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2008年11月23日(日)

松尾監督はミュージカルが大キライ!? ドラマCD「紅」インタビュー第2回!

文:電撃オンライン

 ドラマCD「紅」(12月20日発売)の監督・脚本を務める、松尾 衡(まつお こう)氏のインタビュー後編を掲載する。

「紅」

 「紅」は、集英社スーパーダッシュ文庫から刊行されている片山憲太郎氏原作の小説で、現在アニメやコミックなど幅広く展開中だ。ドラマCDでは、“紅真九郎”役の沢城みゆきさん、“九鳳院紫”役の悠木碧さんといった、TVアニメ版と同じ豪華なキャスト陣による、オリジナルの物語が展開する。

 インタビュー後編では、TVアニメの謎のCMや、第6話のミュージカルについての質問をぶつけてみた。声優陣のサイン色紙もプレゼントするので、ぜひチェックしてほしい。

■“紅香”のモデルって、実は僕なんですよ

「紅」

――思い入れが強いキャラクターというと、やはり“真九郎”と“紫”になるのでしょうか。

松尾監督:その2人を軸に話を作って行ったので、思い入れのあるキャラクターとなるとそうなりますが、今回のドラマCDのように楽しいものにしようと考えた時は、“真九郎”のバックグラウンドって邪魔くさいんですよね。こういった話を作る時に一番扱いやすいのは、この2人以外――“紅香”、“弥生”、“環”、“闇絵”、“銀子”、“夕乃”ですね。

――今回は“紅香”や“蓮丈”など、本編ではシリアスだったキャラクターがギャグシーンに登場していますよね。

松尾監督:黒田さん(黒田崇矢氏)の作品の貢献度がすごく高いと思っていたので、“蓮丈”は個人的にどうしても出したかったんです。あまりスムーズな出方ではないのだけれど、サービスみたいなものだと思ってください。“紅香”に関しては、ユーモアもある明るい人だと思っていたので、あつかい方っていくらでもあるなと考えていたんです。使えない部下を持った上司の苦悩みたいなものを描きたいなと思いました。“紅香”のモデルって、実は僕なんですよ。ああいうグチをよく言うんです(笑)。「いつまでもあると思うな堪忍袋の緒」というのも、僕がよく言う言葉なんですよ。

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▲ドラマCDでは、“紅香”や“蓮丈”もコミカルに描かれている。特に“蓮丈”の登場シーンは必聴だ。

――TVシリーズを見たファンに注目してもらいたいポイントはどこになりますか?

松尾監督:TVシリーズを見て気に入っていただけたエピソードの延長線上で、新しいものがお見せできますよといったところでしょうか。妻に、“紫”が泣いている姿はつらいからイヤだと言われたんです。沢城にも同じようなこと言われて。話の都合とはいえ、つらい部分を押し付けるよりは、“紫”が笑っている姿を見せてあげた方がいいんじゃないかと思ったんです。だから、感動させるストーリーというよりは、ホっとできるもの、やっぱりこの子たちって楽しかったんだなと思わせるようなものになっています。

――ドラマCDのエピソードって、時系列的には本編のどのあたりになるのでしょう。

松尾監督:6話と7話の間ぐらいですね。

――ミュージカルが終わって、七五三に行く前あたりですか?

松尾監督:そうですね。6話のミュージカルって、皆が打ち解けるきっかけになるような位置付けだったんです。だからその後にいろいろできるかと思っていたんですが、七五三行った直後に“紫”のことがバレてしまうんですよね。だからあの七五三のエピソードって、僕の中ではちょっとやりのこしてしまったところがあるんですよ。結局8話の前半だけでしかできなくて。狛犬を見て、シーサーだとか話すシーンがあるんですが、ああいう会話があるからこの人たちってバカだなって思うんです。案外そういう会話がおもしろい記憶として残っているものなんですよね。TVの時に、このドラマCDのようなエピソードがもう1本ぐらいあってもよかったのかもしれないですね。

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▲登場キャラクターがミュージカルを披露する、TVアニメ第6話「貴方の頭上に光が輝くでしょう」。第8話の七五三のエピソードの直後、物語は一気にクライマックスに向かっていく。

■スタッフに恵まれたからこそ生まれた衝撃のCM

――「紅」といえば、特徴的なDVDのCM(※)も見どころの1つかと思うのですが、あのCMは監督が提案されたのでしょうか?

松尾監督:違います(笑)。ここではっきりと断言しておきます。あれはポニーキャニオンの人が企画を出しまして、どういうわけか集英社や広告部でも企画が通ってしまったんです。まぁ最初のころから、TVの本編をつないだ当たり前のCMを作るのはやめようと話していたんです。最近はインターネットなどでも情報が見られるので、CMを見ても「おっ、DVDのCM出るんだ」とは思わない。「あぁ出るのね。いつ出るの」程度でしょう。だったら、もう少し記憶に残るものをやりましょう、まったく関係ないものでもいいから知らない人が「「紅」のCMなんかおかしいらしいよ」って言ってくれれば十分だということになったんです。CMの役割としてはその方が正しいと思うんですよね。悪ふざけだと言われたら、言われたぶんだけ得だと考えたんです。実は前のタイトルの時もふざけた内容のCMで、「紅」の時と同じ考えから作られたんです。

(※)DVD「紅」のCMは、謎の外国人たちが銭湯でカメラに向かって手を振る衝撃の内容だった。松尾監督の前作「RED GARDEN」でも、キャラクターが歌いながら発売日や特典を告知するミュージカル調のCMが、一部のファンの間で話題になっていた。

――確かに「RED GARDEN」のCMも、最初に見た時は絶大なインパクトがありましたよね。

松尾監督:あれもGONZOの広報の方がおそるおそる僕に「こんなものがあるんですけど……」と持ってきたんですよ。怒鳴られると思っていたらしくて(笑)。好きなタイトルのCMでも、記憶に残っているCMってほとんどないでしょう? 興味のないタイトルでも、興味を持ってもらえるようなCMにしたかったんですよね。

――その狙い通り、「RED GARDEN」や「紅」のCMは記憶に残るCMになったと思います。

松尾監督:まったく別物だけど、「紅」のCMとして覚えていてくれるというのは、作品としてすごく得だと思いますね。そういう意味では、「紅」は制作スタッフにすごく恵まれました。いろいろなところから集まった委員会のメンバーが、それぞれ利害がある中で上手くやってくれた結果だと思います。1社でも反対していたら、実現しないことだったので。唯一僕が腹が立ったのは、最後の2話だけ「空気を読んで普通のCMにしました」と関係者に言われたことですね(笑)。まるで今までのCMが空気が読めていなかったみたいじゃないですか(笑)。

――「RED GARDEN」や「紅」、今監督をされている「夜桜四重奏」でも、キャラクターが歌を歌う場面があるのですが、これは意図的に入れているんですか?

松尾監督:全然違います。「RED GARDEN」の時も、プロデューサーから歌を歌わせたらどうかと言われた時に僕は反対したぐらいです。そもそも僕は、ミュージカルって大キライなんです。たまにTVで見るんですが、何がおもしろいのかさっぱりわかりません。好きではないから、茶化してやりたいという気持ちがあるんですよね。そういう気持ちから、好きではないですが熱心に見ていたこともあり、これは何か形にできるなと思ったんです。監督作品でプレスコができないかもしれないのは重々承知しているから、今できるならやっておこうと。趣味かと言われると、悪趣味になりますね。舞台の持つライブ感って、人を楽しませるものとしてもっと広がってもいいと思うぐらい優れているんですよね。でもそれが、ごく一部のマニア向けのものになってしまっている。それがすごくもったいないなと思うんです。ああいう優れたものを自分の中に取り込みたいという気持ちもたくさんあったので、セリフの掛け合いなどは舞台を意識しています。ミュージカルはキライだけど舞台はすごく好きなんですよ。でも6話は反省だらけなんです。1~3話っていうのは、ダメ出しをしつつ形にしていったもので、その反省に対して次こういう風に直せるだろうといった手ごたえもあったんです。でも6話に関しては失敗ばっかりで、次どうすればいいのか答えも全然出てこなくて。ほとんどが初めての体験でしたから、難産でしたね。もう1度やってくれと言われたら、倍くらい時間がほしいです。

――あのミュージカルは、原曲があるんですか?

松尾監督:オリジナルの歌があるんですよ。なので、オリジナルの詞と替え歌の詞を僕が作って村松さんに投げてるんです。こういう詞があって、替え歌があるんだということを伝えないと、村松さんも曲が作れませんから。これいつも言うんですけど、もしその曲を出す機会があったら、小学校中学校の時の音楽の教師に聴かせたい。僕、音楽は大好きだったのに、たて笛を吹くのが大キライで、ずっと抵抗していたら音楽の点数がすごく悪かったんです。僕はあのクラスの中の誰よりも音楽を聴いていたし、好きだったのに、そんなことは認めてくれなかった。あの時の音楽の教師に、今お前ら何やってんだって言いたいです。俺、自分の詞に村松健が、千住明が曲作ってくれてるんだぜ。お前の世話になんなくてもこれくらいのことはやってるんだぜって。だからといって今の学校教育を否定しているわけではありませんよ(笑)。

――興味深いお話をありがとうございました。では最後に、ファンへのメッセージをお願いします。

松尾監督:この作品が好きな人に対して、最大限の恩返しができる内容になっていますから楽しみにしていてください。そのための努力を、キャスト陣全員がしてくれました。

――ありがとうございました。

 今回、出演者らの寄せ書きサイン色紙を抽選で1名にプレゼントする。欲しい人は下記の応募フォームから応募してほしい。締め切りは、12月8日だ。

「紅」
▲出演者のサイン入りの、豪華なサイン色紙をプレゼント! 奮って応募してほしい。


(C)片山憲太郎・山本ヤマト/集英社・「紅」製作委員会

データ

▼「TVアニメーション ドラマCD 紅」
■発売元:マリン・エンタテインメント
■品番:MMCC-4177
■発売日:2008年12月20日
■価格:2,940円(税込)
※初回特典はステッカーマウスパッド
 
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