2009年8月21日(金)
愛娘にそろそろ物心がついてきて、最近自宅で“対象年齢が高めのゲーム”を遊びにくくなってきたKK@です。先日も、オマケのPSP版・初代『To Heart』目当てで『To Heart2 PORTABLE Wパック』をAmazonで購入したら、不在中に家族に受け取られてしまい、中身を隠し通すのに一苦労!(次回からコンビニ受け取りを利用しよう……) 本作はどうでしょうか?
CEROレーティングはB、12歳以上対象なので一般家庭で遊ぶのには問題なく、実際に内容も健全なRPGですが、個人的に大ファンなうるし原智志先生がデザインを手掛けたマッシブ&セクシー全開な登場キャラクターたちが、家族の前で遊ぶのに微妙に恥ずかしいかも……。いや、そういえば温泉イベントとか告白イベントがあるから絶対にムリじゃん!! というわけで、私のようなプレイヤーには家族にナイショでこっそりプレイできてバンザーイ! なPSP版『グローランサー』のレビューをお届けしたいと思います。
まず最初に作品の概要を解説すると、もともとオリジナルの『グローランサー』は、アトラスが1999年11月25日にプレイステーションで発売したノンストップドラマチックRPG(私的解釈だと“ドラマチックなイベントの連続でドキドキが止まらない♪”なRPG)です。開発は『ラングリッサー』シリーズでおなじみのキャリアソフトが担当しており、システム・シナリオ・キャラ魅力(キャラデザインおよびアニメシーンの絵コンテ・作画監督・原画を人気イラストレーターのうるし原智志先生が担当)のすべてが水準以上の、知る人ぞ知る名作として、RPGファンの間で極めて高い評価を得ています。その証拠に『VI』まで続編が出ている人気シリーズとなっていますが、なかでもこの『I』はシリーズの原点にして最高傑作との呼び声も高い1本です(異論のあるファンの方もいると思いますが、少なくとも屈指のクオリティであることには賛成してもらえると思います)。そのリメイク作となるPSP版は、PS版の魅力をほぼそのまま受け継ぎつつ、グラフィックの向上・新キャラ&新シナリオの追加&各種プレイアビリティの改良を加えた“決定版”となっています。結論から先に書いてしまうと、追加要素に注目しているシリーズのファンは間違いなく“買い”、そして本作で初めて『グローランサー』を遊ぶシリーズ初心者にも文句ナシでオススメできる「アトラス、グッジョブ!」な1本となっています。以下、その理由をズラズラと……。
本作の舞台は、魔法エネルギー“グローシュ”により成り立つ世界。大陸を3分する国の1つ、ローランディア王国の宮廷魔術師サンドラに拾われ育てられた主人公は、「世を滅ぼす闇となる」、「世界を救う光となる」という、相反する2つの暗示を受けていた。それを案じたサンドラにより、主人公は自立できる年齢まで王都を出ることなく育てられていたが、17歳になったある日の朝、外の世界に旅立ち、自分の目で世界を見てくるよう告げられるのだった――。
以上が本作の導入ですが、いいですね、のっけから主人公=プレイヤーに“選ばれし者”臭がプンプンしてて! 養母が宮廷魔術師の時点で“権力”はクリア、おまけに感情移入を重視するRPGのご多分にもれず、本作の主人公も一切セリフをしゃべらず(イベント中の受け答えは相棒の妖精・ティピちゃんが代行してくれます)、名前も自分で入力する方式なのですが、容姿(グラフィック)だけは用意されていて、スタイルも抜群な超絶美形男子だったりします。そのイケメンぶりは立ち絵やステータス画面で常時確認可能で、“主人公=プレイヤー”気分で没頭していると“リアル自分”とのあまりのギャップに涙すら出てしまいますが、ゲームの中の世界でくらい、イケメンライフを満喫するのも悪くはありません。実際、そのカリスマ効果たるや絶大で、義妹(とくの“義”が重要)のルイセはアレコレ世話を焼いてくれますし、曲がり角でぶつかって転ばせてしまった妹の友人は、怒るどころか頬を染めて「お兄さまと呼ばせてもらえますか?」と言い始める始末です。普通、妹とか妹の友人って、兄のことを完全に無視するか、汚らしいモノでも見ているかのような視線を投げかけてくるものじゃないですか(断言)。なのでこの差は、俺(主人公)がイケメンだからに違いありません。美形サイコーッ! ……とかいってハシャいでいたら、ローディング中の暗転画面に鼻の下を伸ばしたリアル俺が映って軽く鬱に(涙)。くそっ、早くゲームの中の世界に入って主人公と同化できる技術が実用化されればいいのに!!
とにかく、そんな経緯で旅立った主人公はさまざまな人(ほぼ美少女とイケメン)と出会い、仲間を増やして、やがて世界の運命を左右する戦いに身を投じることになります。“ノンストップドラマチックRPG”と銘打っているだけあって、このあたりのストーリー展開というかイベント演出が見事で、フィールドどころか戦闘中も先が気になるイベントが連続発生! まあ、少し前の作品ということもあり、いわゆる“ご都合主義”的な展開が鼻につく人もいるかもしれませんが、それを理由に敬遠するには惜しい完成度とボリューム……。特に電撃文庫などのライトノベルを愛読している層には、文句なしでオススメできます。序盤から張りめぐらされた伏線はクライマックスに向けてキッチリ回収されますし、主人公の行動次第で、ストーリー展開が大きく分岐!(含む新規シナリオ)。そういった意味での完成度は極めて高く、止め時を見つけるのに苦労するくらい、のめり込めるお話でした。“中二病”設定&ストーリー好きと呼びたければ呼べ! だっておもしろいんだもん!!(ちなみに筆者は今年で30歳♪)
また、個人的にうれしいというかニヤニヤしてしまうのが、主人公の活躍(出世)に応じて街の住人の反応が変化する点です。たとえば闘技場で優勝すると、からんできた街のゴロツキが「ヤベェ! あのチャンピオン!?」的なセリフを吐いてくれるし、ストーリーが進んで騎士に取り立てられ、自分の領地を訪れると、領主サマとして上にも下にも置かない対応をしてくれます。こういう経験は現実世界ではなかなかできないので(涙)、うれしくてつい住人たちにマメに話しかけていましたよ、私は。
全体的なシステムについては奇をてらったところはなく、いい意味で王道的なRPGとなっている本作ですが、バトルはかなり独特というか、なかなか秀逸な要素が採用されています。“リアルミッションクリア戦闘システム”と書くと難しそうですが、要するに移動や行動をリアルタイムで行うバトル……RPGの手軽さとSLGの奥深さを融合させた、いいとこ取りのシステムです。戦場に位置と射程距離、移動時間の概念があるため、ある程度敵の動きを読まなければならず、さらにボス戦などのイベント戦闘では、敵に襲われている村人などの中立キャラクターがしばしば登場するため、緻密な戦術が要求されます(例によって、何人助けたかで報酬が変化したりする)。自分以外はオートで動かせるため、ザコ戦は力押しで行けますが、ボス級の相手やイベントバトルでは、頭を働かせる必要がある……。その緩急というかバランスが絶妙で、遊んでいて飽きる(あるいは面倒になる)ということがありません。
なお、勝敗を左右する魔法やスキルの習得は、レベルアップ時に最高3ポイントもらえる技能ポイントを振り分けることで習得できます。そのため、レベルが同じでも育て方(魔法&スキルの取り方)次第で能力が大きく変化するため、自分の戦い方に応じたキャラ(パーティ)を育成することができます。慣れないうちはつい肉弾戦ばかりを重視しがちですが、遠距離&広範囲を攻撃可能な魔法は、うまく活用すると絶大な戦力となるので、いろいろ試してみることをオススメします。
前項で少し触れましたが、主人公は話が進むと騎士に取り立てられ、ストーリーの節目節目で手柄(選択肢や戦闘の結果で決まる)に応じて休暇をもらうことができます。これがいわゆる恋愛SLGでいうところの休暇イベントに該当し、ここでお目当てのキャラとの交流を深めることで、キャラごとのエンディングを迎えることができます。義妹、義妹の友人、心優しき薬剤師(女医?)、男装の麗人、天真爛漫なチビ妖精、ドジで方向音痴なメガネっ娘(新キャラ!)、ミステリアスなフェザリアン=有翼人間(新キャラ!)、etc.……。おっと、女性キャラだけでなく、男性キャラとのエンディングも用意されていますよ! 特にファンからの熱烈な要望に応えて、PSP版ではインペリアル・ナイトを率いるツンデレ王子が攻略可能になっている点も見逃せません。下手な恋愛ゲームなど裸足で逃げ出す、ドキドキの告白イベント(美麗CG挿入!)も用意されているので、ぜひぜひお試しを。どのキャラもいわく有りで、誰を選ぶか迷うかもしれませんが、本作においては八方美人は厳禁かも!? というのも、選択回数に制限がある休暇イベントがキャラごとに細かく用意されているため、あまりフラフラしてしまうと、イベントの見逃しが多くなってしまうからです。ちなみに私は新キャラのアメリアを口説く気満々だったのですが、ついついイベントを拾っていくうちに、いつの間にかティピちゃんエンディングに……。まあ、もう2~3周はする予定なので無問題ですけど!
最後になりましたが、PSP版の追加要素について。大きいところでは新シナリオ(ルート)と新ヒロイン(2人)が追加されており、それに合わせてBGMやモンスター、GLチップスのカードなどの種類も増えています。オープニング曲やエンディング曲が新しいものになっている点もポイント。また、画面比率の変更にあわせてフィールドの表示範囲が広くなっていたり、グラフィックの解像度が上がっていたり(+表示範囲が広がってティピの太ももとかが見えるように!)、SE音が微妙に変化したりといった、細かい改良が加えられています。追加されたシナリオのボリュームはかなりのもので、すでに前作(PS版)を極めた人も、新鮮な気持ちでストーリーを楽しめると思います(基本は一緒ですが、新しいルート分岐が存在します)。ときどきイベント時のローディングがやや遅く(戦闘時や画面切り替え時のローディングはそれほど気にならないレベル)、ついついボタンを連打していると音声付きのセリフを飛ばしてしまったり、新規収録音声のノイズが気になったりしますが、全体的なクオリティ(移植度)は文句なしで合格点! また、本作のようにじっくり攻略したいゲームは、プレイする場所やタイミングを選ばないPSPとの相性がよく、PS版以上に中毒性アリ……。この調子で、ぜひ『2』以降のシリーズのPSP化を希望したくなる内容です! リメイクの成功も大きいのですが、やはり元が名作なだけに、最新のRPGと比べても遜色(そんしょく)のない出来となっていますので、未プレイの人はぜひ遊んでみてください!!
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