2008年4月24日(木)
【今週の1本】ジャズが似合う探偵が渋く事件を解決する『探偵神宮寺三郎DS』
AVGといえば、人によって思い入れのあるゲームが大きく異なるジャンルでは? とつねづね思っていたりする。ある人は最近の美少女PCゲームを推すかもしれないし、またある人はファミコンのゲームを挙げるかもしれない。個人的に思い出深いものと聞かれたら、PC-8801用テープ版の『ミステリーハウス』と答えてしまいそうな佐々木潤です。(※1980年代のPCには、記録媒体としてカセットテープが使用されていた)
そんな時代からAVGをプレイしてきたが、やはり何らかの謎を解いていくというストーリーはおもしろい。中でも、推理ものはクリアした時の満足感が特に充実していた。作り手側もわかっているようで、そういった作品はシリーズ化され、息が長く続いている。特に古くからあるミステリー系AVGと言えば、『J.B.ハロルド』シリーズと、今回取り上げる『探偵神宮寺三郎』シリーズだろう。ジャズが似合うゲーム中の日本人といえば、“神宮寺三郎”その人しか思いつかないほど、メジャーな存在ではないだろうか? と、長々と考えた末に(ゲーム開始前に、本当にこんなことを考えていた)電源を入れて起動したのは、本日4月24日に発売となるDS用ソフト『探偵神宮寺三郎DS ~きえないこころ~』だ。
■点と点で起きていた事件が次第に一つの線で繋がっていき、そして迎える真相は……
物語の発端は、20年前に妹が自殺した原因を調査してほしい、という依頼をしてきた“松田武史”という男。最初は不思議に思うものの、話を聞くうちに相手の心情を理解した“神宮寺”は、彼の調査を引き受けることに。彼の妹と親交があった相手に聞き込みをしながら遺品の整理をしていると、妹が残した不思議で意味深な詩を発見する。そこには、あるメッセージが込められていた。手がかりを見つけ、調査に手応えを感じていた“神宮寺”だが、突如として“松田”から捜査の打ち切りを告げられてしまう。腑に落ちない“神宮寺”に、時を同じくして小学校の備品損壊事件を調査してほしいとの依頼が入る……。
新宿にあるという神宮寺の事務所を訪ねてくる“松田武史”。見た目にも影を背負っているのがわかるが、何があったのだろうか? |
■聞き込みを繰り返し、真実へと近づこう
まずは、事務所を訪ねてきた“松田”の話をじっくりと聞くことにする。こういったAVGの基本といえば、コマンドの総当たりと調べられる場所の全チェック、と相場は決まっているもの。さっそく目の前の“松田”に「話す」コマンドで話しかけてみると、20年前に妹が自殺した原因を探ってほしいと頼まれる。普通なら特に問題はないように思うかもしれないが、そこは“神宮寺”。彼の鋭い洞察力は、会話から違和感を感じ取ったようだ。
基本はコマンド選択式のAVG。その場にふさわしくないコマンドを選んだとしても、“神宮寺”が冷静に「それは違う」と指摘、再び選択画面に変わる。そのため、行き詰まることは皆無だ。 |
すると、ここで“松田”に対しての質問事項が表示される。ここで正しい答えを選ぶことによって神宮寺の推理が進み、対象となる人物に聞きたいことが次の選択肢として現れる仕組みになっているのだ。一方的な押しつけではなく、一緒になって推理していくという感じが出るこのシステムは、なかなかいい感じ。しかも、次に聞くべきことが選択肢の一番上に必ず表示されるので、とてもわかりやすい。余計なところで混乱させず、肝心のストーリーをきちんと楽しんでもらおうという、この気配りはグッジョブだろう。
次に聞くべきことは、必ず選択肢の一番上に表示される。深く悩まなくても、上を選び続ければいいので、シナリオに集中できるのだ。 |
しばらく話を聞くも、どうも腑に落ちない点が多い。と思っていると、なにやら「トークプロファイルシステム」なるものが発動した。どうやらこれを上手く乗り切れば、より詳しい話を引き出せるらしい。これは今作での新システムの1つで、相手がなかなか心を開いてくれない時などに発動する。対象となる人物の、気になる部分をタッチペンでタッチしたり、十字ボタンでカーソルを移動させ決定ボタンを押すことで詳しくチェックすることができるのだ。
相手の気になる部分をタッチしたり、質問をぶつけ、情報を引き出すことで先に進める。ただし、相手が嫌がるそぶりを見せたら、すぐに謝るなどするのが吉。 |
すると、彼が“神宮寺”と同じ愛煙家だとわかる。そこで、アイテムからタバコを選び火をつけ、“松田”にもすすめると表情が一転。伏し目がちだった顔に笑みが戻ってきた。相手の心境を考え、話がしやすい方向へと持って行くという、探偵らしさが味わえるシーンに思わず感心してしまった。
ヘビースモーカーの“神宮寺”らしいアイテム「タバコ」は、Lボタンで(状況が許せば)いつでも吸える。迷った時に頼れば、次に起こすべき行動が親切に表示されるので、行き詰まることもないのだ。
タバコは神宮寺の必須アイテム。吸えばヒントが見られたり、事件を整理するなどのことができる。事件の整理は、聞き込みなどが一段落すると表示されるので、そこでこれまでの状況を振り返り、じっくりと思い出そう。 |
こうしてタバコに助けられながら進んでいくと、突然に“松田”から調査終了を告げられてしまう。彼は、この事件は自らの手で決着しなければならないと言う。“神宮寺”と同じく、煮え切らない思いでプレイを進めると、今度は小学校の備品損壊事件の調査を依頼された。そこは、自殺した“松田”の妹“沙織”が通っていた学校だという。にわかにつながる点と線。しかも、その学校には“沙織”の友だちだったという人物が、先生として働いていたのだ。「おおっ!」という驚嘆の声を上げながら深みにハマり、仕事の時間を失っていくのだった……。
学校では、意外な人物との出会いが待っている。こうして、独立した事件と思われた2つが絡み合い、1つの大きな事件へとつながっていく。 |
■シリーズものだけに、シナリオの出来は保証付き
この後、備品損壊事件の犯人がわかるのだが、事件はさらなる新展開を見せる。こうなるとヤメ時が見つからなくなり、ずるずるとプレイしてしまうという恐ろしい目に遭ってしまう(笑)。毎作品、渋いシナリオ展開で楽しませてくれる『神宮寺』シリーズだが、そのノリは今作も健在だった。ミステリー好きやAVG好きにオススメなだけでなく、電車の中で小説を読む代わりとしても最適な1本になること間違いなしだ。
なお、本編となる「きえないこころ」の他にも、携帯電話向けに配信されている作品が5本収録され、加えて「謎の事件簿」が6本入っている。これだけボリュームがあれば、通勤・通学の電車の中でヒマになることは当分ないだろう。質も量も満足させてくれるAVG。唯一の難点は、萌え属性がないことくらいだろうか(笑)。(佐々木潤)
本編に疲れた時に最適な「謎の事件簿」。軽いノリで話が進むので、気分転換にはもってこいだ。 |
- ▼『探偵 神宮寺三郎DS ~きえないこころ~』
- ■メーカー:アークシステムワークス
- ■対応機種:DS
- ■ジャンル:AVG
- ■発売日:発売中(2008年4月24日)
- ■価格:3,990円(税込)
- ▼『探偵 神宮寺三郎DS ~きえないこころ~』の予約・購入はこちら
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