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2009年10月23日(金)

PSPコミック配信サービスの展望は? コンテンツホルダー&SCEがトーク

文:電撃オンライン

 本日10月23日、秋葉原UDX内“AKIBA SQUARE”において、シンポジウム“PSP/PSストアが展開する本格コミック配信サービスとデジタルコミックの未来”が開催された。

 このシンポジウムは、現在秋葉原で開催中のイベント“秋葉原エンタまつり2009”の一環として行われたもの。テーマとなったのは、今年中にSCEが開始する予定となっている、PSネットワーク上でのPSPコミック配信サービスについて。サービスの概要を軸に、コンテンツホルダー各社のデジタルコミックへの取り組みや将来展望などが語られた。

 進行を務めたのは、PSPコミック配信サービスにおいて、SCEと業務提携しているリブリカの代表取締役・森下秀昭氏。パネラーとして登場したのは、SCEネットワークビジネス&サービス シニアバイスプレジデント兼PSNビジネス&サービス部部長・正田純二氏、角川書店常務取締役・新名新氏、講談社ライツ事業局長・吉羽治氏、集英社ライツ事業部デジタル事業室室長・田代豊氏、小学館ネット戦略室課長・大家正治氏の5名。この6人がいくつかのトピックについてディスカッションを繰り広げていった。

“PSP/PSストアが展開する本格コミック配信サービスとデジタルコミックの未来” “PSP/PSストアが展開する本格コミック配信サービスとデジタルコミックの未来” “PSP/PSストアが展開する本格コミック配信サービスとデジタルコミックの未来”
▲森下氏▲正田氏▲新名氏
“PSP/PSストアが展開する本格コミック配信サービスとデジタルコミックの未来” “PSP/PSストアが展開する本格コミック配信サービスとデジタルコミックの未来” “PSP/PSストアが展開する本格コミック配信サービスとデジタルコミックの未来”
▲吉羽氏▲田代氏▲大家氏

 まず最初に話題となったのは、プラットフォームとしてのPSPとケータイの違いについて。現在、デジタルコミックの中核的なポジションにいるケータイに対して、どういったアプローチでPSPが対抗しうるのかについて語られていった。各社とも、ケータイの画面に対して大きな画面を持つPSPは、グラフィックの面で有利であることをあげていた。他には吉羽氏が、330億円規模を誇るケータイコミック市場でアダルトジャンルが大きなシェアを有していることに触れて、上手に住み分けができるのではないか、との見方を示していた。

“PSP/PSストアが展開する本格コミック配信サービスとデジタルコミックの未来”
▲ケータイコミック市場について「できてしまった市場の形を帰ることは難しい」と話す吉羽氏。さらにケータイに対するPSPの利点として大きな記憶容量を備えられる点をあげ「いわゆる“大人買い”なども望めるのでは?」とも。

 続いてのテーマは、海外展開について。ここでは出版社から見てデジタルコミックの海外市場はどのように映っているのかを話していくことに。(※PSPのコミック配信サービスはヨーロッパでも展開していくことが8月にアナウンスされていたが、ヨーロッパ・北米と日本ではコンテンツの内容は違うものになる見通しとのこと)

 出版業界全体が右肩下がりであると話す新見氏は、ロイヤリティ・ビジネスとして大きく発展する余地を残していると見ており、その一例として海外展開で大きな業績を上げた『ダ・ヴィンチ・コード』のケースを紹介。作者のダン・ブラウン氏がロイヤリティであまりにもうかってしまったために、次作の発表が大きく遅れてしまったことを笑いながら話していた。

 また田代氏は、「デジタルコミックを通じて“日本のコミックの読み方”を多くの国外ユーザーに覚えてもらえるチャンスなのでは」と話した。英語圏に端を発するプラットフォーム――特にPCの世界では日本語のような“縦書き表示”はほとんど相手にしてもらえない現状を説明し「紙でそれをやるのはリスクが大きい。デジタルコミックがその状況を打破してくれるのではないか」と続けた。

“PSP/PSストアが展開する本格コミック配信サービスとデジタルコミックの未来” “PSP/PSストアが展開する本格コミック配信サービスとデジタルコミックの未来” “PSP/PSストアが展開する本格コミック配信サービスとデジタルコミックの未来” “PSP/PSストアが展開する本格コミック配信サービスとデジタルコミックの未来”
“PSP/PSストアが展開する本格コミック配信サービスとデジタルコミックの未来” “PSP/PSストアが展開する本格コミック配信サービスとデジタルコミックの未来” “PSP/PSストアが展開する本格コミック配信サービスとデジタルコミックの未来” “PSP/PSストアが展開する本格コミック配信サービスとデジタルコミックの未来”
▲こちらは、集英社『ドラゴンボール』のデモンストレーションの様子。コマごとに見せていく手法を取っている。

 3つ目のテーマは“デジタルコミックとコミック本”。要するに、デジタル媒体があることで、紙媒体の売り上げに影響が出るのではないか、というテーマだったのだが、これには大家氏が「デジタルが出ると紙が売れなくなるのでは、というのはずいぶん前の議論で、今はそう話す人も減ったと思います。むしろデジタルを使って紙の売り上げをいかに伸ばしていくのかが今の議論の中心ですね」とバッサリ。また新名氏は、Amazonのデータを例に出して「キンドル(※Amazon.comが販売する電子ブックリーダー)を使っているAmazonユーザーは、他のユーザーの5割増で紙の本を買っているんです。必ずしもシェアを争う関係ではないんでしょうね」と付け足した。

 コンテンツとしてのデジタルと紙の違いについて語ったのは、田代氏。現状のデジタルコミックが本来紙で出すべきものを無理やりデジタル化していることを指摘し、「過渡期的な状態で、5年後10年後はどうなっているかわかりません。おそらく(紙とは)まったく違った表現が生まれてくるでしょう。それを支援する環境は作って行きたいですね」と語った。

 最後は、“ネットワークサービスとしてのPSPコミック”について。各社のパネラーからは、ストアの形態がどうなるのか、ネットワークを生かした新しい試みができるのか、“音楽会社におけるカラオケ産業”のような新たなビジネスを作り出せるか、などが期待混じりに語られた。それらを聞いた正田氏は「私たちのサービスの最大の利点はネットワークであること、アップデートができることにあるんですね。ショップの機能やユーザーの利便性を高めることができます。こうした意見を伺いながら、よりよいシステム、よりよいショップを目指したいと思います」とシンポジウムを締めくくった。

“PSP/PSストアが展開する本格コミック配信サービスとデジタルコミックの未来”
■秋葉原エンタまつり2009 概要
【開催日】2009年10月17日~25日
【メイン会場】秋葉原UDX
【会場】秋葉原地区ショップ、その他

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