2009年12月7日(月)
本日12月7日より全国で発売されるレトルト食品『マーボーカレー』。その開発スタッフにインタビューを行った。
『マーボーカレー』は、『テイルズ オブ』シリーズでおなじみの体力回復アイテム“マーボーカレー”を、レトルト商品化したもの。12月10日に発売されるWii『テイルズ オブ グレイセス』の開発チームとハウス食品が、共同で味、食感、パッケージを研究したという。味は“コクの中辛”と“まろやか中辛”の2種類だ。
ハウス食品から開発マネージャーの山口雅一さんと、ブランドプランナーの船越一博さん、バンダイナムコゲームスからプロデューサーの馬場英雄さんと、ライセンス管理をするライツ部の青木昌也さん、森川綾子さんに、商品化の経緯や開発中の苦労話などを語ってもらった。『テイルズ オブ』シリーズのファンだけでなく、ゲームとのコラボレーション食品が好きな人、またカレーや麻婆豆腐が好きな人も楽しめるインタビューになっているので、ぜひご覧いただきたい。(インタビュー中は敬称略)
――まず最初に、マーボーカレーの開発に至った経緯を教えてください。
▲これまで数多くの『テイルズ オブ』シリーズに関わってきた馬場プロデューサー。 |
馬場:以前から、ライツ部の青木などと「ゲームの中のアイテムを商品としてリリースすることで、ゲーム以外の楽しみを提供できるのでは?」と考えていました。それが発端ですね。
青木:私は、ナムコに所属している時代に、横濱カレーミュージアムというフードテーマパークの立ち上げに関わっていたんですが、その時からエンターテインメントと食品の親和性は高いと考えていたんですね。そんなこともあり、昨年、サークルKサンクス様とのコラボとして期間限定でマーボーカレーを販売していただいたんですが、反響がすごかったんですよ。
――私も食べました。カレーと麻婆豆腐が別々に入っていることや、その辛さとおいしさが印象に残っています。
青木:ありがとうございます。購入していただいた方には好評だったんですが、一方で「近所の店舗に置いてない!」という声や「なんで期間限定なの!?」という声も数多く寄せられました。今度は更に大きな規模で、そして常設していただけるような形で、味もさらにおいしいものにしたいということで、ハウス食品さんにご相談したというのが始まりです。
山口:実は、弊社はドラマ、映画のタイアップはこれまでにも経験があったんですが、既存の商品の特別なパッケージで対応していました。今回はゲームとのコラボということで、「これまでにないお客さんとの出会いがあるのでは?」と検討し、企画が動き出しました。
▲熱い思いで、マーボーカレー商品化を支えてきた青木さん。両社の架け橋となり、1年間奮闘したとか。 |
青木:ラッキーでしたね。山口さんと船越さんにお会いしていなければ、こうやって完成していたかどうか……。
山口:他の人間では、まずやらないでしょうね(笑)。たまたま、他にこういう企画を持っていなかったというのも影響していると思います。
――マーボーカレーは、シリーズのさまざまなタイトルに出ていますが、どのあたりから「商品化したい」を考えていたのでしょうか?
馬場:マーボーカレーに限らず、何か商品化したいと考えていたんですが、マーボーカレーに関しては、『テイルズ オブ ハーツ』の途中で「マーボーカレーってシリーズの定番でもあるから、手軽に食べれるような形で提供できないか?」という話があがった時ですね。
青木:弊社の広報誌『NOURS(ノワーズ)』の特集で“GAMEとFOODのおいしい関係”という記事を展開したことがありまして、その時に企画でマーボーカレーを実際に作ってみたんですよ。このあたりから、インターネット上で「実際にマーボーカレーを作ってみました」という人がすごく増えたんですよ。いろいろな人が、自分なりのマーボーカレーを作ってくださり、聞いた人にインパクトを与えてくれた。形にしたいという構想はあったんですが、具体的に形になったのが『テイルズ オブ ハーツ』の時でしたね。
▲2003年にリリースされた『ノワーズ vol.41』。この中で、マーボーカレーが制作されていたことが、商品化に結びついた!? |
森川:自社で展開しているWebサイト・テイルズチャンネルでのアンケートでは、一番好きなアイテムの1位にマーボーカレーが入っていたり、インターネット上で商品化要望を募るサイトでも上位に入っていたということがあったんです。『テイルズ オブ』シリーズのファンだけでなく、多くの人が商品化して欲しいという意思を持っているのを確認できました。具体的に待っている人が見えないと、商品化は難しいのですが、1つの指針になりましたね。
――マーボーカレーは、開発スタッフの方が普段から食べていたんですか? もしくは実家に伝わる伝統の家庭料理とか!?
馬場:食べていたわけではないですね(一同笑)。単純にアイデアです。カレーが好きで、麻婆豆腐も好きなスタッフが、それをあわせたという。『テイルズ オブ』シリーズの中には、こういうちょっとおもしろいものがあるんですよね。
――そんなマーボーカレーですが、ハウス食品さんはこの企画を受け取った時にどう思いましたか?
▲ハウス食品の担当である山口さん。『とろうま角煮カレー』も山口さんが担当した商品で、長く愛される商品に。 |
山口:カレーは本業ですし、麻婆豆腐の素も長く販売しているのでマーボーカレーは作れます……が、豆腐がボロボロになってしまうので、私はレトルトに豆腐を入れられないだろうと思っていました。「お見せするのも恥ずかしいものになってしまい、難しいと思いますよ」と青木さんにお伝えしていたんですが、やってみたら結構うまくいった。それで「一度見ていただけませんか?」って(笑)。確か、『ククレカレー』と麻婆ソースを混ぜてみたんですが、味も意外といけて「……ああ、これはいいなあ」って。
(一同笑)
森川:ちょうど2月くらいですかね。ハウス食品さんにお邪魔させていただいたら、本当に実現できそうであることを報告いただきまして。山口さんが「いい豆腐が見つかった!」って。
――麻婆豆腐は、スープがレトルトパックされていて、水と豆腐とあわせて完成するのが現在の主流だと思うのですが、豆腐をレトルトパウチに入れることは最初から決まっていたのでしょうか?
山口:私は、麻婆豆腐とカレーのソースを別々に2袋箱に入れて、それをあわせる形を想像していました。そういう企画で最初は進めていたんですが、生産の問題や量の問題も考慮して、1つにしました。
船越:いい豆腐が見つかったので、豆腐も入れて、ご家庭では何も入れずにすむ形で製品化を考えていました。あとは手軽さということで、バンダイナムコゲームスさんにもご賛同いただきました。
――今回、“コクの中辛”と“まろやか中辛”という2種類が発売されますね。同じ中辛でなぜ2種類用意したのでしょうか?
船越:『テイルズ オブ』シリーズを実際に遊ばれている方というのは、私のイメージだと若い男性が中心だったんですが、いろいろ聞いてみますと女性のファンも多いと。せっかくゲーム中のマーボーカレーが発売されるのに、味の好みにあわないのは申し訳ないというのがありまして、複数種類用意したほうがいいという結論になりました。辛さも好みがありますが、比較的好まれている辛さで、方向性の違うものを作る上で相性がいい中辛になりましたね。
山口:最初は全然信じられなかったんですよ。「女性のユーザーもいらっしゃいます。男性だけじゃないですよ」と言われても、「何いってんねん!」って(笑)。それで“テイルズ オブ フェスティバル2009”に行ったら、ビックリしました。「こりゃ、今の味じゃダメだ!」って(笑)。
(一同爆笑)
青木:ユーザーについて、女性も多いことは説明していたんですが、信じてもらえてなかったので「“テイルズ オブ フェスティバル2009”にぜひ来てください!」とお願いして、招待券をお渡ししました。
馬場:イベントになると男女比率は大きく変わりますね。女性がメインになって、キャラクターだったり、声優さんの演技を楽しみに来場するという。あと、試食をさせていただいた時に、男性と女性で意見が分かれたんですよ。なので、「オイスターの味を出したものと、豆板醤を効かせた2種類出しませんか?」と提案しました。
青木:試食の際には、何種類もバリエーションを持ってきていただきました。我々の舌が信用できるかは置いておいて(笑)、女性スタッフを含め、意見を出し合いましたね。「豆腐の大きさをもうちょっと大きいほうがいい」とか。でも、どれもおいしかったので、迷いましたね(笑)。
▲青木さんとともに商品化に尽力した森川さん。今まで関わってきた仕事とは、違うおもしろさ、苦労があったとか。 |
馬場:試食は楽しかったですね。普段は食べれない、作り途中のものを何種類も食べることができて。
青木:ハウス食品さんと打ち合わせだと、ちょっとウキウキする自分がいましたね(笑)。
船越:(笑)。でも特殊な食べ方をするので、戸惑われませんでしたか?
――普段とは、異なった食べ方をするんですか?
船越:先にソースだけ食べて、その後ご飯とあわせてとかちょっとしたことですが、戸惑われる方もいらっしゃるので。
森川:でもすごかったですね。“まろやか中辛”の甘め、普通、辛めと3種類あって、“コクの中辛”も3種類用意していただき、味を一口ずつ見ながら「こっちの方がおいしいかも」と話をして。本当に、食べる監修は楽しかったです。
馬場:まるで、僕らのゲーム開発がピリピリしているみたいじゃないか(笑)。
(一同爆笑)
(C)いのまたむつみ (C)2009 NBGI