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2009年12月15日(火)

『UO』開発プロデューサーCalvin Crowner氏への直撃インタビュー!

文:電撃オンライン

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――質問を一旦『UO』から離して、この機会にもうCalvinさんの目から見たゲーム市場全体について、お話をうかがいたいと思います。オンラインゲームを海外展開するにあたり、どこのパブリッシャーも必ず現地プレイヤーの傾向や好みにあわせた、ローカライズの重要性を口にします。「ローカライズとは言語の翻訳だけを意味しない」というのは、インタビューでも定番のセリフですね。そこで、北米、東西ヨーロッパ、アジア、アジアの中でも異質とされる日本、それぞれのPCオンラインゲーム市場に対するCalvinさんの分析を、ぜひ聞かせていただきたいのですが。

Calvin:その4つの市場について言うならば、まず北米とヨーロッパは圧倒的にPvPを好む傾向が強いです。そしてその真逆のベクトルにあるのが日本プレイヤーですね。日本のプレイヤーは釣りやハウジングといった、コミュニティを形成する傾向があります。日本以外のアジア地域はややコミュニティ寄りですが、一部のとがったプレイヤーがPvPを楽しんでいるといった感じです。もちろん北米プレイヤーもコミュニティは形成しますが、それはPvPを通じてでき上がっていきます。アジア&日本プレイヤーのコミュニティは、主にロールプレイから生まれていくんですよ。

 おっしゃる通り、地域や国によってプレイヤーの好むものは違います。ですから我々もアップデートを行う際には、そのアップデートが誰のためのものなのか? を常に考え、あるアップデートの内容が70%コミュニティ向け、20%はPvP向けとなっていれば、次のアップデートではその割合を変更します。しかし多くのMMORPGではこの部分ができていません。PvEやお使いクエストばかりが充実されていくのに、ハウジングやガーデニングのようなコミュニティ要素がまったく実装されていないなど、偏ったものになりがちです。あるいはコミュニティはあるが、それがゲーム外の、例えばSNSなどに頼っているケースも多くあります。『UO』ではゲーム内にきちんとコミュニティが存在しています。

――そのアップデートに対するコミュニティ要素とPvP要素の割合は、毎回どうやって調整しているのでしょう?

Calvin:開発チームはそれぞれ専門性をもった、さらに細かいチームに分かれていて、当然各チームごとに「次にこの機能をゲーム内で実現したい」という注力ポイントが違います。それらの優先順位は進行スケジュールと、プレイヤーからのフィードバックをもとに決めていきます。

『UltimaOnline』 『UltimaOnline』

――なるほど。では少し前の話になりますが、拡張パック『宝珠の守人』のインタビューの時点で、『UO』全体のプレイヤーアカウント数に対する日本アカウントは45%を占めている、とのお話でした。その後も具体的な数字は聞いていませんが、いまだ高い割合を占めているそうですね。今お話されたように各国のマーケットを分析し、すべてのプレイヤーが『UO』に楽しさを見つけられるよう配慮しているのに、結果として日本アカウントが突出して多い理由についてはどう思われますか。

Calvin:理由の1つとして思いつくのは“懐古主義”ではないでしょうか。日本のゲーマーではなく、日本の『UO』プレイヤーは特に2Dのクラシックさ、レトロ感を愛してる人が多いんです。

丸山:少し補足させてください。日本のPCゲーム市場には2005年ぐらいまでに、主に韓国を中心としたアジア圏からMMORPGが一気に流れ込んできました。その時点で『UO』はすでに7年のサービス歴があり、他のMMORPGに比べて自由度の高い安定したオンラインゲームという、ある種のブランド力を定着させるのに成功していたという点も大きいと思います。

Calvin:繰り返しになりますが、日本人プレイヤーはコミュニティやロールプレイを好む傾向があります。そしてMMORPG黎明期からサービスされている長寿タイトルゆえに、プレイヤーコミュニティの中には、『UO』の歴史とまったく同じだけ続いているものもあるでしょう。長い時間をともに過ごしたプレイヤーは友人であり、家族のようなものです。家族と離れてまで他のMMORPGに移る理由がない。だから日本アカウントの割合が高いと考えられます。

『UltimaOnline』

丸山:おかしな例えですが『UO』は闇鍋みたいに、本当になんでも機能が入っている。やろうと思えばどんな遊び方もできるMMORPGです。今もちょうどハウスカスタマイズコンテストを実施中ですが(※コンテストは現在は終了し、結果が発表されている)、物を積み上げてオブジェクトを作れるゲームが他にいくつあるでしょうか? ここまで自由度の高いゲームは『UO』以外にないと思います。サービス開始当初は他に選択肢がなかったという先行者利益もありますが、『UO』が初めてのオンラインゲーム体験だと言う人にとって、他のタイトルでは闇鍋度合いが低くて満足できないのかもしれませんね。

――それではここ3、4年の間にサービスを開始したMMORPGの中で、Calvinさんから見て、あるいは実際にプレイして『UO』にはない、優れた物を持っていたタイトルはありますか? また最近のMMORPGに対してなにかご意見があれば、ぜひお願いします。

Calvin:最近のMMORPGを短時間ではありますがプレイして思ったのは、「もっとみんな『UO』を見習えばいいのに」ですよ(笑)。日本ではサービスしていない某タイトル『W』は、数ヶ月遊んでみましたがすぐに退屈してしまいました。また別の韓国製有名タイトル『R』と『A』もちょっとだけ遊びましたけどね……『R』はあっというまに飽きました。『A』については、理想的な美しいアバターを作りたければ良いタイトルでしょう。しかしゲーム性は数時間触ってみても魅力を感じませんでした。

――『A』は私自身も実際プレイしてみて、確かにキャラクターメイキングはどうやっても美男美女ができ上がって楽しかったです。ゲームシステムだけを見れば、実は『A』は『EQ』や『Lord of the Rings Online(LotRO)』に極めて近い作りです。しかしこの2作品は良タイトルでありながら、かわいいとは到底言いがたいグラフィックスが、日本で成功できなかった要因の1つでした。『A』は今までグラフィックスが理由で欧米産MMORPGを敬遠してきたプレイヤーには、理想的なタイトルになるかもしれませんね。

Calvin:『A』のキャラクターメイキングは、私には日本人向けというより、いかにも韓国風デザインに見えますけどね。

――そろそろお時間が迫っているようですね。Calvinさんの頭の中には、おそらく“理想の『UO』像”と呼べる物があると思います。マンパワー的に、あるいは現在の技術では実現が難しくても、いつかはこうしたいと考える、まあ“夢の『UO』”とでも言いましょうか。そのCalvinさんの理想に対して、現実の『UO』はどこまで近づいていますか?

Calvin:スキル制度や各種コンテンツなど『UO』の核となる部分の理想は、すでに現在の『UO』の中に存在しています。理想に届くにはもう少し努力が必要だと思う部分は、インタフェース、クライアント、グラフィックスですね。ここをもっと洗練されたものにして、誰でも楽しめるMMORPGにしたいです。理想の『UO』に続く階段を、我々は確実に一歩ずつ上っているところだと信じています。

――では最後に、『UO』ファンそして読者に向けてのメッセージをお願いいたします。

Calvin:他のどの国の『UO』プレイヤーよりも、日本のプレイヤーとコミュニティからのフィードバックが『UO』を、そしてPCゲーム全体をもっと楽しくなるよう改善するために役立っています。日本のプレイヤーに感謝するとともに、恩返しできるように我々もよりいっそう努力し続けていきます。

――本日は長時間、ありがとうございました。

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データ

▼『ウルティマ オンライン』
■メーカー:エレクトロニック・アーツ
■対応機種:PC(対応OS:Windows 2000/XP)
■ジャンル:RPG(オンライン専用)
■正式サービス開始日:1997年10月17日
■プレイ料金:1,554円(税込)/月額

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