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2009年1月22日(木)

【『フラジール』インタビュー】主人公とヒロインの出会い――その描き方とは?

文:電撃オンライン

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■本作独自の“焚き火”とは?

『フラジール』

――序盤はイベントとチュートリアルが、かなり連続していますよね。

川島:これでもかというくらい親切じゃないと、皆様にわかってもらえないだろう、というのがあります。ただ、結論から言ってしまうと――言ってはいけないのかもしれませんが、ちょっと入れすぎかもしれません(笑)。でも、ゲームの導入は親切に作るべきだ、というのが昔からの教えであるので丁寧に作りました。

――親切といえば、焚き火の配置がとても親切でプレイしやすかったです。

川島:それは、僕と企画の田川智美さんが頑張ったからです(笑)。僕が作った手書きのマップを大きく引き延ばして、そこから2人でバーチャルゲームをするんですよ。「ここに5匹敵を置くと、HPこれくらい減るよね」、「減りますね」、「じゃあ焚き火~」って(笑)。あとゲームって、緊張するところとホッとするところを、交互に作用させないと引き込まれないので。探索と焚き火を、緊張と弛緩と言っているんですけど、1日に2~3時間プレイをするから、1日にこれくらい緊張と弛緩があるとおもしろいよね、と考えて焚き火の配置を考えました。

――焚き火が頻繁(ひんぱん)にあるにも関わらず、大抵は“想いのこもったアイテム”を持った状態で焚き火に入れるので、焚き火が回復とセーブの作業にならずに済みます。ショートストーリーが楽しめる、想いのこもったアイテムを入れようと考えたのは何故ですか?

『フラジール』

川島:ゲームデザイン的に、緊張する部分は仕様をたくさん突っ込むことで作れるんですけど、ホッとさせる部分ってすごく難しいんですよ。何かを作らないといけないんですけど、何かを展開すると緊張するんですよね。なので箇条書きにして、できることは何だろうと考えた結果、あれを採用しました。

 ただ、ストーリーで休むというのはなかなか難しくてですね。ストーリーは、すごく状況が展開するんで盛り上がってしまうんです。ストーリーを伝えるのに、どうやって伝えるかを原田と話し合ったんですけど。よくあるアクションゲームだと、ものすごく戦闘を頑張って、それが終わったら「実は世界はこうだったのだ」というストーリーが始まって。でもそれだと盛り上がってしまうので(笑)。そこの表現を、テキストを読ませて、背景をチラチラ動かして、と心理的に抑えた感じにすれば、これは休息になるんじゃないか、かみしめるように読めるんじゃないか、と思ってデザインしたんですけれども。

『フラジール』

原田:やはりホッとする時にものすごい情報量が展開されると、テンションがドンドン上がって来るというのがあるので。極力静かな画面で楽しめるように、気を付けて作りました。テキストが主なストーリーと離れて、誰かのつぶやきみたいな感じで再生されていく、というのは方向付けとしてあったので、絵の展開もそんなに考え込まず作れましたかね。詩集を読むみたいな感じにしたのですが。あと、テキストが自動で再生されてしまうと、お客様のペースとはまた別に展開されて緊張すると思うので、そこをお客様のペースで読めるようにAボタンで進むようにして、お客さんにテンションをゆだねるように構成しました。


■物語を“体験”するための仕掛け

『フラジール』

――そういえばWiiリモコンのスピーカーを使った機能があって、その機能を利用したミニゲームがたくさん収録されていますよね。

川島:ゲームっておもしろくしようとすると、ゲームシステムを凝ってしまうんです。でもゲームシステムに凝ると、どんどん自分たちが体験したことからゲームが離れていくんです。仕組み的にハッタリを利かせて、おもしろい遊びとして成立させるゲームシステムを作ることはできると思うのですが、表現したいのはそういうことではなく、体験のメディアとしてのゲームなんですよね。

 この作品のミニゲームなんですけど、かくれんぼや追いかけっこって、すごく簡単なルールじゃないですか。それぐらいがホントだよ、というさじ加減で作ったんですけど。ミニゲームが単体としてあるのではなく、物語の中にあって、その場に行ったら実際にこんなことをするんじゃないかなと考えて、かくれんぼや追いかけっこなどのミニゲームを入れました。

――確かに、収録されたミニゲームは全部ストーリーとつながっていますね。

川島:そうです、全部そうなっています。本来なら、ネコを100匹集めたらコンプリート、みたいなものをやろうと思ったんですけど、ネコを見つけると地図に印が付くっていうのがギリギリですね。それ以上やると、体験からゲームが離れていく気がするんで。

――ミニゲームは、物語をプレイヤーの体験として能動的に楽しむための仕掛けなんですね。

川島:すごいシンプルにまとめるとそうです(笑)。

『フラジール』

――ちなみに戦闘とミニゲームでは、開発する際に異なる苦労がありましたか?

安井:女の子とのかくれんぼや、クロウとの追いかけっこというのは、最初からボス戦1個分ずつくらいの枠が振られていたので、その作業量としては織り込み済みで作っていました。結局、音で調べるやり方もいろいろプログラムを組んでみて、最終的に敵を照らして音が鳴るという仕組みを使ってやることにしました。最初のころから試行錯誤を重ねていましたね。手掛けたのは、そもそも試作版のころからですので。

川島:変な表示とか入れたくないので、わかりやすく音で探せないかなと思って、「これで!」と決定したのは最後の方でした。


■いつの間にか寄り添っている音楽

『フラジール』

――予約特典に収録された10曲ですが、中でも特に聞いてもらいたい曲はありますか?

齋藤:公式サイトで流れている曲『すべての人へ』ですね。あと個人的に、最後に流れる『ありがとう』が好きです。結構昭和のレトロな雰囲気がゲームの中にあるので、ちょっと懐かしい音階も使っています。それと、リアルな廃墟とちょっとファンタジーな世界観が『フラジール』で共存している中に、ゆらぎみたいなものがあるなと感じたので、聴いている人があれって感じるようなゆらぎが『ありがとう』の曲からも感じられると思います。

 『フラジール』って、たまに空き缶が転がっていて「これなんだろう」とつい見てしまうような世界だったので、あまりいろいろな曲を入れたくなかったんですね。公式サイトで流れている『すべての人へ』をメインテーマとして作って、それをモチーフにして、アレンジした曲を結構入れたりもしました。

――音楽はすごくさりげなくて、プレイしたらいつの間にか流れていて、いつの間にか終わっていました。

齋藤:プレイする方にそう感じてもらえたらいいなと思いながら作りました。『フラジール』では、音楽がいつの間にか寄り添っていたらいいなって。

 シーンの描写から、本作の特徴的な部分、音楽についてと話を伺った前編。明日掲載の中編では、ある意味で最大の特徴ともいえる“廃墟”についての話をお届けする。さらに後編では、戦闘パートと、P.Fとのエピソードについて伺った話を掲載予定だ。

→中編へ

→後編へ


(C) 2009 NBGI

データ

▼『FRAGILE~さよなら月の廃墟~』
■メーカー:バンダイナムコゲームス
■対応機種:Wii
■ジャンル:RPG
■発売日:2009年1月22日
■価格:7,140円(税込)
 
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