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2009年11月27日(金)

『ドラゴンクエストIX』400万本への道――市村龍太郎氏がヒットの理由を語る

文:電撃オンライン

■『ドラクエIX』の新規ユーザー獲得は2007年6月から始まっていた

『ドラゴンクエストIX』

 1つ目に話されたのは、“プレイ人口”の拡大について。プレイ人口の拡大とは販売本数を拡大することであり、市村氏は『ドラクエIX』を販売するにあたって、「ドラクエファンをしっかりと確保すること(ドラクエファン層)」、「過去にドラクエをプレイして、今はゲームから少し離れてしまったユーザー層の掘り起こし(ドラクエ懐古層)」、「子どもと女性を中心とした新規ユーザーの開拓(新規ユーザー層)」の3つを掲げたことを話した。市村氏が目標とした販売本数は、ドラクエファン層に200万~250万本、ドラクエ懐古層に150万本、新規ユーザー層に50万本であるという。

 これを実現するため特筆すべき戦略をとったのが、子ども層へのアプローチ。『ドラクエ』に触れたことのない小さな子どもに『ドラクエ』を浸透させるため、市村氏が「『ドラクエIX』を販売するために企画した」と話すゲームが、現在『II』が稼働中のキッズカードゲーム『ドラゴンクエスト モンスターバトルロード(以下、バトルロード)』だ。

 ショッピングセンターに『バトルロード』が置いてあることで、まず子どもの親が『ドラクエ』ということで反応し、子どもがプレイするという光景を描いた市村氏の戦略は見事に当たり、2007年6月からの稼働以降、2009年9月末時点でカード出荷枚数1億8千万枚という実績が出ている。実際に市村氏のもとにあるデータでは、『ドラクエIX』をプレイする子ども層は約55万人(新規ユーザー層全体は約65万人)という数字が出ており、市村氏の新規ユーザー層への目標販売本数は50万であることから、市村氏自身、プロモーションの成果が出たという評価をしている。なお、『ドラクエ』ファン層は約200万人、『ドラクエ』懐古層は約140万人を獲得したそうだ。

■中古での動きは半分に――クリア後も長く遊ばれる140時間

『ドラゴンクエストIX』

 2つ目の軸“時間”の拡大を目指して市村氏が行ったのは、商品コンセプトの“ずっと遊べる”とも重なるが、ゲーム自体が長く遊べるものにすることだ。宝の地図、クエスト、錬金といったやり込み要素の充実、発売から1年間の配信サービスによる飽きさせない仕掛け、Wi-Fiクエストや国勢調査による“プレイ人口が多いことが実感できる”仕掛けにより、これを実現、先ほども述べた1ユーザーの平均プレイ時間が約140時間という数字にもつながっている。

 こうして『ドラクエIX』を“手放せないもの”にした結果が、中古対策にもなっており、過去の作品と比べて中古市場での動きが半分ほどに減っているという。また従来シリーズと違って、『ドラクエIX』で市村氏が重視しているのが発売後にも長くプロモーション展開すること。今でも週に1度プロモーション会議を行い、その都度上がってくるデータをもとに、「女性ユーザー数が伸びているなら、女性へのプロモーションを強化しよう」といったようなリアルタイムな対応をしているらしい。

■『バトルロード』をすれちがい通信の聖地へ

『ドラゴンクエストIX』

 3つ目の軸である“コミュニケーション”の拡大には、マルチプレイとすれちがい通信が大きな役割を果たしていると話した市村氏。氏は、自分とその周囲にいる家族、さらにその周囲にいる友人や恋人、上司、同僚、先輩、後輩といった人間関係までを“身近な人たちとのマルチプレイ”を行うコミュニケーション枠と考え、さらにその外にある通勤・通学路、会社・学校、近隣の遊びに行く場所、出張や旅行で行く遠方といったスポットを、“見知らぬ人たちとのすれちがい通信”を行うコミュニケーション枠と想定。後者のコミュニケーション枠が重なり合うことで、日本全国にコミュニケーションが拡大するよう『ドラクエIX』を企画したそうだ。

 だが、すちれがい通信には避けられない弱点があるとして市村氏が挙げたのが「過疎地域ではすれちがい通信が成立しないため、拡大が難しい」ということ。このため、過疎地域に住む人が、東京に住む人にDS本体とソフトを送って、ある程度すれちがい通信をしてから送り返してもらう、といったエピソードも耳に入ったと市村氏は語る。

『ドラゴンクエストIX』

 これを解決するため、市村氏があらかじめ仕込んでおいたのが、『バトルロード』と『ドラクエIX』の連動。“超連動プロモーション”と冠されたこの策では、『バトルロードII』をプレイして大魔王が出現した際、その付近ですれちがい通信を行って地図を入手すれば、『ドラクエIX』でその大魔王と戦えるようになる。これにより、『バトルロード』をプレイする子どもの周囲には『ドラクエIX』をプレイする大人が集まり、すれちがい通信を行う必然から、その人たち同士でもすれちがい通信が行われる――“『バトルロード』をすれちがい通信の聖地”にするというのが市村氏の狙いだ。そして、すれちがい通信の輪を拡大させていく狙いは、待っているだけでは生まれない口コミを促進することにあったようだ。

『ドラゴンクエストIX』
▲再び3次元プロモーション戦略の図。市村氏は、『ドラクエIX』販売の動きが、初動のインパクトから、口コミでの波及、定番化へと推移していったと分析する。

→多くの仕掛けをした『ドラクエIX』にも予想以上のブームが……(3ページ目へ)

データ

▼『ドラゴンクエストIX 星空の守り人』
■メーカー:スクウェア・エニックス
■対応機種:DS
■ジャンル:RPG
■発売日:2009年7月11日
■価格:5,980円(税込)
 
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