News

2010年2月10日(水)

前作でやれなかったことを! 『タツノコ VS. CAPCOM UAS』開発者インタビュー

文:電撃オンライン

前へ 1 2

■調整期間や変更点、そして特典の選考理由とは?

――調整期間はどのくらいかけているんでしょうか?

新妻:前作にいたキャラに関しては、ユーザーさんが遊んだ感想だったり、僕らが意図していない方向に行っていたものを直すことをコンセプトにして、わりと早くから取り組んでいました。発表は6月に開催されたE3だったんですが、ソフトを出してちょっとしたらもう動いていたという感じです。

『TATSUNOKO VS. CAPCOM ULTIMATE ALL-STARS』
▲エイティングサイドの進行を管理していた井川プロデューサー。リュウが気に入っているようだ。

井川:前作でやれなかったことをこなしたい! という声は現場でもあったのと、前作以上にハードなユーザーさんに向けてしっかり調整していこうと考えていたので、きっちりしたメンバーで最後まで望みました。長いというよりは、ちゃんとした期間を設けたというイメージです。

――システムやキャラクターそれぞれが大幅に調整されていて驚きました。コンセプトについて教えてもらえますか?

番長:前作を省みると、特定の組み合わせになるとタイムオーバーになることも多かった。今作は家庭用だけのリリースで、通信対戦もあるということを考えて、もうちょっとサクサク対戦できたほうがいいと思いました。あとは、前作で弱かったキャラを強くすることを考えましたね。でも単純に技の威力を上げるのではなく、コンボパーツを増やすという調整にしました。家庭用でワイワイやるのであれば、すごいシビアな調整をするのではなく、みんな強いほうがおもしろいだろうと話し合い、そういう方向に調整しています。

新妻:始めはもっと変えようという意見もあったんですが、カプコン側からストップさせてもらいました。もし続編、『タツノコ VS. CAPCOM 2』だったらアリなんですが、今作はそうではない。なので「ココまでにしましょう」と。たとえばユーザーさんが“メガクラッシュコンボ”を見つけてしまったので、それをもっとやろうという流れもあった。でも、僕らが意図としていたのは元々そういう方向ではないので、それは伸ばす方向ではなく、止める方向にしましょうとかです。ただ、かなりよくまとまったという印象はあります。逆にVS.シリーズのトゲをとりすぎた感はあるんですが、家庭用はそれでちょうどいいのかなと。

――「ヴァリアブルエアレイドを当てると補正が切れる」というのを聞いた時に不安もあったのですが、試合展開を早める意味でも補正を切ったという形ですか?

番長:ヴァリアブルエアレイドは、前作だと交替用でしか使われなかった。コンボを伸ばすなら、ハイパーコンボを組み込んだほうが強いじゃないですか。なので今回はコンボにも使えるようにしたいと思い、実際に補正を切ってみて問題がないと判断したので、決定しました。対戦して決めているところもありますね。

――『タツノコ VS. CAPCOM UAS』ではタツノコサイドに3Pカラーと4Pカラーが追加されましたが、これについて経緯などを教えてもらえますか?

新妻:前作では、原作となるキャラクターのイメージがあるので、極力変えてほしくないという要望がタツノコさんからありました。その上で2Pカラーをいただいたのですが、視認性が悪いという要望が上がっていました。今作はWi-Fi対戦でより多くのユーザーが対戦を行う可能性があるというので、視認性を上げたいと考え、タツノコさんにお願いしにいきました。きっちり説明させていただいたところ、快諾していただきましたね。キャラクターの色について限度があると思っていたので、10種類程度出して選んでいただいたのですが、わりと突拍子のない色とかも選んでいただいて……。

――ジュンとか奇抜な色になっていましたね。

新妻:白鳥のジュンなのに、黒ですからね! こちらとしては、ありがたいんですが、やはり「いいのかな?」って(笑)。あと、テッカマンブレードだったら、イビルのようにネタ的な色ってあるじゃないですか? それを含めて4色くらいあるといいと思っていたんですが、タツノコさんに助けられました。先ほどのフランクの時にも話したんですが、今回は本当にタツノコさんにご協力いただきました。それなくして、このスピードでこの内容はできませんでしたから。

――ボーカル曲を収録したオリジナルCDが先着特典として付きましたが、ファンから要望があったからなのでしょうか。

新妻:たくさんの要望をいただきました。前作において、サントラはオリジナル曲が絡むので難しかった。やろうとしたんですが、大変な手間がかかる上、収益的にも目処が立たなかったんですよ。本作でオリジナル曲やボーカル曲に関しては何かやりたいと思ったんですが、海外版のサウンドを売るのも微妙。というわけで、たくさんは入れられないけど、前作のものを含めて限定の特典として出させていただきました。

『TATSUNOKO VS. CAPCOM ULTIMATE ALL-STARS』
▲先着購入特典のCD『TATSUNOKO VS. CAPCOM ULTIMATE ALL-STARS VOCAL TRACKS』。オープニングテーマ曲『Across the Border 2010』と、本作でのロールのテーマ曲『Where The Wind Blows』に加えて、前作の2曲『Across the Border』、『風よ伝えて……‘08』を収録している。

――オープニングの曲ですが、東京ゲームショウ2009でオープニングが流れた時に、映像と楽曲のカッコよさにふるえたのを覚えています。

新妻:ありがとうございます。とりあえずは海外版なので、英語ボーカル曲にしようと思っていました。でも、まったく新しい曲にしてしまうとつながりがなくなってしまうので、前のものを英語にすれば海外版というのがわかりやすいかなと。それは早い段階で決めていました。他には、海外で発売するので発音には気を使いましたね。……あと放っておいたら、主題歌にラップが入っていました(笑)。

――意図したものではなく、いつの間にか入っていたんですか?

新妻:うちの社員のラップです。レコーディングの時になぜか現場にいて、自分が気づいた時には、すでに歌うことになってました(笑)。なのでアーティストと同じ扱いにして、リテイクも出しました。あと、国内版のトレーニングモードだけラップの曲が入っているんですが、あれについても入ることになるとはまったく聞いてなくて、入れた後で聞かされましたね。

(一同笑)

新妻:カプコンに脈々と連なる「やっちゃいました。どうします?」という流れはこんなところにも隠れています。さらにいうと、そのラップ曲を特典CDに入れるという話もあったのですが、さすがに止めました(笑)。

『TATSUNOKO VS. CAPCOM ULTIMATE ALL-STARS』

――なるほど(笑)。では、ミニゲームが1つになった理由は?

新妻:これは僕の判断ですね。ミニゲームをすべてローカライズするのは時間がかかる。それをやるなら、一番しっかり作っていたPTXのミニゲームを、さらに作り上げたほうがいいだろうと。最初は全然違っていて、キャラもPTXしか出なかったんですよ。途中で僕が「他のキャラだしたらどう? たとえば……全員!」って言ったら、「全員は無理です!! 勘弁してください」とエイティングさんから言われました(笑)。

井川:4人で遊ぶので、4キャラにしていただきました(苦笑)。

新妻:最初はおまかせしつつ、途中から僕の無茶が入た感じですね。ループで遊べればいいと思っていたんですが、途中でキャラ追加とかエリア分岐とか言い出して。でも、エイティングさんはもともとシューティングゲームを作っていた会社なんですよね?

井川:そうですね。旧ライジング時代には、『バトルガレッガ』や『蒼穹紅蓮隊』などを手掛けておりました。制作中には、もともとシューティングを作っていたトップのデザイナーとかが見に来て、「ここは弾をもっと大きく」とか言い出して(笑)。結構、沸き上がりましたよ。

新妻:会社の根っこの部分にシューティング魂があることは知っていたので、多少の無茶はできるかなって(笑)。でも、正直エイティングさん以外では、あの期間であのクオリティのものにはならなかったですよ。あと、うちの『ロストプラネット』チームにも感謝しています。エイクリッドに天(テン)とか描いて怒られるかと思ったんですが、全然大丈夫でした。このゲームがよくできているんですよ!

――前作の時点から、かなり作りこまれていたと思うのですが?

新妻:前作の時に、「他はパーティーゲームレベルでいいんですが、1つだけでもいいので、“濃い”ものを作ってください」とお願いしたんですよ。そうしたら……。

井川:「じゃあシューティングで!」って。

新妻:今回はそれを膨らました形ですね。

――そのミニゲーム出現条件ですが……やや難しくないですか?

(見詰め合う3人)

新妻:どうなんでしょうね? あれはエイティングさん調整なんですよね(ちらっ)。

井川:……ミニゲーム専用でやっているチームがいまして、若干慣れている子が担当していたというのがありました。自分も最初は取れなかったんですが、ロールちゃんで挑戦するなら「なんとか……なるだろう」と判断しました。

――最初から出ているか、遊んでいれば誰でも出てくると思っていたので、驚きました。

新妻:1つしかない豪華なおまけという位置づけなので、ちょっともったい付けたというのはあります。ドロンジョのほうは自分でやってみたら、思った以上に難しくて(苦笑)。

井川:慣性が独特なんですよね。難しいという人は、ぜひロールちゃんでやってください!

『TATSUNOKO VS. CAPCOM ULTIMATE ALL-STARS』 『TATSUNOKO VS. CAPCOM ULTIMATE ALL-STARS』
▲エクストラゲーム『TATSUNOKO VS.CAPCOM ULTIMATE ALL-SHOOTERS』は、アーケードモードクリア後のスタッフロールで、黄色く表示される“THANK YOU FOR PLAYING”の文字を全部そろえると公開される。ドロンボー一味では難しいという人は、ロールでアーケードモードをクリアしてみてほしい。

■小麦や成歩堂がボツになった理由とは!? そしてファンへのメッセージ

――これは聞きたかったんですが、『ザ・ソウルテイカー ~魂狩~』や『ナースウィッチ小麦ちゃんマジカルて』に出てくる小麦の参戦要望が多かったとブログで書かれていました。また、イーカプコン限定先着特典の小冊子『カプコンシークレットファイル Vol.27』では「必殺技とモデリングまでできていながら、あとひと押しが足りなかった」と書かれていたのですが、何が足りなかったのですか?

新妻:ああ~~(笑)。……エイティングさんって、ものすごいきっちりお仕事をやっていただいていて、言葉は悪いかもしれませんが、優等生的なディベロッパーだと思っていたんですが、そんなエイティングさんが何の報告もなく「ここまでできましたけど!」と言って、小麦を持ってきたんですね(苦笑)。

――ええええええ!! そうだったんですか?

井川&番長:……。

新妻:タツノコさんにも何も言っていなかったので、「ちょっと待って!」と言って一旦、止めました(笑)。要望が多いのは僕も知っていたんですが、テッカマンブレードと小麦ちゃん、時間やコストの問題でどちらかしか取れないという段階だったので、僕は前者を選びました。国内だけならいいんですが、海外での知名度などを考えた時に今回のコンセプトだとテッカマンブレードでしたね。ただ、このままにしておくのはもったいないので、『カプコンシークレットファイル』に載せようと。これに載せるためだけにタツノコさんや製作委員会の方に連絡してOKをいただきました。

――ということは、もし次回作があるならば参戦する可能性はゼロではないと!?

新妻:そうですね。もし、次があるなら調整してなんとかできればいいと思います。ここまでやったので。

――なるほど。ニンテンドーワールドストアのイベントでは、成歩堂龍一とイングリッドの出演を希望する声も多かったと聞きました。

新妻:フェニックス・ライト(成歩堂の洋名)の要望は海外だと多いですね。技とかも考えてはいたんですよ。さらに、その時担当だった松川(※3)と巧(※4)に聞きにいってとりあえずのOKまでもらいました。でもそこから先にいった時にどうする? って。腕を動かすジェスチャーはあるけど、原作では腰から下は動いていないし、ジャンプもしない(笑)。

(一同爆笑)

※3……松川美苗プロデューサー。DS『逆転裁判 蘇る逆転』やDS『逆転裁判4』を手掛けた。現在は、PSP用RPG『ラストランカー』を鋭意制作中。

※4……巧舟ディレクター。PS『バイオハザード2』や『ディノクライシス』を経て、GBA『逆転裁判』を担当。以後『逆転裁判4』までディレクションし、シリーズの人気を不動のものとする。最新作である『ゴーストトリック』にも期待が高まる。

井川:机にタイヤがついていて、一体化して動くというネタもありましたね(笑)。

新妻:ただ、そこまでやるとキリがなくなるし、当たり判定の問題とかもあってなくなりました。

――イングリッドは?

新妻:実はテストタイプとして作ったんですよ。

井川:ゲームの準備段階の時に、カプコンさんのキャラを使って何かを作ってみようとなったんですね。当時最新キャラだったイングリッドを使って、ご一緒させていただいたPS2『史上最強の弟子ケンイチ~激闘!ラグナレク八拳豪~』のキャラにモデルだけ作って差替えてみたんですよ。

新妻:「『史上最強の弟子ケンイチ~激闘!ラグナレク八拳豪~』のエンジンを使って、何か作れないかな?」と聞いてみたら、イングリッドのモデルだけ上がってきて、それを仮で『タツノコVS. CAPCOM』の画面に当てはめたら、あんなに話題になってしまったと。

――もし『タツノコ VS. CAPCOM 2』が出るとすれば、成歩堂龍一とイングリッドも参戦する可能性はあるのでしょうか?

新妻:あればやりたいですよね。そこまでやったというのもありますし。他にも企画では『魔界村』のアーサーのステージとかもありました。アーサーはいつも候補に上がるんですが、他のキャラとかぶるんですよ。『タツノコ VS. CAPCOM』だとロック・ヴォルナットとかぶっていましたね。でも、それなら新キャラはゼロのほうがいいかなって。

――次回作を楽しみにしておきます。では最後に、遊んでいるファンやまだプレイしていないユーザーへメッセージをお願いします。

新妻:前作と比べてかなり調整しています。またWi-Fi対戦をかなり頑張って作りましたので、つないでみてください。対戦格闘ゲームって、最終的には人と遊んでナンボというところがあるので、ネットワーク対戦が恐いと思っている人も、ぜひいろいろな人と対戦してみてください。引き続きよろしくお願いします。

井川:やはりWi-Fi対戦というところには、かなり力を入れています。最後の最後までプログラマーが頑張り、調整して作りこんでいるので、そちらをぜひ楽しんでいただければと思います。

番長:3人目だと言えることがあまりないですね(笑)。……やっぱり対戦格闘ゲームは、人と人の対戦がメイン。いつ戦ってもおもしろいと自分は思うので、Wi-Fi対戦で離れた相手や見ず知らずの人と競い合ってください!

『TATSUNOKO VS. CAPCOM ULTIMATE ALL-STARS』 『TATSUNOKO VS. CAPCOM ULTIMATE ALL-STARS』
▲新キャラの追加やバランス調整、さらにWi-Fi対戦にも対応した『タツノコ VS. CAPCOM UAS』。熱い対戦を家庭で楽しもう。

(C)タツノコプロ (C)2005 タツノコプロ/鴉-KARAS-製作委員会
(C)CAPCOM CO., LTD. 2008, (C)CAPCOM U.S.A., INC. 2008 ALL RIGHTS RESERVED.
(C)Tatsunoko Pro duction (C)SOTSU・Tatsunoko Prod uction
(C)2005 TATSUNOKO Pro./KARAS Committee.ALL RIGHTS RESERVED
(C)CAPCOM CO., LTD. 2010, (C)CAPCOM U.S.A., INC. 2010 ALL RIGHTS RESERVED.
「タツノコVS. カプコン」は一部(株)竜の子プロダクションの許諾を受けて、(株)カプコンが製造・販売するものです

データ

▼『TATSUNOKO VS. CAPCOM ULTIMATE ALL-STARS』
■メーカー:カプコン
■対応機種:Wii
■ジャンル:FTG
■発売日:2010年1月28日
■価格:3,990円(税込)
 
■『TATSUNOKO VS. CAPCOM ULTIMATE ALL-STARS』の購入はこちら
Amazon
▼『タツノコVS. CAPCOM CROSS GENERATION OF HEROES』
■メーカー:カプコン
■対応機種:Wii
■ジャンル:FTG
■発売日:2008年12月11日
■価格:7,340円(税込)
 
■『タツノコVS. CAPCOM CROSS GENERATION OF HEROES』の購入はこちら
Amazon

関連サイト

前へ 1 2