2008年6月16日(月)
2005年10月にTVアニメが放送され、今年1月31日にDS用ソフト『蟲師 ~天降る里~』が発売された人気コミック「蟲師」。TVアニメで主人公の“ギンコ”を演じた中野裕斗氏が、「蟲師」に携わった人を訪ねたり、「蟲師」にかかわることをしたりするコーナー「蟲の居所」の12回目をお届けする。
題字・漆原友紀 |
「蟲師」は、「月刊アフタヌーン」(講談社刊)で隔月連載中のコミック。本作を題材にしたTVアニメは、幅広い層の支持を獲得して、文化庁メディア芸術祭「日本のメディア芸術100選」アニメーション部門で6位入賞を果たした。また、マーベラスエンターテイメントから発売されているDS版『蟲師 ~天降る里~』は、「蟲師」の世界が100%再現されていることに加え、ゲームオリジナルのストーリーを楽しめることでも話題となった。
今回の「蟲の居所」は、TVアニメ「蟲師」で“化野(あだしの)”を演じた声優・うえだゆうじ氏にゲストとして登場していただき、ゲームをプレイした感想や、うえださん自身についてお聞きした。
中野氏:今日のゲストは、TVアニメ「蟲師」で“化野”役を担当した声優のうえだゆうじさんです。
うえだ氏:よろしくお願いしまーす。お呼びいただき光栄です。
中野氏:ファンからの要望も多く、また、もう1人声優さんに出てもらいたいと考えていたので、うえださんにお願いしました。ところでゲームはプレイされましたか?
うえだ氏:ないんです。
中野氏:では、これからプレイしてもらいましょう。
(名前を入力するうえだ氏。入力したの「へろぬめさ」という名前)
中野氏:なぜ、その名前に?
うえだ氏:(笑)。絵がキレイですね。画面が小さいのがもったいない。
中野氏:意外と奥の方までいけますよ。あ、それが蟲ですね。タッチすると捕らえるモードになります。その後、捕らえた蟲を記録して、先輩の蟲師に確認してもらうという手順になりますね。
うえだ氏:ほうほう。
(調書に挑戦するうえだ氏)
中野氏:1発でOKはもらえますかね? これまでやった人は、誰も1回目でOKが出ていません。
うえだ氏:えええ、そうなんですか?
中野氏:調書が帰ってきたようなので早速見てみましょうか。……!! ○だっ!!!
うえだ氏:やった~!!
(一同拍手)
中野氏:うまいですね。あの馬越さんですら、×でしたからね(笑)。
うえだ氏:やりましたよ!
(すぐさま次の蟲を捕まえに走る)
中野氏:これはなかなか難しいヤツですね。移動する青い点をずっとさわり続けるという……あれ? 1回で捕まえていますね(笑)。うえださん、相当うまいですよ。
うえだ氏:ホントですか?
中野氏:ええ、今のミニゲームと蟲を○で囲むというミニゲーム、これがなかなか難しいんですけどね……。お、そこに落ちているアイテムは、食べられますよ。
うえだ氏:ちゃんと焚き火をしてからなんだ(笑)。細かいですね。何かモヤモヤしているのは?
中野氏:蟲がダマになっているんです。蟲払いの薬をつくることで先に進めるというクエストのようなものですね。
うえだ氏:それは楽しそうですねー。
中野氏:マップも色々な場所があるんで、結構やりごたえありますよ。
うえだ氏:なるほどー。
(ここで、新たに捕まえた蟲の調書を書き始める)
中野氏:これで続けてOKが出たら凄いですよ。
うえだ氏:どうですかね。……おおお、○をいただけました!
中野氏:すごいですね! すでにコツをつかんでいますよ。
(3匹目は、残念ながら×をもらってしまう)
中野氏:さすがに3タテはなかったですね。でも2匹連続で○をもらっただけでもすごいですよ。
うえだ氏:いや~~、この部分だけでも楽しいですね。
中野氏:最初は、“化野”がやってきて主人公にアイテムを売るという企画があったんですが、今回は見送ることになったそうです。
うえだ氏:それは残念です。
中野氏:遊んでみてどうでしたか?
うえだ氏:「蟲師」の世界感を壊さないようなゲームになっていると思います。今ほんの一部プレイしただけなので、すべてを味わった訳ではないのですが、個人的には好きですね。
中野氏:ちょっと地味ですけどね。ボクは毎日やるようにして、全部の蟲を集めました。
うえだ氏:さすがは“ギンコ”(笑)。
中野氏:ではうえださんに質問です。「蟲師」で好きなキャラクターは誰ですか?
うえだ氏:難しいですね。この作品は、それぞれのキャラクターに特徴がありますからね。
中野氏:印象深いキャラでもいいですよ。……例えば、長濱監督とか(一同爆笑)。
うえだ氏:映像化が高い評価を得たのは、監督の力もありますよね。
中野氏:個人的にはうえださんの印象って、初めて会った時の印象が強いんですよ。アフレコの時に台本の紙がすれる音が入ってしまったことがあったんですね。それでリテイクになった時に、台本をバッと持って、表紙をビリ~ってやぶいて収録したんですよ。あれを見た時は「カッコイイなあ」って思いましたね。
うえだ氏:(笑)。表紙と中の紙質の違いから音が鳴ってしまうことがあるんで、それなら外してしまえと考えたんだと思う。
中野氏:そのうち、やってみようと思っていたんですが、なかなかそんな機会もないんですよね(笑)。それで怒られたら、「うえださんがやっていたんだから、いいじゃん!」って言いますよ。
うえだ氏:ええええ、そこで出しますか(笑)。
中野氏:うえださんは「蟲師」のアフレコの時で、なにか思い出深いエピソードなどありますか?
うえだ氏:スタジオに入って長濱監督に言われた「今までに見たことのない、うえだゆうじだったらOK」というセリフです(苦笑)。
中野氏:そうやってハードルを上げるようなことを言うのが監督らしいですね。あの作品のアフレコの時も、「今までとは違ったような感じに」って、ニコニコしながら言ってましたね。
うえだ氏:自分のコントロールも及ばないところで、何かやってみたいと思いましたね。「蟲師」の時は、ビジュアルのクオリティもさることながら、芝居の質も通常のアニメーションとは異なることをしようとしている。そこにどう的確に当てられるかを意識しました。
中野氏:自分のコントロールがおよばない演技。悟りのようですね。そういえば、今木箱を作っているんですが、なんで作ることになったんだろう?(一同笑) あれもコントロールできない何かが働いたのかな?
うえだ氏:いやいや、“ギンコ”なんですから、木箱は作っておきましょうよ。そしてそれを背負ってどこか行きましょうよ。
中野氏:木箱を背負って、原作の漆原先生のところにでも行こうかと思っています。これが現在の写真ですね。
うえだ氏:おおお~~! これはどこかに発注してとか?
中野氏:いや、自分で木材から買ってきて作っていますよ。切っていたら雨が降ってきたり、途中で悩んだり、アクシデントだらけですが、どうにかここまでこれましたね。ご要望とあれば、これをかついで仕事するんで(笑)、RIKI PROJECTの中野をどうぞよろしくお願いします。
うえだ氏:(笑)。RIKI PROJECTの方とは、仕事場でお会いすることが増えたね。
中野氏:「蟲師」でうえださんと出会っていて、ホントよかったですよ。この前も「おじゃる丸」でRIKI PROJECTのメンバーともども、お世話になりました。
うえだ氏:いえいえ、声優の業界にはなかなかいないタイプの人ばかりで、こちらこそ勉強させていただいてる。
中野氏:うえださんは、現場で寡黙なんですが、演じるとバシっときめるじゃないですか。ボクはそこに魅かれるんですよね。
うえだ氏:ありがとうございます。RIKI PROJECTのメンバーは竹内力さんを始め、どの方もとてもハッピーなエネルギーを持ってるので、とてもイイと思う。
中野氏:失敗したのに「失敗しちゃった。アハハハハ」って大きな声で言うのを聞くと、「どうもすみません」って(一同笑)。うえださんは、これまで声優をやられてきて、「もうやめたい」と思ったことはありますか? ボクは「蟲師」でしごかれて、「向いてないのかな?」と落ち込んだんですが。
うえだ氏:新人のころはしょっちゅうでした。同じセリフを10回も20回もリテイクして凹んだりした。
中野氏:そんな時代もあったんですね。では、次の質問なのですが、うえださんは、「この役、オレかあ?」って感じたことはありましたか?
うえだ氏:……どうやって己をそのキャラクターに合わせていけばいいのか、悩んだことはある。「何がポイントで選ばれたのかな?」って(一同笑)。声の仕事をやろうと思ったのは、体格や見た目の器を離れた部分で、演じられるのがおもしろいと思ったからではあるけれど、でも、これは今まで演じたのとは相当違うぞって。
中野氏:では、今までの役でやりがいがあったというキャラクターや作品はなんですか?
うえだ氏:ディレクターがこれまでの役とは違うキャラクターをふってくれたりすると、やりがいを感じますね。「少年サンタの大冒険!」という作品があって、当時まだキャリアが浅かったにもかかわらず、コンビを組んでいるゴブリンのアニキ分の方を演じることになったんです。それは頑張りましたね。「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-」の“相楽左之助”も、そんな風に演れた役でした。「セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん」の“花中島マサル”というのも特殊な決まり方をして……。内容的にもシュールなギャグだったりで、真価を問われたと思う。「これをおもしろく受け止められるよう演れなかったら、ダメだな」と考えたのを覚えてます。
中野氏:「ギャグマンガ日和」もそれに近いかもしれませんね。
うえだ氏:オープニングテーマも歌ったなぁ……なぜ歌うことになったのか(一同笑)。そのあたりで、大地丙太郎氏、長濱博史氏、たなかかずや氏らとの繋がりが強くなりましたね。
中野氏:なるほど。そして「蟲師」でも素晴らしい演技を披露したという流れですね。では、最後に「蟲師」のファンの方へメッセージをお願いします。
うえだ氏:個人的には、漆原先生にお会いしてみたかったかな。原作に先生の才能が詰まっていて、コマの中から、空気、においや音や感触とか、五感に届く作品になっててスゴイですね。TVアニメのスタッフもそれに負けないクオリティに仕上げていて。このDSのゲームを楽しんでいただければ、より複合的に「蟲師」の世界を味わえるかと思います。
中野氏:個人的にはまったく話し足りないんですが(笑)、本日はありがとうございました。
うえだ氏:ホントそうだよね。またゆっくりと……(笑)。
最後に、両名から寄せ書きサイン色紙をいただいた。「蟲の居所」の最終回で、読者プレゼントとして提供するので、楽しみにしてほしい。 |
・中野裕斗氏近況 |
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「仁義」シリーズの完結編の50巻がついにレンタル開始となりました。「仁義13」から参加させてもらい、力さんと出会い、事務所に入るきっかけとなった作品です。 松山タカシさんにも出会い、浅生マサヒロ氏にも、この現場で会った。すべてはここから始まったと言っても過言ではない「仁義」。もしよければチェックしてください。 最近では貴重な、坊主頭の中野が見られます(苦笑)。 |
(C)漆原友紀/講談社・「蟲師」製作委員会
(C)2008 Marvelous Entertainment Inc.