2009年11月28日(土)

ゲーム攻略情報も配信可能なダイナミック広告とは? DFJ社長インタビュー

文:電撃オンライン

 ゲーム内にインターネットを介して広告を配信し、プレイ画面上に表示するシステム“ダイナミック広告”のサービスを提供する広告代理店Double Fusion Japan(ダブルフュージョン・ジャパン)。このシステムを採用し、ゲーム内広告の配信を受けるPS3版『ワールドサッカー ウイニングイレブン2010(以下、ウイイレ 2010)』も11月5日に発売され、次第にこのシステムに注目が集まっている。

 これまでもゲーム内に広告を表示する試みはあったが、それらとどこが違うのか、そしてゲーム内広告でいったい何ができるのか、ユーザーの側からも企業の側からも目が離せない点だろう。

 そこで今回は、どのような広告をゲーム内に配信するのか、またどのようにしてゲーム内への広告配信を行っているのか、そして今後どのようなサービス展開を考えているのかといったことを、サービスを展開するダブルフュージョンの日本法人であるダブルフュージョン・ジャパン代表取締役・アレックス スッド(Alex Sood)氏が、アスキー・メディアワークス企画戦略課の本多昇に語った。

■“ダイナミック広告”サービスが生まれた理由とは

ダブルフュージョン・ジャパン代表取締役・アレックス スッド氏インタビュー
▲ダブルフュージョン・ジャパン代表取締役・アレックス スッド氏

――本日はよろしくお願いいたします。まず、ダブルフュージョン社について伺いたいのですが、日本法人設立の経緯をお聞かせください。

スッド氏:日本法人を設立したのは2007年だったのですが、設立した理由は2つあります。まずはソニーと任天堂というゲームハードメーカーがあるということ、また、同じようにソフトメーカーも多くが日本にあります。そして、何よりコンシューマゲームにおいて、日本市場はイノベーター(革新者)といえる地位にあります。もう1つ、日本は広告費が世界第2位の市場規模を持っているということです。

――コンシューマゲーム市場において日本は重要な意味を持っているということですか。

スッド氏:そうです。ゲーム内広告を成功させるためには、日本市場に参入することは絶対に必要なことでした。日本法人を設立すると決まった時に、私は何をおいても「日本で仕事がしたい」という気持ちで来日しました。住むところにしても、最初に日本に来たときは部屋に何もないような状態だったのですが、「とにかく日本で仕事をするんだ」という気持ちが先に立っていたので、気にならなかったですね。

――日本人は仕事が生活の一部、というか仕事が中心でプライベートはその余った時間という感じですが、欧米の方は仕事は仕事、プライベートはプライベートで分かれていてそれを両立しているというイメージがあったのですが。

スッド氏:私もフランス人ですから、そういう感覚でいますよ。今の状況は自分でも働き過ぎだと思います。ただ、やはりゲーム業界のイノベ-ターである日本で、ダブルフュージョンの広告サービスを成功させるということが今は最優先ですね。プライベートより仕事の方が楽しいですし、何より“仕事をしたい”という思いですから。

――すごい熱意ですね。それでは、そのサービスについてお伺いしたいのですが、まず“ゲーム内へ広告を配信する”という発想はどこから来たのでしょうか。

スッド氏:まず、前提としてここ5年ぐらいでゲームのビジュアル面での表現力が向上し、それに伴ってエンタテインメントとしてのクオリティがアップしてきたということがあります。そのことで、メディアとしてのゲームの価値が上がり、結果として、ユーザーがゲームをさらに楽しめるようになったのではないかと思います。ゲームは映画などと肩を並べ、トップクラスのメディアに成長したと言っていいでしょう。こうしてゲームがエンタテインメントとしての地位を確立したことで、広告主がゲームを広告出稿のターゲットとして認識するようになってきました。また、当然ですが広告主はその広告の効果なども確認したがります。現在のゲームはインターネットを介して外部と接続しているので、どれだけのユーザーがその広告を見たかなどのリサーチも可能なので、このようなメディアに注目するのは当然なのです。

――過去にもゲーム内広告が出るということがありましたが、広告の内容がプログラム内に最初から組み込まれていて変更が不可能でした。それと比べた場合“オンラインで外部から配信する”という点はポイントになりますか?

スッド氏:そうですね。その点もダイナミック広告における大きなポイントの1つだと思います。ゲーム内に広告を出すことを考えた時に問題になったのが、ゲーム制作過程が制作チーム内で“完結している”ということでした。これまでのやり方だと、広告主がゲーム開発段階から関わる必要があり、負担が大きいという問題がったんです。そこで、ゲームの開発から関わるのではなく、独立した“外から広告を入れる”仕組が必要だと感じました。そうすることで、ゲーム開発スケジュールと広告表示のスケジュールを分離でき、さまざまな時期に合わせた旬な広告を表示させることができます。ですから、いつでも広告内容を変更出来ます。これは画期的なことで、ダイナミック広告の技術がなければ実現出来なかったことです。そして、これも大変重要な点ですが、ダイナミック広告はトラッキングすることが出来ます。

――トラッキングとは具体的にどのようなことを言うのでしょうか?

スッド氏:例えば、あるゲーム内に屋外看板広告を出したとします。その看板を何人の人が見たのかをトラッキング出来るわけです。

――ゲームの完成(マスターアップ)から発売まで3カ月かかるといわれていますが、広告を最初から組み込むのでなく外部から配信するならこの時間差は考えなくてよい、というわけですね。

スッド氏:その通りです。インターネットを介せば“そのときに表示したい”タイムリーな広告をゲーム内に配信表示できるようになります。ゲームROM内に広告を組み込む場合、“ゲーム制作時”の広告しか表示できませんが、外部からの配信であればいつでも最新の広告を表示させることが、最大の強みですね。

→ゲーム内広告でユーザーと広告主のコミュニケーションが可能に(2ページ目)

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