2010年3月3日(水)
3月6日から、池袋テアトルダイヤ他で、アニメ映画『イヴの時間 劇場版』が公開される。その映画でアンドロイドのサミィを演じる田中理恵さんにインタビューを行った。
『イヴの時間 劇場版』は、ロボットが実用化されて久しく、人間型ロボット(アンドロイド)が実用化されて間もない時代を舞台に描かれる、人間とアンドロイドたちの物語。必要以上にアンドロイドに入れ込む人々を“ドリ系”と呼び社会問題になるような世の中で、高校生の主人公・リクオもアンドロイドを便利な道具として使っていた。ある時リクオは、自家用アンドロイドのサミィの行動記録の中に、奇妙な言葉が含まれていることに気付く。親友のマサキとともに足跡を辿ると、そこには“人間とロボットを区別しない”というルールを掲げた“イヴの時間”と呼ばれる店があった――といったストーリーだ。
本作は、2008年からYahoo!動画などで全6話が配信され話題を呼んだ『イヴの時間』に、新規カットなどを追加し1本の作品として再編集した完全版となる。リクオのアンドロイドである、サミィ役・田中理恵さんのインタビューをご覧いただきたい。
▲インタビューに答えてもらった田中理恵さん。“人間とロボットの区別をしません”という“イヴの時間”そのままの看板(画像右)も。 |
――まず、サミィを演じるうえで、意識したことや考えたことなどを教えてください。
田中さん:アンドロイドの役だったので、アンドロイドの時は仕事モードといいますか、アンドロイドの演じ方で、人間モードの時は人間らしいサミィを演じ分けました。
――アンドロイドたちは、普段の生活ではロボットらしく無表情ですが、“イヴの時間”にいる時は人間のような感情豊かな表情を見せるんですよね。そこが演じ分けのポイントということですか。
田中さん:序盤はアンドロイドの一面が多かったのですが、話数が進んでいくにつれて、サミィの人間っぽい部分といいますか、アンドロイドなのに人間以上に人間らしい一面が見えたりするので、そのあたりに注意して演じていました。
――作品自体の魅力はどういったところにありますか?
田中さん:人間が、人型のアンドロイドたちを粗末に扱っているシーンもあるのですが、自分たちと同じ形をしているのに、どうして差別をするの? と心が痛みますね。アンドロイドたちも人間に近付こうと努力をしているのに、それを「人間ぶってるんじゃねーよ!」と無下にしてしまうんですよね……。最初リクオ君にもそういうシーンがあって「誰がそんな命令していないことをやっていいって言ったんだ」というようなことをサミィに言うんです。そういうシーンは、見ている人たちに訴えかけるものがあると思います。
あとは、劇中のTVに「そこに愛はありません」とか「機械が作ったトマトを食べますか?」といったCMが流れるのを見て、自分がもしこういう世界に住んでいたら、どうなるんだろうなと考えさせられます。私自身、アンドロイドはすごく好きなので、“ドリ系”になると思うんです。でも、そうじゃない人たちがアンドロイドを物のように扱っているのを見ると悲しくなりますね……。この作品は、すごく難しいテーマを含んでいると思います。
――今“ドリ系”というお話が出ましたが、実際にアンドロイドがいたら、田中さんはどのように接しますか。
田中さん:家族のように接すると思います。私はアンドロイド肯定派なので、劇中にいた「人間じゃないのに人間らしい行動をするんじゃない」といった人たちとは正反対ですね。たまにはお洋服を買ってあげたりすると思います。着せ替えさせたりするのも好きなんですよ。女の子のアンドロイドだったら、自分の服とか着せてあげたり、髪も結ってあげたりしそうですね。
――サミィも、お母さんからは、洋服を買ってもらったりして愛されていることが垣間見えるシーンがありましたよね。
田中さん:そうですね。「お洋服を買ってもらえる」ということがわかるシーンではきゅんとしました。
――劇中に登場したアンドロイドの中で、実際に家にいてほしいアンドロイドはいますか?
田中さん:人型のアンドロイドがいいですね。サミィに限らず、人型のアンドロイドって話し相手にもなりそうですし、ゲームなども一緒にやってくれそうじゃないですか。勝ち目はなさそうですけど(笑)。人型じゃないアンドロイドもいっぱいいて、劇中にも出てくるんですが……彼らもかわいいと思うんですけど、やっぱり人型が好きですね。でも不思議ですよね、自分が知らないところで、アンドロイドたちが共有している時間があるというのは。リクオ君も調べるのに苦労していたじゃないですか。たぶん私だと、アンドロイドたちが“イヴの時間”のようにオフ会などをやっていても気付かないです(笑)。
――アンドロイドにも、アンドロイドたちの社会があるんですよね。
田中さん:おもしろいですよね。
――今回の劇場版は、配信されていたものを再構成した完全版になっていますが、新規カットなどについてはいかがですか?
田中さん:サミィが鏡の前で髪を結って微笑むシーンなどは、新しいカットです。監督も「かわいいシーンだ」おっしゃっていたんですが、私もすごくかわいいと思いました。男性も女性もそのかわいらしさを見て“ポッ”となってしまうのではないでしょうか。
――先ほど作品の魅力についてお聞きしましたが、サミィの魅力はどこにありますか?
田中さん:アンドロイドなのに人間らしいところでしょうか。あとは健気な女の子というところですね。サミィは、家族やリクオ君に対して、よりいい生活をしてほしいと思って、できないことに挑戦するんですよね。陰で努力するタイプといいますか。そこがいじらしく、守ってあげたくなります。「今日は○○を買ってもらった」といったような日記をつけているんじゃないかなとか、そういうことを考えるとかわいいなと思います。
――サミィがリクオの影響を受けてピアノを弾くようになりますが、田中さん自身は何か楽器は演奏されますか?
田中さん:ピアノなどは弾けないんですけど……学校の卒業式の時に、先輩を送るのに“グロッケン”を演奏しました。木琴や鉄琴とは違い、手で持って叩いて音を出す楽器なのですが、それを弾いたぐらいでしょうか……。その時は『木星』を演奏しました。
――難しかったですか?
田中さん:吹奏楽部の人たちと一緒に演奏したので、難しかったです。
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■『イヴの時間 劇場版』
【公開日・上映館】
・2010年3月6日~……池袋テアトルダイヤ(初日舞台挨拶あり)
・2010年3月6日~13日(モーニング&レイトショーのみ)……テアトル新宿(初日舞台挨拶あり)
・2010年春……テアトル梅田