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2008年7月2日(水)

発想力トレーニングから成人向けゲーム史まで! 「夜のゲーム大学」レポート

文:電撃オンライン

 6月29日、「阿佐ヶ谷ロフトプラスワン」にてトークライブ「夜のゲーム大学~ふいんき語り~」が開催された。

 このイベントは、麻野一哉氏、飯田和敏氏、米光一成氏の3人のゲームデザイナーが、ゲームについてのさまざまな講義を行うというもの。チケットは前売りの時点で完売、当日券はなしの盛況ぶりで、3人の講義を聞きたい熱心な観客が会場いっぱいに集まった。

 この3人といえば、さまざまな本を時に鋭く、時になんとなく語り合うトークユニット「ふいんき語り」として活動中。「あの有名日本文学をゲーム化したら……?」という設定の「日本文学ふいんき語り(双葉社刊)」や、全20作の恋愛小説を独特の視点で読み解く「恋愛小説ふいんき語り(ポプラ社刊)」などが共著として発売されている。

 また、3人のもう1つの共通点といえば、大学・専門学校でゲームに関する講義を開いていること。実は今回のイベントも、他のメンバーがどんな授業をしているのかを知りたいという願望からスタートしたという。普段の授業のスタイルを生かしつつ、「夜」ならではの味つけが行われた3人の授業を、抜粋して以下にお届けしよう。

会場となった「阿佐ヶ谷ロフトプラスワン」は、軽食&アルコールなどもオーダー可能なライブハウス。講義を行う3人も飲み食いしながら講義をするという、終始ゆったりとした雰囲気で進行していった。

■1時限目「ゲームの歴史:50にして天命を知る」 講師・麻野一哉

 トップバッターとなったのは、慶應義塾大学では非常勤講師として教壇に立っている麻野氏(代表作『かまいたちの夜』、『街』、『アナタヲユルサナイ』など)。麻野氏は、まず最初にTVゲームの原点と考えられている『OXO(ティック・タック・トゥー)』というタイトルを紹介した。このゲームは、9つのマスを○と×で埋めてラインを作る、いわゆる「○×ゲーム」。

 その一方で、TVゲームの原点にはさまざまな説があり、オシロスコープという測定器を使った遊びや、『Tennis for Two』というタイトルが起源に当たるとも言われている。麻野氏は、ゲームの歴史が、現在でもきちんとまとめられていない点に留意しつつ、ゲームの進化の歴史を追っていった。

 子どもがおねだりする時に、「コレ、時計にもなるから!」という言い訳を用意したことも普及の一因になった「ゲームウォッチ」、タイトーの社員さんが腰を痛めながらトラックで100円玉を運んだアミューズメント施設用『スペースインベーダー』、そして繰り返されるハード戦争についてと、ゲームが歩んできた数十年の歴史を、さまざまなエピソードとともに足早に辿っていく麻野氏。中でも、ハード戦争については、各ハードを鋭いひと言でバッサバッサと切っていくトークに、会場からは笑いとうなずきが絶えなかった。

 持ち時間が終了に迫ったところで、麻野氏が「最後にこれだけは見せておきたい!」と慌ててスクリーンに映し出したのが、自身が開発にかかわったソフト『DS湯けむりサスペンスシリーズ フリーライター橘真希「洞爺湖・七つの湯・奥湯の郷」取材手帳』の広告……。これには会場から「散々マジメに語って、オチはコレか!」という総ツッコミが。電撃オンラインでも、妙なほどにプッシュしているこのソフト。タイトルは長いが、麻野氏のゲーム史に深く刻まれたこの1本、ぜひとも手にとってもらいたい。

1958年の『Tennis for Two』から『DS湯けむりサスペンスシリーズ フリーライター橘真希「洞爺湖・七つの湯・奥湯の郷」取材手帳』まで、駆け足で説明した麻野氏。途中途中に、小ネタを交えており、あっという間の45分であった。

■2時限目「発想力ゲーム:思いつきを活かす」 講師・米光一成

 続いて、グラス片手に上機嫌で登場した米光氏(代表作『ぷよぷよ』、『BAROQUE』、『キングオブワンズ』など)の授業がスタート。米光氏の講義は、集まった観客もコール&レスポンスの形で参加するという、ライブならではの雰囲気で進行した。

 米光氏は立命館大学の映像学部でも同形式の講義をしており、ゲームの企画立案などに重要な「発想力を鍛えること」を学生に教えている。この発想力について米光氏は、単に「奇抜なアイデアをひらめくということ」ではなく、「自分だけが表現できることを大勢の人に伝えること」の重要さを強調した。

 そこで米光氏が始めたのが「銀河のひとつ」という全員参加型ゲーム。ルールはシンプルなもので、与えられたお題にあった単語を制限時間以内に考えるもの。例えば「【ち】から始まる丸いもの」だったら、「地球」、「ちくわ」といったものが解答となる。ただし、他の人と解答がかぶった場合は失格となるので、いかに「他人とかぶらないように。かつ、他人を納得させられる」解答を時間内に考えるのかが重要。楽しみながら発想力を養うのにもってこいのゲームというわけだ。

 例題の「【ち】から始まる丸いもの」では、会場から「ちょうちんばな」や「調和」などの名解答が生まれ、米光氏も感心していた。続いてのお題「【う】から始まる黒いもの」では、「裏切り」、「裏社会」などなど、夜の講義ならではのダークな解答も続出。ちなみにこのお題を米光氏が大学で出題した時に、「ヴァンパイア」という名解答が生まれたと同時に、珍解答「ヴラック(注:ブラック)」が生まれたというエピソードには、観客全員が爆笑。独創的であることと同時にそれが多くの人に伝わること、この2つを満たした「発想力」が重要だということを、実践的に学べる授業となった。

米光氏の授業では、「銀河のひとつ」という発想力を鍛えるトレーニングをイベント参加者全員で行った。写真は、会場中を練り歩きながら、イベント参加者からコメントを集める米光氏。

■3時限目「我が国における成人向けPCゲーム発展史」 ゲスト講師・江戸栖方

 ここでスペシャルゲスト講師として、触手については一家言あるという批評家・江戸栖方氏が飛び入り授業をすることに。江戸氏は「夜のゲーム大学」にピッタリのテーマともいえる、成人向けPCゲームの歴史を黎明期から語っていった。

 成人向けゲームが登場する前、1980年代前半のPCゲーム市場から講義を展開した江戸氏。ちょうど1時限目の麻野氏の講義で語られなかった、家庭用ゲームとは別の成長を遂げていったPCゲーム発展史をフォローする形で講義は進行した。江戸氏は、傑作成人向けPCゲームの具体例を挙げながら、一方で規制・摘発といった社会との関係性についても言及。そして、黄金時代とも言われる1990年代からの、ジャンルの多様化・細分化へと講義を展開していった。

 ジャンルを多様化させやすい、また、制作サイドの作りたい方向に尖ったものを作りやすい成人向けPCゲームの特徴は、今では同人業界へと受け継がれているという。講義のむすびとして、「成人向けPCゲームを学ぶことは、日本文化を理解すること」とし、また、この業界を少人数で個性豊かな作品を制作できる「日本型アートコンテンツ発生装置たりえる」と語った江戸氏。だが一方で、成人向けPCゲームをプレイすることの意義については「?(わからない)」として、今後も研究&発表をしていくと講義をまとめた。

初期のPCゲームをプレイできる、5インチフロッピーディスク機が現役だという江戸氏。レアなパッケージを前に他ではなかなか聞けない授業を展開した。

■4時限目「未来のゲームを開拓しよう:インディゲーム宣言!」 講師・飯田和敏

 最後に講義を行ったのは飯田氏(代表作『アクアノートの休日』、『太陽のしっぽ』、『巨人のドシン』など)。飯田氏はまずはじめに、現在のゲーム業界が抱えている「開発資金の高騰」という問題について、自身の体験と思いを交えつつ、静かに、そして熱く語った。

 それに続く形で、飯田氏が講師を務めているデジタルハリウッド大学院の学生たちとともに「インディゲーム純潔の誓い」を発表。これは「マーケティングなんて気にしない」、「アイディアの使い回し禁止」など、「おもしろい」と純粋に感じられるゲームを生み出すために、飯田氏が立てた誓いである。これらの誓いを満たしたインディゲームを学生たちとともに作っていくという発表が、実際に学生たちが開発中の作品紹介とともに行われた。

 そして講義の後半は音楽の時間ということで、自らギターを手に取り「ふいんき語りのテーマ」をはじめとする数曲を披露。米光氏がリコーダーで、麻野氏が和太鼓で演奏に参加し、約4時間近くにわたる濃密な「夜のゲーム大学」を締めくくった。

自身の体験と今後の展開を「インディゲーム純潔の誓い」という形で宣言した飯田氏。誓いの後は、ギターを握り、音楽の授業へ。

 個性豊かなゲームデザイナーたちによる、普段聞くことのできない夜ならではの授業。ただのトークショーの枠に捕らわれず、次はどんな授業が展開するのかというワクワク感が絶えず、長丁場のイベントにもかかわらず観客を飽きさせることはなかったようだ。各講師の持ち時間が足りず、少々駆け足で授業が進み、「もっと続きが聞きたい!」という若干の物足りなさはあったものの、集まった観客たちは満足そうな顔で会場を後にした。

 そしてイベント終了後、麻野氏、飯田氏、米光氏の3人に、今回のイベントの感想などを聞いてみた。

――長時間お疲れ様でした。普段やられている授業も、今回のイベントのようなスタンスなのでしょうか?

米光氏:そうですね。基本あんな感じです。普段はお互いの授業を見られないので、見るために今回イベントをしたんですよ。

飯田氏:何をやっているのか、聞かれても教えにくいじゃないですか。なんで他の人の授業を見れて、勉強になりましたね。

麻野氏:米光さんはすごいよね。ライブみたいだった。

米光氏:普段はゲームの歴史も多少はやるんですが、今回はああいう感じにしました。ゲームを教えるというのが、まだ自分たちでも完全には把握できていないんですよね。

麻野氏:手探りでやっていますね。現場の人間としての立場で感じたことを伝えるという感じですね。

米光氏:普段は90分もしくは180分の授業なんですが、今回はそれを45分に縮めたので、反省すべき点も多いですね。それは次に生かしたいです。……今、2人には確認しないで言っていますが(笑)。やりたいでしょ?(うなずく麻野氏&飯田氏)

飯田氏:僕らだけでなく、他のゲームの先生などを呼んでやるのもおもしろいですよね。ぜひやりたいです。

――普段、学校で教えられているのと、こういうイベントで教えるのとは違いますか?

飯田氏:全然違いますね。

米光氏:反応がよすぎます(笑)。大抵の場合、もっと静かですからね。「イエーーイ!」って呼びかけても言わない学生がいるはずなのに、今夜は最初から皆が「イエーーーイ!!」って叫んでましたからね。

飯田氏:やはり学校に入るというのは敷居がありますからね。こういう開けた場所でイベントするというのは意義あることだと思います。あとはゲームバッシングの立場にいる先生にも来てもらいたいですね。

米光氏:そんな人のバッシングを聞いて討論するんじゃなくて、そういうもんなんだって考える場があってもいいと思います。

――授業での生徒の反応というのはどうですか?

麻野氏:生徒にもよりますね。熱心な人は目をキラキラさせて、目の前で聞いていますが、多くの学生は聞きませんね。人事なんで、出席しているだけって。

米光氏:生徒に興味があるかどうかで大きく違いますね。興味ある人は、ガンガン質問とかに来るんでやりがいありますよ。

――では、今後の予定を教えていただけますか?

米光氏:新刊「日本文学ふんいき語り2」が秋に出ます。これが売れないと先がないので、ぜひよろしくお願いします。

――本日は、ありがとうございました。

またこのようなイベントをやりたいと語っていた飯田氏(写真左)、麻野氏(中央)、米光氏(写真右)。4時間にわたるイベントは大盛況で終了した。

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