に全力を注いでいます。

――それでは最後に、『テイルズ オブ』シリーズのファンへメッセージをお願いします!

樋口氏:今回HD対応になって、今まで『テイルズ オブ』シリーズをプレイされたお客さんにとっては「これだ!」という作品になってますし、シリーズ作品をやったことのないお客さんにとっても「すごいじゃん!」という作品になってるのは間違いないので、ぜひ楽しみにしていてください。よろしくお願いします。

郷田氏:Xbox 360を持っていない方はぜひ買ってほしいですね。Xbox 360を持っているお客さんは、『テイルズ オブ』シリーズを今までやったことがなくても、買って損したという気分にはたぶんならないと思います。ファンの方も、ファンでない方も満足できる作品になると思いますので、発売を楽しみに待っていてください。

――ありがとうございました。

左が樋口義人氏、右が郷田努氏。

(C)藤島康介
(C)2008 NBGI

データ

▼『テイルズ オブ ヴェスペリア』
■メーカー:バンダイナムコゲームス
■対応機種:Xbox 360
■ジャンル:RPG
■発売日:2008年予定
■価格:未定

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